この本や記事で分かること
・アルケンの構造と反応性
・アルケンと臭化水素の反応はどのように起きているのか
アルケンはどのような特徴をもった化合物なのか
アルカンはC-Hの単結合とC-Cの単結合からなる化合物であり、二つの結合とも極性がなく、電子の偏りがないため反応性が低い化合物になっています。
アルケンはC=Cの二重結合を有しています。二重結合には電子が4個存在しているため、アルカンよりも電子の密度が高くなっています。
また、π結合は二重結合平面の上下に存在する軌道で結合が形成されているため、他の物質が電子に近づきやすいという特徴も持っています。
これらの特徴からアルケンはアルカンと比較して、反応性に富んだ物質となっています。

エチレンと臭化水素を反応させるとどのような反応が起きるのか
アルケンのC=C二重結合は電子が豊富に存在しているため、求核試薬として機能し、求電子試薬と反応することが知られています。
例えば、エチレンは臭化水素(HBr)と反応し、ブロモエタン(C2H5Br)を生成します。
臭化水素は強い酸であり、強力なプロトン(H+)を供与します。プロトンは正に帯電しており、電子不足になるため求電子試薬として働きます、
エチレンと臭化水素の反応は求電子試薬と求核試薬が反応を起こす一般的な極性反応ということができます。

エチレンと臭化水素の反応はどのように起きるのか
エチレンと臭化水素の反応ではまず、電子が豊富なアルケンの二重結合のπ電子が求電子試薬である臭化水素のプロトンを攻撃し、新しいC-H結合を生成します。
プロトンと結合していない炭素は二重結合で共有していた電子を失ったため、価電子を6個しか持っていないため正に帯電します。
正に帯電した炭素を含む化合物はカルボカチオンと呼ばれ、カルボカチオンは電子不足になるため、求電子試薬として働きます。
また、臭素イオン(Br–)は電子が豊富に存在する求核試薬として働きます。臭素イオンはカルボカチオンに電子を与え、炭素と臭素の結合を生成します。
このような順序によって、エチレンが臭化水素(HBr)と反応し、ブロモエタン(C2H5Br)を生成します。

カルボカチオンと遷移状態の違いはなにか
カルボカチオンは反応が進行する際の遷移状態とは異なる状態です。遷移状態は元の結合が切れかかって新しい結合ができつつある状態です。
エチレンと臭化水素の第一段階の反応であれば、炭素‐炭素二重結合が切れかけ、新しい炭素-水素結合ができつつある状態です。
一方で、カルボカチオンは元の二重結合が完全に切れた、新しい炭素-水素結合が生成した状態です。
カルボカチオンのように多段階で反応が進行するさいに、途中で短時間の間生成する物質は反応中間体と呼ばれます。

反応中間体であるカルボカチオンの単離することはできるのか
反応中間体であるカルボカチオン中間体はすぐに、臭素イオンと反応し、ブロモエタンを生成します。
この反応でもカルボカチオン中間体と臭素イオンの結合ができつつある遷移状態を経由し、新しい結合が形成されています。
一連の反応のエネルギー図を記載すると、第一段階の遷移状態を経て、カルボカチオン中間体が生成し、カルボカチオン中間体が第二段階の出発物として、第二段階の遷移状態となり、生成物を生成ます。
反応中間体はどちらの遷移状態のエネルギーよりも低い状態になっています。一方で、中間体のエネルギー準位は生成物、反応物よりも高く、第一段階の反応が第二段階と比べ反応が遅いため、生成した中間体はすぐに臭素イオンと反応してしまうため、反応中間体を単離することはできません。

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