本の要約
Facebookがメタ(Meta)と社名を変えたようにメタバースが大きな話題になっています。
メタバースとは仮想現実を利用して、新しい世界を作り出すもので、技術の発展によって大きく進化しています。
似た技術に現実を模倣したミラーワールドや現実世界にデジタル情報を加える拡張現実(AR)などがありますが、メタバースでは実世界よりも都合の良い世界を作り出すことが可能になります。
現在社会の生きずらさから同じような考え方の人がSNSに集まるように、他者との衝突を防ぐことのできる社会を作ることができれば、多くの人が利用したいと考える可能性は高く、多くの企業が参入しています。
現実社会から逃げ込むようなネガティブな印象を受ける人も多いと思いますが、大きな可能性を秘めており、取り組み続けることで生きるうえでも、ビジネス上でも大きなチャンスとなる可能性があります。
この本がおすすめの人
・メタバースがなにか知りたい人
・メタバースで何ができるのか知りたい人
・なぜ、メタバースに大きな注目が集まっているのか知りたい人
メタバースはなぜ注目されているのか
フェイスブックがその社名をメタ(Meta)と変えています。社名変更はどんな会社でも大きな決断だが、大きな知名度を持つ企業であれば特に重大な決断になります。
メタバースはインターネット上での次なるキラーサービスとされ、フェイスブックの社名変更はメタバースでの存在感を持ちたい気持ちの表れです。メール、検索エンジン、掲示板、ECサイト、SNS、動画配信の次がメタバースと見られています。
SNSや動画配信に次ぐキラーコンテンツとして注目されています。
ファイスブックがMetaと社名を変えたことでも話題を集めています。
メタバースの魅力は何か
メタバースの魅力はリアルと仮想の融合や仮想世界に住むことに指先がかかる可能性をもつことです。
一方でどんな技術にも負の面はあります。新しいものが現れると恐怖を覚えるものです。メタバースを知ることで萎縮せずに対応することができるようになります。
メタバースの魅力はリアルと仮想の融合にあります。
メタバースとは何か
メタバースはインターネットにおける仮想世界とされ、仮想世界=仮想現実(VR)と捉えることが多いです。
幅広い分野でモノ消費からコト消費がうたわれ、モノが飽和したためコト(体験)の価値が高まったとされていますが、実際にはモノに比べコトはコピーされにくく、商売しやすいためと考えられます。
将来的にVRの体験の価値が現実を上回れば、コト消費を脅かす可能性も充分に考えられます。VRが拡張現実(AR)へ広がれば、仮想と現実が誘導度は増し、疑似体験の質が向上し体験を消費することができるようになります。これらの試みはリアルな世界に限りなく近い仮想世界を作ることを目指しています。
もう一つ、仮想世界を現実とは異なる世界を作る方向性もある。現実とは少し異なる理で作られ、自分にとって都合の良いもう一つ世界を作ります。これがメタバースと呼ばれるます。
現実に近い世界を体験するにはARや複合現実(MR)が、もう一つの世界にはVRが適しているため、メタバースにはVRが適しています。
仮想世界を作る技術は大きく発展し、仮想現実がリアルと同等になる日も近くなっています。
仮想世界を現実と少し違う都合の良い世界を作ったものがメタバースとなります。
メタバースはどのような人が使用するか
社会が多様化することで我々は多くに自由を手にすることとなりました。しかし多様性の低いしきたりや旧弊な社会は不自由だが、それに従えば居場所は確保しやすかった面もあります。
一方で自由には責任がつきもので、平等と自由は両立しにくく、能力や資源に恵まれない人には生きづらくなっています。人間は承認欲求が強いが多様な社会では自分を認めてもらうことは難しくなり、不安を覚え、不安を埋めてくれるようなものに飛びつきやすくなっています。
SNSはその一つになっています。SNSは友達とつながるネットワークではなく、小さいな世界に人を閉じ込めて囲い込む技術です。SNSはフィルタリングによって同じ考えの人を囲い込むため、居心地が良くなり長い時間を過ごしてしまいます。
SNS以上にその世界に居続けたいと思わせるような世界がメタバース。それが健全かどうかは別としてほとんどの人生をそこで過ごしてもよいと考える人も出てくる可能性もあります。
現実世界で生きづらさを感じる人は増えており、現実世界より都合の良いメタバースの世界にいたいと思う人が増えていく可能性はあります。
メタバースが普及しそうな動きはあるのか
フォートナイトは3人称の狙撃ゲームで人気の作品。アップルストアからの削除も辞さずに自社アプリでの課金を促し、アップルストアから削除されると独占禁止法でアップルを訴えています。
アップルストアの手数料は30%と高いが、多くの企業は従わざるを得ませんでしたが、フォートナイトを経営するエピックはこれほど強気でいれる理由はシューティングゲーム自体が人気なことも要因ですが、ビルダー要素を加えたり著名なアーティストのコンサート行うなどで、世界により居続けたいと思わせる力が強いためという面もあります。
リアルな世界が複雑化し、その運営が行き詰まると仮想現実の世界に行くしかありません。それを逃げと見る人もいるが、リアルよりも楽しい場所を探す開拓者ともいえます。フォートナイトの世界はリアルの代替や下位互換ではなくリアルではできないこと、リアル以上の楽しいことで満ちており、もう一つの世界=メタバースとして機能し始めています。
メタバースの市場は一定規模に達しており、今後消費者が慣れることでさらに市場は拡大していく。
フォートナイトの世界はリアルの代替や下位互換ではなく、リアル世界よりも楽しい場所となり、もう一つの世界として機能し、大きな人気を集めている。
大手SNS企業もメタバースを意識しはじめている
メタバースは市場規模、利用者数で大手SNS が意識をせざるを得ないほど勢力を拡大しています。SNS企業はメタバース要素をサービスに加え、メタバース企業はSNS要素をサービスに加えることで勢力を拡大しようとしているます
メタバースがインフラ化するとそこで過ごす時間は増えます。リアルよりも少し快適な場所をメタバースで作るのは遠い目標ですが、各企業がそう長くない期間で実現可能と考えたため多くの企業が参入し始めています。
大手SNS企業がメタバース要素を加えるなど、その勢力を拡大しています。
メタバースの流行はサブカルチャーの分野にすぎないか
サブカルチャーは弱者文化であり、弱者は社会の変化の影響を受けやすいため、変化に敏感になります。そのためサブカルチャーが社会の変化をいち早く示すことは多くみられます。
格差の拡大と固定や個人主義の浸透で、リアルな社会で生きづらさを感じる人がリアルな社会から降り仮想現実で生きていくことはあり得る選択肢になります。
個人が発信手段を持ち、検索エンジンが発達したため、自分だけの発見は極めて希少になり、たいていのことは誰かがやっている状態になっています。あつ森などのゲームが人気なのもゲームの世界であれば、新しい発見が現実世界よりも簡単に実現できることも要因の一つです。
サブカルチャーの分野は社会の変化をいち早く表すため、サブカルチャーでのメタバースの流行が社会全体に波及する可能性は充分にあります。
メタバースで理想の社会を作ることができるのか
デジタルデータはコピーしやすいことが一つの特徴だが、ブロックチェーン技術でデジタルデータを識別可能にし、オリジナルに価値を持たせることも可能になっています。NFT(非代替性トークン)とよばれ、絵画、トレーディングカード、キャラクター、写真なども売買の対象になっている。この流れがオリジナルを作成し人が今以上に収益を得ることのできる可能性もあり、メタバース内での収入を得やすくなる可能性も秘めています。
もう一つの世界が無条件で良いわけではありません。リアルな世界における格差はリセットされるが、平等なわけではなく敗北感や疎外感を感じることはある。
このような状況に対して、SNSのフィルターをさらに極端にし、フィルターの境界を個人個人にし、フィルターの中に自分しかいないようにし、他者との衝突(フリクション)を避けるという手法もある。AIなどを遊び相手にし、他人を排除するという考えは、多くの人は嫌悪するが、フィルターの中に他人を入れれば、もう一つの世界でも平等を模索することが必要になってしまう。
NFTなどでメタバース内で経済的な収益を上げることは可能になるが、無条件でよいわけではなく、メタバース内でも格差が発生していきます。
フィルターの中に自分しかいないようにすることで他者との衝突を防ぐことも考えられています。
なぜメタバースが急速に発展しているのか
メタバースが急速に発展しているのには、いくつか理由がある。
1.技術的背景
描画技術、反応速度、映像技術の向上によってもう一つの世界への没入感が増したため。
2.人間の変化
リアルな世界が生きにくくなり、リアルでなくても構わない人が増えたため。個人の自由の拡大と権利強化は価値観を多様化させ、コミュニケーションや承認欲求を得ることを難しくさせている。自由度の低い社会ではどこかに正解があって、それに対する答えが間違っていることになるが、自由度の高い社会では自分なりの答えを作ってもよいのにその答えが否定されるため、よりしんどくなる。
学業、仕事、恋愛など生き方すべてで多様性が増した半面、自分で決めなければならないという圧は強く、決断を行うことはより難しくなった。リスクとフリクションを最小限にするためにも、できるだけ自分に合う人や物をフィルターの中で見つける傾向が強くなり、そのためにSNSを利用している。人も多い
SNS以上にフィルタリングが可能なメタバースであれば、さらにその中で暮らす時間は増えると考えられる。
技術に進歩とフィルターされた社会で生きたいと感じる人が増えたことで、発展と普及が進んでいます。
どんな企業がメタバースに取り組んでいるのか
メタバースはウェブやSNSに代わり得る存在で、ビックテックであるGAFAMも積極的に進出を検討しています。
社名変更からもわかるように大きく力を入れています。Facebookは他のビックテックに比べ基盤的なサービス、プラットフォームを持っていないため、メタバースをプラットフォームにしたいと考えています。さらにはVR機器メーカを買収し、リアルとリンクする商品を売ることで代替不可能の底上げも狙っています。
広告がWebからSNSへと移っている面はいますが、Webもいまだ大きなトラフィック量を持っています。Googleはインターネットの中でフラットで価値ある情報へアクセスしやすい状態を作り出しています。しかしフィルターリングされた世界を好む人が増えればSNSへの移行が加速すると思われ、その先にメタバースがあります。
それでもリアルビジネスとの強い結びつきをもつGoogleとしては、無理に仮想世界への移行を進める必要はなく拡張現実路線を進むと思われる。
・Apple
デザインと製品を売りにする企業であるため、仮想世界への移行を積極的に進める必要性は薄いです。iPhoneを母艦にし、周辺機器としてスマートグラスをAR用途で利用する見込みがあります。
・マイクロソフト
Apple同様製品を売りにしており、ARが主体になるが、他に比べMRの要素を強くしています。現実世界に情報を表示するのではなく、見える部分を少し変える方向性です。レンズを通すと実際のカーテンの色と違う色に見えるなどのようなイメージで、医療や建設、製造現場での利用が想定されています。
・Amazon
リアルなものを受注し、届ける経路を抑えているためメタバースでも、その分野では大きな影響力を持ち続けます。クラウドサービスもメタバースに必須であり、Amazonのクラウドを使用する可能性が高くなっています。
メタだけでなく、その他のGAFAMをはじめとして多くの企業が進出しています。
日本はメタバースにどう取り組むべきか
リアルな世界を模したミラーワールドとメタバースはしばらく両立していく。日本はサブカルチャーで高い評価を得ているため、企業が存在感を示すのはメタバースが良いと思われるが行政公認の取り組みがミラーワールドに偏っているのが懸念になる。
ミラーワールドは情報の量と質がものをいうため、ビックテックの優位性は揺るがすのが非常に困難です。一方で、ゲームやアニメの集積は大きいため、これらの世界観をベースにする、もう一つの都合の良い世界をメタバースが日本が勝負するべき分野となります。
メタバースはサブカルチャーと相性がよく、サブカルチャーで高い評価を受ける日本には大きなチャンスがあります。
ミラーワールドでビックテックの優勢を揺るがすことは困難で、メタバースが集中すべき分野となります。
メタバースではどのような世界を目指すべきか
技術の高まりを背景に現実と仮想を融合が現実味を帯びている。融合が現実になればそれに対応したグランドデザインが重要になります。
リアルに寄せるのがミラーワールドやデジタルツイン、サイバー空間を充実させるのがメタバースとなります。メタバースはリアルの模倣にこだわらないため、より都合の良い世界を作りやすくなる。仮想の世界に逃げ込むようなイメージを持つが仮想現実での体験がリアルに比肩するようになれば、イメージが変わる可能性もあります。
SNS以上にフリクションが無く、SNS以上に長時間滞在できる空間であれば多くの人が、長い時間を過ごすようになります。メタバースのもたらす世界を想像し、問題点を考え、それに取り組み続けることで人はより良い人生を生き、巨大なビジネスチャンスを掴むことができます。
リアルの模倣ではなく、より都合の良い社会を作り出すイメージが有効です。取り組み続け、問題点を改善することで人生をよくするだけでなく、ビジネスチャンスをつかむこともできます。
感想
FacebookがMataとその社名を変えたことで大きな話題となったメタバース。メタバースは主にVR技術を使って、新たな世界を創り出す技術のことで大きな可能性を秘めています。
メタバースで作り出された、現実に似てはいるけど、少し現実よりも都合よい世界を作ることができることが特徴になっています。
SNSの発展からも分かるように、人々は自分のフィルターの中で生活することを望みつつあります。メタバースはその居心地の良さで多くの人が望む世界を構築できる可能性があります。
違う考えの人と触れないことで、誤った意見が増幅されるエコーチェンバーなどフィルターの中にいることの問題も多く指摘されていますが、居心地の良さとフィルターの弱点が克服される可能性も秘めています。
一方で、完全に自分だけの世界で、AIが相手となり、何のコンフリクションもないというのはなんとなく気持ちが悪い感じもします。違和感を感じずに世界に没入できるかは、人それぞれなような気もしてしまいます。
ただ、空想でしかなかった仮想現実の世界で生活できるという社会が実現するかもしれないことは単純にワクワクしますし、楽しみなことです。
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