オードリータン デジタルとAIの未来を語る オードリータン プレジデント社  要約

台湾はデジタル技術を利用しコロナ対策の成功でした その中心的な一人がオードリータン

 オードリータンは台湾で史上最年少で政務委員に選ばれたことで知られている。デジタル技術に関わり続け、台湾がコロナの感染者数を抑え込むことからも日本でも注目されている。

 台湾はロックダウン、学校の休校、飲食店の休業無しでコロナの封じ込めに成功してきた。水際対策を行い、スマートフォンを活用し、感染経路の確認と接触した可能性のある人たちを割り出し、警告メールを行うなどデジタル技術を利用し感染拡大を防いできた。

 オード―リータンはテクノロジーを利用し、民主主義をより良くすることを検討している。特定の人の意見をみんなに浸透させるのではなく、全ての人の意見から共通の価値観を作り出すことを目標としている。

台湾はSARSの経験を活かし、コロナに対応した

 台湾は以前、SARS流行時に多数の犠牲者を出した。その時の経験からころなの際には次のような対策や要因で封じ込めに成功した。

1.少数の人が高度な知識をもつよりも、多数の人が基本知識を持つようにした
 どんなに詳しくても前代未聞の事態で的確な判断を下すのは難しい。多くの人で意見を出しあい、対策を考えるほうが有用である。また、一般市民とパンデミックへの意識が共有されていれば対策もスムーズに進む。

2.異なる組織の横断と政府データの公開でマスクを国民にいきわたらせた
 マスクをもれなくいきわたらせるため、政府の異なる部を横断させることで対応した。政府の公開したデータをもとにアプリやサービスを開発するプログラマーが協力し、どこにマスクがあるかを示すマスクマップのアプリを開発した。

3.政府と国民の信頼関係を重要視していた
 保険カードやクレジットカードで本人確認しそれを行政のデータとリンクさせるのはITで実現したが、相互の信頼がなければ実現できない。社会のデジタル化を推進するときに相互の信頼は前提条件となる。

デジタルは社会の方向性を決めるものではない

 AIをはじめとするデジタル技術は社会の方向性を決めるものではなく、補助するもの。AIが人間を超えたらどうするかをかんがえるよりも、人類がどの方向に進みたいのか。そのために何が必要なのかを議論することが大事。
 
 一方で人間の価値をスキルに重きを起き、人と比べることで達成感を求めていると機械の発展は不快なものになる。公共の価値を生み出すことに重きを置くと、機械の発展を単純に効率UPと認識できるようになる、

オードリータンはテクノロジーを通じて、みんなでより良くする面白さを学んだ

 12歳の時に著作権の切れた名作を電子化し、公開するプロジェクト・グーテンベルクに参加しプログラムをみんなでよりよくする面白さを学んだ。

 その後起業し成功すると33歳でビジネスから引退し、Appleなどの技術顧問を務めた。現在はデジタル担当政務委員という肩書。政務委員は台湾の行政員にある32個の部会間の調整を行う。筆者はデジタルでこの橋渡しを行っている。
 また、国民と政府の橋渡しを行うことで、国民の意見が伝わりにくいという間接民主主義の弱点をインターネットで変えようとしている。

デジタル社会で不特定多数と見返りなしで価値交換を行うことを可能にする

 家族のような無償の関係、上司と部下のような上限関係、市場のような関係で行われる価値の交換はこれまでもみられてきた。
 一方、不特定多数と見返りなしで価値の交換を行うことはこれまで社会で見られてこなかった。これまで見られなかった交換Xはインターネットなどのデジタルで実現できる可能性がある。

デジタル民主主義ですべての人の意見から共通の価値観を形成することを目標としている

 デジタルによって国民と政府の双方向の議論を可能にする、見えにくい問題の顕在化、政府とつながりがない人でも提案可能で民主主義をより良くすることを目指している。

 課題はデジタル接続が出来ない人が民主主義に参加できなくなる、説明責任が十分に果たされているかの二つ。
 たくさんの人の意見を1人の意見に置き換えるのではなく、全ての人の意見から共通の価値観を形成することを目指している。

デジタル技術で異なるシステムを横断させることで新しいものを生むことが出来る

 デジタル技術は異なるシステムを横断的に連結させることが可能であることが、徐々に理解されてきている。今までの組織や技術を組み合わせるだけで全く違った結果を生み出すことができる。

 筆者の仕事は異なる立場の人たちに対し、共通の価値を見つけること。政府の価値観を確立し、同じ価値観を持った民間企業や個人を引き入れることでゼロから何かを作ることなく成果を上げることができる。

 筆者はトランスジェンダーであり、男女の枠にとらわれない自由度の高さとマイノリティであることで全ての立場の人により添うことができると考えている。多数派もマイノリティの人が具体的な提案を行えば、喜んで耳を傾ける精神をもっている。
 
 また、自身で何かを変えたいというものはなく、ITを活用し市民が望むことに何ができるかだけを考えている。

 持続可能、イノベーション、インクルージョン(一人も置き去りにしない)という3つが今後の重要なキーワードであり、これらの価値観を持ったうえでデジタル技術による変革を起こすべき。
 これらの価値観が不安定なときおかしな方向(極度な全体主義など)に進んでしまう。

デジタル教育はスキルを身につけのではなく、素養を身に着ける

 コロナ化でも台湾はリモート授業を行い休校することなく授業を続けることができた。討論をしたり、理論や抽象的なを学ぶという知識の面では反復や自分のペースで学ぶことができるため、ネットのほうが明確に学ぶことができる。

 一方、実技や操作を伴うものをネットだけで不可能。

 教育で最も重要なのはこうしなければならないと、特定の方向性を設定せず、如何に好奇心を持つかを大事にすること。

 デジタルのスキルではなく、素養を学ぶこと重要。プログラミング教育でもプログラミングの技術を学ぶことではなく、「1つの問題を分解し、多くの人たちが共同で解決するプロセス」を学ぶことを重視する必要がある。
 このような思考はデザイン思考、アート思考と呼ばれる。このような思考をすることができると気候変動や地球規模の問題に対しても共同で考えれば良いと考えられるようになる。

 多くの人が共通して関心を持つテーマを見つけ、そこにある問題をどうすれば解決できるかを一緒に考えてみることで素養を身に着けることができる。

 多様な人と触れることで、理解は出来なくてもどのような価値観があるかをしることも相互理解のために必要となる。

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