本の要点
この本や記事で分かること
・世界の脱炭素、カーボンゼロの動き
・再生可能エネルギーの現状や課題、今後の展望
・脱炭素のもたらす問題とその対処法
世界のエネルギー事情を書いた「エネルギー危機の深層」の要約はこちら
なぜ、いまカーボンゼロが大きな注目を集めているのか
先進国は化石燃料の利用で大きく発展してきましたが、排出した温室効果ガスによる気候変動の影響は途上国ほど大きなものです。
そのため、先進国には気候変動へ対応する義務があるとし、各国がカーボンゼロを競っています。
カーボンゼロはどんな場面で進んでいるのか
カーボンゼロが最も注目されているのは、発電分野です。
再生可能エネルギー、水素の利用、蓄電池などで化石燃料からの脱却が可能になれば、
農業、産業、情報に次ぐ第4の革命となりうる大きな動きです。
再生可能エネルギーはどのくらい進化しているのか
再生可能エネルギーは欠点であったコストの削減が進んでいます。
効率化も進行しており、今後のさらなる普及に大きな期待がされています。
カーボンゼロにおける水素の立ち位置はどんなものか
燃焼時に水しか排出せず、存在量の多い水素も重要な技術です・
電気以上のエネルギーを放出可能なため、鉄鋼業などの産業での応用も期待されています。
水素の課題は何か
水素を製造する際に化石燃料を使用しないグリーン水素のコスト削減が課題です。
また、日本特有の問題として、水素を使用する際の規制やルール作りが追い付いていないことや官民の足並みがそろっていない現状があります。
カーボンゼロのような大きな改革では、ルールを作り、世界標準にしようという意識も重要です。
脱炭素は経済にどんな影響を与えているのか
これまでは脱炭素=環境問題でしたが、近年、脱炭素への対応が企業の利益に大きく影響を与えています。
炭素税の導入、環境対応の進んでいない企業からの消費者離れや投資減少などグリーントランスフォーメーションできるかが企業の利益に直結するようになっています。
カーボンゼロの課題は何か
ウクライナ侵攻によって資源国であるロシアの資源が供給不安になると石炭の使用量が増えるなど、エネルギー市場の安定性、エネルギー安全保障の重要性が明らかになっています。
脱炭素に他の問題はあるのか
石油の価格低下は産油国の政情不安を生む可能性や気候変動対策によるインフレや食料不足を招く可能性がありあ舛。
世界の安定を保ちつつ、軟着陸することが求められます。
脱炭素にどのように向き合うべきか
脱炭素のイノベーションは素早く進み、乗り遅れれば衰退してしまいます。
国力と産業で再エネ技術のテック競争を制する者が世界を制することとなっていきます。
本の要約
化石燃料による工業化は先進国を豊かにしてきましたが、温暖化、気候変動など負の影響ももたらしています。
温暖化の影響は途上国ほど影響が強くなるため、先進国には気候変動への対応の義務があります。
そんな中で、日本を含めた世界がカーボンゼロを競い始めています。化石燃料で発展してきた人類がエネルギーの転換を果たすことは農業、産業、情報に次ぐ第4の革命となるほど重大なこととなります。
カーボンゼロで多くの競争があるのは、発電技術です。
再生可能エネルギーの普及、発電量が天候に左右される再生可能エネルギーの欠点を補うために発電したエネルギーを蓄電する蓄電池の開発、水素の利用、より安全性の高い小型原発など多くの新技術が組み合わせることで、カーボンゼロに近づくことができるようになります。
再生可能エネルギー分野ではコストの減少が重要な問題ですが、これまでの再生可能エネルギー=コスト高という構図が崩れつつあります。
ここ10年でも、太陽光発電で8割、洋上風力で3割、陸上風力で4割と大幅なコスト削減が可能になっています。
水素も燃焼時に水しか排出せず、存在量も多い、電気では不可能な大きなエネルギーを放出できるなどの理由から有望視され、世界で200以上の事業計画が公表されるなど激しい競争となっています。
水素は製法によって以下のような分類がなされています。
化石燃料から製造する:グレー
化石燃料から製造し、発生する二酸化炭素を回収する:ブルー
再生可能エネルギーの電気で水を分解して製造する:グリーン
現在流通する工業用水素は99%がグレーですが、各国がグリーン水素のコスト削減に取り組んでいます。
日本は水素技術では高いレベルにありますが、規制やルール作りが追い付いていない、官民の足並みが揃っていないなどの懸念があります。欧米や中国、韓国では研究だけでなく、国が主体となり、普及に取り組んでおり、日本でも同様の対応が求められています。
ルールを作り、世界標準にしようという意識も重要です。欧米主導でルール作りがなされているため、日本に不利な条件でルールが作られてしまっている分野も少なくありません。
実際に自動車では本来は日本の得意なハイブリッドのほうが環境負荷が小さい可能性があるにもかかわらず、電気自動車が主流になってしまっています。
これまで、脱炭素は主に環境問題として、捉えられてきましたが、企業にとっては経営になくてはならないものとなり、グリーントランスフォーメーション(GX)によって企業価値が決するようになっています。
パリ協定の達成に必要な炭素税は1トン140ドルとされており、導入されれば、63%の企業が赤字に転落するという分析もあり、あらゆる企業に脱炭素が求めれます。
また、特に製造業では、再生可能エネルギーが豊富にある場所へ製造拠点を優先的に選ぶことが考えられるため、再生可能エネルギーが不足している地域は産業の空洞化が起きる可能性があります。
情報の開示が進むことで、GXの進んでいない企業を消費者が避ける、投資家からの投資が減少することも考えられ、GXへの取り組みが企業価値に直結するようになっています。
一方で、世界全体では脱炭素に向けた動きは充分な合意を得られていません。途上国側は先進国の資金支援の不足を訴えており、世界的に一丸となり、脱炭素へ迎えているわけではありません。
ロシアによるウクライナ侵攻は脱炭素の危うさを世界中に示すものとなりました。
ロシア産の天然ガスや石油の供給不安からエネルギー安全保障の意識が高まり、石炭の利用増加などが進んでしまっています。
欧州では、脱ロシアを進めるとともに、原発への慎重論を緩ませることなどで対応しています。
また、長期的に脱炭素が進行すれば、天然ガスの高騰と石油の価格暴落を招くため、産油国に大きな混乱や政情不安をもたらす可能性もあります。
産油国以外でも気候変動対策によるインフレ、食料不足などが深刻化する可能性もあります。
気候変動対策が生むひずみを解きほぐし、世界の安定を保ちつつ、脱炭素社会へ軟着陸できる取り組みが世界的なレベルで求められています。
これまでは、温室効果ガスを排出する「茶色」としない「緑」に分けて考えることが多く緑に多くの資金が向かってしまい、世界全体の脱炭素化は難しくなってしまっていました。
そのため、茶色を薄い茶色、薄い緑と移行してく分野にも資金を集めようとする動きも出てきています。
脱炭素のイノベーションは素早く進んでいます。潮流に乗り遅れれば、成長の機会を逃すだけでなく、衰退につながってしまいます。
国力と産業で再エネ技術のテック競争を制する者が世界を制することが可能です。
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