経済学入門 ミクロ編 ティモシー・テイラー  まとめ2

概要

市場は自動的にバランスを保つが、迷走するときがある

そのときに市場を正常化するのが政府の役割

 後半では市場における政府の役割について、詳しく書かれている。政府が行う経済政策や規制の必要性、なぜ景気対策がうまくいかないのかなどが書かれている。

 市場は基本的には需要と供給がバランスをとることで、限られた資源を分配しなりたっている。

 しかし独占や過剰な格差、情報の非対称性などで迷走することや市場原理ではなりたたないことがある。そのような場合に規制や公共財の管理などで市場を正常化させることが政府の役割となる。

 一方で、政府自体も不完全であることを認識する必要もある。

理想論ではなく、現実的な解決策を考え、政府を評価することが重要となる。

市場の迷走と政府 

法律で市場のポジティブな面を引き出すのが政府の仕事

 市場は需要と供給が相互作用することで成り立っているが、市場の関係は迷走することもある。そのような場合に政府は法律で市場のポジティブな面を引き出し、ネガティブな面を抑える必要がある。

 一つの企業が市場の売り上げを独り占めするような状態を独占と呼ぶ。独占は悪いほうに働くと、非効率で価格が高くなっていく。

 独占が弱く、競争が激しいほど消費者には好ましい状態になるため、競争を制限し、消費者にコストを強いるような合併には政府が独占禁止法で対応する。同業者間で価格や生産量の調整を行うカルテルは反トラスト法で禁止されている。

規制 

過剰な競争を避けるために規制は必要 

進歩の著しい業界は競争に任せるべき

 鉄道や電気、ガス、水道などのインフラはネットワークの構築に膨大なコストがかかるが一度ネットワークができると低コストで運用が可能。そのため、新規参入の敷居が高く、独占状態になりやすいが、その一方で、過激な競争で各社がつぶれることも避ける必要がある。

 そのため、国が価格を決定する総括原価方式が多く使われてきたが、価格がきまっているため、コストを削減する意識がなくなってしまう、新しい技術を生み出すモチベーションがなくなるなどの欠点がある。

 一定期間価格を一定にすることで、コスト削減が利益になる方法なども用いられてきたが、現在では規制を緩和する方法が主流になっている。

 特に進歩が著しい業界では競争に任せたほうが良い。市場原理を理解し、適切な方向付けを行うことが望ましい結果につながる。

外部性 売買で売り手と買い手以外に影響を受ける人

 外部性とは売り手と買い手がそれぞれの利益で動いた際に、他の誰かが影響をうけることで、正の外部性と負の外部性がある。
 環境汚染は負の外部性の例となる。環境汚染を0にはできないが、生産活動による利益と環境汚染のコストのバランスをとることが重要となる。

技術革新は売買に関係ない人も恩恵を受けることがあるため、正の外部性の例となる。生産者に支払った費用に見合う利益を生むような仕組みが必要で特許などの知的財産権も生産者の利益を確保する仕組みになる。
 研究開発への助成金、免税も方法の一つになる。

しかし、生産者の保護が過剰になると、新規参入を妨げ、技術革新が遅れることとなり、バランスをとるのは難しい。

公共財 民間に任せられないサービスや商品

 路や消防署のようにないと困るが、民間の競争に任せると十分に手に入らない性質の商品やサービスを公共財と呼んでいる。

 公共財の特徴は以下の二つ。
・誰かが使っても商品やサービスが減らない(非競合性)。
・対価を払わない人がいても便益を取り上げられない(非排除性)

 国防を例にすると、誰かを守っても他の人が守られるわけではない=非競合性、国防がいらない人だけを軍の保護対象から外すことは難しい=非排除性となる。

 経済学では、消費者と生産者が自分たちの利益を考えればうまくいくと考えられているが、公共財ではコストを払わず、サービスなどを受けることが可能になる。
 このようなフリーライダー問題は経済を考える上で重要になる。

 社会的な圧力、報酬などでフリーライダーを防止しているが、税金もその一つになる。

貧困と格差 

格差は避けられない 格差が妥当であるか固定化されていないかが重要

 市場経済は貧富の差を生みやすい。

貧困への対策で金銭を与えると自分で何とかしようとする意欲を奪うことになる。稼ぐほど補助が少なくなるようでは、稼ぐ意欲は小さくなる。理想は落下を受け止めるが、すぐに戻れるような仕組み。

 格差自体が存在することは避けられないため、今の格差が妥当なレベルであるかが重要になる。格差が妥当であるかは、収入毎に階層分けした際に階層間の移動があるかが目安になる。
移動が少ないほど、格差が固定化されてしまっていることになる。

情報の非対称性 売り手と買い手の情報量の差

 売り手と買い手の持つ情報に差があることを情報の非対称性と呼ぶ。

情報の少ないほうがリスクを追うことになり取引が進まなくなることから、政府が情報開示を課す場合などもある。

 保険でも情報の非対称性が問題となる。保険は多くの人からお金を集め、事故などで被害を負った一部の人にお金を払うシステム。

しかし、保険があるからと慎重に行動しない人がいても、保険会社はどの人が事故を起こしやすいかを把握することは難しい。
 
 そのためモラルハザードを起こしたり、保険会社にとって望ましくない人(慎重さにかけたり、健康に気を使わない)ほど得をするため、望ましくない人ばかり集まる、逆選択などの問題がおきてしまう。

ガバナンス 政治や企業を監視すること 

 ガバナンスとは政治家や企業の働きを監視し、評価すること。
私利私欲ではなく、望ましい方向に向かっているかを評価する必要がある。しかし、情報の非対称性によって仕事を任せた人の仕事ぶりを正しく把握することは難しい。

 政府による監視などもあるが、政府もまた完璧ではないことを理解して置くことが重要。また、監視する人が大勢になると一人の役割が小さいため、積極的に監視しなくなってしまう(選挙の投票率が低いのもそのため。)

まとめ

 市場はうまくいかないときもあるが、資源を配分する仕組み 

政府はうまくいかないときに解決する必要があるが、政府も不完全であり、現実的に評価することが大事

1.市場は限られた資源を配分する仕組みである。

2.市場の仕組みはうまくいかないときもある。

3.政府はうまくいかない場合に解決する重要な役割を持つが、政府も不完全。

重要なのは理想論や先入観を排除し、具体的な解決策をもって、政府の行動を現実的に評価すること。

コメント

タイトルとURLをコピーしました