未婚と少子化 筒井淳也 要約

本の要点

要点1

少子化は日本の最大の問題のひとつですが、誤った認識が多く、バランスの悪い議論が続いてしまっています。

特に、日本では、少子化対策=子育て支援となってしまっているのは典型的な誤った認識です。

少子化対策は人間社会に関連するものであり、自然科学のようにブレのないエビデンスを得ることは難しいため、データや実績をもとにバランスの取れた方向性を探ることが重要です。

スカッとしない部分もありますが、複雑なものをシンプルに見すぎるとしっぺ返しを食らいます。広い視点で適切な対応を行うことが必要です。

要点2

今でも、結婚した人たちが生む子供の数はそれほど減少していません。少子化の本当の要因は晩婚化と未婚化の進行です。

不安定な雇用環境など経済的な不安が晩婚化と未婚化をもたらしたことで、少子化が進行しています。

そのため、子育て支援そのものは重要ですが、少子化対策としては不十分です。

また、人生に子供が必須という時代に戻ることはありません。子供中心の社会を作るのでなく、結婚や子供が人生の他の面に影響しない社会作ることこそが求められています。

要点3

フランスは、雇用、男女の賃金格差、保育など様々な政策に長期的にじっくり取り組んだことで、ある程度の少子化対策に成功しています。

総合的な政策を長期間かけて行うといった政策は政治家にとってアピールしにくいものであるため、子育て支援の話に終始しがちになってしまいます。

しかし、本当の要因は晩婚化と未婚化であり、安定した賃金、雇用、時間外労働や転勤の減少など地道な取り組みが不可欠です。

この本や記事で分かること

・少子化の問題は何か

・少子化の本当の要因は何か

・どのような少子化対策が有効なのか

少子化の議論の問題点は何か

少子化は日本の最大の問題のひとつですが、少子化対策=子育て支援と捉えてしまうなど誤った認識が多く、バランスの悪い議論が続いてしまっています。

少子化対策で重要なことは何か

少子化対策は自然科学のようにブレのないエビデンスをとることは難しいものです。

そのため、データや実績をもとにバランスの取れた方向性を探ることが重要です。

スカッとしない部分もありますが、複雑なものをシンプルに見すぎると、しっぺ返しを食らいますし、日本にはわかりやすいが、役に立たない対策で無駄にできる時間はありません。

少子化はなぜ、問題なのか

少子化の問題点は人口や年齢構成の歪みです。

高齢化によって生産年齢人口の減少や社会保障費の増大で経済成長が減速してしまうことが少子化の大きな問題です。

出生率を上げれば、人口を維持できるのか

一度、出生率が下がると子供を産む女性の数が減るため、多少出生率が向上しても、人口規模を維持することはできません。

現状の人口規模を維持するには、出生数を大幅に向上させる必要があり、現実的ではありません。

少子化対策はどのようにあるべきか

少子化による労働人口の減少を解消するために、移民をどのように受け入れるのかなども本来は、少子化対策のひとつですが、あまり議論されていません。

人口規模を維持することが不可能な以上、どういう国を作りたいかという視点を持つことが欠かすことができません。

少子化の原因は何か

結婚した人たちが生む子供の数はそれほど減少していません。少子化の要因は晩婚化と未婚化の進行です。

不安定な雇用環境など経済的な不安が晩婚化と未婚化をもたらし、少子化が進行しています。

有効な少子化対策は何か

時代が変化し、人生に子供が必須という時代に戻ることはありません。子供中心の社会を作るのでなく、結婚や子供が人生の他の面に影響しない社会作ることが求められています。

婚外子や移民は少子化対策になるのか

婚外子や移民が少子化対策となるのかには、国の状況や文化にも左右されます。

状況や文化の違いを考慮することが必要です。

なぜ、フランスはある程度の少子化対策に成功したのか

フランスは、雇用、男女の賃金格差、保育など様々な政策に長期的にじっくり取り組んだことで、ある程度の少子化対策に成功しています。

日本の少子化対策で必要なことは何か

総合的な政策を長期間行うような政策方針は政治家にとってアピールしにくいものであるため、多くの人を引き付ける子育て支援とその財源の話題に終始しがちです。

しかし、少子化の本当の要因は晩婚化と未婚化です。安定した賃金、雇用、時間外労働、転勤の減少など地道な取り組みが不可欠です。

本の要約

要約1

少子化は日本にとって、最大の問題の一つですが、誤った認識やミスリーディングな認識のため全体の議論のバランスが悪い状態が続いています。

少子化対策=子育て支援と捉えられがちである点などが典型的な誤った認識です。

少子化対策は人間社会に関係するものであるため、自然科学的な現象のようなぶれのないエビデンスは得られにくいものです。

そのため、様々なデータや実情をもとにバランスの取れた方向性を探ることが重要です。

スカッとしない部分もありますが、複雑なものをシンプルに見すぎるとしっぺ返しを食らいます。日本にはわかりやすいが、役に立たない対策で時間を使う余裕はありません。広い視点を持ち、適切な対策を行うことが求められています。

要約2

少子化の問題は、人口構成、年齢構造の歪みにあります。

急激な少子化は急激な高齢化を進行させ、生産年齢人口の減少や社会保障費を増大させることで経済成長にマイナスの圧力をかけてしまいます。

多くの先進国も日本と同じように出生率は減少していますが、日本ほど高齢率が高いわけではないため、日本の状況はより深刻といえます。

少子化は緩やかであれば、人口規模に与える影響はそれほど大きなものではありません。しかし、子供を産む世代の女性が減っていけば、出生率が多少上がっても出生数が上がらなくなっていきます。

1970年代前半には190万人を超える出生数がありましたが、2020年には84万人でした。出生率を2倍以上にする必要があり、現実的ではありません。

要約3

少子化対策の目的には「どういう国を作りたいか」という視点が欠かせません。

人口規模の維持は不可能であり、人口構成の歪みを小さくするためには、不足が予測される労働力を補うための外国人の移住を増やす必要があります。その際に、外国人の受け入れやその家族の教育をどうするのかなども考える必要があります。

本来このような問題も少子化対策の一環として語られるべきですが、現状では、子育て支援とその財源しか語られていないません。

今でも、結婚した人が生む子供の数は大きく変化していません。子育て支援自体は重要であり、必要なものですが、今子供を生んでいる人はすでに結婚し、子供を持てている人たちです。

少子化の本当の要因は晩婚化と未婚化によるものあり、晩婚化や未婚化は不安定な雇用環境などの経済的な不安定さが要因です。現状でも働き口が多く、住居費の高くない地域での出生率は比較的高くなっています。

また、子供中心というスローガンも少子化対策として有効ではありません。人生に子供が必須という時代に戻ることは不可能です。人生を子供中心に構築するのではなく、結婚や子供を得ることが人生の他の側面にあまり影響しないような社会を作ることがより有効です。

要約4

他国の状況などから、婚外子の増加、移民の受け入れを推奨する声もありますが、置かれた国の状況や文化の違いを考慮しなければうまくいくこともありません。

海外で婚外子が多いのは離婚のハードルが日本以上に高いため、子供ができてしばらくしてから法的な結婚をすることが多いことや結婚しなくても問題が少ない制度が充実していることも大きな理由です。

移民の受け入れも本来の目的は不足する労働力の確保です。移民が移住先で多くの子供を産むかはその国の状況にも左右されます。日本の場合は移民による出生率の改善は見られないとする予測もあります。

少子化は複合的な問題であり、その解決や緩和にも様々な側面があります。

フランスの少子化がある程度成功してきたのは雇用、男女賃金格差、保育など様々な政策を総合的に絡め合わせ、長期的にじっくり取り組んできたためです。

総合的、長期的、粘る強くといった政策方針は政治家にとってアピールしにくいものです。また子育て支援やその財源の問題は多くの人を惹きつける力があるため、子育て支援を打ち出す政治家に惹かれてしまいます。

しかし、少子化の要因は晩婚化と未婚化です。安定した雇用と賃金の下で時間外労働や転勤などの地理的移動を少なくするというような地道で長期的な取り組みを行っていくしかありません。

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