科学的な適職 鈴木裕 クロスメディア 要約

視野狭窄がキャリア選び失敗の原因

 キャリア選びの失敗は世界中の多くの人の後悔のもとになっている。離職動機でも思っていた仕事と内容が違うがトップになっており、多くの人が適職を選ぶことができていない。

 調査によると失敗の7割が視野狭窄によって引き起こされている。視野狭窄とは物事の一面にしか注目できなくなり、その他の可能性を考えられなくなる状態。

 視野狭窄はどんな優秀な人でも起こり、もっと良い可能性があるのにその可能性を選ぶことができない。もっと徹底的に考え、視野を広くすることで失敗の確率を減らすことができる。

 視野狭窄が起こるのは脳が職業選択のような大量の選択肢がある状態に適応していないため。そのような脳の特徴を知ることで意思決定の精度を上げることができる。

意思決定の精度を高め、幸福な仕事をするにはAWAKEの手順が重要

・世間で言われるキャリアアドバイスの真偽を検討し、幻想から覚める(Accesss the truth)
・キャリア選択を誤る原因を特定、未来を広げる(Widen your future)
・不幸になる職場の条件を知ることで、悪を除く(Avoid evill)
・脳の特徴、ゆがみ(バイアス)を知る(Keep human bias out)
・やりがいを再構築する(Engage in your work)

の手順の頭文字をとったAWAKEを行うことで幸福な仕事への目覚めができるようにするもの。

多くの人が重視する仕事の要素は幸福度と関係がない

 仕事選びで誰もがはまりがちなミスを知ることで失敗をふせぐことができる。仕事選びで一般的に重要視される仕事の要素のなかでも、多くの研究で幸福度と関係ないとされているものが7つある。

1.好きを仕事にする
 好きを仕事にしても幸福度が高いのは最初だけ。好きなぶん、実際の仕事とのギャップを感じやすい。
また、好きを仕事にするほうがスキルが上がりにくい研究結果もある。

 ある仕事に情熱を注げるかは、注いだリソースの量で決まることもわかっており、
どこかに適職が待っているのではなく、やっていくうちに適職になっていく可能性が高い。

2.給料の多さで選ぶ
 給料の多さと仕事の満足度はほぼ関係がない。年収が400~500万を超えると
それ以上収入が上がっても、幸福度はかなり上昇しにくくなるうえ、その幸福度は長い期間続くことはない。

 年収アップがもたらす幸福よりもパートナーとの結婚や健康レベルの上昇、のほうがはるかに多い(前者は約7倍、後者は65倍)

3.業界や職種で選ぶ
 有望な業界を目指す場合も多いが、有望な業界の予想は専門家でも不可能。
また、自分の興味のある分野を目指すことも多いが、自分の興味の変化を予測することもできない。

4.仕事の楽さで選ぶ
 ストレスが体に悪いが、楽すぎる仕事も幸福度を下げる。適度なストレスは仕事の満足度を高め、モチベーションを上げるだけでなく、健康状態を
良くする効果もある。

5.性格テスト選ぶ
 性格テストによって自分のタイプを知る方法もあるが、性格テストの予測性が
照明されたことはない。

6.直感で選ぶ
 直感が優れている場面は確かにあるが、その状況は限定的。その条件は、ルールが決まっていて、何度も練習するチャンスがあり、フィードバックがすぐに得られるというもの。
 仕事探しはこれらの条件に当てはまらず、直感で選ぶと失敗しやすい。人生の多くの選択で直感よりも論理的な選択をしたほうが、成功しやすい研究結果もある。

7.適性に合った仕事を求める
 インターンシップや実際の仕事に似た作業を行うワークサンプルテストでも入社後の成績とは結びつきは小さい。
 パフォーマンスを左右する変数は非常に多いため、簡単に判断することができない。自分の強みを知り職業選択することもあるが、強みと仕事の満足度の相関も小さい。

視野を広げることが適職選びにつながる

仕事を選ぶ際にある仕事を良いと思うと、視野が狭くなり他の選択肢に目が向かなくなる。

 仕事の幸福度を決める要素の7つを知ることで、選んだ選択が幸福度を高められるかを冷静に判断することができ、視野を広くすることができる。

1.自由
 裁量権があり、自由度の高い職場ほど仕事への満足度は上がる。自由度は最も満足度に直結し自由度の低い職場は喫煙よりも健康に悪い。
 働く場所、時間、自分でタスクを設定できることなどで職業選択を行うと良い。

2.達成
 小さな達成が仕事のモチベーションを大きく高めることがわかっている。フィードバックを直に、素早く受けることができるとモチベーションを高めやすい。

3.焦点
 性格テストはあてにならないが。攻撃型と防御型に分ける考えは、仕事のパフォーマンスアップに利用できる。
・攻撃型は目標を達成して得られる利益に焦点を当て、競争に勝つのが好き              ・防御型は目標を責任としてとらえ、競争に負けないように働く
 攻撃型は動きの速く、柔軟性の求められる業界、防御型は実務能力を要求され、慎重さを評価
される業界が望ましい自分の攻撃型と防御型の傾向を知っておくとよい。

4.明確
 評価、タスク、役割が明確なほど幸福度は高い。明確なビジョンを持ち、その実現に必要なシステム化を行っているか、評価システムは明確かなどを知ることが適職かの判断になる。

5.多様
 人間は面白い仕事でも、長く続けると飽きてしまう。工程の川下から川上まで関与できるとモチベーションが上がりやすい。

6.仲間
 社内に友人がいると幸福度は大きく向上する。人間関係の悪い職場は仕事内容に関わらず、悪影響を与える。組織内に自分に似た人がどれくらいいるかで判断すると良い。

7.貢献
 自分の働きが他人にどう貢献するかわかりやすい場合、仕事の満足度は高い。他者への貢献は自尊心。親密度、自律性の3つの欲求が満たさせるため、満足度が高くなる。エンドユーザーと直接触れる職業ほど貢献しているかは分かりやすい。

 検討した職業で7つの項目がどれくらい当てはまるか、より当てはまる職業がないか考えることで、ただ漠然と視野を広げると思うよりも、視野を広げやすい。

マイナス要素をもつ仕事は幸福度を高める要素があっても避けるべき

 ネガティブはポジティブよりはるかに大きな影響を持つ。そのため、幸福度を高める7つの項目を持っていても、マイナス要素があるとメリットがなくなる可能性もあり、避けるべき職業、職場となる。

1.時間の乱れ
 シフトワーク、長時間通勤、労働は健康、幸福度に大きなマイナス。労働時間は週40時間を超えると、身体が壊れはじめ、55時間を超えると心身が崩壊し始める。
 プライベートで仕事のことを考えただけでストレスは上昇するため、休暇中の仕事が当たり前の企業は避けるべき。

2.職務の乱れ
 雇用が不安定、サポートがない、仕事のコントロールが出来ない、組織内に不満が多いなどもストレスの大きな要因となる。

 心理的な安心はチームの生産性に対し、リーダーの性質、メンバーの能力などに比べ大きな影響を持つ。
 
 職探しでネガティブな面を聞く人は少ないが非常に重要な要素。

 幸福度に関係のない要素、関係のある要素、悪影響を与える要素を知ることでより良い職業選択をすることができる。それらの要素を数値化し、比較することでより客観的に職業選択を行うことができる。

脳にはバグ=バイアスがあることを知ることが意思決定の精度を高める方法

 我々の脳はバグを持っており、それを知らずに意思決定をすると失敗することが多い。脳のバグの影響を減らすためには意思決定のプロトコル(手順)を決めて置くことが重要。意思決定のプロトコルを決めておくことは、精密なデータ分析の6倍利益につながるというデータもある。

 バイアスには様々な種類があり、どんな人も影響を受けるが、多くの人は自分は大丈夫とおもってしまう。また、バイアスは遺伝子レベルで埋め込まれたものなので、どんなに合理的な思考力をもっていても意思決定の精度にはゆがみが生じる。

 そのため、意思決定時に特定の手順を決めておき、今行おうとしている意思決定がバイアスの影響を受けていないかを確認することが有効。

 今の決定による10分後/10か月後/10年後の姿をイメージするなど、未来をイメージすることで判断力は上がることが知られている。

 また、あえて失敗した時をイメージし、その原因と意思決定の過程、対策を考える自分の悩みを第3者の視点から書いたり、友人からの評価を聞きことで客観視することも有効となる。

 今の仕事に大きな不満がないが、漠然とした不安がある場合は仕事の見方を変えることで、仕事に別の面からやりがいを感じることができる可能性も有る。

 本書の方法を実践し、意思決定の精度を高めても失敗することはある。自分のキャリアについては事前に細かく決めずに、大きな方向性だけを定めておき、柔軟に対応できるようにするとベスト。

 節目の段階ではAwakeによる精度を高めてた意思決定を行い、それ以外の時は日々のタスクに集中するのがベスト。

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