ストレス脳 アンデシュ・ハンセン 要約

本の内容

 現代のわれわれの生活は物資的には不自由さがないにも関わらず、多くの人が精神的な不調を訴えている。

 我々の身体、特に脳は狩猟採集民の時代から大きく変化しておらず、現代と狩猟採集時代とのギャップが脳に大きなストレスを与え、精神的な不調につながっている。

 脳がどのように働くことでこれらのギャップが発生するか知ることで、どのように対処すべきか考えたり、アドバイスを聞き入れやすくなるため、どのように脳がストレスを感じることを知ることは有意義なこと。

 本書では脳がストレスを受ける要因と対処について知ることができる。

この本がおすすめの人

・脳の不調を感じている人

・精神的な不調に原因とどうすればよいか知りたい人

・脳がストレスを受ける仕組みを知りたい人

脳のストレス状態を改善する方法は何か

 多くの医学的な発展が続いているが、うつ病の人は大きく減少しておらず医学的な発見が必ずしも健康に結びつくわけではない。

 大きな効果があるのは運動。狩猟採集には歩くことが欠かせなかったため、体を動かすことは脳にプラスに働くようになっている。

 また家族などとの交流も効果が大きいなど古臭くローテクな方法の効果はとても大きい。

医学的な発展は続いているが、うつ病の人は減少していない。精神的な不調には運動や家族との交流などローテクな方法が効果的。

なぜ、多くの人が精神的な不調を抱えているのか?

物質的な発達でこれほど快適に暮らせるようになってにも関わらず、多くの人は精神的な不調を訴えているのはなぜなのか。

本書は生物学的な見地から人間の精神状態を理解し,多くの人が精神的な不調を抱えているのかを紹介している。

脳がどのように機能し,なぜそのように機能するかを知ることで心を健康に保つために何を優先すべきかをしることができる。

物質的な快適さだけでは精神的な不調を防ぐことはできない。脳の機能を知ることが、心を健康に保つために重要。

精神的な不調の原因はなにか

 私たちの身体と脳は狩猟採集民時代と大きく変化しておらず,狩猟採集民の生活に生き延び,適応してきた。

狩猟採集民の生活が過酷であったことは間違いない。多くの子供が感染症で死に,飢餓,動物による攻撃,事故などの脅威に囲まれて生活をしていた。

これらの脅威は現代では,大きく改善しているが気分が落ち込んだり不安を覚えることがなくなったわけではない。これは感謝が足りないなどの話ではなく,脅威に囲まれた状況のに適応した結果,そもそも幸せでいるようにできていないことが大きな原因。

人類の適応した狩猟採集時代で有用だった機能が現代ではマイナスになることもある。環境のギャップが精神的な不調の原因。

感情はなぜ存在するのか

 扁桃体や扁桃核は脳の部分であり,感情を作り出す機能を持っている。危機に素早く反応できるように,脳の他の部分より早く反応するようになっている。

脳は感情を使ってその人を行動させ,生き延びて遺伝子を残せるようにしている。

食料を集めつためにはある程度のリスクを取る必要がある。脅威に囲まれた状況では,危険をおかしすぎても,リスクを冒さなすぎても生き延びることはできない。

自分の感情によって正しく行動をした先祖だけが,生き延び遺伝子を残すことができたため,我々にも感情が伝わっている。

幸福感情が長続きしないことも生き延びるための仕組み。一度食べ物を手に入れて長い間満足してしまっては,新しい食べ物を探すモチベーションが湧いてこないため飢えてしまう。それを避けるために幸福感は短時間で消え去り,再度行動を起こすように促している。

脳は感情を使って人を行動させている、正しい感情で正しい行動をした個体が生き延びて遺伝子を残したため、感情が我々にも伝わった。

なぜ不安を感じるのか

扁桃体は周囲の危機を察知し,体に働きかける仕組みを持っている。扁桃体は反応は早いが精度が良いわけではない。 

茂みがカサカサとなっても,大半は風によるものだが,ライオンである可能性も0ではない。間違えてもロスは少ないが,もしライオンであれば大きなロスになってしまう。そのため扁桃体は茂みが鳴った時に体にパニックを起こし,そこから離れるように働く。

 不安を感じることはおかしいことではなく,自然の防御メカニズムであり,脳が正常に機能している証拠。

不安を抱えやすい人はまず,それが脳の正常な反応であると理解することで心が落ち着く場合も多い。

狩猟採集時代には過度に不安を感じることが、生き延びるために役に立ったため、我々も過度に不安を感じる。

不安を感じやすい人は、脳が正常に働いていると考えるとよい。

うつにはどのような作用があるのか

うつは女性の4人に1人,男性でも7人に1人がなる精神障害。うつの症状は幅広いが気分がおちこみ,普段なら好きなことも無意味に感じるようになる状態が長く続く。

うつの原因をセロトニン,ドーパミンなどの脳内伝達物質の不足とすることもあるが,それ以外の要因特にストレスも大きい。

狩猟採集の時代,多くの人は子供の時に感染症で死ぬことが多かったため,そのため感染症を防ぐ免疫機能が進化してきた。

免疫機能はエネルギーの消費が多いため,常に全力で機能させておくことはできない。感染リスクが高まり,免疫系を働かせるべき状況になるとストレスが合図となり免疫系が活発化する。

免疫機能は体内の反応だけでなく、細菌やウイルスを体内に入れないような仕組みも持っている。腐った食べ物の匂いを嫌悪することで感染を防ぐことも免疫の一部とされる。

同じように感染リスクの高まりを感じると、気分を落ち込ませ活動量を減らし、精神的に立ち止まらせようとする。この状態がうつと呼ばれる状態。

感染症などのリスクがある際には活動量を減らしたほうが良いことも多い。脳はうつ状態を利用し、精神的に立ち止まらせ、感染リスクを回避する。

うつもまた脳の正常な機能である。

不安やうつは脳の正常な機能だが、なぜ現代では精神的な不調の原因となるのか

炎症は免疫反応であり、歴史的には一活性のものだったが、現代のライフスタイルは長期的に炎症を起こすことも多い。炎症は脳に危険にさらされていることを伝える役割を持つため、徐々に脳は気分を落ち込ませ、炎症を起こす行為から離れようとさせる。

長期的なストレス、肥満などは常に炎症を起こすこととになるため、長期的に気分が落ち込み、うつの症状が長く続くようになってしまう。

うつはさまざまな感染症から身を守るための防御反応の一つだが、現代のライフスタイルが暴発させてしまうこともある。うつの全ての原因が炎症であるわけではないが、生理学的には肺炎や糖尿病と大きく変わるものではない。

自分の脳や精神状態が免疫に左右されることを知ることで、対策やアドバイスに耳を傾けやすくなる。

狩猟採集時代の脳のストレスは一過性なものが多かったが、現代は長期的なストレスが多い。

長期的なストレスは体内の炎症を持続させ、徐々に精神的な不調の原因となってしまう。

孤独がなぜ深刻な健康被害をもたらすのか

3人に1人がなり、タバコ以上に深刻な健康被害をもたらすのが孤独。

孤独はうつのリスクを高め、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めるなど脳にも身体にも悪影響を与える。

歴史的に人類は生き延びるために協力を必要としてきたため、孤独は死を意味した。そのため孤独を感じると脳は危機と捉え長期的なストレス状態を維持してしまい、長期化すると健康にも害をもたらしてしまう。

人類は生き延びるために協力する必要があったため、脳は孤独を危機ととらえ、長期的なストレス状態と感じるようになる。

SNSで孤独を解消できるのか

SNSのように常時多数と繋がっていることで孤独を解消することは難しい。

セロトニンは自分の組織内でのヒエラルキーの解釈に影響し、高いほど自分のヒエラルキーを高く感じる。セロトニンは情動にも大きな影響をもつため、精神状態とヒエラルキーのどこにいるかの実感は密接に関係している。

SNSでは常に自分よりもヒエラルキーが上の人を見ることができるため、近年、気分が落ち込みやすい人が増えている原因となっている可能性がある。

SNSで多数とつながっても孤独を解消できないだけでなく、ヒエラルキーが上の人を見る機会を増やしてしまい、気分を落ち込ませる容認になる。

精神的な不調になにが最も効果があるのか

うつの予防に大きな効果があるのが運動。

ストレスホルモンとして知られるコルチゾールの放出にブレーキをかけ、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどのレベルを上げ、運動によるエネルギー消費が免疫系のエネルギーを奪うことで炎症が減少するなどの効果がある。

我々の祖先は1日に1万5000〜8000歩ほど歩いていたが、現在は大きく減少し、5000〜6000歩とも言われている。どのような運動でもうつの予防、不安の減少につながるのだが、運動不足は毎年500万人の病気に原因となっている。

運動には大きな効果があるが、祖先の生活では食べ物は不足しており、食べすぎたり運動不足を心配する必要がなかった。エネルギーを節約するために怠惰であり、運動を積極的にするようにはなっていない。

脳と体が密接に関係していることは徐々に明らかになってきた。免疫系との連携など身体状態の良さは脳にも大きく影響を与えている。

精神的な不調に最も効果があるのは運動。

狩猟採集時代と比べ運動量が大きく減少している。身体状態の良さが脳の働きに大きな影響を与えていることが明らかになっている。

精神的な不調とどのように向き合うべきか

うつのなど精神状態が悪い人の数が増えているというデータもあるが、精神疾患は明確な数値化できるものではなく、精神科を受診する人の増加の影響も受けるため、異なる時代での比較を行うことが難しい。

最も質の高い研究では、あまり大きな変化はないとしているが、注目すべきはうつの人が減っていないこと。セラピーを受ける人は増え、医療は発展し、経済的に発展も進んでいるが、精神的に元気になっていない。 

現代の狩猟採集民は医療機関も基本的なインフラも存在しないが、並外れて体も精神も状態がよい。医学的な発見が続いても必ずしも健康に結びつくわけではない。古臭くローテクだが散歩や家族との交流などの効果は非常に大きい。

現在に生きる狩猟採集民は並外れて体も精神の状態も良い。また医学的な発展はすさまじいが、うつの人は減っていない。

医学的な対処ではなく、運動や家族との交流などの効果の大きさを改めて見直すとよい。

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