超遺伝子 スーパージーン 藤原晴彦 要約

本の概要

スーパージーンとは今、世界中の遺伝学者や進化生物学者の間で話題になっていることばです。

スーパー=超、ジーン=遺伝子であり、超遺伝子とも訳されるもので、これまでの考えられていた遺伝子以上の機能を持っている遺伝子の領域のことです。

生物の機能は遺伝子の持つ塩基配列によってきまり、その塩基配列は多様性を確保するため変化していきました。これらの変化が生存に有利であればその変化は広く広がっていきます。

この過程で環境に適応してきた結果が進化と呼ばれるものです。

一方で、塩基配列が変化せず、常に同じ機能を発揮する遺伝子領域があることがわかっています。このような遺伝子のことをスーパージーンと呼びます。

変化を起こさない領域がなぜ、スーパー=超、ジーン=遺伝子と呼ばれるのか、なぜ変化しないのか、どのようなスーパージーンがあるのかなどを知ることができる本になっています。

この本や記事で知ることができること

・遺伝子研究の先端や歴史

・スーパージーンとは何か

本の要約

要約1

スーパージーンとは今、世界中の遺伝学者や進化生物学者の間で話題になっていることばです。

スーパー=超、ジーン=遺伝子であり、超遺伝子とも訳されるもので、これまでの考えられていた遺伝子以上の機能を持っている遺伝子の領域のことです。

生物の形質はDNAによって制御されています。DNAの中の4つの塩基配列をもとに、たんぱく質が合成され、たんぱく質の機能で生物の形質がどう発現するか決まります。

遺伝子の配列は突然変異などで、変化することがあり、合成されるたんぱく質が変わり、生物の形質は変化します。

この変化が、生存に有利であれば、その変化は集団内に広がっていきます。変異によって同じ種でも多様性のある、形質の違うものが生まれることとなります。

要約2

蝶の中には、他の種に姿を似せる擬態をおこなうものがいます。中でも毒のある蝶に擬態することで、捕食されにくくなる擬態を行う蝶の模様はどの世代でも、同じ模様で変化がありません。

蝶の模様を決めているのも遺伝子配列ですが、もし、擬態にかかわる遺伝子が変異して、模様が変わってしまうと、うまく擬態することができなくなってしまいます。

そのため、擬態に関連している遺伝子の変化をなくすことで、変化なくどの世代でも同じ模様になることができます。

このように通常、遺伝子で見られる変異が起きずに、複雑な現象をコントロールしている遺伝子のことをスーパージーンと呼んでいます。

要約3

複雑な現象をコントロールするには、複数の遺伝子が関わっています。

複数の遺伝子が離れた場所にあると突然変異が起こる可能性が増えてしまいます。

そのため、複数の遺伝子を同じ染色体上に存在させることで、突然変異による中間型の発生をしにくくしています。

ただし、遺伝子は多様性を確保するために、配列が入れ替わらせることがあり、組換えがあると同一染色体上にある遺伝子でも組換えが起こり、配列が変化します。

組み換えはある程度類似した配列間で起こることが知られているため、配列を逆転することで配列間の組み換えを起こりにくくしています。

このような工夫で、スーパージーンは複雑な現象をコントロールしつつ、遺伝子の変化を防ぐことを可能にしています。

要約4

スーパージーンの特徴は以下の3つになります。

・複雑な現象をコントロールしている

・同一染色体上に遺伝子が存在する

・逆位を持ち、組換えを起こしにくい

遺伝子配列の特定が容易になったことで、スーパージーンの研究も大きく進んでいます。逆位のある箇所を見つけ、その遺伝子部の機能を調べるという手順を踏むことも可能になっています。

人間にもスーパージーンの候補となる遺伝子がいくつか見つかっています。また、生物の性を決める性染色体はスーパージーンの3つの特徴を持っており、スーパージーンの可能性があります。

わずかな変化が生存に不利になるため、変化しないスーパージーンは生存にとって重要な役割をもっているといえます。

多くの不思議な現象がスーパージーンによるものと解っていますが、まだまだ分からないことも多く、今後の進化学、遺伝学の重要な概念の一つになっていくことが期待されます。

スーパージーンとは何か

 スーパージーンは最近世界中の遺伝学者や進化生物学者の間で話題になっている言葉です。

 その概念は100年ほど前から示されてきましたが、近年、その存在が確かめることができるようになりました。

 アリのような単純な昆虫がなぜ、社会性を持ち、複雑なことをできるのか、同じ種でもその行動や形に大きな違いがみられる生物がなぜ、存在するなど多くの不思議なことがあります。

 スーパージーンは生物に多く見られる不思議な現象を制御していることが明らかになってきています。

スーパージーンは世界中の遺伝学や生物学者の間で話題になっている言葉です。

生物の様々な不思議な現象を制御していることが明らかになっています。

擬態する蝶の不思議な現象は何か

 進化は自然選択で起こることが知られています。

 種の中で突然変異が起き、その中に他よりも生存や子孫を残す確率が高くなれば、その有利な形質をもった個体の子孫は増え、その形質が広がっていくことが進化と考えられています。

 また、有性生殖では両親の形質が混ざり合うことで次世代に伝わっていくことも一般的なことです。

 蝶の中には、他の種に姿を似せる擬態をおこなうものがいます。

 中でも毒のある蝶に擬態することで、捕食されにくくなる擬態を行うナガサキアゲハやシロオビアゲハなども存在しています。

 これらの蝶では、雌のみ擬態がする修正が見られますが、その形態は擬態型雌、非擬態型雌、オスに分けられます。

 しかし、それぞれの模様はどの世代でもいつも同じになっており、中間型が生まれていません。

ある種の中で起きた突然変異が、生存や子孫を残すことに有利に働けば、その性質は広がっていきます。これを進化と呼んでします。

また有性生殖では両親の形質が混ざり合い次世代に伝わっていきます。

蝶の中には捕食さえにくくするために、毒のある蝶に擬態するものがいますが、擬態する蝶の子孫は突然変異や中間型を生み出すことなく、常に同じ模様になっています。

生物の形質はどのように決まるのか

 生物の形質はDNAによって制御されていることが分かっています。

 DNAはアデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」、シトシン「C」という4つの塩基が大量に並んだ情報分子でです。

 この4つの塩基の配置をもとに翻訳され、アミン酸が連なったタンパク質を生みだすことで生物の様々な機能を発揮しています。

 DNAの配列が異なると、作られるアミノ酸、タンパク質が変わり、発揮する機能は異なるものになります。

 血液型の違いはそれぞれDNAの配列が異なっていたり、DNA部分の遺伝子が壊れていることで発生しています。血液型は一つの遺伝子の働きのみで決まります。

 また、身長の大きさにも遺伝子の影響は大きくかかわっていますが、さまざまな遺伝子の影響を受けるため血液型とは違いやや予測しにくいものになっています。

DNAにはアデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」、シトシン「C」という4つの塩基が大量に並んでおり、この配列をもとに様々な機能を持ったタンパク質が合成されます。

塩基の配列が変化すると、合成されるタンパク質が変わり、形質が変化していきます。

なぜ、擬態する蝶は常に同じ模様で変化しないのか

 遺伝子は稀に突然変異を起こし、その塩基配列を変化させます。その変化が生存に有利であったり、特に関係がなければその変化は集団内に残ったり、広がっていきます。

 この変異によって同じ種内でも形質の大きく違うものが生まれることになります。

 蝶の擬態は非常に複雑な現象であり、複数の遺伝子が関わっています。しかし、擬態にかかわる遺伝子で突然変異が起これば、中間型が生まれてしまい、うまく擬態することができなくなってしまいます。

 突然変異による中間型の発生を防ぐためには、擬態にかかわる複数の遺伝子が同じ染色体にある必要があります。

遺伝子は突然変異によって塩基配列を変化させます。擬態にかかわる遺伝子で突然変異が起これば、中間型が生まれて、擬態がうまくできなくなってしまいます。

擬態のような複雑な現象には複数の遺伝子が関わっていますが、複数の場所に遺伝子が分かれていると突然変異が起きやすくなるため、擬態にかかわる遺伝子を同じ染色体にしておくことで突然変異による中間体の発生を防いでいます。

遺伝子を同じ染色体にする以外に中間体を防ぐ方法はあるのか

 同一の染色体上に遺伝子が固まっていたとしても、遺伝子は組換えを起こすことがあります。

 遺伝子は多様性を確保するために、配列が入れ替わらせることがあり、組換えがあると同一染色体上にある遺伝子でも組換えが起こり、配列が変化してしまう可能性があります。

 組換えを防ぐ機構が逆位と呼ばれるものです。

 遺伝子の組換えは比較的で類似した配列間で起こることが知られています。そのため配列が逆転した構造を持っていると組換えが起きなくなります。

 このように同一染色体上に集まり、逆位によって維持されやすく、複雑な現象を引き起こす遺伝子のことをスーパージーンと呼びます。

遺伝子は組み換えによって入れるを入れかえることでも、多様性を確保しているため、同一染色体上にある遺伝子でも配列が変化することはあります。

遺伝子の組換えは比較的で類似している配列間で発生するため、配列を逆転した逆位構造にしておくことで、組み換えを防ぐことができます。

スーパージーンの研究はどこまで進んでいるのか

 遺伝子配列の特定が簡便になったことで、スーパージーンの研究も大きく進んでいます。

 同一染色体上の複数の遺伝子が逆を逆位を持ち、遺伝子配列の違いがある種が種内で大きな違いを持つ場合にはスーパージーンが関わってる可能性があります。

 ヒアリでは、女王が多数と単数のコロニーが存在していますが、この違いにもスーパージーンが関わっています。

 遺伝子配列によって女王の分泌するフェロモンの受容体に違いが生じ、コロニーの構成に違いが生じます。

 この配列は、

・複雑な現象をコントロールしている

・同一染色体上に遺伝子が存在する

・逆位を持ち、組換えを起こしにくい

といった特徴もつため、スーパージーンの例と考えられています。

 多くの不思議な現象がスーパージーンによるものと解っていますが、氷山の一角でどれほどの現象にスーパージーンが関わっているかはまだ、誰も知りません。

遺伝子配列の特定が容易になったことで、スーパージーンの研究も大きく進んでいます。

しかし、スーパージーンよる現象がどれほど多くあるかはまだ誰も知りません。

人間にもスーパージーンはあるのか

 これまで、人間でのスーパージーンは想定して来られませんでした。

 スーパージーンによる変化、種内同型は見ただけで分かる変化が大きいものです。人間でも人種が異なれば肌や髪の色が異なりますが、複雑な形質でないため、スーパージーンによるものとは考えにくいものでした。

 遺伝子配列の同定が簡単になると、人間の遺伝子解析が進み、逆位を持つ部分がスーパージーンなのでは?という視点での研究も進んでいます。

 実際に人種間で異なる遺伝子配列に逆位があり、免疫機能や病気のリスクの違いがある場合も見つかっています。

 また、性を決める性染色体はスーパージーンの要求を満たしており、染色体全体がスーパージーンとして機能する究極のスーパージーンである可能性があります。

人種間で異なる遺伝子配列に逆位があり、免疫機能や病気のリスクの違いがある場合も見つかっており、このような遺伝子がスーパージーンの可能性もあります。

また、性染色体はスーパージーンの要求を満たしており、スーパージーンの可能性もあります。

今後、スーパージーン研究はどのように進化していくのか

 150年ほど前に、ダーウィンやウォレスといった人物が進化論を提唱し、複雑で面白い生物現象を数多く紹介しています。

 その中のいくつかは現時点でスーパージーンで制御されている現象だと分かっています。

 スーパージーンにとって重要なことは複雑で面白い生物現象であることです。複雑で面白い生物現象は極めて長い進化の過程で環境に適応してきた結果、得られたものと考えられます。

 スーパージーンは常に変動するように仕向けられている染色体の中で例外的な染色体領域であり、重要な形質を変わらないように伝えうる役割を背負っています。

 スーパージーンについては、まだまだ分からないことも多く、今後の進化学、遺伝学の重要な概念の一つになっていくことが期待されます。

スーパージーンは複雑で、極めて長い進化の過程で環境に適応してきた結果得たものであり、常に変動する染色体の中で例外的に変化しない領域です。

わずかな変化が生存に不利になるため、変化しないスーパージーンは生存にとって重要な役割をもっているといえます。

ただ、まだまだ分からないことも多く、今後の進化学、遺伝学の重要な概念の一つになっていくことが期待されています。

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