合成テクノロジーが世界を作り変える クリストファー・プレストン 要約

本の概要

 本書では人類の持つ合成テクノロジーの進化と合成テクノロジーがもたらす地球環境への影響が書かれています。

これまでも人類は環境汚染や温暖化などで環境を変化させてきたが、あくまでも変化は副次的な要因で目的ではありませんでした。

 技術の発展は人類が直接、地球環境を変化させるところまで来ており、自然が何十億年かけたことを独力で行うようになるため、これまでよりもはるかに大きな責任を持つようになっています

 どのような技術にどのような影響があるかを知り、その技術を利用するかは一部の人が決めて良いものでなく、一般の人も広く理解し、意見することが重要となります。

この本がおすすめの人

・合成技術で何ができるか知りたい人

・合成技術のもたらす社会の変化に不安を感じている人

・ナノテクノロジーや合成生物学について知りたい人

人類のモノづくりはどのように進化してきたか

 人類はホモサピエンス(賢いヒト)よりもホモファベル(工作するヒト)のほうが、ふさわしいという考えがあるほど、多くのモノを作ってきました。

 近年、物を作る技術は大きく進化しています。特に革新が進んでいる分野は以下のようなものがあります。

・ナノテクノロジー

・合成生物学

・生態系、地球環境への介入

人類は多くのものを作り、技術を進化させてきています。

合成テクノロジーがなぜ今注目されるのか

 これまでは自然がものづくりに制約を課してきたが、近年ではその制約を上回る技術革新が進んでいます。 また、技術革新によって生み出された合成物がこれまで以上に世界を変える力を持つようになるため多くの注目を集めています。

 これまでも環境汚染、自然破壊などで自然に大きな影響を与えてきましたが、これらの変化は意図的なものでなく、別の行為による副作用のようなものでした。

 しかし、合成テクノロジーの進歩によって人類が積極的に自然に影響を与えたり、自然の作用を人口に置き換えることが可能になってきました。

 合成テクノロジーが与える影響が意図的となれば、自然への影響はより大きくなり、人類の責任はより重くなっていきます。

 また、技術的に新しいものを作ることへの不安だけでなく、かつてないレベルで世界を変えることになるため、概念的にも新しいこともあります。

 これらのものはリスクを持つだけでなく、価値観にまつわる深い問いも投げかけることになります。

合成技術に進歩によって自然に直接影響を与えたり、自然の作用を人口に置き換えるなど、与える影響がより大きくなったなどの理由で注目されています。

ナノテクノロジーとはなにか

 ナノスケールでは物質の反応性が高まるため、近くの物質と反応してしまい、より大きく不活性な物質になってしまうため、制御が難しい側面がありました。

 しかし、現在ナノスケールの物質が不活性化する前に強い反応性を活かす方法が数多く研究されています。

 その反応性の高さは、環境持続性、医療などの分野でも大きな期待がある反面、健康や環境に及ぼす影響は分かっていない部分も多いという懸念があります。

制御の難しかったナノスケールでの合成着を制御できるようになっており、注目が集まっていますがその影響については未知数の部分も少なくありません。

合成生物学とはなにか

 ヒトゲノムの解読成功は大きな成果ではあったが、当初の熱狂は一部でそがれています。

 遺伝子の発現が環境によって変わることや体内には百兆単位の単細胞生物がいて人の身体に影響を与えるため、ヒトゲノムの解読=生命の謎が解けるとはなりませんでした。

 合成生物学は微生物を自然ではなく実験室で作ることを目標としており、生命と機械の境界をあいまいにしていきます。

 バイオ燃料の合成、二酸化炭素の分解、汚染物質の処理などを行うバイオ産業機械を生み出すことができれば、生物と同じ原料でできているので、自然に分解されるため処理も不要などの多くの利点があります。

 これまでも動物の家畜化や植物の品種改良で人類の意図するように変えてきましたが、0から作り出したことはありませんでした。

 技術の発展によってゲノムの合成も可能なりつつあります。これまで能力を高めるには人工物を用いるしかなかったヒトという種が根本的に変わることになり、ナノテクノロジー以上に価値観に投げかける部分が大きくなっています。

合成生物学は微生物を自然ではなく、実験室から作ることを目的としています。バイオ産業として非常に有望で自然に分解されるため、環境負荷も少ないなどの利点があります。

0から生物を作り出すことなど価値観に投げかける部分が大きい分野です。

生態系、地球環境への介入はどのように行われているか

 従来の環境保護は自然を保護することを意味していたが、手つかずの自然はどの時点、誰から見るかで異なっています。

 アメリカで見ると、ヨーロッパ移民と先住民の認識は違い、先住民の存在が無視されがちになってしまいます。

 そのため、自然を最適にガーデニングしていくという風に発想し、より管理を強化するべきという考えが広がっています。

 すでに人類が自然に与える影響はとても大きいため、その役割を認め、積極的に役割を果たすべきということで以下のような介入が検討されています。

・気候変動で生息できなくなった生物を移転する。

・絶滅した動物を復元する。

・気候工学の技術によって太陽光を反射することなどで温暖化を防ぐ。

 重要なことは、意図的な変化と不慮の変化には大きな違いがあることを理解することになります。

 温暖化は心理的、政治的な難しさもあり、気候工学はこれらの難しさを超えられる可能性を秘めますが、大気への関与は地球規模の責任を伴うようになっていまう。

これまで大気汚染など副作用的に自然に影響を与えてきましたが、人類の自然に与える影響はおおきいため、積極的に自然を管理すべきという考えが広がっています。

意図的な変化と副作用的な変化に大きな違い、責任の大きさがあることを理解することが重要となります。

合成テクノロジーとどう向き合るべきか

 合成の時代は地球の基本性能の多くを人類の設計と欲望が決めるため、他の地球史と比べて異質の年代になります。

 これまでと違い与える影響が大きくなるだけでなく、自然を直接作り変えるようなことをする可能性もあります。

 すべての影響を予測することは不可能ですし、また環境破壊のように違う目的の副産物でなく、故意に自然を作り変えることへの倫理的な不安を持つ人も多いことも事実です。

 一方で、責任は大きくなるものの、環境への関与はこれまで他の生物もしており、これまでと同じように人間として関与するべきという反論も多くなされています。

 重要なことは一部の人だけで議論して決めるのではなく、一般市民を含めた大勢での議論で決定することです。そのためにも市民が必要な知識を持つことがより重要になっていきます。

故意に自然を作りかえたり、介入したりすることには賛否両論あります。

重要となるのは一部の人の議論で決めるのではなく、大勢の議論で決めることで、そのためには市民も必要な知識を持つことが重要になっています。

感想

 近年の科学技術の進歩はすさまじく、多くに人には理解できない領域に達しています。

 その一方で、人類が自然に与える影響は大きくなっており、人類が進化した技術で自然をもっと管理すべきという考え方も広がっています。

 このような流れに倫理的に不安を持つ人も多くいますが、技術をどのように利用すべきかを決めるのは一部の人の議論で行っているのが現実です。

 一般の人が議論に参加するにはある程度の知識がなくては、なんとなくで反対してしまい、うまくいきません。また、密室の議論では物事はうまくいかず、多様性が必要となることは多くのところで言われていることです。

 どのように自然に介入するのか、介入すべきかの議論には幅広い人が参加すべきでそのためにも一般の人も技術に関する知識を持つべきという点が本書を読んで重要と感じました。科学教育の重要性を感じさせる内容に一つになっていると思います。

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