第3の大国 インドの思考 笹井亮平 要約

本の概要

人口の増加や経済の躍進でインドに大きな注目が集まっています。

日本やアメリカもクアッドや開かれたインド太平洋などの枠組みでインドとの結びつきを深めてきました。

しかし、ウクライナ侵攻を行ったロシアに対する非難決議を棄権するなどインドには、わかりにくさが付きまといます。

これからの時代には影響力の大きくなるインドの考えを考慮することは世界情勢を考えるうえで不可欠になっていきます。

インドのおかれた歴史的背景、地理的背景、各国との関係などを知ることができる本になっています。

この本がおすすめの人

・インドについて知りたい人

・開かれたインド太平洋やクアッドの重要性を知りたい人

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本の要約

要約1

人口増加や経済規模の拡大で世界の中で、その重要度を増しているインド。

しかし、インドは全方位外交に代表されるように分かりにくさが付きまとう国です。日米との関係を強化してきた半面、ロシアや中国との関係を維持するなど様々な思惑を持っています。

インドがロシアへの非難決議を棄権したにもかかわらず、主要国のインド訪問が続いているように今後、世界情勢を考えるうえで、インドは欠かすことのできないプレイヤーとなっています。

要約2

インドは1962年の中国との国境問題による戦争時時にアメリカの支援が薄かったことや隣国であるパキスタンが新西側路線であったことなどを背景にロシアとの軍事的な結びつきを強くしてきました。

ソ連崩壊後にはアジア重視外交やアメリカとの関係改善などもみられましたが、両陣営から必要とされている現状を利用し、うまく立ち回ろうとする

要約3

中国は一体一路でアジア~アフリカ~ヨーロッパまでの陸海の影響力を強化しようとしてます。

南アジアへの投資も旺盛であり、インドにとっても脅威になる存在となるため、他国との枠組みの強化で対抗したいと考えています。

この流れが開かれたインド太平洋につながっていますが、中国はインドにとっての最大の輸出相手であることもあり、排他的でなく、経済的な繁栄を目的とすることで合意しています。

要約4

インドはロシアとの軍事的な結びつきが強く、エネルギーの輸入先でもあるため、ウクライナ侵攻に対して、ロシアへの非難決議を棄権するなどの行動をとってきました。

紛争の長期化でインドからもロシア側への短期終結を求める声明が出ています。特に2023年のG20の議長国でもあり、紛争の出口戦略をリードする期待も持たれています。

中国の台頭で、米中対立が深まる中でアメリカはインドを陣容に加えることを望んでいます。

中国の対応で、ますますインドの影響力が大きくなっていくことは間違いありません。

なぜ、インドに注目が集まっているのか

 新型コロナによるパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻、食糧とエネルギー価格の高騰、米中の対立の激化など世界で大きな変化が続いています。

 そんな中で急速に台頭し、世界の中でキープレイヤーになりつつあるのがインドです。

 2023年には、人口で中国を抜くと言われ、経済規模でもすでに世界5位の規模に着けています。

 しかし、インドという国にはわかりにくさが付きまといます。

 日米との連携を強化してきた背景がありながら、国連でのロシア非難決議を棄権しています。また中国との関係も反中、親中では割り切れない部分があり、複雑さを抱えています。

 これからの世界はインドなしで語るわけでにはいかず、中国と同じようにインドが世界の帰趨を左右する存在として台頭しつつあります。

インドというプレイヤーが何を目指し、どのような思考でアプローチするのかを理解する必要性はますます大きくなっています。

インドが人口、経済規模の増加で存在感を示すことに加え、外交面で複雑な面があることからインドに大きな注目が集まっています。

なぜ、インドはロシア非難決議を棄権したのか

 インドはロシア非難決議を棄権し、経済制裁にも加わっていません。

 しかし、世界のインドに対する風当たりが強くなるわけでなく、多くの主要国のトップによるインド訪問が続いています。

 インドはソ連時代に事実上の同盟ともいわれるほど強固な関係を築いており、ソ連崩壊後も一定の関係性を維持しています。

 一方で、インドは全方位外交も展開し、日米と防衛、ビジネスと幅広い分野で関係を深化させてきました。

 日米豪、ヨーロッパとしてはインドを取り込み、対ロシア包囲網を強固にしたく、ロシアもインドがパートナーになることのビジネスやグローバルなパワーバランスの釣り合いのためにも必要と感じています。

 インドもこの状況を把握しており、双方から必要とされる状況を利用し、自国の影響を拡大しようと考えています。

インドは全方位外交を展開しており、アメリカ、ロシア、双方との関係を維持しているため、決議を棄権しています。

双方から必要とされている状況を利用し、自国の影響を拡大しようとするしたたかさを持っています。

インドはなぜ、ロシアとの関係性を深めたのか

 1947年にイギリスから独立したインドは中国との関係性を深めますが、チベットが中後の統治下になったことで、国境を接することになると、徐々に関係性が悪化していきます。

 1962年には戦争にまで発展し、インドは敗北します。この時にアメリカがインド支援の姿勢を見せたものの、戦闘機の供与を拒否したこともあり、インドはロシアとの軍事的な関係性を深めていきます。

 また、インドに隣接するパキスタンは親西側路線をとっていたこと、中国とアメリカが和解したことなどからソ連と事実上の同盟と呼ばれるほどに関係性を強化していきました。

インドと中国の戦争の際にアメリカからの支援の姿勢が少なかったこともあり、ロシアとの関係性を深めていきました。

近年のインドの外交はどうなっているのか

 独立後のインドは社会主義要素の強い経済体制を採用したこともあり、低迷を続けてきましたが、1991年に経済の自由化に乗り出すと、規制撤廃、外資導入などのよって大きく成長するように変化していきました。

 外交的にもソ連の崩壊で、アジア重視に外交方針を転換しています。

 しかし、1998年の核実験で国際社会からの批判を浴びますが、アメリカとの対話のきっかけともなり、アメリカとの関係性は改善方向に向かいます。

 中国との関係は経済面では最大の輸出相手となるなど、深い関係ですが、政治的には国境問題が残っています。

 中国、インドともにさらなる拡大を目指しており、両国の影響力は今後も大きくなっていくと考えられます。

ソ連崩壊後、アジア重視の外交に転換し、アメリカとの関係性も改善に向っています。中国とも国境問題が残るものの経済的な結びつきは強くなっています。

中国の一体一路にはどんな狙いがあるのか

 中国は一体一路による経済力のさらなる強化を打ち出しています。

 一帯は中国から中央アジア、欧州までを結ぶ陸路、一路は中国から東南アジア、インド洋、地中海やを含めた海路のことです。

 一体一路は交通インフラの相互連結を重視し、貿易、投資の促進、工業の競争力向上、人的交流の推進などを掲げた壮大な経済圏思想です。

 一方で、中国が自国を中心とする経済圏の構築を通じて、ユーラシア、アフリカへの影響力を拡大し、アメリカに対抗しているための基盤にするのではという懸念も持たれています。

 この懸念もアメリカの反中姿勢をとらせるきっかけの一つになっています。

 日本では積極姿勢と慎重姿勢が入り混じっていますが、アメリカ、オーストラリア、インドに強力な働きかけをし、FOIP(自由で開かれたインド太平洋)を発足させています。

一帯は中国から中央アジア、欧州までを結ぶ陸路、一路は中国から東南アジア、インド洋、地中海やを含めた海路のことで、自国を中心とした経済圏の構築を通じて、アメリカへの対抗の基盤にする考えがあります。

自由で開かれたインド太平洋とは何か

 中国の海洋進出に対する懸念とインドの台頭から日本は自由で開かれたインド太平洋=FOIPの構想を推進していきますが、インドは中国ロシアとも深い関係にあり、なかなか賛同することができませんでした。

 最終的には排他的でなく、軍事的連合ではなく経済的な繁栄を追求する取り組みであることを強調する形で、インド側もFOIPの考え方に賛同しています。

 FOIPの考えはクアッドやインド太平洋経済的枠組みなど様々な形で推進されるようになっています。

アメリカ、オーストラリア、インド、日本による枠組みで、中国の海洋進出に対する懸念から発足しています。

インドは中国、ロシアとの関係があるものの、排他的でなく、経済的な繁栄を追求する取り組みとすることで賛同しています。

中国はアジア諸国でどのような影響を持っているのか

 中国は一体一路のためもあり、特に南アジアへの投資を続けています。その一方で、投資を行ってきたパキスタンのグワーダル港では商用的な開発で始まったものを、軍事的な狙いに代えるなど、その投資行動への懸念もあります。

 また、スリランカなどには投資の代わりに経営、運用に深く入り込むなど南アジアでの中国の存在感はどんどんの大きなものになっています。

 インドも中国の動きに対し、対抗していますが、資金力で中国に勝つことはできません。

 そのため、自由で開かれたインド太平洋を軸に他国と協調していくことの重要性はインドにとっても大きくなっています。

 半導体をめぐる台湾での問題を通じて、アメリカは中国抜きのバリューチェーンの形成を目指しており、製造業振興に取り組んでいるインドも名乗りを上げています。

中国は南アジアへの投資によって存在感を増しています。資金力で勝てないインドにとって、インド太平洋を軸にした他者との協調の重要性は増しています。

今後のインドに期待されることは何か

 インドはロシアとの軍事的な結びつきが強く、エネルギーの輸入先でもあるため、ウクライナ侵攻に対して、ロシアへの非難決議を棄権するなどの行動をとってきました。

 しかし、紛争の長期化に伴い、インドからも紛争の短期終結を求める発言が出てきました。今のところロシアの行動を変えるようなものではありませんが、2023年のG20ではインドが議長国を務めることもあり、紛争の出口戦略をリードする期待もされています。

 アメリカはインド、イスラエル、UAEの4国で構成される枠組みを構想しています。3国がインドへの資金、技術を供与することでインドをアメリカ主導の陣営に取り組み、ロシアとの間にくさびを打つことを検討しています。

 アメリカは4国の枠組みで西から、クアッドで東からインドにアプローチをかけています。

 中国の経済、軍事の両面での国力の向上は世界の多極化、米中対立につながっていき、インドはその多極化の中で関与を強める姿勢を打ち出しており、今後のインドの世界への影響は大きくなっていくことは間違いありません。

ロシアとの結びつきの強さからウクライナ侵攻による紛争の出口戦略のリードされることが期待されています。

アメリカはインドを陣容に加え、ロシア、中国との間位にくさびを打つことを望んでいます。中国の影響拡大に伴いインドの影響が大きくなることは間違いありません。

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