この本や記事で分かること
・アルケンへの水素付加はどのように起きるのか
・どうすればアルケンの二重結合を開裂できるのか
アルケンへの水素付加はどのように起きるのか
アルケンを触媒の存在下で水素(H2)と反応させると、二重結合が水素化、還元され飽和のアルカンを生成します。
触媒としては白金やパラジウムなどが用いられます。
パラジウムは活性炭など不活性で表面積の多い物質上に保持され、細かい粉末上で利用されます。
白金は発見者の名前からAdams触媒と呼ばれ、PtO2として触媒として利用されます。

水素付加はどのような機構で進行するのか
水素化はシン型の付加反応であり、水素は二個とも同じ面から二重結合に付加します。
反応は、まず触媒上に水素が吸着し、次に触媒とアルケンが錯体を形成します。
触媒上で水素とアルケンの炭素が結合すると二重結合に水素が挿入され、アルカンとなり、触媒から脱離して離れていきます。
水素は二つとも、触媒から二重結合に付加されるため、同じ方向から付加することとなります。そのため、水素化の反応はシン型の反応となります。

アルケン以外の官能基も水素化されるのか
アルケンの水素化は他の官能基の還元と比較すると非常に進行しやすい反応となります。
二重結合を持つアルデヒドやカルボン酸を水素化をする場合、アルデヒドやカルボン酸部分は水素化、還元されず、二重結合部分のみを選択的に水素化することが可能です。
アルケンへの水素化は工業的にも利用されています。リノール酸やオレイン酸などの二重結合を多く含む植物油などの油脂の一部を水素化した化合物はマーガリンなどに利用されています。

アルケンの二重結合を開裂するにはどうすれば良いのか
アルケンへの付加反応の多くは、二重結合を単結合に変えることで反応が進行していますが、C=C二重結合を開裂する反応も存在します。
オゾン(O3)を使用することで、結合が開裂し、二つのC=Oを持つ化合物を作り出すことが可能です。
オゾンは酸素を高圧放電することで発生し、強力な酸化剤として働きます。
オゾンはアルケンに付加すると、アルケンの二重結合の電子のオゾンの端の酸素への移動による結合生成、O=O結合の電子が中央の酸素に移動、もう片方の酸素とアルケンの炭素への攻撃が起き、モルオゾニドと呼ばれる環状中間体が生成します。

モルオゾニドからオゾニドはどのように生成するのか
モルオゾニドの五員環は非常に不安定なため、C-C結合とO-O結合が切れ、アルデヒドとカルボニルオキシドという化合物が生じます。
生じたアルデヒドとカルボニルオキシドはカルボニルオキシドのO-O結合の開裂、O–のアルデヒドへのC=O結合への攻撃、エーテル結合の生成によってオゾニドという化合物を得ることができます。

オゾニドからアルデヒドはどのように生成するのか
オゾニドをジメチルスルフィド(CH3SCH3)などの還元剤で処理すると還元剤のO-O結合の酸素への攻撃による開裂とS-O結合の生成がおきます。
その後、エーテル結合の開裂、C-O結合のS-O結合への攻撃による開裂が起き、最終的な二つのアルデヒドを得ることが可能です。
オゾン以外にも過マンガン酸カリウムなどもアルケンの開裂を得ることが可能です。

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