本の概要
食生活が健康に与える影響が大きいことは誰もが感じていることですが、結局のところどのような食生活をすればよいのか?わからない人も多いと思います。
科学的にも明確な答えがあるわけではありませんが、ある程度の方向性は示され始めています。
適切な食生活によって健康寿命をのばすためにも個人が知識を身に着けて、食べるものを選択していくことが重要になってきます。
食品生化学の研究者である筆者によって食事が身体に与える影響について知ることのできる本になっています。
この本がおすすめの人
・健康な食事について知りたい人
・健康食品のメカニズムを知りたい人
・食事で変えることのできる体質についての本「体質は3年で変わる」の要約はこちら
本の要約
平均寿命が延びるにつれ、健康寿命をのばすことにも大きな注目が集まっています。
健康寿命をのばすことは個人の幸福だけでなく、医療費や介護費の減少という社会的に大きな意味も持っています。
健康寿命をのばす食生活についての、明確な答えはいまだに提示されていません。そのため自分自身で知識を付け、食べるものを選択していくことがとても重要なことになります。
日本は長寿として知られていますが、食の欧米化による動物性脂肪と動物性タンパク質の増加、肉食の増加、魚の摂取量の減少などの変化がみられています。
沖縄では急速な食の変化によって肥満、糖尿病が増加し、平均寿命ランキングが大きく低下しています。
日本全体でもカロリー摂取は減少していますが、脂肪エネルギー比率の高まりによる、肥満、動脈硬化などの増加が問題になっています。
食にかかわる人間の進化には二足歩行、火を用いた調理による脳の巨大化、乳糖耐性遺伝子の獲得など様々なものがあります。
これらの進化は食品の栄養素としての機能がもたらしたものですが、食品の機能には栄養素以外にも嗜好にかかわる機能が古くから知られていました。
近年、食品の持つ栄養素、嗜好とは異なる機能である、機能性に大きな注目が集まっています。運動をした際に活性化されると酵素AMPキナーゼを活性化する食品成分があるなど多くの機能性食品が開発されています。
機能性食品の効果は様々で、消費者側も情報を集め、食品を選択していくことが重要です。
老化は誰にでも訪れるものですが、運動と最適な老化を遅らせ、健康寿命をのばすことが可能です。現在、以下のような食材が健康寿命をのばすことにつながると考えられています。
1.豆類、玄米、ナッツを摂取し畜肉消費を抑える
2.食物繊維を増やし、動物性脂肪を減らす
3.良質なたんぱく質である大豆製品、乳、卵、魚介類
4.色のついた野菜や果物、コーヒーや緑茶
食の重要性がますます高まるため、個人が食への理解と知識を身につけ、健康を管理するすべを身に着けることが望まれています。
健康寿命をのばす食生活はどんなものか
平均寿命が伸びるにつれ、健康寿命をのばすことにも大きな注目が集まっています。
健康寿命をのばすには食生活や運動習慣が重要であることは想像できますが、どのような食材をどのようなバランスでとると健康が維持できるのか明確な答えはいまだに提示されていません。
明確な答えがないなかでは、自分自身で知識を付け、食べるものを選択することは非常に重要です。
本書では、食品にどのような成分が含まれ、どのように体内で作用するのかを通じて、健康的な食事を判断する知識を得ることができます。
どのような食材をどのようなバランスでとると健康が維持できるのか明確な答えはわかっていないため、自分自身で知識を付け、食べるものを選択することが重要です。
健康寿命をのばすにはどうすればよいのか
日本は長寿国であり、高齢化も進行しています。
健康寿命をのばすことは個人の幸福だけでなく、医療費、介護費の減少といった社会的な意味も持っています。
健康寿命をのばすには、生活習慣病の予防と筋力維持による転倒防止などが重要となりますが、これらには食生活に気を付けることが欠かせません。
食生活で生活習慣の予防と筋肉維持による転倒防止をすることで健康寿命をのばすことができます。
日本の食はどんな状況なのか
日本では、50年ほど前と比べカロリー摂取量は減少傾向ですが、動物性脂肪と動物性たんぱく質の摂取量が大きく増加しています。
動物性脂質の摂取は量の増加だけでなく、魚から肉への種類の変化も起きています。
肉に含まれる脂質は飽和脂肪酸を含み、肥満や動脈硬化の原因となりますが、魚や植物性油脂には不飽和脂肪酸が含まれ、健康維持に有効であることが示されています。
日本人の食生活はカロリー摂取量が減少し、動物性脂肪と動物性たんぱく質が増加しています。
動物性脂質は魚から肉へ変化するなど量だけでなく、質の変化もみられています。
脂質の摂取増加はどのような影響を及ぼすのか
沖縄は長寿の地域でしたが、食生活が日本式からアメリカ式に変化したことで、近年は平均寿命ランキングが低下、肥満、糖尿病の増加などが見らえています。
摂取カロリーは平均を下回っていますが、脂肪の摂取量が多く、このことが沖縄の肥満、糖尿病の増加の原因と考えられます。
日本全体でも食事が低カロリーではあるものの、脂肪エネルギー比率が高い傾向にあり、糖尿病の増加の原因になっています。
食生活がアメリカ式になり、脂肪摂取の増えた沖縄では、寿命ランキングの低下、肥満、糖尿病の増加などがみられています。
脂肪の摂取はなぜ健康に悪影響なのか
私たち動物は常に飢餓と戦ってきたため、食事からエネルギーを得ると、トリグリセリドに変換し、脂肪細胞に蓄え、食物のないときにエネルギーとして活用してきました。
不飽和脂肪酸は脂肪酸をエネルギーとして活用する働きを活性化するため、脂肪酸燃焼による健康効果が高いものと考えられます。
トリグリセリドの増加は、動脈硬化の原因として知られているLDLコレステロールを増加させます。
LDLコレステロールは動脈硬化の原因となるため、脂肪食を防ぐ、運動することなどによって動脈硬化ができにくくすることで健康寿命をのばすことが可能になります。
脂肪を過剰に摂取すると動脈硬化の原因となるLDLコレステロールを増加させてしまいます。
食事は人間にどのような影響を与えてきたのか
人類は食料を運ぶために2足歩行をするようになったと考えられています。食はこれ以外にも多くの人間の進化を引き起こしてきました。
石器による食材を細かくし、火の利用で加熱調理が可能になったことは消化を容易にし、脳の巨大化に貢献したと考えられています。
乳糖は大人になると消化することができなくなりますが、乳糖耐性遺伝子を持った人たちは消化が可能になります。
豊富な栄養素を持つ牛乳などのミルクから栄養を得ることが可能になったことで、乳糖耐性遺伝子はヨーロッパを中心に多くの人に広がっていきました。
耐性遺伝子はβガラクトシダーゼの塩基の一つがシトシンからチミンに代わることで起きています。変異自体はよく起こるものですが、畜産を行っている地域でなければ、優位になることがなかっただけであり、遺伝子の優劣を示すものではありません。
二足歩行、火を用いた調理による脳の巨大化、乳糖耐性遺伝子獲得による栄養状態の改善など食にかかわる人間の進化は多く見られます。
食品にはどんな機能があるのか
食品には以下のような3つの機能があります。
一次機能:栄養素の供給
五大栄養素(糖質、脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミン)は食品を摂取することで、身体に取り込まれ、骨格を維持し、エネルギー源となります。
二次機能:嗜好、味覚
人は多くの味覚受容体を持ち、おいしさを感じています。
出汁に含まれるグルタミン酸ナトリウムは旨味成分として、知られています。人は本来、旨味成分受容体を持っていますが、慣れていないと魚臭いと感じることもあります。
幼少期から出汁に効いた食に触れることで成人になっても和食中心の食を選択することで、肥満を回避できるようになるため、食育が大事になってきます。
三次機能:機能性
特定保健用食品のように食品の生態調整機能への注目が集まり、現在では製品数は1000を超えています。
その効果は様々であり、消費者側にも情報を参考にし、食品を選択していくことが求められています。
食品には栄養や嗜好、味覚としての機能がありますが、近年は食品の持つ機能性にも注目が集まっています。
コレステロールは健康に悪いものなのか
コレステロールは脂質の一種で悪玉コレステロールは動脈硬化の原因にもなるため、数値を下げる必要があります。
また、コレステロールは体内で燃焼することがないため過剰摂取には気を付ける必要があります。
しかし、コレステロールは不要な物質ではなく、ビタミンDや一部のホルモン、胆汁酸などもコレステロールから合成されており、体内に必須となる物質になっています。
コレステロールは細胞内でも合成できます。細胞がコレステロールを合成する量や外から取り込む量は厳密にコントロールされて不足しないようになっています。
人類は飢餓との戦いが長く、コレステロールが過剰である経験がなかったため、過剰な時にコレステロールを減らすような機能は不足を補うよりも弱く、過剰に摂取すると動脈硬化などの原因となってしまいます。
コレステロールを上昇させる肉を魚の摂取に変える、コレステロールの吸収を抑える植物ステロールを含む食品を多くとることが対策となります。
コレステロールは体内に必須となる物質ですが、過剰に摂取すると動脈硬化などの原因になります。
人類にはコレステロールが過剰となる経験がなかったため、過剰に摂取した場合に減らす作用が弱いため、過剰摂取を控えることが大事です。
コレステロールを減少させる食品はあるのか
大豆は高タンパク質の食材である、含まれるアミノ酸の質が高い、機能性成分としてイソフラボンを含むなど健康食品として非常に優れています。
大豆タンパク質の摂取は以下のような健康効果があることが明らかになっています。
1.血中コレステロールの低下
2.心臓病発症リスクの低下
3.肥満予防効果
大豆たんぱく質はコレステロールと結合する胆汁酸と結合できるため、コレステロールの吸収量を低下させる、肝臓の脂肪蓄積を減少させ鵜など様々な効果が報告されています。
大豆にはコレステロールの吸収を抑える作用があります。
大豆はそれ以外にも、高タンパク質、アミノ酸の質が高い、イソフラボンを含むど健康食品として優れら機能を持っています。
筋肉量を維持するにはどうすればよいのか
加齢とともに筋肉量は減少していきます。特に下肢の筋肉量が減少し、けがをして、歩けなくなるとさらに筋肉量が減少するという負のスパイラルに陥ってしまいます。
筋肉量を維持するためなど健康維持には運動が重要です。
運動を行いエネルギーを消費する際には、エネルギー貯蔵物質であるATP(アデノシン三リン酸)が分解されAMP(アデノシン1リン酸)に変換されます。
AMPが上昇すると酵素AMPキナーゼが活性化され、種々のタンパク質をリン酸化し、その活性を調整する機能を持ちます。
脂肪酸合成を行うタンパク質やコレステロール合成を行うタンパク質を抑制し、脂肪酸燃焼を行う海路を活性化し中性脂肪低下に結びつくなど健康維持に有用な働きをします。
緑茶やグレープフルール、ブドウ果皮などに含まれる複数の食品成分がAMPキナーゼを活性化させることも明らかになっています。
ほかにも筋肉タンパク質合成を増加させる食品成分や糖代謝を改善する食品成分の研究も進んでいます。
筋肉量の維持には運動が有効ですが、運動をした際に活性化されると酵素AMPキナーゼを食品成分でも活性化できることが明らかになっています。
腸内細菌はどうやって健康に関わるのか、良い状態に保つにはどうすればよいのか
100才以上の健康な人の腸内には特徴があり、腸内細菌の顔ぶれが健康に大きな影響を及ぼすことが徐々に明らかになっています。
消化器系の疾患の原因が腸内細菌の乱れにあることや善玉菌がビタミン合成や免疫応答の強化に役立つなど腸内細菌の重要性が明らかになっています。
腸内細菌の餌となることからも食物繊維が豊富な食品をとることで腸内フローラを最適に保つために重要になります。
腸内細菌のバランスを保つことで、ビタミン合成や免疫応答を強化します。食物繊維豊富な食品をとることで良好な腸内細菌を維持することができます。
老化を遅らせる食材は何か
老化は誰にも訪れるものですが、その影響を遅らせることはできます。運動と最適な食事で老化を遅らせることができます。
運動効果を上げるような食品や運動時に体内で活性化する回路を活性化する食品も見つかっており、運動をすることから「運動を食べる」時代が来る可能性もあります。
以下のような食材が健康長寿へとつながると考えられています。
1.豆類、玄米、ナッツを摂取し畜肉消費を抑える
2.食物繊維を増やし、動物性脂肪を減らす
3.良質なたんぱく質である大豆製品、乳、卵、魚介類
4.色のついた野菜や果物、コーヒーや緑茶
他にも筋肉維持のためのタンパク質、分差アミノ酸を含むサプリなども有効です。
食肉は環境負荷、健康増進のためにも減らしていくことが望まれます。今後は食材に栄養的価値を付加する加工技術が開発されると予想されます。
食の重要性がますます高まるため、個人が食への理解と知識を身につけ、健康を管理するすべを身に着けることが望まれています。
以下に示す食材に老化を遅らせる効果が期待できます。
1.豆類、玄米、ナッツを摂取し畜肉消費を抑える
2.食物繊維を増やし、動物性脂肪を減らす
3.良質なたんぱく質である大豆製品、乳、卵、魚介類
4.色のついた野菜や果物、コーヒーや緑茶
今後ますます個人が食への理解を深め、健康管理することが望まれていくようになります。
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