水道を救え 加藤崇 要約

本の概要

日本の水道管の約25%は40年以上前に整備されたもので、本来交換されるべきものも多くありますが、交換は全く追いつていません。

水道管の寿命は使用環境の大きく作用されるため、40年以上持つ水道管も多く、すべてを交換することはコストの面からも非効率です。

筆者の経営するフラクタはこれまで、不可能だった地中の水道管の寿命をAIで予測することを可能にしています。

経営者の目から見た水道事業の現状と未来、民営化に対する考えなどを知ることができる本になっています

この本がおすすめの人

・水道事業の未来を知りたい人

・水道事業の民営化に不安を持っている人

本の要約

要約1

日本の地中には地球約17周分の水道管が埋められていますが、耐用年数である40年を過ぎたものが多く含まれますが、交換スピードは全く追いついていません。

また、水道管の寿命は環境に大きく左右されるため、年数だけで交換時期を決めることがそもそも非効率です。

水道事業者の減少や収益悪化もあり、すべての水道管を交換する人手もお金も十分ではありません。

要約2

効率化のためには、水道管の寿命を正確に把握できれば良いことになります。これまでは地中の水道管を掘って状態を確認することしかできませんでしたが、筆者の経営するフラクタはAIによるシミュレーションで水道管の寿命を把握する技術を開発し、国内外の企業と実証に取り組んでいます。

要約3

水道事業は人口減少などで収益が減少しています。民営化の声も上がっていますが、民営化したイギリスではサービスの質低下や料金の値上げなどから再度の国営化を望む声も挙がっています。

要約4

公共事業の民営化では、事業の価値を正確に把握していないと、海外のファンドなどに安値で買われてしまう可能性もあります。

水道事業の資産の大部分は水道管などの設備であるため、それらの寿命を見極め価値を把握しておくことがとても重要になっていきます。

テクノロジーは情報の非対称性を緩め、公正な取引を行うことを可能にすることも少なくありません。

なぜ、いま水道が問題なのか

 いま、日本の地中には地球約17周分の水道管が埋められています。

 水道管の法定耐用年数は40年とされていますが、日本の水道管の約25%は40年以上前に整備されたもので本来交換されるべきものも多く含んでいます。

 しかし、最大の問題は古い水道管がそのまま使用されていることではなく、寿命が環境によって大きく異なるにもかかわらず、交換されるべきかが期限でしか考えられていないことです。

 期限の過ぎた水道管をすべて交換できれば良いのですが、その人手もお金も十分ではありません。

多くの水道管の耐用年数が過ぎていますが、すべてを交換する人手やお金がないことで漏水などの事故の増加が懸念されています。

どうすれば効率的に水道管を管理できるのか

 寿命の近づいた水道管のみを交換すればよいという考えもありましたが、地中にある水道管の寿命を正確に把握することは技術、コスト的に難しいことでした。

 しかし、筆者の経営するフラクタはAIを使ったシミュレーションで交換すべき水道管と使い続けるべき水道管を判別することを可能にしています。

 実際に多くの水道事業者とタッグを組み、水道という欠かせないインフラの持つ問題の解決に取り組んでいます。

寿命に近い水道管のみを交換できれば、効率が大きく向上します。

これまでは地中にある水道管の寿命を把握する方法はありませんでしたが、筆者の経営するフラクタはAIを利用し、交換すべき水道管を判別しています。

今後の水道はどうなってしまうのか

 日本では水道をひねれば、水ができるのは当たり前のことですが、人口減少と節水による水道事業者の減収でインフラ整備が行われなくなれば、漏水や破損事故の増加や水道網の消滅なども考えられる状態です。

 日本の水道管の更新率は0.667%でしかなく、すべての水道管を更新するには130年以上の年月が必要となってしまいます。

 また、日本は地震による被害も多いにもかかわらず、耐震適合性のある水道管の割合が低く、交換が進んでいません。

 限られた水道管しか交換できない状況では、水道管の寿命を見極めることが非常に重要になります。

人口減や水道事業者の減収など、漏水などの事故増加や水道網の消滅も考えられます。

限られた水道管しか交換できないため、水道管の寿命を見極めることがとても重要です。

フラクタはどのように水道管の寿命を見極めているのか

 フラクタはアナログであった水道事業にDXをもたらす存在です。

 水道管は腐食によって老朽化しますが、腐食の進み具合は地中の環境や使用法によって大きく変化します。

 フラクタはAIを活用し、地中環境や使用法から水道管の寿命を予測するソフトウェアを開発し、効率の良い水道管交換を可能にしています。

 アメリカでは向こう30年で110兆円もの資金が水道管交換に使用さえると言われています。寿命が迫った水道管のみを交換できれば漏水事故を3~4割、予算を40%減らすことができる可能性もあります。

地中の環境や使用法から寿命を予測しています。寿命が近い水道管だけを交換できれば、予算を40%も減少できる可能性もあります。

海外の水道事業はどのような状況か

 日本の水道事業者は特に地方で採算が取れていないところも多く、今後水道管を更新できない自治体が増え、水が出ることが当たり前でなくなる可能性もあります。

 水道事業者のコストの半分は水道管と言われており、更新の制度を上げ、効率的にすることには大きな意味があります。

 アメリカは日本以上に深刻で、漏水事故が日常茶飯事になっています。日本よりも水道管の建設ピークが早かったことや壊れてから修理するという考えで事故が多くなっています。

 事業者の数が非常に多く、全貌を把握できている組織がないことも混乱の原因となっています。

 イギリスの水道管建設の歴史も古く、問題を多く抱えています。イギリスの水道局は民営化されており、18社の水道事業者がありますがその状況は惨憺たる状況です。

 民営化によって国家財政へ影響は与えなくなりましたが、投資ファンドが買い取り、水道料金を上げたり、サービスを減らし、利益を上げ、株価が上がったところで売却する動きなどもあり、国民から再度の国営化を望む声も出ている状態です。

アメリカは水道事業者の数が非常に多く、全体の把握ができていない、作られた水道管が日本よりも古いなどの理由ですでに漏水事故が多発しています。

イギリスでは民営化されていますが、サービスの質が悪い、価格の上昇が大きいなど国営化を望む声も出ています。

日本でのフラクタの状況は

 日本でも地方水道局がフラクタを利用し、水道管のリスク評価をし始めています。

 危険地域とAIが判断した地域で漏水が起こるなど、フラクタによる予測が正しい事例も出ています。

 地方の水道局がフラクタを利用し、現状確認を行っており、今後は事故の減少やコストの削減など目に見える形での改善がみられる可能性も十分にあります。

地方水道局がフラクタを利用し、水道管のリスク評価を始めています。

日本の水道事業はどうなっていくのか

 日本でも水道事業者の利益が少なくなり、水道管の維持管理ができなくなるなどの理由で民営化が話題になっています。

 しかし、イギリスの例のように国民から再公営化の要望が出るなど、民営化が正しいとは限りません。

 水道事業のコストの大半は設備の維持管理などで民間になってからといって、大幅な削減ができるものではありません。

 一方で、民間のほうが水道料金の値上げをしやすいという面はあります。イギリスでは水道料金を値上げし、利益が上げることで株価を上げ、売り抜けるようなファンドの存在もあり、民営化が水道事業の効率化や持続性向上につながっていない面もあります。

民営化の声もありますが、コスト削減に大きな効果が期待できず、民営化が正しいとがかぎりません。

民営化するとした場合に重要なことは何か

 公共事業の民営化では、その事業がどれくらいの価値を持っているのかを理解していることが非常に重要です。

 1998年に破綻した長銀は日本の他の金融機関から買い手がつかなかったため、海外のファンドに買われています。

 日本の金融機関が長銀を変えなかったのは、自社の余裕がないことに加え、長銀の価値を正しく判断できなかったことにあります。

 長く大蔵省に守られ、本質的な競争をすることなく、利益を得てきたため、事業の価値を見極めることができませんでした。

 海外のファンドは価値を見極めるノウハウを持っていたことで、長銀を安価で買い、巨額の利益を得ることができました。

公共事業の民営化時には事業の正確な価値を把握する必要があります。長銀の破綻時、日本の金融機関は長銀の持つ資産を正確に把握できなかったため、海外のファンドに安く買われてしまいました。

水道事業の民営化で重要なことは何か

 水道事業の民営化を考える際にも、事業者の持っている価値を正確に把握していないと長銀のように安価で海外のファンドに買われてしまう可能性があります。

 水道事業の資産の大部分は水道管の持つ価値となるため、水道管の状態や耐久年数を把握することは非常に重要なことです。

 買い手側が売り手側の知らない有利な情報を知っていれば、買い手はその情報を隠し、安価で買うことが可能になります。

 テクノロジーの発達は情報の非対称性を減少させ、多くの人が売買に必要な情報を得ることができるようになります。

 フラクタのよって水道管の価値を見出すことができるようになれば、水道事業者、それを狙うファンドも消費者との情報の非対称性を改善することができます。

 日本は水に恵まれていることもあり、水道のことが話題になることは多くありません。しかし水のインフラは危機的な状況であり、変えていく必要があることが必要になっています。

水道事業の民営化でも、正確に資産を把握できていなければ、マネーゲームの道具になってしまいます。

水道事業の資産の大部分は水道管であるため、正確な水道管の寿命から資産を把握しておくことはとても重要です。

テクノロジーは情報の非対称性を減少させ、公正な取引を可能にする力を持っています。

 

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