消費社会を問い直す 貞包英之 要約

本の概要

消費を繰り返すことで形成される消費社会は我々の社会を豊かにしてきました。

しかし、消費のもたらす格差の拡大と環境問題から消費社会へ大きな批判が集まり、変革が求められています。

社会学の専門家である筆者が消費社会とはなにか、消費社会の利点は豊かさ以外になにがあるのか、消費社会の問題を解決する方法は何かを書いた本になっています。

この本がおすすめの人

・消費がもたらす利点が何か知りたい人

・環境問題や格差社会の原因が消費にあり、消費社会が悪いと考えている人

・消費の問題とその解決法を知りたい人

本の要約

要約1

私たちの生活で繰り返される色々な消費は消費社会を形成してきました。

しかし、現在、消費社会に対し、格差や環境破壊などの理由によって大きな批判があつめっています。

消費社会を変えるために社会制度の変革や消費者の意識改革の重要性などが提言されていますが、消費社会を諸悪の根源として扱うことは避けるべきです。

要約2

消費社会は消費を通じて、我々に自由と多様性をもたらしている事実を見逃すべきではありません。

また、消費社会は

・資本主義以外の社会形態でも見られる

・バブル崩壊後のようなマイナスな状況でも新しい形態を生む

・インターネットの普及など大きな変革では、新しい市場を生む

・消費する商品の範囲が広くなっている

などの特徴から多様性を保ち、自由に生きていくために必要なものへと変化してきました。

要約3

消費社会が必要なものとなっていても、格差や環境破壊など問題点を抱えていることも確かです。

格差の是正には国家による再分配や福祉の拡充なども効果がありますが、国家の権力を増加させ、恣意性が高くなると多様性を低下させるなどの問題もあります。

環境問題、特に温暖化対策などでは、新技術の導入が検討されていますが、解決のめどは全く立っていません。

要約4

そこで、注目されているのが、ベーシックインカムの制度です。

条件なく社会の構成員に定額を給付するもので、以下のような利点が期待されます。

・格差の是正

・気候変動の影響の大きい貧困層の救済

・国家への権力集中の防止

・生活の余裕が環境保護活動への参加の活発化

ベーシックインカムによって消費社会の問題点がすべて解決するわけではありませんが、消費社会が自由と多様性を維持したまま、問題を解決できる可能性を秘めています。

消費社会とどのように向き合うべきか

 消費とは単に商品やサービスを買うことだけでなく、広告の様に間接的なものを含め、私たちの生活で日々積み重ねられています。

 しかし、現在、消費を積み重ねる消費社会に対して、大きな批判が集まっています。

 批判は消費社会がもたらす、格差や環境破壊に対して行われおり、社会制度の変革や消費者の意識を変えるべきという提言が多く行われています。

 しかし、消費社会を諸悪の根源として、扱うべきではなく、消費社会がその根本で実現している多様性や自由は大切にすべきです。

 格差や環境問題のために消費社会を変革すべきであることは間違いありませんが、消費社会で得られる自由と多様性を無視して未来の社会について考えることは危険なことでもあります。

消費社会は格差や環境問題などの要因から批判されていますが、諸悪の根源として扱うのではなくその多様性や自由は大切にされるべきです。

消費社会はどのように発展してきたのか

 資本主義のもたらす消費社会は広告などを通じて、私たちに購買のプレッシャーとなっていることは否定できません。

 しかし、私たちが消費社会によって、自由に消費することが許容されていることも事実です。

 近代以前、自由に消費できる人はごく一部でしたが、労働者に対して十分な給与を払うことで、労働者を消費者に変革することで、市場は拡大し、資本主義は大きく発展してきました。

 ただし、資本主義によって消費社会が広がったことは事実ですが、資本主義以前の社会でも消費社会はいたるところで見られています。

 多様なものの中から自分のモノを見出し、消費することは資本主義以外でも見られ、消費社会に資本主義が不可欠なわけではありません。

産業革命や資本主義は労働者に給与を払うことで、労働者を消費者に変化させることで、消費社会を浸透させ、市場を拡大させてきました。

ただし、消費社会自体は資本主義以外の社会体系でも見られており、資本主義が必須というわけではありません。

近年、消費社会はどのように変化してきたのか

 現在の消費社会を資本主義の完成形ではなく、繰り返されてきた消費がさらなる消費を促す歴史に一部としてみることが重要です。

 平成の日本では、バブル崩壊後の混乱で格差も貧困も増大していき、消費金額は確かに減少しています。

 しかし、デフレによって商品価格が下がったこともあり、消費の量的な減退はそれほど大きなものにはなりませんでした。

 100円ショップの流行は安さと質の良さの間でバランスをとりやすくし、賢い消費を行うことを目指しやすくしています。

 一方で、景気の低迷にもかかわらず、ブランド品の需要は増加しています。高価なブランド品には相応の価値があると考えて購入することも賢い消費としてとらえられるようになっています。

 景気の悪化という消費にとってはマイナスの要素が強い時代ではあったものの、賢い消費という新しいスタイルを生み出し、新しい消費社会のスタイルが生み出されました。

現在の消費社会を資本主義の完成形ではなく、歴史の一部としてみることが重要です。

バブル崩壊後の日本のように、消費社会にマイナスと思われる要因下でも新しい消費社会の形が生まれることはあります。

インターネットの普及は消費社会をどう変えたのか

 100円ショップなど安価で高品質な商品が充実してくると、機能性があり役立つ商品は代わりに商品を手に入れることも容易になってきます。

 また、インターネットの普及で情報があふれたことで、賢い消費を行うことを容易にしてしまいました。

 このような状況は、賢い買い物やモノを持っている数ではなく、自分だけにかかわる品質にこだわったり、愛着のあるものを持とうというスタイルを生み出していきます。

 このスタイルはミニマリストやこんまりによる片付けメソッドの流行などの発達という新しい消費社会文化を生み出しました。

 消費社会は短期的な経済停滞をしなやかに乗り越え、新しい技術で新たなスタイルを生み出すことで存続してきました。

インターネットの普及で、機能性に軸を置いた賢い消費で差をつけることは困難になり、自分にとって愛着のあるものを持とうというスタイルが生まれています。

愛着のあるものを持ちたいという思考は住宅にどのような変化を与えたのか

 消費に賢さを競う側面だけでなく、モノを活用し、自分の快楽や満足を高めるために利用されるようになってきたことでは、安価なものだけでなく、住居のような高価な買い物でも同じようにみられるようになっています。

 超高層マンションの流行は規制緩和や資産性などからも注目されていましたが、流行の根底にあるのは多くの人が高層マンションにひかれたことにあります。

 それまで都市での生活で、満足な住居を手に入れるのはかなりの富裕層でなければ難しいことでしたが、高層マンションの乱立で手に入る可能性が出てきたことで多くの人が高層マンションを求めるようになりました。

 高層マンションの他者の干渉を受けないというコンセプトが多くの人の心をつかみ、新たな消費スタイルを生み出すこととなっています。

高層マンションの普及は都心でも快適な暮らしをすることのハードルを下げたことで、多くの人の心をつかみました。

消費は人々にとってどんな存在なのか

 消費は現在、以下のような方法で無数の人々に繰り返されています。

・他社と競い合うコミュニケーションのゲームとして
・私的な快楽や幸福を終わりなく追及する実践として

 単純な商品だけでなく、教育や介護など商品がになりにくい分野においても、消費社会は広がっています。

 そのため、消費は生活を潤すだけでなく、人が自由に生きていくために必要なものにもなっています。

消費社会で扱われるものの範囲が広くなることで、自由に生きていくために必要なものへと変化しています。

消費社会の問題点は何か

 安易な消費社会の否定はすべきではありませんが、消費社会にも多くの問題点がみられています。

 格差の発生は自由に生きるために、必要な消費を行うことのできない人増加させてしまう側面があります。

 国家による福祉の拡充による格差是正は一定の効果を上げていますが、国家による介入は国家の権力を増加させ、恣意的な運用によって、消費の多様性を低下させたり、施政者に近いものが有利になるという欠点もあります。

福祉による格差是正だけでは、健全な消費社会を実現することは難しい面があります。

 消費社会が環境破壊特に温暖化を招いていることも大きな問題です。温暖化対策として様々な検討が行われていますが、新技術やクリーンエネルギーの導入や炭素税のような規制の強化で消費社会の持つ問題を解決する目途は全く立っていないといっても言えます。

消費社会は消費できない人を増加させる格差の問題と温暖化などの環境破壊の問題を抱えています。

格差を国家による福祉で改善することは可能なのか

 安易な消費社会否定は避けるべきですが、既存の枠組みで消費社会の問題点である格差と環境破壊を解決することは難しくなっています。

 国家による再分配や規制にも一定の効果はありますが、効果が限定的です。また、国家の過剰な権力集中は恣意性を高め、消費社会のもつ多様性や自由を損なう可能性もあります。

 そこで注目されているのが、条件なく、社会の構成員に定額給付をおこなうベーシックインカムの制度です。

国家による改善にも効果はありますが、限定的であること、国家の恣意性を高め、多様性や自由を損なってしまう可能性があります。

そこで注目されているのがベーシックインカムです。

ベーシッインカムクにはどのような利点があるのか

 ベーシックインカムには以下のような効果が期待されています。

・格差を減少させ、低所得者や子供、主婦などの消費の不公平感を小さくする
・労働者の負担を軽減したり、消費と労働を切り離す
・気候変動の被害を受けやすい貧困層の救済
・一定の給付が保証されることの余裕から、環境保護運動への参加の活発化
・国家への権力集中を防ぎ、消費の多様性や自由を維持できる

 ベーシックインカムによって消費社会の問題点がすべて解決するわけではありませんが、消費社会が自由と多様性を維持したまま、格差と気候変動という問題を解決できるという大きな可能性を持っています。

ベーシックインカムは自由と多様性を維持したまま、格差や気候変動などの問題を解決できる可能性をもっています。

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