映画を早送りで観る人たち 稲田豊史 3分要約

3分要約

映画を送りで見るとはどういうことか?

 近年の動画サービスでは再生速度を変化したり、10秒送りのようにスキップする機能がある。これらの機能を利用して映画を視聴する人が増えている。倍速以外のもネタバレを調べてから作品を鑑賞する人も増えるなど視聴文化に大きな変化が起きている。

 倍速視聴をする人が増えた背景を知ることで社会の変化や意識の変化を知ることができる。

なぜ倍速視聴をする人は増えているのか?

 倍速視聴が増えた要因は主に3つ

・動画配信サービスの台頭による映像作品の供給過多

・コストパフォーマンスや時間効率を求める人の増加し、作品をただ味わう=鑑賞するのではなく、別の目的を達成する=消費する傾向が増加したため

・セリフで説明する作品が増え、倍速視聴でも内容を把握できるようになった

なぜ倍速視聴してまで映画を見るのか?

 話題についていくために、多数の作品を見なければならないという気持ちを持つ人も多い。映画=芸実作品の観賞ではなく、情報収集の一環になっているため、数多くの作品を表面的に見たい人が増加している。

なぜセリフで説明する作品が増えたのか?

 SNSの普及で意見を簡単に表明できるようになったこともあり、自分がわからないことを認めたくないと感じ、わからない=つまらないと感じる人が増えたため、セリフで説明する場面が増えている。

どのような変化が倍速視聴など作品の視聴をもたらしたのか

・コンテンツの供給過多

・効率性を求める教育や考えの普及

・強制的な共感による心を揺さぶられる場面を嫌い、自分の好きなものだけを見たい人が増えた

・SNSなどでの発信が容易になり、わからないもの=つまらないというふうになった。

 わかりやすく、セリフの多い作品が増え、倍速視聴する人が増えれば、それに対応した作品が増え、その流れはさらに加速していき、視聴文化の変化が定着していく。

映画を倍速やスキップで視聴する人が増えている

Netflixをはじめとする動画配信サービスには再生速度を変化できる機能があり,1.5倍速での再生が可能。また10秒送りや戻しボタンもあり、スキップすることも可能になっている。

映画を倍速機能を使用したり、スキップしながら試聴する人が増えていることがわかっている。20〜69歳では34.4%が、20代では49.1%の人が倍速視聴の経験がある。

倍速市長が増えている要因は主に3つ。

・動画配信サービスの台頭による映像作品の供給過多

・コストパフォーマンスや時間効率を求める人の増加し、作品をただ味わう=鑑賞するのではなく、別の目的を達成する=消費する傾向が増加したため

・セリフで説明する作品が増え、倍速視聴でも内容を把握できるようになった

倍速視聴が増えた背景を知ることで社会の変化、意識の変化を考えていく。

大筋のストーリーを知るために映画を見るため、倍速視聴が増えている

倍速試聴やスキップ再生を行うのは、心理描写や細かい背景よりも大筋のストーリーを知るために作品を見る人が増えているのも要因の一つ。

先に結末を知りたい人は増えており、ネタバレサイトを先に見てから試聴する人やドラマの話を飛ばし最終回だけを見る人も少なくない。またファスト映画と呼ばれる映画のダイジェストの人気も増加している。

多くの人は全ての作品を倍速試聴するわけではなく、通常速度で鑑賞することも多い。違いはその作品を芸術として捉えるか、娯楽と捉えるかの違い。

芸術=鑑賞物=鑑賞モード 娯楽=消費物=情報収集 と捉え、観たいのではなく知りたい場合には倍速視聴を行なっている。

倍速視聴する人の増加で作品造りも変化している

脚本家など作品を作る人々は、登場人物の背景を小出しにしたり、シナリオの緩急で視聴者を引きつようとしているため、当然倍速視聴や話飛ばし、スキップなどを想定しているわけではない。

作品自体にセリフでの説明を増やしたり、謎を残さないなどわかりやすさを求める傾向が強くなっており、より短く、より具体的に伝わることを重視した作品が増えている。

本来、受け手が様々な受け取り方をし誤読する自由があるが、自分がわからないことを認めたくないと感じ、わからない=つまらないと感じる人が増えたこと、それをSNSなどで簡単に発信できるようになったことも作品にわかりやすさが求められるようになった大きな要因。

説明が増えたものになれればそれが当たり前になり、普通という感覚になる。作品を作る側にもわかりやすい内容を用意しながら、背景にある社会問題や追求したいテーマをいれるなどリテラシーのの滝人も低い人も楽しませる作品を作ることが求められている。

倍速視聴の背景には見るべき作品の増加、時間の減少などの要因がある

 倍速視聴の要因には話題についていくために、多くの作品を見なくてはという気持ちもある。LineなどのSNSの普及もあり、周囲の人との共通の話題を持つことの重要性は今まで以上に高くなり、見るべき作品数が増えたことで、倍速視聴をおこなっている人も多い。

 共感を重視する流れが強制的な共感を生み、誰もが納得するような正解しか発信できない状況にもつながっている。強制的な共感はわかりやすい作品が求められえるようになった要因でもある。

 普通が消え個性を求められる、効率や役に立つかを重視し回り道や無駄を嫌う、金銭的に苦しくアルバイトなどで時間がないなど社会、教育の変化もあり、倍速視聴やわかりやすさ重視の流れが進んできた。

共感の重視で自分の望まない展開を避けようとする人も多い

 エンターテインメントの消費化が進み、共感が重視されるようになったことで、視聴者は自分のみたいものだけでを見るようになり、なるべく心が揺さぶられることを避けようとしている。

 心が揺さぶられるような状態を避けようとする傾向がネタバレを先に読み、快適に視聴できるか、自分の嫌いな展開がないかを確認してから視聴するスタイルを増やしている。

 また自分好きな物しか見ず、それを否定されたくないため評論などで客観的な意見に触れる機会が非常に少なくなっている。

 自分の好きなこと、興味のあることだけを見る代わりに、他人への批判したり干渉することもない。一見他者を尊重しているようにも見えるが、自分と異なる価値観に触れて理解に努めるという姿勢が欠けている。このような状況では多様性とは程遠く、ただ干渉しないだけで、自分と異なる価値観を心から認めているわけではない。

消費に即物的な満足を求める消費者の数がさらに増えている

 イギリスの研究者はリキッド(液体)消費という新しい消費の概念を提唱している。社会全体が安定で持続可能なソリッド(固体)から特定の形を持たず、姿を自由に変えるリキッドに変化したと指摘している。リキッド消費の特徴には以下のようなものがある。

・短命

・アクセスベース モノを所有するのではなく一時的に利用する

・脱物質

 リキッド消費によって多くの消費者が即時的な満足を求めるようになっているため、コンテンツを作成する側もわかってくれる人にだけ届く良質な作品だけを誠実に作り続けていけばよいとうスタンスは取りづらくなる。

 世代が若くなるにつれ情報の処理能力は大きく向上してことも、倍速視聴が増えた理由の一つ。情報処理能力が上がったことで従来の作品では情報量が少なく退屈してしまう。新しい技術や習慣に批判はつきもので倍速視聴やスキップすることを肯定したうえでの作品造りが必要かもしれない。

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