化学.29 有機反応の種類とラジカル反応

この本や記事で分かること

・有機反応にはどんな種類の反応があるのか

・有機反応はどのように進行するのか

・ラジカルとは何か

有機反応はすべて暗記しなければわからないのか

 有機化合物は無数に存在しており、その反応も無数にあります。

 しかし、無数に存在する有機反応は、それぞれで理屈が異なるわけではなく、基本的な概念が存在し、論理的に考えることができるものです。

 基本的な概念を抑えておくことで、幅広い有機反応を理解できるようになっていきます。

有機反応にはどんな種類があるのか

 有機反応には、主に以下の4種類の反応があります。

・付加反応:2つの出発物質が合わさって、新しい生成物ができる

 A + B → C

・脱離反応:1つの出発物から2つの生成物が生じる

 A → B + C

・置換反応:2つの出発物がそれぞれの部分を交換し、新しい2つの生成物を生じる

 A-B + C-D → A-C + B-D

・転移反応:出発物の結合の変化や原子の再編成によって、異性体を生じる反応

 A → B (AとBは異性体の関係にある)

有機反応はどのように起きるのか

 有機反応がどのように起きるのかの記述は反応機構と呼ばれます。

 全ての化学反応は結合の開裂と生成を含んでおり、出発物の特定の結合が切れ、生成物の結合が生成する必要があります。

 原子間の結合は電子によって成立しているため、反応機構は電子の移動を矢印で示します。

 電子による結合が切れる際にも2つの種類があります。結合が対象に切れ、2つの原子に電子が1個ずつ残る場合と、片方の原子が2個の電子をもち、もう一つの元素が空の軌道をもつ場合があります。

 対照的な結合の開裂は均一結合開裂(ホモリシス)とよばれ、非対称的な開裂は不均一結合開裂(ヘテロシス)と呼ばれます。

均一結合開裂はどのように起きるのか

 均一結合開裂では、結合電子が各元素に1つずつ配分されることとなります。

 A:B → A・ + ・B

 また、結合が生成するときも各原子が電子を1個ずつ出し合うときと、一方からだけ供与される場合があります。

 各原子が1個ずつ出し合う結合の生成は均一結合生成と呼ばれます。

 均一結合開裂によって生じたA・ や・Bは奇数個の価電子を持ち、不対電子をもっており、ラジカルと呼ばれます。

 不対電子の存在によって、ラジカルは非常に反応性に富んでおり、様々な反応を起こすことが可能です。

ラジカル反応はどのように進行するのか

 ラジカルは反応性に富んでいるため、ラジカルが他の分子から原子を引き抜き、余った分子にラジカルを付加させることが可能です。

 このような反応はラジカル置換反応と呼ばれ、メタンと塩素の反応は代表的なラジカル置換反応です。

 ラジカル反応は、開始、成長、停止段階の3つの段階から成り立っています。

 開始段階では、塩素のCl-Cl結合が紫外線によって均一結合開裂を起こし、塩素ラジカルを発生ます。

 発生した塩素ラジカルがメタン分子と衝突すると水素原子を引き抜き、塩化水素(HCl)とメチルラジカル(・CH3)となります。

 メチルラジカルは塩素と反応し、クロロメタンと塩素ラジカルを生じます。塩素ラジカルが再び、メタン分子と衝突することで反応が進行し、クロロメタンが生成していきます。

 この段階を成長段階といいます。

ラジカル反応はどのように終了するのか

 ラジカル同士が衝突、反応すると、ラジカルを再生成することなく、安定な生成物が生じます。 この反応が起こることで、反応が終了するため、この段階を停止段階と呼びます。

 メタンと塩素の反応では

・塩素ラジカル同士の衝突による塩素の生成

・塩素ラジカルとメチルラジカルによるクロロメタンの生成

・メチルラジカル同士のエタンの生成

 の3つが停止段階の反応となります。ただし、系内のラジカル濃度は塩素やメタンと比べて低いため、ラジカル同士の衝突が起こる可能性が低く、ラジカル反応を進行させることが可能です。

 メタンと塩素の反応はラジカル置換反応の一例にすぎませんが、すべてのラジカル反応の基本的な原理は同じものとなります。

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