思考の方法学 栗田治 要約

本の要点

要点1

私たちはある目的を達成するために、「思考する」ことで様々な解決策を考えたり、納得しようとします。

思考を支える技術として、現実の模型を創り出し、現実を把握するためのモデルを創り出す「モデル分析」があります。

モデル分析は論理的な思考や適切な計画の作成の助けとなるものです。

要点2

モデルをつくる手順は「考える対象の選択→要素の選択→要素の関係の記述」となります。特に重要なのは、いらない要素を捨て、必要な要素だけを選択することです。

モデル分析には以下のような様々な方法があります。

・論理の種類(定性 or 定量)

・どの側面に追求するのか(普遍性 or 個体の把握)

・大きな視点か小さな視点か(マクロ or ミクロ)

・時間的な変化を考慮しないかするか(静的 or 動的)

対象、目的に応じて適切な分析方法を選ぶことが重要です。また、それぞれの分析モデルを組み合わせることも可能です。

要点3

モデル分析に結果は様々な合理的な意思決定を行う際に有用なものであり、身に着けることで、物事の本質の見極めたり、他人の主張やデータを批判的に判断するために欠かせないものです。

そのため、文理問わずあらゆる人が身に着けるべき技術といえるものです。

この本や記事で分かること

・モデル分析とは何か

・モデル分析はなぜ、役立つのか、どのように行うのか

・具体的なモデル分析の方法と違い

思考の手順について書かれた「思いつきを価値あるアウトプットに変える思考の手順」の要約はこちら

思考力について書かれた「思考力の地図」の要約はこちら

思考とは何か?思考するときに必要なものは何か?

思考とは、ある目的をもって対処し、納得したり解決策を見つけるものです。

その際にモデル分析を使用することで、論理的な思考や適切な計画の作成が可能になります。

モデル分析はどうやって行うのか

モデルとは現実の模型を作り、現実を把握するためのものです。

考える対象の選択→要素の選択→要素の関係の記述という手順で行います。

最も重要な手順は多くの大事でない部分を捨てることです。

モデル分析にはどんなものがあるのか

モデル分析は以下のような種類に分類できます。

・論理の種類(定性 or 定量)

・どの側面に追求するのか(普遍性 or 個体の把握)

・緻密さ(マクロ or ミクロ)

・時間的な変化(静的 or 動的)

対象、目的に応じて適切な分析方法を選ぶことが重要です。

定量的モデルと定性的モデルとは何か

要素の関係性を数式で記述するのが定量的、言語で表現するのが定性的モデルです。

定性的モデルは厳密性に欠けますが、すべての分析を定量的モデルで行うことも不可能であり、定性的モデルも必要なものです。

普遍性の追求と個体の把握はどう使い分けるべきか

汎用性を求める場合は、普遍性の追求を、対象の特徴や行く末を把握したい場合は個体の把握

を利用することが有効です。

どちらか片方ではなく、双方の営みを進めることで社会問題の解決につながっていきます。

マクロとミクロはどのような違いがあるのか

全体を俯瞰するのがマクロ、細かく切り分けたものに注目するのがミクロです。

両方の視点をバランスよく取り入れることが重要です。

時間変化は分析にどう影響するのか

時間的な変化を考慮しない分析を定量的モデルを静的、時間に沿って変化する様子を追求するものが動的モデルとなります。

静的モデルで分析を行ったのに、対象の時間による変化が大きいと分析の意味がなくなることもあるので注意が必要です。

分析モデルはどのように活用できるのか

それぞれの分析モデルは組み合わせることもできます。

3つのモデルを組み合わせれば、2×2×2で8つの領域が存在します。どの領域のモデルを作成したいのかを考えることはモデルをつくる際の助けとなります。

モデル分析はどのように利用できるのか

モデル分析の結果を様々な合理的な意思決定を行う際に利用可能です。

モデル分析の利用はオペレーション・リサーチと呼ばれ、その中核には計画数学という数学モデルがあります。

計画数学とは何か

観察と整理→定式→数理モデルの記述→結果の記述という順で計画数学は行われます。

一度の計算ではなく、この手順を何度もループすることで、らせん状に展開し、質の高い結果を得ることができるようになっていきます。

モデル分析はどんな人が身に着けるべきか

モデル分析は物事の本質を見極め、他人の主張やデータを批判的に判断するためにも欠かせません。そのため、文理問わずあらゆる人が身に着ける技術といえます。

本の要約

要約1

思考とは、ある目的をもって物事に対処し、納得したり解決策を見つけるために考えることであり、このような思考を支えるものがモデル分析となります。

モデルとは、

・考える対象となる事物を吟味して

・大切な要素のみを選び

・選ばれた要素同士の関係性を記述することで

・現実の真似事、模型をこしらえたもの

のことです。特に重要になるのは大切な要素を選ぶこと=多くの大切でない部分を捨てることであり、モデルを作るうえで最も重要なことになります。

モデルを思考の枠組みとして、うまく利用することで、論路的な思考での理解や適切な計画を立てることが可能になるため、現実への対処法を考えるうえで不可欠な技術です。

モデルの種類は様々ですが、4つの対となる概念で考えていきます。

・定量的と定性的:どのような論理を用いるか

・普遍性の追求か個体の把握か:対象物のどの側面を明らかにするのか

・マクロかミクロか:どの程度の緻密さで記述するか

・静的か動的か:時間による変化を考慮するかどうか

要約2

定量的モデルと定性的モデルはデータを分析し、思考するための異なるアプローチです。

定量的モデルは選ばれた要素の関係を数式を用いて表現するための枠組みです。

定性的モデルは物事の分類、因果関係などの要素を言語によって表現し、論理操作によって物事の本質を理解したりするものです。

定性的モデルであっても、主観的要素や恣意性を排除し論理的であることが重要ですが、定量的なモデルにみられるような厳密さに欠ける部分があることは否めません。

ただし、世の中のすべてのモデル分析を定量的モデルで行うことは不可能です。計画的な枠組みで実験を行うことが困難などの理由で限られた統計データしかないなどの状況では定性的モデルが必要となります。

モデル思考を通じて手に入れるべき知識が汎用性を持つか特定の事物と状況を説明するものかを見極めておくことも重要です。

汎用性を持つ普遍性の追求は科学法則の発見などが当てはまります。一方で個体の把握は普遍的な原理や法則の解明ではなく対象となる個体の特徴や行く末の把握を目的とします。

前者は理学、後者は工学に相当し、両輪となっています。双方の営みを進めていくことで、社会問題を支えることが可能になります。

要約3

モデルをつくる際の解像度も重要です。大きく切り分けたものがマクロ、細かく切り分けたものがミクロとなります。

経済学でもよく使用され、マクロ経済学は国家全体の経済活動を俯瞰的にみるものです。マクロモデルは物事や現象を大きな枠組みで集計、把握し分析することで有益な知見を得ようとするものです。

一方のミクロ経済学は個人や企業の経済活動に焦点を当て市場のメカニズムを分析するものです。ミクロモデルは個体の選択活動の理由を明らかにし、どのようなときに、どのような選択を行うのかを記述することを目的としています。

物事の時間の流れを考慮するかも重要な視点です。時間的な変化を考慮しないモデルは静的モデル、時間に沿って変化する様子を追求するものが動的モデルとなります。

物事の将来を予測したいときには動的モデルを使用することが重要です。静的モデルを使用して作ったモデルが実際には時間による変化が大きい要素であると役に立たない場合があります。

静的モデルによる思考の際には、考えているものに時間的な変化がないか確認することは重要です。

4つのモデルは別々のものではなく、それぞれを組み合わせることも可能です。

「定性的‐定量的」、「普遍性の追求か個体の把握」、「マクロかミクロか」の3項目を軸にすると全部で8つの領域が存在することとなります。

作成したいモデルがどの領域に存在するのかを把握しておくことで、モデルをつくる際に大きな助けとなります。

要約4

モデル分析を目的合理的な意思決定に役立てようとする学問はオペレーションズ・リサーチ(OR)と呼ばれ、社会の多くの場面で活躍しています。

限られた資源を目的に応じて、最も良い方法で利用するためのやり方を考える学問であり、戦争時の作戦立案に用いられたことで発展したものですが、のちに社会問題解決のためにも利用されるようになってきました。

ORの中核にあるのは、物事の目的合理的ま進め方を支援する計画数学とよばれる数学モデルの枠組みにあります。

計画数学とは

1:観察と整理を通じて

2:定式化を行い

3.数理モデルとして記述し

4.結果を記述する

という手順で行われるものです。一度の処理で、意味のある解答が生まれることはあまりありません。

結果の記述から反省し、もう一度最初からやり直し、何度もループすることで螺旋的展開となり、質の高い解答を得ることができるようになっていきます。

物事の本質を突き止める営みにおいて、モデル思考の技術は必要不可欠なものです。

モデルリテラシーを持つことで、他の人の主張が論理的な分析を行っているのか、正しいデータを使用しているのかといった視点で判断ができるようになるため、文理問わずあらゆる人が身に着けるべき技術といえます。

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