ライフシフト2 アンドリュー・スコット リンダ・グラットン 3分要約

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3分要約

ライフシフトとはなにか

 社会のあり方を改革し、新しい生き方を生む出すこと。長寿化とテクノロジーの進化で大きなライフシフトが起こっていく。

なぜライフシフトが必要なのか

 テクノロジ―の進歩が、自分たちに悪影響を与えるのではと心配している人も多いが、これまでのテクノロジーと同じように進歩の恩恵を受けることも可能になるはず。

 ただし、長寿化とテクノロジの進化で仕事の変化スピードはこれまでよりも大きくなり、仕事の変化が生涯にわたって起きる。

 変化に対応するのは生涯にわたる教育が必要であり、現在の社会のような学習→仕事→引退のような画一的な生き方を前提にした社会から変革する必要がある。

具体的にはどのような方法でライフシフトできるのか

・生涯にわたる学習

・他の分野への移行や探索を行う

・主体的に人間関係を構築する

・多様性が増え、模範的な生き方がなくなるため、自身のあり得る自己像を考える

・柔軟な制度をや働き方を実現できる仕組みを作る

 そのためにも、一人一人が実験者となり、社会的な開拓者となり、政府や企業がそれを後押しする仕組みが必要になる。

ライフシフトは何をもたらすのか

 変化することはリスクだが、チャンスでもある。選択肢が増え、懸命な選択ができれば充実した人生を送ることができる可能性を秘めている。

 

パンデミックは経済のあり方や生き方の変化のチャンスでもある

 コロナのようなパンデミックは現状維持の力が弱まり、変革を推し進め、変化に適応するためを学ぶ場にもなり得る。日本でもデジタル化の遅れや経済のあり方を変える必要性を感じた人は多い。

 日本は長寿化でも目覚ましい成果を挙げており、人々が長い人生を金銭面で支えるために長期の職業人生を送れるようにし、柔軟な働き方とキャリアを選べるようにする必要がある。

 健康と資金とスキルと生きがい、人間関係を維持することはますます個人の責任になっている。コロナの経験は新しい長寿時代を築く大きなチャンスともいえる。

長寿化とテクノロジーの進化の組み合わせが社会を変化させる

 人類を多くのテクノロジーを進化させ、その恩恵を受けてきた。テクノロジーの変化はAIの登場を生み出したが、雇用が失われたり汎用AIの登場で人類が滅亡するなどの心配の声もある。また、公衆衛生や医療の進化による長寿化も医療費の増大などで経済を弱体化させると恐れられている。

 人類の発明がもたらす結果におびえ、知識の拡大が自分たちに悪影響を与えるのではと心配している。しかしこれまでのテクノロジーと同じように進歩の恩恵に浴するための手立てを見いだすことも可能なはずである。

 そのためにも社会の在り方を変革し、新しい生き方を生み出し、実験を行うことで新しい可能性を探索すべき。

 働き方や家庭生活、結婚など人生の土台となる要素が変化することは避けられず、誰もが社会艇開拓者として、新しい社会の在り方を切り開く覚悟を持つ必要がある。

 前著は長寿化に伴う社会の変化がテーマだったが、本書では長寿化とテクノロジーの進化の組み合わせで起こる変化がテーマになる。人間の経済的な繁栄だけでなく、人間とは何かいうより深い問題のために新しい社会を設計することがより重要となる。

長寿化テクノロジーによる仕事の変化は生涯にわたる教育を必要とする

 テクノロジーは指数関数的に進化しており、AIとロボット工学も空前の進歩を加速させている。これらの進歩は新しい製品だけでなく、新しい仕事のやり方、産業を生み、新しい価値観が出現している。

 車輪や石斧、紡績機など、これまでの発明は自分たちの物理的な力を代替することが目的であった。AIは人間の知的な力を強化したり、認知領域を代替する点でこれまでと大きく異なっている。

 テクノロジーの発展による仕事の変化と長寿化による働く期間の増加は、生涯を通じた教育の必要性を増すこととなり、政府も生涯の学習を支援すべきである。

AIに代替されにくいのは人間らしい行動

 今後もAIは発展し、多くの仕事を代替していく。最初に機械に代替されたのは定型的でプログラミング可能な課題を実行する能力。機械に代替されにくいのは、人と人のやり取り、思いやり、マネジメントとリーダーシップ、創造とイノベーションなどのより人間らしい行動になる。

長寿化への対応は生きる環境の方と作りを根本から変える必要がある

 長寿化とともに老年期の健康状態も改善しており、現在の80才は20年前の80才と比べ、病気の割合が少ない。その一方で、少子化は世界中で進行し、歴史上初めて5歳未満の人よりも65才以上の人が多くなりつつある。

 長寿化の影響に対応する際に重要と考えられているのが、老後資金の確保、医療の提供、世代間の公平の3つ。この課題を解消するために社会的発明が必要で、一人一人がどのように人生を組み立てるか、教育機関、企業、政府が人々の生きる環境をどのように形作るかを根底から変える必要がある。

個人個人が社会的な開拓者になる必要がある

 長寿化によってわれわれの古い常識が現実から乖離し始めている。誰もが臆することなく状況と未来に生じる状況に向き合い、社会の開拓者になる必要がある。

 満足のいく生活水準の確保と人間としての可能性の開花の両方を可能にするような社会的な発明を成し遂げる必要がある。そのために必要となるのは自身のストーリーを紡ぎ、その道筋を歩くこと、学習と変身を重ね移行のプロセスを成功させること、深い絆をはぐくみ有意義な人間関係を維持することの3つが特に重要となる。

自身のありうる自己像を考えること重要性が増す

 物語を紡ぐためには未来の選択肢を考え、自身のあり得る自己像について考えることが重要となる。

 長寿化社会で自己像を考える際には、年齢に対する固定概念を捨てること、持つ時間が長くなるため短期的ではなく長期的な視点を持つことを意識する必要がある。

 教育→労働→引退という3つだけのステージからの脱却も必要となる。人生が長くなると労働と余暇、教育を分散させる必要性が増すことも考える必要がある。

 仕事について考えるときにその仕事がいつ自動化されてしまうかを正確に予測することは出来ない。自動化されにくい仕事の特徴は以下の4つとされている。

1.非定型形的な仕事が多い

2.付加価値の高い業務=人間にしかできない要素が大きい業務に移行しやすいか

3.自動化を妨げる環境があるか 安全性や判断を人間下す必要がある場合が当てはまる

4.自動化が費用対効果で得策でないもの 

 自動化されにくい場合でも仕事の性格や必要なスキルが変化する可能性は高い。

働き方も多様性が増し、主体的に選択を行う必要がある

 テクノロジーの進化によって企業とフルタイムで働く契約以外の働きかた(フリーランスなど)も増えており、雇用形態の流動性も増している。キャリアの流動性が増すとキャリアを築くことが雇用主との共同作業ではなくなるため、主体的な選択を行う必要がある。

 そのためにも仕事はお金を稼ぐだけでなく、新しいスキルを学んだり、キャリアの道筋を検討する意味合いも強くなる。マルチステージの人生ではお金だけが重要な資源とは限らず、人間関係をはぐくんだり、学びのためにお金や時間を使うことも必要になる。 

生涯に渡り学び、選択肢を増やすべき

 3ステージの人生では学習は第1ステージでのみで行い、第2ステージでキャリアを形成するという生き方になるため、移行や探索を行う必要がないばかりか、人と異なる行動はマイナスとなることもあった。

 マルチステージの人生では変化が大きくなるため、未来に多様な選択肢を持つことはますます重要になる。多様性な選択肢を持つためにも、生涯にわたって学び続ける姿勢はより重要になるこれまでのイメージとは違い脳は年齢を重ねても強い可塑性を維持しており、何歳でも学ぶことができる。

 オンライン講座や教材も爆発的に増えており、新しいスキルを学ぶ場は次々に生まれている。人生が長くなった分、余暇時間をレクリエーション(娯楽)で消費するのではなく、リ・クリエーション(再創造)の比重を増やすべきといえる。

 移行を成功さることは簡単ではなく、強い不安をもななうこともある、それでもマルチステージの人生を送ることで精力的に過ごしたり、あらゆるステージで学習を行うことが可能となる。スキル、能力、人的ネットワークを育み続けることで未来の選択肢を増やすことができる

長寿化は家族の在り方も変える

 人類が成功を収める上で鍵を握ってきたのは集団で行動し、協働する能力。マルチステージの人生では人間関係を深めるために投資する意識をもとないと、人生が細切れになってしまいかねない。

 ある人が人生でどれくらい成功できるかは家族との関係に影響を受ける面もある。家族の形は国や文化によっても異なるが、長寿化に向け家族の機能を見直すことも必要になる。

 結婚や子供を作る年齢が上がることで子供の数は減ることで、人生に占める子育ての時間は短くなっている。また、いまだに男女での格差はあるものの、女性がキャリアを追求する動きも活発化している。

 このような変化は社会の規範を変え、家族の在り方を多様化させることとなり、生き方の選択肢を増やすこととなる。人間の本質が愛することと愛されことにあることは変わらないため、伝統的な結婚が崩れても、ゆるぎない絆で結ばれたいという思いは弱まることはない。

 誰もが従う規範が存在しなくなれば、自分たちに有効な生き方を見いだすためにも、カップルとの対話と交渉がこれまで以上に大事になる。両親の送ってきた人生とは大きき違うことを意識し、内省し自分たちが何を望むかを考え、あり得る自己像を想定することが必要となる。

 今後は一つの仕事は続かず、業務が細切れになり細分化が進むと職場に帰属していたことで得られるアイデンティティは弱体化していく。パートナーの関係を強くできれば、安定した基盤を手にできる可能性もある。

世代間の共感を高めることも重要となる

 平均寿命が伸びることで、同時期に生きている世代も増加することとなる。しかし、現在世代間の緊張、対立が目立ち始めている。

 職場環境の変化、住宅価格の上昇、医療費の増大、年金の減少などにより一部の国では、若者が自分たちの親よりほど豊かには暮らせないという見方が強まり世代間の対立の要因となっている。

 世代ごとにレッテルをはることも世代間の共通項よりも相違点をことさら強調してしまって、対立を助長している。ミレニアル世代やベビーブーム世代が有名だが、実は世代間に際立った違いはほとんどない。同じ世代内の違いのほうが、異なる世代との平均の差よりも大きい場合もあるほど。

 世代間の共感を高めることは世代間の対立を回避するだけに必要なわけではない。3ステージの人生が崩壊し、多様性が増えれば異なる世代との触れ合いも増加し、世代間の共感は孤独を感じやすい老人や若者にとっても有意義なもの。 

企業は柔軟な働き方を認める仕組みを作ることが必要

 企業の慣行、規範、文化は人々が輝けるかを大きく左右するため、企業が長寿化社会に対して新しい取り組みをすることは社会が取り組む場合と同じくらい重要となる。

 企業も人生の変化を受け入れ、柔軟性を備えた慣行を確立する必要があるが、3ステージの人生は企業の人事制度に深く根付いておいる。年齢とステージを結び付けておけば人事制度はシンプルにできるが多様化する働き方には対応できない。

 入社の年齢を多様化し、若いうちに探索した人を排除しないようにしたり、履歴書の空白を問題しないことで人々に実験をすることを促す、勤務時間の柔軟性を高めることで引退の年齢を延ばしたり男性の子育て参加や介護を支援する、社員が金銭面でだけでなくスキルや知識など向けの資産を得られるようにすることなどが考えられる。

 企業の変革は競争力を維持するために避けて通れない。社員のやる気と参加意欲を高められなけらば、パフォーマンスは低下してしまう。 柔軟性を認めることは優秀な人材を引きつけ、つなぎとめる上で非常に有効な手段となる。

教育機関は年齢を問わない教育体制を作るべき

 教育の目的はに人々に人生の準備をさせること。既存の画一的な教育システムはこれまでは有効だったが、大きく社会が変化しつつあるなかでは、人生のあり方や仕事への準備が充分でなく、教育の在り方も大きく変えるべき。

 機械の代替されにくい人間的な能力を高めるような教育が必要となる。そのためにはSTEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)だけでは十分ではない。

 これからの時代に必要になるのはリスクを伴う行動に踏み出したり、経験から学習し他の人から協働する、独創的な問題解決策を思案するなどより複雑なスキル。

 また3ステージの人生からの脱却のため、どの世代も教育を受けられるようにする必要もある。20代だけでなく、40代や50代の人にも人生の推進力と方向性を与える場を築く必要がある。柔軟な学び方や年齢を差別しない仕組みは企業だけでなく、教育機関にも求められる。

 学位とは違う形で人々の持つスキル証明の仕組みを発展させたり、オンライン講座の利用を利用し、年齢を問わない教育を大学が可能にすれば、これまで若年層に限られてきた市場は大きく広がり、恩恵を受けることができる。

政府は長寿化によって経済を縮小ではなく拡大させる必要がある

 政府には誰もが社会開拓者となれる環境を作り、移行期間によって苦境に立たされている人たちを保護、支援する体制を整えるべきである。

 テクノロジーの導入を規制することで、働き手を保護することもあるが、このような方法は生産性向上を妨げ、経済の停滞につながる可能性がある。採用と解雇を簡単にし、失業した人には失業手当と教育の機会を準備することでテクノロジーの導入による生産性の向上と高賃金経済への移行を実現しやすくなる。

 医療を治療から予防へ転換することで医療費の抑制を図る、年金制度の改革や税制優遇で個人がお金を貯める意欲を高める、国民に新しいスキルを学ぶ場を提供すること、高齢者が長く働けるような環境を整えることなども重要な政府の役割になる。

政治システムの作り変えも必要となる

 テクノロジーの進化は労働や資本の概念を根本から変えつつある。企業の価値を測るものが工場や機械などの有形の資本からブランドや知的財産などの無形の資産へと変化しつつある。一人一人が探索を続けることも重要だが、政府も同じように探索と開拓を行うことも同じように重要。

変化は容易ではなくリスクもあるが、チャンスでもある

 生き方や学び方が根本から変わるプロセスはまだ始まったばかりでこの先も大きく変わっていく。未来に備えるのにはどう変わるのかを分析し、好奇心を持つことが大事になる。

 先手を取り、将来を見据える、あり得る自己像を意識する、人生の画一性がなくなることを理解する、移行することを受け入れることを個人の指針とすれば社会的な開拓者となることができる。

 社会的な開拓者になるだけでなく、家族など様々なコミュニティで良好な関係を得ることも長く、移行の多い人生では重要な要素となる。

 変化は容易でなく、リスクも多いがチャンスでもある。自由が拡がり選択肢が増え、懸命な選択を出来ればより健康でより長く、より充実下人生を送ることができる。

 

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