大人のための生物学の教科書 要約13 植物のライフサイクル 

要約12 脳

この本や記事で分かること

・植物ホルモンの働き

・植物細胞と人間などの細胞の違い

・植物ホルモンの分子構造解明による応用方法

植物ホルモンとは何か

 植物の細胞や組織の成長や発生をコントロールしているのは、植物ホルモンです。

 光などの環境から刺激を受けると、植物ホルモンの合成、分解、移動による化学的な信号に変換され、遺伝子発現の制御が起こり、植物の成長、発生、分化が起こります。

 植物ホルモンの一種、オーキシンは植物の光の当たらないほうに移動し、その部分の成長を促進しています。光の当たらない側が成長し、重くなることで光の当たる側へ屈曲しています。

植物ホルモン分子構造の解明はどのような役に立つのか

 ジベレリンも植物ホルモンの一種であり、細胞分裂と伸長を促進することで、植物の茎や葉を伸長成長させる効果をもっています。

 ジベレリンは日本でその構造や機能が明らかになりました。

 稲はジベレリンが原因で、茎が長く育ち収量が落ちるイネ馬鹿苗病になってしまいます。一方で、ジベレリンの生合成や情報伝達が変異したジベレリン非感受性となることで丈が短くなる矮性突然変異が起きることがあります。

 この突然変異体の育種と利用で、草丈を低くし、倒状による収量減少の阻止や肥料の削減による生産量が増大しました。

 この一連の取り組みは緑の革命と呼ばれ、メキシコでは小麦の生産量が2~3倍に向上したともいわれています。

 ジベレリンの構造と働きを把握したことで、食糧の増産につながっており、分子機構の解明が応用の幅を広げた好例といえます。

植物物の生殖細胞はどのように作られるのか

 ヒトなどの生物では、胚発生段階から生殖細胞は取り分けられ、保存されています。

 一方、植物では胚発生時には生殖細胞は存在せず、栄養成長段階で葉や茎を作っていた幹細胞が様々な刺激で生殖細胞を作り出す花を作る細胞に変化しています。

 フロリゲンはタンパク質であり、花芽の形成を促すことで知られています。光が当たることで、葉でフロリゲン遺伝子の発現が促進され、合成されたフロリゲンが茎頂へと移動し、花芽の形成に必要な遺伝子の発現を誘導することで、生殖細胞を作り出す器官である花芽を作り出しています。

 植物細胞はヒトの細胞とは違い、可塑性がとても高いものであるといえます。

温度は花芽の形成にどのように関わるのか

 日の光に加えて、花芽の形成に重要となるのが、温度です。

 小麦は秋に発芽し成長したのち、冬の低温時に成長を止め、春になり気温が上昇し、日が長くなることで、花芽を形成します。

 春に小麦を蒔くと芽が生えて、成長はしますが、花芽は形成できません。花芽形成をするためには冬の低温にさらされることが必須となります。

 このような現象は春化と呼ばれ、ダイコン、ニンジン、ハコベなどでも見られる現象です。

 春化はFLCタンパク質が花成のブレーキとして働き、低温でFLCタンパク質の発現が減少し、ブレーキが外れることで起きています。

 種子や養殖物を人為的に低温にさらしすことでも春化は可能であり、秋に蒔く小麦を低温にさらすことでも春に種をまき、収穫することができます。

 冬の寒さが厳しい地域などでは、このような春小麦が作られています。

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