本の概要
ウクライナ侵攻がなかなか終結しないなか、多くのメディアでは、ロシアやプーチンを糾弾するだけになってしまっています。
武力行使を行っているロシアの責任は大きなものですが、アメリカやNATOにもウクライナ戦争を起こした責任があるとフランスの人口学者であるエマニュエル・トッドは考えています。
冷戦以降、アメリカ一極体制が続いていますが、アメリカの影響力は多くのところで落ちており、その影響はウクライナ侵攻の長期化でも見られています。
池上彰氏とエマニュエル・トッド氏による対談を通じて、アメリカ中心の世界がどう変化しているのか、西側諸国に求められていることはなんなのか、その中で日本はどう行動していくべきなのかなどを知ることができる本になっています。
この本や記事で分かること
・ウクライナ戦争の原因
・ウクライナ戦争が長引いている理由
・アメリカや西洋諸国に求められていることが何か
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本の要約
ロシアの軍事侵攻で始まったウクライナ戦争は終結がなかなか見えてきません。
ウクライナ戦争の責任はロシアやプーチン大統領にあるとされがちですが、トッド氏はアメリカやNATOにも大きな責任があると考えています。
軍事支援を通して、ウクライナを事実上の加盟国としたことで、ロシアの反発を招き、アメリカとNATOが戦争へと仕向けたとも考えられます。
また、メディアの対応にも問題があります。
軍事進攻に踏み切ったロシアの責任も大きいものですが、メディアの反ロシア感情は必要以上にロシアの実態を悪いものとして扱っています。
メディアがジャーナリズムを神格化しすぎたことやジャーナリストを重視し、知識人を軽視したことでメディアの姿は大きくゆがんでしまっています。
ウクライナ戦争が長引いている理由の一つにロシアの経済が安定していたことが挙げられます。
中国をはじめとした、非西洋国家が経済制裁に加わらなかったことも要因ではありますが、ロシアの資本力が西洋諸国の思っていた以上に安定していたことも確かです。
また、戦争が終結しない理由には資源、生産という側面もあり、アメリカは軍事品や兵器の生産の少なさが大きな弱点になっています。
中国は生産という面で世界一である利点を生かし、ロシアを支えており、生産が想像以上のアドバンテージになっています。
中国は和平案を出すなど、世界の均衡を守っているのはアメリカではなく、中国だという意識も持つようになっています。
アメリカがロシアの批判する際に引き合いに出されてしまうのが、イラク戦争の失敗です。
2003年にイラクが大量破壊兵器を持っているとして、国際的な同意がないまま一方的にイラクを攻撃しています。イラクの人々からすれば、ロシアのやっていることとアメリカのやったことは同じようなものではと感じるはずです。
また、LGBTなど西洋の価値観を押し付けてしまうことも多く、価値観の押し付けに反発したアラブ諸国、中国、ロシアが結びつき西側諸国が孤立してしまっています。
冷戦の終結以降、世界のグローバル化が進み、アメリカ一強体制が続いていましたが、その影響力は衰えています。
クライナ戦争の終結は難しい状態となり、アメリカ、ロシアにとっても負担の大きいまま長期化し、勝者なき戦争になる可能性もあり、そのすきにインドや中国が勝者となる可能性もあります。
しかし、仮に中国やインドが勝者となってもアメリカに代わって覇権をとることはなく、世界は多様化していくと考えられます。
多様化=不安定とはかぎりませんが、日本もアメリカに従っておけば良いという思考停止から脱却し、アメリカに頼り切らない姿勢を持つことは重要です。
ロシア、プーチンがすべての原因とする画一的な見方ではなく、アメリカ、西洋の問題に目を向けるように複眼的な目線を持つことがますます重要になっています。
ウクライナ戦争の終結が見えないことは何を示しているのか
ロシアの軍事侵攻で始まったウクライナ戦争は終結がなかなか見えてきません。
ウクライナ戦争の責任はロシアやプーチン大統領にあるとされがちですが、トッド氏はアメリカやNATOにも大きな責任があると考えています。
ウクライナの中立化というロシアの要望を西側が受け入れて入れば戦争を避けることができた可能性もあります。
軍事支援を通して、ウクライナを事実上の加盟国とし、アメリカとNATOが戦争へと仕向けたとも考えられます。
戦争は避けるべきものですが、どうしても戦争をするのであれば、直接戦うべきです。第3国を介したような戦争は道徳的なものではありません。
ウクライナ戦争の責任はロシアやプーチン大統領にあるとされがちですが、トッド氏はアメリカやNATOにも大きな責任があると考えています。
アメリカとNATOがウクライナを通じて、戦争に仕向けたと捉えることもできます。
メディアの問題は何か
軍事進攻に踏み切ったロシアの責任も大きいものですが、メディアの反ロシア感情は必要以上にロシアの実態を悪いものとして扱っています。
西洋を中心に反ロシア、ロシア嫌いが広がっていることでロシアの正しい姿をとらえることができなくなっています。
ジャーナリストには様々な立場、考えの人がいますが、ジャーナリズムが一つの信仰になってしまい、一つの思想のようになってしまっています。
ジャーナリズムを神格化しすぎたことやジャーナリストを重視し、知識人を軽視したことでメディアの姿は大きくゆがんでしまっています。
メディアの反ロシア感情は必要以上にロシアの実態を悪いものとして扱っています。ジャーナリズムが神格化されすぎたため、メディアの姿が大きくゆがんでしまっていることがメディアの問題です。
西側諸国の誤算は何か
ウクライナ戦争が長引いている理由の一つにロシアの経済が安定していたことが挙げられます。
経済制裁にも拘わらず、戦争を続けるだけの資本力を持っていることは西側諸国にとっては驚きでした。
経済制裁の効果の薄さには、中国をはじめとした非西洋国家が制裁に加わらなかったことも大きく影響しています。
多くの非西洋国家がロシアと想像以上に深い関係であったことも影響しており、この点も西側諸国にとっては予想外のことでした。
非西洋国家の多くは中立もしくはロシアに近い感情を持っており、西洋による秩序を認めないという考えを持っていることが明らかになっています。
ロシアが経済制裁にも拘わらず、戦争を続けるだけの資本力を持っていたこと、中国をはじめとした非西洋諸国がロシアとの距離が近く、制裁に加わらなかったことなどが西洋諸国にとっての誤算となりました。
米中の関係はウクライナ戦争にどう影響しているのか
戦争が終結しない理由には資源、生産という側面もあります。
軍事品や兵器の生産という面でアメリカの大きな弱点になっています。
中国はロシアが負けてしまえば、アメリカは次は中国を攻撃するだろうと分かっているため、戦争開始からロシアを支え続けています。
中国は生産という面で世界一であり、このことが想像以上に大きなアドバンテージになっています。
さらに、中国は戦争の和平案を出すなど、今の世界の均衡を守るのは中国だという風に自分を位置づけ、アメリカに変わろうとしていることが見て取れます。
アメリカは軍事品や兵器の生産の少なさという面が大きな弱点になっています。
中国は生産という面で世界一であり、ロシアが負けてしまえば、アメリカは次は中国を攻撃するだろうと分かっているため、戦争開始からロシアを支え続けています。
生産の多さは想像以上の大きなアドバンテージなっています。
西洋の姿勢の問題はなにか
西洋ではLGBT、トランスジェンダーなどへの寛容さが広がっています。
これらの個々の特性やアイデンティティはリスペクトされるべきものですが、西洋人はLGBTを認めない人々を遅れた人達で、自分たちが進歩的と考えてしまいます。
世界にはLGBTに保守的な国が多く、西洋の姿勢を押し付けと感じてしまう人も多くいます。
アメリカにもLGBTに保守的な人もおり、プーチン大統領の保守的な発言に共感を持つ人が多くいます。このようなこともアメリカ社会に分断の要因になってしまっています。
LGBTなどで見られる西洋による価値観の押し付けは世界の分断を招く一因になってしまっています。
アメリカへの批判はどのようなものか
ロシアのウクライナ侵攻はアメリカがこれまでやってきたことと同じようなことであり、批判しているのはおかしいという考えもあります。
2003年にイラクが大量破壊兵器を持っているとして、国際的な同意がないまま一方的にイラクを攻撃しています。
イラクの人々からすれば、ロシアのやっていることとアメリカのやったことは同じようなものではと感じるはずです。
西洋は価値観を押し付ける部分も多くみられます、一方で、ロシアは自国は権威主義ですが、外部に対しては特殊性を認め、自国の価値観を押し付けない姿勢をもっています。
西洋の姿勢は孤立を招いており、アラブ諸国や中国がロシアが結びつき、西側諸国vs世界というような対立につながってしまっています。
イラク戦争を始めたアメリカとウクライナ戦争のロシアは同じようなものだと批判されています。西洋による価値観を押し付けに反発したアラブ諸国や中国がロシアが結びつき、西側諸国vs世界というような対立につながってしまっています。
世界はどのように変化していくか、日本はどのよう考えをもつべきか
冷戦の終結以降、世界のグローバル化が進み、アメリカ一強体制が続いていましたが、その影響力は衰えています。
ウクライナ戦争の終結は難しい状態となり、アメリカ、ロシアにとっても負担の大きいまま長期化し、勝者なき戦争になる可能性もあります。
そのすきに中国やインドなどの国が勝者となる可能性も十分にあります。しかし、中国やインドがアメリカに代わって覇権を取るとは考えにくく世界は多様化にむかうと考えられます。
日本もアメリカに従っておけば良いという思考停止から脱却し、アメリカに頼り切らず、中立国であると宣言することが求められています。
多様化=不安定化とは限りません。ロシアの行動が許されるべきではないことは確かです。ロシア、プーチンがすべての原因とする画一的な見方ではなく、アメリカ、西洋の問題に目を向けることも重要なことです。
中国やインドの影響力は大きくなっていますが、アメリカに代わって覇権を取るとは考えにくく世界は多様化にむかうと考えられます。
日本もアメリカに従っておけば良いという思考停止から脱却し、アメリカに頼り切らず、中立国であることが重要です。
多様化=不安定ではありません。またロシア、プーチンがすべての原因とする画一的な見方ではなく、アメリカ、西洋の問題に目を向けることも重要なことです。
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