キツネを飼いならす リー・アラン・ダガトキン、リュドミラ・トルート 要約 

本の要点

要点1

犬はオオカミが人間とともに過ごすことで、家畜化されて生まれた動物ですがオオカミは人類との接触を嫌う、どう猛な動物です。

オオカミがどのように家畜化されていったのか、なぜ野生種よりも頻繁な繁殖が可能なのかなどの詳細は明らかになっていません。

そこで、オオカミと遺伝的に近いキツネを家畜化することで、家畜化の詳細なプロセスを明らかにしようとする研究がロシアで行われ、わずかな時間で大きな成果が挙げられています。

要点2

研究を主導したベリャーエフは従順性こそが鍵だと考えていました。従順で人の周りにいることのできたオオカミは食料をもらったり、捕食者から守ってもらいやすくなることで生存に有利になったと考えました。

そこで、従順なキツネ同士を交配することで、キツネにどのような変化が起きるかを確かめることととしました。

その結果、わずか第2世代でおとなしい個体が増加し、生殖能力が増加することが、さらに交配を続けることで、人の気を引こうとする個体が増えたり、犬と同じように丸い鼻や短い脚を持つ個体が増えるなどの変化が起きました。

ベリャーエフはこの変化を環境の変化がホルモン分泌を変化させるものと推測しました。当時、遺伝子が突然変異以外でその発現の仕方を変えるという考え方は、先進的でしたが、実際に従順なキツネとそうでないキツネでホルモンの分泌に違いがあることが明らかになりました。

要点3

キツネの家畜化によって、わずか、数巡年という進化の中では一瞬の時間の中でも、従順性が選択圧となり、家畜が進むことが明らかになりました。

従順性が選択圧となり、進化が促されたのは人類も同じである可能性があります。大きな集団で生活するには従順であるほうが優位であったため、人類を従順に進化させた可能性もあります。

キツネの研究は今でも、続いており、キツネはどこまで賢くなり、犬のようになれるのかという検討は続いています。

この本や記事で分かること

・家畜化とは何か

・なぜ、家畜化が起きるのか

・家畜化が起きた生物にはどんな変化があるのか

なぜ、キツネの家畜化の研究が行われたのか

オオカミが家畜化され、犬になった経緯は明らかになっていません。家畜化のメカニズムを解明するためにキツネの家畜化が検討されました。

家畜化をするにはどうすれば良いのか

研究を主導したベリャーエフは人間の周囲でおとなしくできる=従順かどうかが家畜化のカギと考え、従順なキツネ同士の交配を行いました。

従順なキツネ同士を交配した子供たちはどうなったのか

従順なキツネ同士の子供たちは第2世代で早くも、おとなしい個体が増加し、生殖能力の向上がみられました。

さらに交配を続けるとどうなったのか

世代を経るごとに人の気を引いたり、外観が変化するなど犬でも見られるような特徴やオオカミと犬の違いと同じような外観の変化が確認されました。

なぜ、従順性が家畜化のカギとなるのか

実際に従順なキツネと普通のキツネでは、ホルモンの分泌に変化がみられています。

自然での暮らしから人ととの暮らしへの変化がホルモン分泌を変化させた可能性があるという当時として先進的な結果でした、

従順性が選択圧となるのはキツネだけでなのか

人も大きな集団で生活する上で、従順性を持っていたほうが優位になり、従順性が広がっていった可能性がああります。

今後、キツネの研究はどう進むのか

キツネの家畜化が遺伝子の変化によるものである証拠も出始めており、今後もキツネが犬のようになれるのかという検討が続いています。

本の要約

要約1

犬はオオカミが人間とともに過ごすことで、家畜化されて生まれた動物です。

しかし、オオカミのような人類との接触を嫌い、どう猛な動物がどのように家畜化されていったのか、なぜ野生種よりも頻繁な繁殖が可能なのかなどの詳細は明らかになっていません。

そこで、オオカミと遺伝的に近いキツネを家畜化することで、家畜化の詳細なプロセスを明らかにしようとする研究がソ連、ロシアで行われてきました。

この実験は60年程度と進化的な基準で見れば一瞬ともいえる期間でありながら、数多くの成果が上がり、家畜化とは何なのかを明らかにしてきました。

要約2

家畜に必要な要素は様々ですが、研究を主導したベリャーエフは従順性こそが鍵だと考えました。人間を避けたり、攻撃的になることが生存に有利で無くなり、人間の周りでおとなしくしていることで人間から食料をもらったり、捕食者から守ってもらえれるため従順なほど生存に優位となったと考えられます。

当時キツネは毛皮のために人間の手で繁殖されていました。そこで、繫殖所の中で比較的、従順なキツネ同士を交配させることで、どのような変化が起きるのかを確かめることとしました。

当時、ソ連では遺伝子の研究が禁止されていたため、この研究はかなり危ないものでしたが、何とかスタートさせることに成功します。

はじめ、キツネは人から食事をもらうときも嚙みつくなど、攻撃的な態度を示していました。しかし、比較的従順なキツネを交配させた第2世代においても、おとなしい個体が増え、生殖能力の向上が確認されていました。

要約3

世代を経るごとに、おとなしさだけでなく、手をなめたり、しっぽを振るなど人の気を引いたり、甘えようとする個体が誕生し、その割合も増加しました。また、丸い鼻や短い脚など外観的な変化も見られました。これら外見的な変化は犬でも見られる家畜化による変化でした。

ベリャーエフはこれらの変化の一因として、環境の変化(自然→人による飼育)がホルモン分泌の変化をもたらしたと考えました。

当時、遺伝子が突然変異以外でその発現の仕方を変えるという考え方は、先進的でしたが、実際に従順なキツネほど成長によるストレスホルモンの上昇が小さいことが確認されました。

そのほかにも、幸福感をもたらすセロトニンや生殖に関わるメラトニンが多いことも確認されました。

また、従順なキツネの子宮から胚を取り出し、攻撃的なキツネの子宮に移し、子を産ませると、生まれた子は従順な振る舞いを見せています。

このことから従順な行動は遺伝的なものであると確かめられました。

一方で、実権を主導していたリュドミラはキツネと一緒に生活することで、家畜化行動が強化されるなど学習によっても家畜化が進行することも確かめられました。

要約4

様々な研究結果から従順性を対象とした選択圧によって、家畜化が進むことが明らかにされました。

このことはキツネだけでなく、ヒトにも当てはまる可能性があります。社会的な動物となり、大きな集団で生活するためには、カッとなって暴力を振るうのではなく、平穏、冷静、落ち着きを持っているほうが選択優位になったと考えられます。

その後、遺伝子の配列決定の技術が向上すると、セロトニンの生成に関わる遺伝子部分に変化がみられるなど遺伝子の変化によるものである証拠は増加しています。

今でも、家畜化による変化による研究は続いており、今後さらなる解明が続くものと思われます。60年という進化という視点からはあっと言う間に様々なことが明らかになりました。

キツネが我々の生活に入り、愛情を注ぐことのできる新しい系統の動物になったことははっきりとしています。どれだけ賢くなり、どのくらい犬のようになれるのかという検討は今後も続いていきます。

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