超長寿化時代の市場地図 要約

本の要点、概要

この本や記事で分かること

・超長寿化で市場はどのように変化するのか

・超長寿が進む社会でビジネスで必要なことは何か

長寿、高齢化は社会の危機なのか

 世界的高齢化が進む、超長寿化社会が到来しています。ほんの百年前のアメリカの平均寿命は54歳でしたが、約80歳まで伸びています。

 この変化を危機としてとらえる論調も多くなっていますが、大きなビジネスチャンスであり、新たな市場機会と考えることもできます。

 人生が100年を超える時代を生きる人々が何を望み、何を求め、どんな体験をしたいかを考える事がとても重要になっています。

 長寿ビジネスとしては、老化を延ばすための医薬品や治療法の開発などがありますが、それ以外にも健康寿命を延ばすためのビジネスや長くなった人生をより楽しむためのビジネスなどのニーズが高まっています。

 健康寿命が長くなれば、ライフステージも多様になり、ビジネスチャンスが生まれていきます。ただし、長寿化によって、単に寿命を延ばすだけでなく、おおむね自立して健康的な生活を送ることのできる期間である健康寿命を延ばすことも大切です。

高齢化や長寿化を危機捉える論調もありますが、大きく幅の広いビジネスチャンスと捉えることも可能です。

超長寿社会で必要なことは何か

 教育・仕事・引退という近代の3ステージの人生モデルは時代に遅れになっています。 人生の35%が残っている65歳で引退することは非現実的です。

  これからは、社会もマーケットも年齢を重ねた大人をひとくくりにせず、年齢ではなく、ステージに着目していくことが大切です。 老化によって多くの高齢者の生活の質(QOL)が下がっているのは事実ですが、大勢の人が健康に高齢期を迎えてることも事実です。

  加齢に対するステレオタイプの見方を変えることが求められます。 しかし、人生が長くなることのメリットをクリエイティブに考えている人はまだ少ないことが現状です。 人口構成の変化、高年齢層の健康状態の改善、成長市場の開拓チャンスを認識できれば 多くの企業が長寿社会と新たな高年齢層への取り組みに前向きになるはずです。

社会もマーケットも年齢を重ねた大人をひとくくりにせず、年齢ではなく、ステージに着目していくことが大切です。

社会全体で加齢に対するステレオタイプの見方を変えていくことが必要です。

人生のステージはこれまでとどう変化するのか

 健康寿命が延びた時に重要となるのは、新たに得た人生の時間をどの時期にどのように組み込んでいくかを考えることです。追加の時間を人生の最後まで取っておくのか、複数のステージに分けるのかを考えることがとても重要です。

 教育・仕事・引退という3ステージの人生モデルでは、多様な生き方を表現することはできません。

人生のステージには以下のような18個が考えられます。

成長のステージ:始まり、成長、初発進、実験

キャリアと家族のステージ:継続学習、経済基盤の確保、子育て・家族、介護、健康状態に見直し

再出発:方向転換、再発進、人生の優先順位の再設定、移行、ポートフォリオの作成、再生、サイドブレナー

結び:終活、人生の幕引き

 年齢とステージがきれいに対応するわけではありませんし、同時に複数のステージをまたぐこともありまし、ステージ間の移動が一方向に進むわけでもありません。

 引退というステージはなくなり、いつでも方向転換、再発進、移行できるような社会が求められるようになっていきます。

 その中で、高年齢層が人生の終焉に向かっているのではないと考え、年齢による区分をやめ、多世代の人材が活躍できる組織にすることで企業文化を改善し、長寿カスタマーのニーズへの理解を深めることが可能になります

これまでの教育・仕事・引退という3ステージの人生モデルは時代遅れになり、もっと細かく多様なステージが考えられます。

引退というステージはなくなり、いつでも方向転換、再発進、移行できるような社会、記号文化の変化が必要です。

長寿カスタマーに対応するには何が必要か

 長寿カスタマーのニーズを取り込むためには、どのようなドメイン(領域)に着目するのかが大事です。重要課題として、8つのドメインの設定が考えられます。

1:やりがい、いきがいをサポートする
2:資産形成や詐欺の防止なおで経済面での健全性を確保する
3:モビリティ 長寿化を前提にした移動や交通の整備
4:日常生活の補助や多様なライフスタイルを実現する 
5:介護 効率化につながる情報ソースの提供やサポート
6:介護コーディネーターによる制約の少ない介護環境の実現
7:脳の健康
8:尊厳のあるポジティブな最期を迎えるため新技術や連携

 長寿マーケットは多くの新規顧客が誕生している分野です。8つの幅広いドメインで考えれば、医療や健康業界だけでなく、全ての個人、家族、業界がこのマーケットと関係していることが分かります。

 年齢、ステージ、ドメインの3つに対する理解を深め、組み合わせていくことがビジネスに必要になっています。

長寿カスタマーのニーズを取り込むためには、どのようなドメイン(領域)に着目するのかが大事です。

介護や医療だけでなく、幅広いドメインで考え、年齢、ステージの3つを組み合わせていくビジネスが長寿カスタマーに欠かせません。

長寿カスタマーを取り込んだ例にはどのようなものがあるのか

 金融機関であるメリルリンチはステージに着目した多様な資産形成に関する新商品を開発しています。また従業員にも家族の介護の調整や介護の休暇などの福利厚生を充実させています。

 ナイキは高齢アスリートの着目し、ゆっくり走りやすい構造をもつ新しいスニーカーを開発し、好評を受けています。成功に必要な要素には以下のようなものがあります。

・個々のサービスの焦点絞る

・商品やサービスを長寿カスタマー向けに設計しても、その特徴を売りにしない
 高齢者は年寄りくさいものを避けることがある

・長寿マーケットだからIT技術は控えめにという発想にしない

・製品やサービスの購入者が長寿カスタマーではないことある(家族や行政)ためアプローチの方法を工夫する

・製品や設計チームに高年齢層の感性を持ち込む

 住宅の改築やリフォーム、社会的孤立へのフォロー、遠隔医療、在宅介護などの領域でも成功例が増加し始めています。長寿化を多様なカスタマーを創出する新たなビジネスチャンスととらえることができれば、経済成長の牽引力とすることができます。

以下のような要素が長寿カスタマーの需要を取り込むために欠かせません。

・個々のサービスの焦点絞る
・商品やサービスを長寿カスタマー向けに設計しても、その特徴を売りにしない
・長寿マーケットだからIT技術は控えめにという発想にしない
・アプローチの方法を工夫する
・製品や設計チームに高年齢層の感性を持ち込む

長寿カスタマー取り組むうえでの問題点は何か

 長寿カスタマーを取り込むうえでチャネル(集客を行う媒体や流入経路)は改善の余地のある分野です。介護だけを例にとっても以下のような問題があります。

・消費者への直販ルートが少ない

・流通チャネルが複雑でカスタマーからも探しにくい

・専門職による介護チームのネットワークから在宅介護を行っている家族が排除されている

・データを用いたカスタマー分析が進んでいない

対策としては、以下のような施策が考えられます。

・多様なドメインを展開し、あるドメインでの消費者に別のドメインの商品やサービスを展開する

・SNSやコミュニティを利用する

・イノベーターや起業家とのつながりをつくる

 戦略策定の段階で、どのような商品、サービスを提供するかだけでなく、どのように顧客を獲得するかを考えることが重要です。ただし、高年齢層の人々が多様であり、ニーズも要求も多様であることを忘れてはいけません。

 また、幅広い商品やサービスを購買してもらには、信頼関係の構築も重要な要素です。

長寿カスタマーを取り込むうえでチャネル(集客を行う媒体や流入経路)は改善の余地のある分野です。

どのような商品、サービスを提供するかだけでなく、どのように顧客を獲得するかを考えることが重要です。

超長寿社会とどのように向き合うべきか

 長寿マーケットには大きなチャンスがあり、人口動態の変化は今も進行中です。高齢人材の価値を軽視せず、年齢による区別をやめることが各企業に求められています。

 しかし、変化への対応はマーケットだけでなく、政策や文化にも求められています。

 年齢による区別をやめること、多様な年齢を含む組織を推奨すること、世代を超えたコミュニティを育成していくことは企業だけはなく、行政など社会全体に求められています。

 長寿マーケットでは信頼関係が重要であり、尊厳を持って接することが欠かせません。また、言葉の持つ力は大きいものです。高齢期という言葉をこれから期と言い換えるなどの工夫も大事になっていきます。

 年齢だけではなく、ステージにも目を向けることでこれからの人生にも新しい意味が見えてくるはずです。

マーケットだけでなく、政策や文化にも変化が求められています。年齢による区別をやめること、多様な年齢を含む組織を推奨すること、世代を超えたコミュニティを育成していくことが必要です。

年齢だけではなく、ステージにも目を向けることでこれからの人生にも新しい意味が見えてくるはずです。

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