「居場所がない」人たち 荒川和久 要約

本の概要

未婚化や長寿化などによって独身者の割合はどんどん増加しています。

ソロ化が進む社会では家族、地域、職場などのこれまでのコミュニティは崩壊、縮小してしまいます。

そのような中で重要となるのは、各人がメディアに踊らされるのではなく、ファクトを理解し、未来を見据えて、環境の変化に適応しておくことです。

ソロ社会及び独身生活社研究の第一人者として活躍する筆者によって、ソロ化社会の現状や未来、ソロ化社会がもたらす変化とその対応を知ることができる本になっています。

この本がおすすめの人

・ソロ化社会に何となく不安を持っている人

・職場、家族、地域のコミュニティだけにしか、友人がいない人

本の要約

要約1

日本の独身者は現在、44%であり、今後も増加していくことは間違いありません。独身者の増加は多くのコミュニティを崩壊させることにもつながります。

コミュニティの崩壊で起こることを正確に知り、その環境に適応していくことが求められています。

要約2

メディアでは少子化の要因を一人当たりの女性が生む子供の数の減少していますが、本当の原因は少母化にあります。

結婚した人が生む子供の数は変わっていませんが、母親の絶対数が減っているため、子供の数を増やすことは不可能です。子育て支援は重要ですが、少子化の改善に役立つものではありません。

ほかにもメディアでは草食化が未婚を増やす、晩婚化が進んでいるなどの報道もされていますが、根拠のあるものではありません。

メディアは全くの嘘は言いませんが、勘違いを招くような表現をすることはあります。メディアの言うことを鵜呑みにするのではなく、きちんとファクトを見ることが重要です。

要約3

肉体的、精神的、社会的に良好な状態にあることという、ウェルビーイングという概念が流行していますが、状態は常に変わるものであり、良好な状態を常に維持することを目指すのは非現実的です。

重視すべきなのは行動です。誰かと何かの行動を共にすることを目標とすると状態に左右されずに幸福を感じやすくなります。

結婚や孤独も置かれた状況に過ぎません。状況そのものを目指したり、変えたりするのではなく、自分の行動に目を向けて、行動の質を高めるウェルドゥーイングこそが求められています。

要約4

地域、職場、家族といったコミュニティが崩壊、縮小していくことは確かです。これらのコミュニティは自由を制限する代わりに安心な場所を提供してきましたが、今後は安心な場所が崩壊することになります。

コミュニティが崩壊、縮小しても、人とつながること自体の価値は残ります。

所属するコミュニティだけに依存していると崩れたときに、大きな喪失感を感じてしまうため、接続されたコミュニティを重視する必要があります。

接続されたコミュニティとは趣味などの特定のときにだけつながる接続されたコミュニティのことで、接続されたコミュニティで依存先を増やしておくことが重要です。

日本社会のソロ化は不可避です。これまでの社会におけるコミュニティに所属しているだけに依存することなく、たくさんの依存先と選択肢を持ち、場合によっては逃げ足せるようにしておくことが必要です。

日本の独身者はどう増えていくのか

 未婚化、少母化、高齢者の多子化などの要因で、独身者の割合は増加しています。2020年の国税調査では、44%が独身者となっており、日本の人口の半分が独身者となる日も遠くありません。

 独身者が増えることで家族というコミュニティが崩壊するだけでなく、地域や職場というコミュニティも失われていくいます。

 コミュニティの崩壊によって居場所がなくなることを心配する人も多いですが、必要なことは各人がファクトを正確に把握し、未来を見据え、その環境に適応していくことです。

 ファクトを知り、未来を見据えることで視点の多重化と視座の再配置ができる本になっています。

2020年、日本の独身者は44%となっており、今後も増加していきます。

コミュニティの崩壊が進行するため、各人がファクトを正確に把握し、適応していくことが必要です。

少子化の本当の原因は何か

 メディアは全くのデマやうそを言うことはありませんが、切り取りや勘違いを導く表現をすることはあります。メディアの情報から得たイメージと異なる例として、少子化が挙げられます。

 少子化の原因を一人当たりの産む子供の数の減少にするメディアも多いですが、本当の原因は少母化にあります。

 結婚した人が生む子供の数は変わっていませんが、母親の絶対数が減っているため、子供の数を増やすことは不可能です。子育て支援は重要ですが、少子化の改善に役立つものではありません。

 また、人口が長期的に減少していくのは、日本に限らず多くの先進国で見られており、避けることのできない流れです。人口を減少することを認め、対策を考えることが重要です。

 また、未婚化の増加を草食化、恋愛離れや晩婚化とする報道もありますが、実際には若者の恋愛比率は大きく減少しているわけではありません。

 また、以前よりも高齢での結婚が増えたというデータもなく、晩婚化ではなく、未婚化が進行しています。

少子化の原因は一人当たりが生む子供の減少ではなく、母親の数の減少による少母化です。

ほかにもメディアでは草食化が未婚を増やす、晩婚化が進んでいるなどの報道もされていますが、根拠のあるものではありません。

結婚=しあわせなのか

 未婚者は既婚者に比べ、不幸というデータもありますが、結婚すればしあわせになるわけではなく、元から幸せな人が結婚していくと考えられます。

 幸福度の低い人は、欠乏の心理に支配される傾向が強く、自分にないものを強く求めがちです。

 欠乏の心理の強い人は結婚すればしあわせになると考えてしまいますが、因果関係は逆で、足るを知り、しあわせを感じているひとが結婚しやすいだけといえます。

結婚している人がしあわせなのではなく、しあわせを感じやすい人が結婚しています。

ウェルビーイングを高めることは本当に重要なのか

 肉体的、精神的、社会的に良好な状態にあることという、ウェルビーイングという概念が流行しています。

 ウェルビーイングを高めることは重要ですが、状態は常に移り変わるもので、良好な状態を常にキープすることを目指すことは非現実的です。

 重視すべきことは行動です。しあわせという漢字は幸せと書きますが、以前は仕合わせと書かれ、誰かと何かの行動をすることとされてきました。

 本当のしあわせは何を獲得すべきかではなく、どこで誰と何をすべきかにあるため、ウェルビーイングではなく、ウェルドゥーイングにあるといえます。

ウェルビーイングを高めることは重要ですが、どんな状態であるかよりも、どこで誰と何をすべきかを重視するほうが大事です。

行動の質を高めるウェルドゥーイングこそが重要な考え方です。

孤独は本当に悪いことなのか

 孤独は健康にも大きな影響を与えるとされ、孤独、孤立担当大臣が創設されるなど、孤独を否定し、孤独を悪とするような風潮もあります。

 しかし、孤独を楽しめる人もおり、絶対悪とするような絶対的なものではありません。

 孤独と同じように友達がいないことを人格に問題があるかのように扱うこともすくなくありません。また、友達の数と結婚には関係がありません。

 友達がいることの価値は大きいものですが、友達がいないからその人の価値や幸福感が下がるわけではありません。

 また、孤独で苦しんでいる人の多くは同時に経済的な苦しさも抱えている人も多く、一概に孤独へ対応することが最善とは限りません。

 孤独とは個々人が誰かと相対した時に作り出した虚像のことで、良いことでも、悪いことでも孤独は発生するこものです。

 孤独を苦痛と感じる人に対する対応は必要ですが、孤独そのものは空気のようなもので、駆逐したり、捨て去るのではなく上手に付き合っていくものととらえるべきです。

孤独を絶対悪とすべきではないですし、苦痛を感じている人に対応するひつようはあります。しかし、孤独は空気のように常に存在するため上手に付き合っていくことものととらえるべきです。

なぜ、退職した男性は人生を楽しむことができないのか

 多くの高齢者、特に会社である程度以上の地位にあった人は、退職後に友達が少なくなったと感じやすいようですが、そもそも会社内の人間関係や肩書があったゆえの関係であることが多く、友達ではないケースが多く見られます。

 特に仕事に打ち込んできた人の場合、趣味がない場合も多く、退職後意欲や気力がなくなり、妻に依存してしまうことも少なくありません。

 友達も趣味も作るものではなく。気づいたらできているものです。高齢男性は少なくても良いから仕事を続けることが有効です。

 人と共同で作業するような仕事であれば、人間関係の構築もでき、体力も落ちにくくなりため、非常に効果的です。

会社内や肩書ありきでの関係しかなく、趣味がないことから意欲がなくなり、妻に依存することもすくなくありません。

少なくても良いので仕事を続けることが有効です。

今後コミュニティはどう変化していくのか

 地域、職場、家族といったコミュニティが崩壊、縮小していくことは確かです。

 かつてはムラ社会と呼ばれたように、地域に強いつながりがあり、職場にもムラ社会の要素を持つものでした。

地域や職場のコミュニティが縮小することで、家族が残されたコミュニティでしたが、核家族化などが進み、代表的な3つのコミュニティすべてが崩壊しつつあります。

 コミュニティの崩壊はムラ社会での制限から自由を獲得する代わりに、今まで提供されてきた安心な場所が崩壊することを意味します。

地域、職場、家族といったコミュニティは崩壊、縮小していき、ムラ社会の制限から自由になるものの、安心な場所は崩壊してしまいます。

コミュニティをどのように考えるべきなのか

 所属や帰属という要求は誰もが持っているものですが、所属するコミュニティは永続的なものでないことを意識しておくことが重要です。

 退職すれば、職場からは離脱し、家族も離婚や死別はあり得ることです。所属するコミュニティだけに依存していると、突然崩壊し、自分自身そのものを喪失してしまいかねません。

 そこで、重要となるのは接続されたコミュニティという考え方です。

 家族や地域、職場のような所属による固定化されたコミュニティが作り出すソリッド社会ではなく、趣味などの特定のときにだけつながる接続されたコミュニティをもとにしたリキッド社会への変化が求められています。

 所属するコミュニティの重要性は残りますが、接続されたコミュニティを持っておけば、所属するコミュニティが崩壊しても喪失感を少なくすることができます。

所属するコミュニティに依存していると、崩壊したときに、自分自身そのものを喪失してしまいかねません。

固定化されたコミュニティに所属するだけでなく、特定のときにだけつながる接続されたコミュニティを持っておくと所属しているコミュニティが崩壊しても喪失感を少なくすることができます。

ソロ化する社会で何を意識すべきなのか

 人とつながることは、自分の中に新しい自分を生み出すことにもつながります。

 接続するコミュニティを持ち、接続点が多いほど、新しい自分が生まれていくことになり、その接続点がなくなっても、新しい自分は残っていきます。

 生まれた新しい自分を取り込んでいくことが、結果として自己の充実につながります。

 人々が時と場合に応じて、形を変えていける社会であれば、多様性を認めることができるようになります。

 日本社会のソロ化は不可避です。これまでの社会におけるコミュニティに所属しているだけに依存することなく、たくさんの依存先と選択肢を持ち、場合によっては逃げ足せるようにしておくことが必要です。

 行動を通じて多くの接続を生み、誰かと同じことをして、仕合せを感じる。このような接続を多く作る接続するコミュニティを作ることがソロ化の進む社会では不可欠になっていきます。

コミュニティが崩壊、縮小する社会であっても、人とつながること自体の価値は残ります。

これまでの社会でのコミュニティに所属するだけでなく、たくさんの依存先をつくっておくべきです。

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