「植物の香り」のサイエンス なぜ心と体が整うのか 塩田清二、竹谷文子 要約

本の要点

要点1

香りは私たちの気持ちに大きな影響を与えるものです。香り分子の正体は小さな分子が気体となったものです。

気体となった分子は鼻に入り、嗅覚受容体に吸着すると脳に信号が送られ、香りを感じています。

植物の香りは自律神経を調節する視床下部に働きかけます。自律神経の中でアクセルの役割を持つ交感神経とブレーキの役割を持つ副交感神経の働きに影響を与えることで様々な効果を得ることができます。

要点2

ラベンダーの香りには副交感神経を活発化する効果があるため、ストレスの軽減、睡眠の改善、不安の軽減、リラックス効果、食欲の増進など多様な効果があります。

ベルガモットの香りにも副交感神経を活発化させる作用があります。

交感神経を活発化させる香りとしては、ペパーミントやグレープフルーツの香りなどが挙げられます。交感神経を活発化させることで集中力を増加させる、緊張感を高めモチベーションを上げる効果も期待できます。

自分の今の状態や、どのような効果を得たいかを理解したうえで、植物の香りを利用することでより大きな効果を得ることができます。

要点3

嗅覚は、嫌な臭いを感じた際に、離れることで危険を回避するために発達してきました。

しかし、嗅覚には情報としての機能だけでなく、脳の特定の部位を活性化させる作用も持っているため、様々な効果が期待できます。

香りが脳にどのように作用しているのかをリアルタイムで判断できるようになったこともあり、今後ますます香りが脳に与える影響が解明され、進歩していくものと考えられます。

この本や記事で分かること

・植物の香りなぜ良い効果がるのか

・植物の香りにどんな力があるのか

・香りの持つ力を最大限発揮するにはどうすれば良いのか

感想

 良い香りをかぐと、リラックスできるイメージを持っている人は多いと思いますが、香りにはそれだけでなく、多くの効果があることが明らかになり始めています。

 ラベンダーの香りには本書で紹介されているものだけで、ストレスの軽減、睡眠の改善、不安の軽減、リラックス効果、食欲の増進など多様な効果があることが分かります。

 特に脳の視床下部に直接影響できることで発揮される植物の香りの力がここまで多岐にわたっていることには驚かされています。

 一方で、どのようなにおい分子の構造がどのような香りを生み出しているのかはいまだ不明点が多いことも知られています。

 香りが脳に与える影響をリアルタイムで判断できるようになったことと合わせて香りの持つ能力や詳細が明らかになることで、さらに高い効果を得られるのではと感じられる本でした。

香りとは何か

香りの正体は小さな分子が気体となったものです。

気体分子が鼻に入り、嗅覚受容体に吸着すると脳に信号が送られ、香りを感じています。

香りにはどんな意味があるのか

嗅覚は嫌な臭いを避けることで危険に気づくために発達した機能です。

植物の香りには情報としての機能だけでなく、自律神経を調節する視床下部に作用することで身体に影響を及ぼす効果もあります。

ストレスや疲労に効く香りは何か

コルチゾールの分泌を抑えるラベンダーや副交感神経を活性化することでリラックス効果をもつペパーミントの香りでストレスや疲労の軽減が可能です。

睡眠に影響する香りは何か

柑橘類に含まれるリモネンやラベンダーの香りは寝付きを良くし、睡眠時間を増加させることが分かっています。

グレープフルーツの香りは交感神経を活性化し、気分の落ち込みを軽減するため、気分が落ち込んで起きられない人に有効です。

香りで不安を和らげることはできるのか

ラベンダー、バラ、ベルガモットの香りは神経伝達物質の分泌に影響を与えることで、不安を和らげることが分かっています。

脳を活性化する香りはあるのか

ヒノキには交感神経を活性化や前頭葉の活動抑制によるリラックス効果があります。

また、副交感神経を活発化させるラベンダーや交感神経を活発化させるローズマリーの香りが記憶力を高めることがあります。

副交感神経の活発化は緊張を解きリラックスする効果、交感神経の活発化は集中力の増加で記憶力を高めています。香りによる脳のパフォーマンス向上は香りの特性を理解するとより力を得やすくなります。

食欲を抑える香りはあるのか

良い香りが食欲を誘うことは容易に想像できます。グレープフルーツの香りは嫌な臭いでないにも関わらず、食欲を抑える効果が報告されています。

香りは医療でも利用されているのか

睡眠薬を飲めない入院患者へのラベンダーの香りの利用や、ホルモンバランスの調整、精油を利用した抗菌、抗ウイルス、鎮痛作用など医療での利用も進んでいます。

アスリートは香りをどのように利用できるのか

スポーツでは、良い緊張感を作り、試合に臨むことが欠かせません。ペパーミントやレモングラスの香りは緊張感を高める効果が、ラベンダーやベルガモットにはリラックスする効果があり、これらを利用することで、最適な緊張感をもたらすことができます。

今後、香りはどのように利用されていくのか

植物の香りが脳に与える影響がリアルタイムで判断できるようになったこともあり、今後さらなる発展、応用が期待できます。

本の要約

要約1

私たちの生活は多くの香りで満たされています。香りは目に見えませんが、私たちの気持ちに大きく影響しています。

香りの正体は数十ナノメートルの小さな粒子=分子であり、気体となった分子が鼻に入り、嗅覚受容体と呼ばれる場所につくことで脳に信号が送られます。このようにして香りを感じることができています。

香りの分子に様々な種類があり、その種類ごとにたくさんの香りがあり、受容体にもたくさんの種類があり、それぞれの香り分子と受容体は鍵と鍵穴のような関係で結合できる相手が決まっています。

嗅覚は動物が嫌な臭いから危険を察知するなど、自分の身を守るために発達させた能力です。しかし、植物の香りの中には、情報として機能だけでなく、脳の特定の部分を活性化し、身体に影響を及ぼすものもあります。

自律神経は体の機能を一定に保つ機能をもっており、その調子がおかしくなると様々な体の不調につながります。自律神経は脳の視床下部によって調節されており、アクセルの役割を持つ交感神経とブレーキの役割を持つ副交感神経の2種類に分けられます。植物の香りは視床下部に作用することで交感神経や副交感神経を活性化し、自律神経系に働きかけることで作用が現れることが明らかになっています。

要約2

・ストレスや疲労に効果のある香り

ストレスは外部からの刺激によって生じする生体反応のことです。ストレスそのものは悪いものではありませんが、適応できず、病気につながるようなストレスに対しては、対策をとる必要があります。

植物の香りも気分転換を促すことでストレスを軽減することができます。また植物の香りは気分転換だけでなく、実際にストレスを軽減することが可能です。ラベンダーに含まれる酢酸リナリルにはストレスを感じる際に分泌されるコルチゾール濃度の上昇を抑える作用を持っています。

脳の疲労も植物の香りで軽減させることが可能です。ペパーミントは交感神経を活性化させることで一時的に疲労をマスキングすることができ、ラベンダーは副交感神経を優位にすることで疲労回復を行うことが可能です。

・睡眠に効果のある香り

ベルガモットは多くの柑橘系に含まれるリモネンとラベンダーの主成分でもある酢酸リナリルとリナロールが含まれており、柑橘系のさわやかな香りと鼻のような甘いにおいを持っています。

ベルガモットやラベンダーの香りには、寝付きを良くし、睡眠時間を増加させる効果が報告されています。

また、気分の落ち込みが激しいときや朝なかなか起きられないときなどは、交感神経を活性化させるグレープフルーツのような香りも効果的です。

・不安やうつに効果のある香り

脳は神経伝達物質を用いて、情報の伝達を増強したり、弱めたりしています。ドーパミンは意欲や快楽に、セロトンは精神を安定させることに、アセチルコリンは記憶を助けることにGABAは神経の興奮を抑えることに関係するなど様々な神経伝達物質が存在しています。

脳は外界の情報をもとに、神経伝達物質を利用して、感情を変化させ、行動を変化させています。脳が避けるべきと感じると、不安な感情や不快感を起こし、危険を回避させるようとしています。

ラベンダーやバラ、ベルガモットは不安を和らげる効果があることが報告されており、抗不安薬や抗うつ剤と同程度の効果を占めることもあることもあります。

要約3

・脳の活性化

森林浴には心身の健康にプラスの効果を及ぼしますが、樹木から発散される香り分子もその要因になっています。例えば、ヒノキには交感神経を活性化したり、前頭葉の活動を抑えることによるリラックス効果などが報告されています。

また、ペパーミントやラベンダー、ローズマリーなどの香りが記憶力を高めるというデータもあります。ラベンダーでは副交感神経を活発化させ、緊張を解きリラックスした結果であり、ローズマリーは交感神経を活発化し、集中力が高まった結果とされています。

脳のパフォーマンスを上げる香りは個人の特性や状況、処理すべきタスクなどで異なるため、それぞれの特性を理解することでより香りの力を得やすくなります。

・食欲を調節する

良い香りが食欲をそそり、不快なにおいをかげば食欲がなくなることからも明らかなように香りは食欲に大きな影響を与えます。

ラベンダーやジンジャー、ペパーミントなどの香りは食欲を増進させ、グレープフルーツの香りがラットの食欲を抑える効果があることが明らかになっています。

・医療現場での利用

病気に療養などで入院しているときには、環境の違いや身体の弱りなどで睡眠不足となることも多くみられます。睡眠薬が使用できない場合などもあり、香りの力が明らかになれば今後活用できる可能性があります。

ラベンダーの香りには睡眠の質を高める効果が確認されています。

また、医療現場では香りではなく、植物から抽出した高濃度の精油を利用することもあります。多くの植物の精油で抗菌、抗ウイルス効果や鎮痛作用が確認されています。

要約4

・女性の心身を守る

女性特有の疾患の症状緩和には以前からアロマテラピーが利用されてきました。女性特有の疾患には女性ホルモンバランスが崩れることで起きることが多いものです。

ホルモンを分泌する下垂体に指示を出すのは脳の視床下部であり、香りの情報は視床下部に入るため、ホルモンの分泌が香りによって調節しているのではといわれています。

クラリセージやゼラニウムには女性特有の疾患の症状を緩和する効果が報告されています。

・運動のパフォーマンスの向上

アスリートはドーピング問題で、病気になっても薬が飲めないこともあります。またアスリートは過剰な運動をしていることで交感神経が優位な状態が続くため、免疫機能が低くなりやすく、普通の人よりも風邪をひきやすいといわれています。

ベルガモットの香りが口の中の免疫機能を高めることが報告されています。

また、競技では良い緊張感を作り出すことが欠かせません。緊張感を高めるペパーミントやレモングラスでモチベーションをUPしたり、焦りや不安を感じているときはラベンダーやベルガモットの香りでリラックスすることで最適な緊張感をもたらすことも有効とされています。

植物の持つ香りが脳に与える作用は様々であり、さらなる応用が期待されます。技術の発展で香りの力が脳にどのように影響しているのかがリアルタイムで判断できるようになったこともあり、今後も大きく進歩していくものと考えられます。

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