資源の世界地図 飛田雅則 要約

本の概要

気候変動への対策の必要性から化石燃料からの脱却が世界の潮流になっています。化石燃料の使用量が減少すれば、資源に対する見方も大きく変化していきます。

化石燃料を輸出している国はこれらの需要が減れば、大きな経済の転換が求められます。特に中東は石油の輸出に頼ってきたことから、石油依存からの脱却が必要になっています。

また、アメリカがシェール革命で石油の輸入を減らし、中東への関与を減らしたことで、中東での中国やロシアの存在感が強くなるなどの変化もみられています。

石油の需要が減少する中で、資源としてレアメタルの重要性は増加しています。

レアメタルは埋蔵量はそこまで少なくありませんが、資源の偏在が大きな懸念であり、レアメタルをめぐる動きは活発化しています。

世界が資源をめぐってどのような捉え方をしていて、実際にどのように行動しているのか、これからの資源はどうなっていくのかを知ることができる本になっています。

この本や記事で分かること

・脱炭素のもたらす世界の変化

・レアメタルの重要性と各国の対応

各資源での発電技術をまとめた要約はこちら

環境問題と経済の関係を書いた「ネイチャー資本主義」の要約はこちら

本の要約

要約1

気候変動への対策の必要性から化石燃料からの脱却が世界の潮流になっています。化石燃料の使用量が減少すれば、資源に対する見方も大きく変化していきます。

環境分野への対応が経済的な発展に結びつくようになれば、中国やアメリカも積極的に関与するようになり、今後急速に脱炭素が進行する可能性があります。

実際に、石油の使用量のピークは過ぎたという予測やアメリカの石油王手のエクソンがダウ工業株平均の構成銘柄から外れるなど脱炭素の潮流は多くの場面で見られています。

化石燃料の減少によって、資源をめぐる新たな動きが多くの場面で見られ始めています。

要約2

化石燃料に代わって重要性が上昇しているのが、レアメタルと呼ばれる希少な金属原料です。

レアメタルはわずかな量を別の金属に添加することで、大きな性能が出ることもあり、工業分野で欠かすことができませんが、埋蔵箇所が偏在していることが特徴です。

多くのレアメタルは上位3か国の埋蔵量が50%を超えており、政情の混乱や鉱山の事故を受けやすくなったり、生産国が外交に利用するなどの懸念があります。

要約3

各国が資源に関する見方を変え、行動しています。

中国:レアメタル確保がアフリカへの関与を強める要因の一つになっています。

サウジアラビア:石油に頼らない経済への転換を計っていますが、政府への不満が大きくなっています。

中東諸国:アメリカのシェール革命で石油の輸入が減り、アメリカの中東への関与が減少。アメリカに代わって中国、ロシアが中東との関係性を深めています。

ロシア:天然ガスを多く輸出しています。欧州の調達ルートの多様化、再生可能エネルギーの普及速度によっては需要が減少する可能性があります。

アフリカ:多数のレアメタルが埋蔵していますが、政治の腐敗、政情不安、児童労働などの問題があります。

要約4

2020年、日本も2050年時点でのにカーボンニュートラルを実現することを表明しました。

日本にとって重要になるのは、燃料電池車や燃料としての水素の利用、洋上風力などで他国をリードできるかです。

エネルギー自給率の低い日本にとって再生可能エネルギーの普及はエネルギー安全保障の高まりにもつながります。

また、欧米を中心に進行している脱炭素のルール作りにも押し付けられるのではなく、策定の段階から積極的に関与する必要があります。

レアメタルについては、尖閣諸島問題で中国が報復として禁輸処置をとられたこともあり、安定調達が重要な課題です。

レアメタルの備蓄や調達先の多様化のためには、民間企業だけでは抱えきれないリスクを国が支える必要もあります。

日本は都市鉱山と呼ばれる使用済みの電子部品や部材、工場で発生する金属くずなどに含まれるレアメタルの量が多く、リサイクルも重要になります。

蔵国に技術供与を行い、産業化に力を貸すことで安定調達を実現することや代替材料の開発を行うことも有効な対策です。

脱炭素の動きは資源をどう変えるのか

 気候変動への対策の必要性から化石燃料からの脱却が世界の潮流になっています。

 電気自動車の普及、再生可能エネルギーや水素の利用で化石燃料の使用量が減少すれば資源の見方も大きく変わっていきます。

 環境分野への対応は気候変動だけでなく、経済的な発展に結びつくという声もあるため、今後急速に進む可能性もあります。

 これまでは、欧州が先導していた環境対応に中国やアメリカが積極的に対応し始めたことが脱炭素が大きく進む可能性を高めています。

気候変動への対策の必要性から化石燃料からの脱却が進んでいます。

電気自動車の普及、再生可能エネルギーや水素の利用で化石燃料の使用量が減少すれば資源の見方も大きく変わっていきます。

需要の減少する石油の代わりに注目を浴びる資源は何か

 石油の需要のピークは過ぎたという予測やアメリカの石油王手のエクソンがダウ工業株平均の構成銘柄から外れるEGS投資の盛り上がりなど、脱炭素の流れは多くの場所で見られています。

 一方で、スマホや自動車、電気製品に不可欠なレアアースやレアメタルなどの資源の重要性は増加しています。

 レアメタルは存在量が稀、もしくは技術的、経済的な理由で抽出が難しい金属のうち工業的な需要があり続けるものと定義されています。

 レアアースはレアメタルの一種であり、軽希土類と重希土類に分けられており、様々な用途に利用されます。

 レアメタルはわずかな量を別の金属に添加することで、大きな性能が出ることもあり、工業分野で欠かすことができませんが、埋蔵箇所が偏在していることが特徴です。

在量が稀、もしくは技術的、経済的な理由で抽出が難しい金属のうち工業的な需要があるレアメタル、レアアースが石油に代わって注目を浴びています。

レアメタルは地中での埋蔵箇所が偏在していることが特徴です。

レアメタルの偏在はどれくらいなのか、また偏在がもたらす問題はなにか

 レアメタルの可採年数はそれほど短くありませんが、多くの種類で、上位3か国の埋蔵量50%が超えており、その偏在性が大きな問題です。

 生産国が限られてると、政情の混乱や鉱山の事故を受けやすくなったり、生産国が外交に利用するなどの懸念があります。

 実際に中国は日本への報復処置として、レアメタルの禁輸政策を実施した過去があります。

多くのレアメタルは、上位3か国の埋蔵量50%を超えています。

生産国が偏在していれば、政情の混乱の影響を受けやすい、外交へ利用する可能性があるなどの問題が発生します。

中国の最近の動きで注目すべき点は何か

 中国はアフリカのインフラ整備のために多額の支援を行っています。

 一帯一路によって鉄道や道路をアフリカ諸国で積極的に開通するなどアフリカでの影響力を高めています。

 ファーウェイやZTEなど中国の規格で通信インフラを整えることなども進めています。

 アメリカは中国の動きを国際秩序を再構築し、覇権を獲得するためのものと警戒しています。

 中国は欧米諸国よりも素早い融資を行っていることからアフリカ諸国から歓迎されています。一方で中国への債務を返済できず、資源やインフラを中国に手放す動きも出てきています。

中国はアフリカの通信インフラなどインフラ整備のために多額の支援を行い、アフリカへの関与を強めています。

中国への債務を返済できず、資源やインフラを中国に手放す動きも出てきているなどの問題もあります。

中国のアフリカへの援助は資源の面からはどう捉えられるのか

 中国のアフリカへの関与はレアメタルなどの資源のためでもあります。 

 リチウムイオン電池の正極剤として使用されるコバルトは50.7%がコンゴに埋蔵されていますが、コンゴのコバルト資源の開発、採掘に参加する中国資本の比率は30%を超えています。

 中国自体にも多くのレアメタルが埋蔵しており、覇権主義的な対外行動が目立つ中国に重要な資源の供給を頼むのはリスクと考える必要があります。

 レアメタルには精錬の過程が技術的に難しいだけでなく、分離作業が放射性物質を伴うこともあり、環境規制が緩く、技術のある中国での生産が増えている面もあります。

アフリカにはレアメタルが多数埋蔵されており、中国のアフリカへの関与はレアメタルなどの資源のためでもあります。

中国自体にも多くのレアメタルが埋蔵していることもあり、精製技術が高まっています。

レアメタルの精製は技術的な難しさだけでなく、環境負荷が大きいという問題があるため、環境規制が緩く、技術のある中国での生産が増えています。

産油国はエネルギーの変化にどう対応しているのか

 産油国であるサウジアラビアも、エネルギーの変化を受け、皇太子であるムハンマドを中心に、石油に頼らない経済への転換を計っています。

 カーボンニュートラルで原油価格の需要が少なくなれば、これまで歳入の7割を占めてきた石油からの脱却が不可欠になります。

 民間企業の育成による雇用創出や過剰な福祉からの変化が望まれますが、政府への不満を抑えつつ改革を行うことは難しくなっています。

 政府への不満が大きくなれば、王族による支配から民主化への要望が大きくなる可能性も十分にあります。

産油国である王族を中心にサウジアラビアはこれまで歳入の7割を占めてきた石油に頼らない経済への転換を計っています。

しかし、政府への不満を抑えつつ改革を行うことは難しくなっており、王族による支配から民主化への要望が大きくなる可能性も十分にあります。

アラブ国家の民主化は進んでいるのか

 サウジアラビアでも民主化の声が聞かれていますが、アラブの春で民主化を果たした他の国の現状も良いものではありません。

 シリアのように内戦状態に陥るか、エジプトのように強権政権に戻るかの極端な二択になっていしまっており、失業や貧困、経済格差などの問題は解決していません。

 中東諸国は強権的な国王や軍出身の大統領が経済政策を主導してきたため、支配エリートの権力や利益拡大と直結しがちです。

 起業した企業を軍関係者が潰したなどの問題も発生しており、本当に民間企業の成長を促すことができるのか注目されています。

 例外はイスラエルで、ハイテク産業が盛んで年に800社ほどが起業し、100社ほどが外国企業に買収されています。

 イスラエルは町が解放感にあふれ、自由と失敗を許容する雰囲気があり、政府が自由な研究開発のたまに障壁を取り払っており、スタートアップに適した環境になっています。

アラブの春で民主化を果たした他の国は、内戦状態に陥るか強権政権に戻るかの極端な二択になっていしまっており、失業や貧困、経済格差などの問題は解決していません。

例外的にハイテク産業の盛んなイスラエルのようにサウジアラビアがなることができるのか注目されています。

資源の変化は中東の政情にどのような影響を与えているのか

 アメリカはシェール革命によって石油や天然ガスの生産を拡大させ、サウジアラビアからの石油の輸入を大きく減らしています。

 自国内での資源供給が増えたことで、アメリカは中東への関与を減らしており、サウジアラビアなどはアメリカ後ろ盾が減り、立ち振る舞いを変更する必要が出てきています。

 一方で、アメリカに代わって中東との関係性を深めているのが中国とロシアです。

 両国とも強権的な政権であることから、アラブの諸国の政治体制に文句をつけることがない点もアラブ諸国にとっては好都合です。

 脱炭素に向かっても当面の間、石油が必要であることは間違いありません。

 特に石油の輸入の9割を中東に依存する日本とっては中東の安定はこの先も重要です。

アメリカはシェール革命でウジアラビアからの石油の輸入を大きく減らしたこともあり、中東への関与を減らしています。

アメリカに代わって中国とロシアが中東との関係性を深めています。

ロシアは資源の変化をどのように捉えているのか

 ロシアは天然ガスを多くの国に輸出しています。

 天然ガスは二酸化炭素を排出しますが、石油や石炭に比べれば少ないため、CO2の回収技術と組み合わせて使用し続けると想定されています。

 プーチン大統領は就任以来、民間企業の解体や国営企業による買収を通じて、資源の国家支配を強めてきました。経済的に、資源依存が高く、民間企業の活動が圧迫され、経済の活力をそぐ形になってしまっています。

 欧州はロシアの天然ガスを燃料として使用し、多くを輸入していますが、ロシアが天然ガスを政治や脅迫の道具に使用すると認識しており、調達ルートの多様化を検討しています。

 旧ソ連を構成していた国家も欧州や中国への輸出ルートを築いていることもあり、欧米と対立したロシアは中国に歩み寄っていますが、価格は中国に有利なものになっています。

 天然ガスは再生可能エネルギーが普及するまでのつなぎになるものですが、中長期的な需要の不透明さ、強豪国がひしめく中でガス市場で勝者になることができるか注目されています。

ロシアは天然ガスを多く輸出しています。

天然ガスは二酸化炭素を排出しますが、石油や石炭に比べれば少ないため、CO2の回収技術と組み合わせて使用し続けると想定されています。

ただし、中長期的な需要の不透明さ、欧州のロシア離れなどもあるため、ガス市場で勝者になれるのかどうか注目されてます。

レアメタルの眠るアフリカの問題は何か

 電気自動車の普及に伴って、リチウムイオン電池の需要も拡大しており、リチウムイオン電池に使用される、リチウム、ニッケル、コバルトの重要性が増していきます。

 コバルトは埋蔵量、生産量ともにアフリカ中央に位置するコンゴが多く、埋蔵量が50.7%、鉱石生産で67.8%を占めています。

 各国がコンゴの鉱山と直接取引を行うなど争奪戦が起きています。

 しかし、コンゴは紛争が多発する政情不安が付きまとっている、多くの児童が鉱石関連での労働を行っている、違法な採掘が多い、採掘現場が劣悪な環境であるなどの問題を抱えています。

 コンゴはコバルト以外にも、スズ、タングステン、タンタル、金なども産出しますが、これらの鉱物には武装勢力にかかわるものもあり、武装勢力に資金が流れる元にもなってしまっています。

 アフリカ諸国全体で見ても、政治の腐敗や汚職が多く、資源輸出で得た収入が国の発展に直結しているわけではありません。

 欧米はこれらの問題に対し、サプライチェーンの管理を徹底し、コンゴ産の鉱物を使用しない、人問題や紛争地とは関係ない鉱山で産出したものだけを使うなど対策をとっています。

アフリカには多数のレアメタルが埋蔵していますが、政治の腐敗、政情不安、児童労働などの問題があります。

サプライチェーンの管理で問題のある資源を使用しないような動きもみられています。

日本は資源の変換にどう立ち向かうべきか

 2020年、日本も2050年時点でのカーボンニュートラルを実現することを表明しました。

 脱炭素に向けた投資を、てこに経済成長を目指すこグリーン成長戦略で広がる脱炭素の動きに加わっています。

 特に燃料電池車や燃料としての水素の利用、洋上風力などで他国をリードできるかが重要になっています。

 石油やガスなどを海外からの輸入に頼っている日本はエネルギー自給率が9.6%と低く、再生可能エネルギーが普及すれば、エネルギー安全保障が高まることも言われています。

 しかし、エネルギー転換に必要なレアアースなどの資源にもリスクはあります。

2010年の尖閣諸島をめぐる問題では、中国に報復として、禁輸処置がとられたこともあり、安定調達が一段と重要な課題になります。

 備蓄や調達先の多様化、リサイクルが重要となるだけでなく、民間企業だけでは抱えきれないリスクを国が支える必要もあります。

 また、使用済みの電子部品や部材、工場で発生する金属くずなどにもレアアースなどの鉱物が含まれています。

 これらは都市鉱山と呼ばれ、日本は都市鉱山の量が多く、リサイクルを進めれば安定調達を実現できる可能性を秘めています。

エネルギー分野ではエネルギー自給率が低いため、再生可能エネルギーが普及すれば、エネルギー安全保障が高まることも言われています。

燃料電池車や燃料としての水素の利用、洋上風力などで他国をリードできるかが重要になっています。

レアメタルについてが安定供給のための備蓄、調達先の多様化が重要であり、民間企業だけでは抱えきれないリスクを国が支える必要もあります。

また、使用済みの電子部品や部材、工場で発生する金属くずなどの都市鉱山のリサイクルを進めることも重要です。

日本は世界の脱炭素にどうかかわっていくべきか

 温暖化対策として、欧米を中心に排出量取引などのルール作りが進んでいます。

 日本が出遅れてしまうと、出来上がったルールを押し付けられてしまうため、ルール作りに初期から参加することも求められます。

 レアメタルの偏在は安定調達にとって大きな問題です。日本は優先順位を決め、産業にとってニーズが高く、希少で偏りのある資源を優先的に入手する必要があります。

 また、資源国は鉱石の輸出だけでなく、産業を興し、付加価値を付けて輸出したいと考えています。こうした分野の強い日本が投資したり、技術供与することも有効な資源獲得の手段です。

 インドネシアはニッケル鉱石の輸出を禁止しており、このような国に技術支援や人材育成などを通じて関わることや政府首脳による外交も重要です。

 また、オイルショックが日本の省エネや環境技術を進歩させたように、鉱物などの供給ショックを想定し、代替材料の開発を加速することも必要になってきます。

欧米を中心に、脱炭素のルール作りが進んでおり、日本も押し付けられる前にルール作りに参加する必要があります。

レアメタルについては埋蔵国に技術供与を行い、産業化に力を貸すことで安定調達を実現することや代替材料の開発を行うことなどが求められています。

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