共感革命 山極壽一 要約

本の要点

要点1

人類の繁栄の要因には、約7万年前の言葉の獲得による認知革命が挙げられることが多いですが、認知革命の前に共感革命があったと筆者は考えています。

人間の脳は言葉を主としてから大きくなったのではなく、脳が大きくなったことで、言葉を取得したことが分かっています。

つまり、脳を大きくした要因は別にあることとなり、その要因こそが共感です。

言葉を発する前から二足歩行によって音楽的な能力を高めたことで、他者と共鳴、共感することができるようになりました。

他者との共感によって、集団を大きくすることが可能になった人類は、大きな集団に適応するために脳が大きくなり、その結果、言葉を取得し、ますます繫栄してきました。

人類の繁栄のきっかけには共感力があり、それが共感革命と呼ばれるものです。

要点2

人類の繫栄の要因となった共感力は残酷な悲劇をももたらしています。

農耕によって、定住が進むと、食糧や土地の所有、権力の集中が発生しました。また領土という考えができたために、他の集団と争う必要も出てきました。

共感力は内と外を分け、内の集団の結びつきを強くし、外の集団に敵意を持たせる効果も持っており、他の集団との戦いを促すものとしても機能してしまいました。

人類が大半の期間を狩猟採集による平等で、所有の概念のない社会で過ごしてきたため、所有や格差に慣れておらず、大きなひずみを生んでしまいました。

狩猟採集は平等なことに加え、自然の恵みだけが頼りであったため、その土地の持つ資源を超えた人口になることはなく、自然と調和した生活をしていました。

しかし、農耕で人口を土地の資源以上に増やしたことで、自然と調和する意識がなくなり、環境破壊やパンデミックの要因になっています。

要点3

人間の子供は成長速度は遅いため、集団での子育てを行うことが人口を増やすためには不可欠でした。

強い共感力は血縁以外の子供たちを育てるようになったことで、発達したものと考えられ、人類が危機を乗り越える原動力になってきました。

多くの人が戦争は人間が生まれもった特質、本能と見てしまいますが、人類の歴史から見れば、大半は戦争のない世界であり、人間の本性が悪であるわけではありません。

農耕を開始し定住したことで土地の奪い合いが始まったこと、集団の大型化、言葉による集団の内と外の切り分け、内への共感が外への敵意につながることで、戦争が起きるようになっただけでしかありません。

人間の本性は善であり、共感力を発揮し、助けあいのある社会をつい最近まで作り上げてきました。

情報社会の到来で所有の価値が下がり、小さなコミュニティの形成と接続が可能になれば、共感力を持ちつつ、暴発を防ぐことができれば再び、戦争のない助け合う社会を実現できる可能性は充分にあります。

この本や記事で分かること

・共感は人類のとってどれほど大事なことなのか

・なぜ、共感が悲劇ももたらしてしまうのか

・共感力の暴走を防ぐにはどうすれば良いのか

人類の繁栄の要因は言語の取得なのか

一般的に、人類の繫栄の要因は認知革命による言葉の獲得とされています。

しかし、筆者は認知革命の前に共感革命があったと考えています。

共感革命とは何か

人類は共感によって、仲間とつながることで大きな集団の形成が可能となり、集団という強力な力で反映してきました。

共感革命とは共感によって人類の繫栄が成し遂げられたとする考えです。

共感はどのようにして始まったのか

人類の二足歩行にはエネルギー効率の向上や食物の持ち運びなどの利点以外にも、踊りや様々な声を出すことも可能にしました。

この音楽的な能力による他者との共鳴が共感の始まりであり、この共鳴は言葉を発する前から起きていたと考えられます。

なぜ、言葉を発する前に大きな変化があったといえるのか

人類の脳は言葉を発し始めた後から多くなったのではなく、脳が大きくなってから言葉を使用するようになっています。

つまり、脳が大きくなる要因が言葉以外にあったと考えられ、その要因が共感となります。

共感によって集団が大きくなり、大きな集団に適応するために、脳が大きくなり、言葉を身に着けました。

共感力によって人間は大きな社会を実現してきましたが、共鳴力は悲劇ももたらしました。

共感が生み出した悲劇とは何か

農耕による定住が始まると、土地の所有や権力の集中が起き、他集団との争いが発生します。

人間は共感力で、外の人々を敵とみなし、内の集団を結びつけることで他集団との戦いを促してきてしまいました。

人類はほとんどの期間を平等で、所有することない社会で、過ごしてきたため所有という感覚になれていないため、大きなひずみを生んでしまっています。

農耕は人類と自然の関係をどう変えたのか

狩猟採集では、自然の恵みだけが頼りであり、自然と調和することができていました。

しかし、農耕で自然を人類の力で改変でき利用になると自然と調和しようとする意識は低下してしまいます。

自然と調和する意識の低下が環境破壊やパンデミックの要因になっています。

戦争は人間の本能なのか

多くの人が、戦争は人間の本能とみていますが、狩猟採集時代に戦争があったとする証拠はありません・

あくまでも農耕による所有と共感力の暴走が戦争を生んだだけです。人類は大半の期間を適度な共感力で助け合う社会を作ってきており、その本性は善であるといえます。

共感力の暴走を防ぐにはどうすれば良いのか

土地の所有は資本主義の発展につながり、大きく反映してきましたが、環境問題も引き起こすし、その悪影響はとても大きくなっています。

それでも、希望も見えています。

情報化社会の到来で所有の価値が低下し、小さなコミュニティの形成とコミュニティ同士の接続が可能になっています。

これらの要素が組み合わさることで、共感力をもちつつ、共感力の暴走を防ぐことが可能です。

本の要約

要約1

人類は共感によって、進化を遂げましたが、今、共感によって滅びようとしています。

人類の繁栄の要因には、約7万年前の言葉の獲得による認知革命が挙げられることが多いですが、認知革命の前に共感革命があったと筆者は考えています。

共感によって仲間とつながり、大きな集団を形成したことで強力な力を手にしたことで、地球上でもっとも繁栄した生物になっており、共感革命こそが人類の最も大きな革命といえます。

人類の二足歩行は、エネルギー効率の良さや食物を仲間のもとに運ぶために進化したと考えられていますが、もうひとつ二足歩行には踊りやすくなる、喉頭が下がり様々な声が出せるようになるなどの音楽的な能力を高める利点があります。

言葉を発する前から、意味を持たない音楽的な声と踊りによって、他者と身体的な共鳴が可能になりました。この共鳴こそが共感の始まりでした。

実際に人類の脳は言葉を話してから大きくなったのではないことが明かになっています。つまり、先に脳が大きくなり、その結果、言葉がでてきたと考えられます。

身体の共鳴による共感が集団を大きくし、大きな集団に適応する=社会性を身に着けるために、脳が大きくなったということが考えられます。

要約2

人類は何万年もかけて、共感力を育てて、大きな社会を構築してきましたが、共感力は残酷な悲劇をももたらしてきました。

狩猟採集時代の人類は150人ほどの集団で、定住することなく生活していきました。また、土地や物を主有することがなかったため、権威者はおらず、格差も存在しませんでした。

農耕によって、定住が進むと、食糧や土地の所有、権力の集中が発生しました。また領土という考えができたために、他の集団と争う必要も出てきました。

共感力には外の人々を敵として、内の集団内を結びつける力もあるため、他の集団との戦いを促すものとしても機能してしまいました。

人類は狩猟採集時代のような、平等かつ対等な遊動生活を700万年近く続けてきており、農耕を始めてからの期間は人類史の1%にも満たない期間です。

私たちはほとんどの時代をこのような平等かつ対等な遊動生活で過ごしてきたため、所有という感覚に慣れていないため、大きなひずみを生んでしまっています。

要約3

人類の祖先は他の類人猿と同じく、熱帯雨林で生活していましたが、気候の変動によって熱帯雨林が縮小する中で、ゴリラやチンパンジーと競合し、居場所を失い、サバンナに出ていったと考えられます。

サバンナに出た人類は二足歩行によって、長距離歩行が可能であったことなどもあり、サバンナに適応し、徐々に生息域を広げることができ、遊動生活を歩むことができるようなりました。

狩猟採集時代の人類は自然の恵みのみを頼りに暮らしてきており、その土地に適応し、その土地の持つ資源を超えた数に人口が増えることはありませんでした。

しかし、農耕の開始で人口を増やし続けたことで、自然の持つ生態系と調和しようとする意識はなくなり、どこでも同じような環境を整えようとしてきました。

このことが環境破壊やパンデミックなどにつながっており、今一度自然と調和した文化、社会について考える必要が出てきています。

要約4

人間の共感は非常に強いもので、仲間の危機に自分の命を懸けることさえあります。

このような自己犠牲の精神には、人間が社会力を強め、地球上の新しい環境に進出するたびに危機を乗り越えてきた原動力になっています。

人間は他の類人猿と比較し、授乳期間が短く、頻繁な妊娠が可能です。ただし子供の成長速度は遅いため、集団での子育てを行うことで、数を増やすことができるようになりました。

強い共感力は血縁以外の子供たちを育てるようになったことで、発達したものと考えられ、その起源は言葉より前であったと考えられます。

多くの人は戦争を人間が生まれ持った特質、本能と見てしまいますが、狩猟採集時代に戦争が行われていた証拠は見つかっていません。

農耕を開始し定住したことで土地の奪い合いが始まったことや言葉による集団の内と外の切り分け、内への共感が外への敵意につながることで、戦争が起きるようになりました。

人類の歴史から見れば、大半は戦争のない世界であり、人間の本性が悪であるわけではありません。人間の本性は善であり、共感力を発揮し、助けあいのある社会をつい最近まで作り上げてきました。

土地の所有に価値を感じるようになった人間は資本主義を発展させてきましたが、その影響で環境問題を招いています。

それでも、現在の情報化社会ではモノの所有の価値が下がっています。また、小さな集団、コミュニティを形成し、コミュニティ同士をつなげていくことができれば、共感を持ちつつ、共感力が暴発することを防ぐこともできます。

所有からの脱却と小さなコミュニティに惹かれる若者の行動も目立ち始めています。このような行動に人類の新たな夢を見出していくべきです。

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