世界史は化学でできている 左巻健男 ダイヤモンド社 要約

化学は物質の構造、性質、反応を研究する自然科学の一種で、様々な技術で利用されている

 人類は火の利用により、暖房。照明、狩猟、土器の作成、調理、金属の精錬などが可能になった。
金属の精錬特に鉄の利用は人類の文明を大きく進化させてきた。

 他にも道具、火、衣類、住居、建物、道路、船、自動車。農業、工業などを創り出してきたが。これらの技術は全て化学に関わるもの。化学は物質の物質を対象とした自然科学の一種で物質の「構造」、「性質」「反応」を研究するものとなる。

原子の構想は紀元前からあったが、17世紀まで他の説に埋もれていた

 すべてのものは原子からできていて、原子が循環することで様々なものを作りだしている。この考えを最初に考えたのは紀元前のデモクリトスで彼がアトムという名前を付けた。

 しかし、原子論はアリストテレスの4元素説(全てのものは火、土、水、空気からできている)
に埋もれてしまい、その復活は17世紀まで待つ必要があった。

 17世紀にドルトンが原子がその種類に応じて決まった重さを持つことを発見したことなどで原子論が復活した。
 
 その後、アボガドロによる原子量や分子を構成する元素の比率の発見を経て、ベランとアインシュタインがブラウン運動で分子、原子の存在が確かめられた。

 更なる研究で、原子が壊れること、原子が陽子、中性子、電子からなっていることが明らかになった。

 原子論の確立は化学反応の設計図を確かなものにし、多くの技術に応用されきた。

火の利用と燃料の歴史も化学によるもの

 人類は二足歩行で自由になった手で、火や道具を利用するようになった。燃焼が酸素との反応であることは燃焼後の物質が燃焼前よりも重くなっていることなどから発見された。

 人類が火を利用し始めてから主に、木や木炭を燃料としていた。その後、石炭、石油、天然ガスと様々なエネルギーを利用してきた。現代では水素に期待が集まっているが、課題も多い。

水の利用にも化学は欠かせない

 水は生命に欠かせず、水なしでは3日ほどしか生きられない。都市の衛生にも水は欠かせず、上水道、下水道の整備は都市の清潔化や飲料水の汚染による伝染病を防ぐ働きをしている。
 ろ過材や汚泥法での下水処理、塩素の利用による殺菌にも化学の技術によるもの。

食物の調理や発酵も化学の力

 加熱などによる調理は毒を取り除く、消化しやすくなるなどの利点があり料理によって人類が進化したという説もある。
 
 酵母を用いた発酵も食料に大きな変化をもたらした。パンの発酵やアルコールの製造を可能にした。清潔な水を得ることが難しい時代で加熱処理可能なビール等は保存のきく飲料としても利用されてきた。

化学によって様々な容器、材料が生み出された

 火の利用は粘土を熱することでできる土器の利用を可能にした。土器で加熱することでドングリ、クリ、蕨などの硬いものを柔らかく食べることができるようになった。

 レンガ、陶器、磁気、セメントなどは焼成技術の進化で生まれてきた。焼き物はセラミックスという意味で様々なセラミックスが利用されてきた。近年ではファインセラミックスと呼ばれる高い精度や性質が要求されるセラミックスが色々な場面で利用されている。

 ガラスは透明で成形しやすいという特徴で食器、窓、ディスプレイに利用されている。ガラスが透明なのは可視光線が内部で散乱せず、透過するため。気体や液体の不透過性、酸に強く錆びない、熱にも比較的強いなどから実験器具、レンズ、ガラス繊維などにも利用されている。

炭素を利用することで年代測定を行うことができる

 炭素は質量数12のものが一般的だが、一部中性子数が多く、質量数が13や14のものもある。
特に質量数14の炭素は放射性壊変を起こし、他の元素に変化する。
 動植物が生きている間は質量数14の炭素の取入れと排出は同じになるが、死んでしまうと質量数14は減少し続ける。そのため質量数14の炭素の量を測定することでその動植物の生きた時代を判別することができる。

文明に欠かせない金属、染料、薬物、高分子も化学によるもの

 人類の文明史は石器時代、青銅器時代、鉄器時代の3つに分けられるという主張もあるほど石から金属、特に鉄への移行は文明の発展に大きくかかわった。鉄は量の多さ、硬さ、合金の作りやすさでとても有用である。

 金属の鉄を取り除くことは銅よりも難しかったが、温度を上げる技術が発展したことで
鉄が利用されるようになった、鉄は工業、兵器で重要であり、その生産は国力そのものを示している。


 衣類を染める行為も古代から天然染料を用いて行われてきた。天然染料には色の種類が少なかったが、合成染料が誕生すると染料の利用は大きく広がった。
 
 特にベンゼン環を含む化合物は多く染料に使用されており、有機化学の発展に重要な分野であった。世界の合成染料を先導したドイツは、多くの新しい化合物を作り出し、評価するという手法で医薬品の合成でも成功し、サルファ剤などを生み出すこととなった。

 薬物と人類の関わりも幅広い、鎮痛剤や麻酔としての利用が行われてきた。合成技術が発展すると自然界には存在しない覚せい剤のようなものも生み出され問題を起こしてきた。


 ナイロンの登場でこれまでの天然繊維から合成繊維への移行が大きく進んだ。ポリエステル、アクリルと合わせて合成繊維の技術が高まった。合成繊維は高分子の技術を高めることになり、プラスチックの合成につながっていった。

化学によって生み出されたものが悲劇を生むこともあるが、今後も更なる発展が期待される

 DDTは安価で蚊やハエの除去できるため、夢の化学物質として殺虫剤として利用されてきた。しかし、DDTが残留し環境に悪影響が出るとわかるとしようが禁止となった。
 素晴らしいものとして利用されていたものが、のちに害を与えることがわかることも多い。

 フロンも理想的な冷媒とされたが、オゾン層の破壊の原因であることがわかり、使用が禁止されている。  

 火薬や毒ガスなどの兵器の開発にも化学の知識が生かされている。毒ガスの生みの親であるハーバーは毒ガスで戦争を早く終わらせることができれば犠牲者が減るはずと考え、毒ガスの開発を行っていた。
 この流れが第2次世界大戦でのマンハッタン計画での核兵器の開発につながっていった。

 世界史と化学は密接な関係にしている。今後も地球温暖化対策など更なる知識と技術が期待されている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました