スパコンの富岳の後継機のニュース

この記事で分かること

・スパコンと普通のコンピュータの違い:スパコンは圧倒的な並列処理能力を活かして、膨大な計算を短時間で行うのが特徴

・富岳の実績:多くの事例によって、「富岳」が多様な分野で革新的な研究と実用化に寄与

・後継機の目標:富岳NEXTは富岳の約113倍の実効性能を目指して開発されています。計算能力の向上によって、AIや大規模シミュレーションの性能向上を目指しています。

富岳後継機の開発

 スーパーコンピュータ「富岳」の後継機開発が、2025年1月から理化学研究所(理研)によって開始されました。

 この新たなフラッグシップシステムは、コードネーム「富岳NEXT」と名付けられ、2030年頃の稼働を目指しています。

「富岳NEXT」は、従来のシミュレーション性能だけでなく、AI性能においても世界最高水準を目指し、特にAIの学習・推論に必要な性能として、実効性能50エクサフロップス(EFLOPS)以上を実現する計画です。

 また、既存の「富岳」でのシミュレーションに関しては、5~10倍以上の実効性能向上を目指しています。システム構成としては、CPUに加えてGPUなどの加速器を導入し、高帯域かつヘテロジニアスなノードアーキテクチャを採用する予定です。さらに、電力効率の大幅な向上や、システムの適時・柔軟な入れ替えや拡張が可能な設計が検討されています。なお、現時点では「富岳NEXT」の設置場所は未定とされています。

スパコンと普通のコンピュータの違いは何か

 スーパーコンピュータ(スパコン)と普通のコンピュータ(PCやサーバー)には、以下のような違いがあります。

1. 処理速度と性能

  • スパコン: 数千~数百万個のCPUコアやGPUを搭載し、ペタフロップス(P FLOPS)やエクサフロップス(E FLOPS)といった桁違いの計算能力を持つ。
  • 普通のコンピュータ: 数コアから数十コアのCPUを搭載し、一般的な用途に十分な速度を提供。

2. 並列処理の規模

  • スパコン: 数万~数百万個のプロセッサが並列に計算し、大規模なシミュレーションやAIの学習を高速に実行。
  • 普通のコンピュータ: 一般的なマルチスレッド処理はできるが、大規模な並列計算には向かない。

3. 用途

  • スパコン:
    • 気象予測、地震シミュレーション
    • 創薬や材料開発
    • 宇宙物理学や素粒子物理学の計算
    • AIの学習・解析
  • 普通のコンピュータ:
    • オフィス業務、インターネット閲覧
    • プログラミング、データ処理
    • ゲーム、動画編集

4. ハードウェア構成

  • スパコン: 特殊なCPU/GPU、超高速ネットワーク、大規模な冷却システムを備える。
  • 普通のコンピュータ: 市販のCPUやGPUを搭載し、基本的には空冷または水冷システムを使用。

5. 価格と規模

  • スパコン: 数百億~数千億円規模の設備投資が必要で、専用の施設が必要。
  • 普通のコンピュータ: 数万円~数百万円程度で購入可能で、個人や企業が利用できる。

スパコンは圧倒的な並列処理能力を活かして、膨大な計算を短時間で行うのが特徴。一方、普通のコンピュータは日常業務や個人利用向けの設計になっています。

富岳の実績や使用した成功事例にはどんなものがあるのか

 スーパーコンピュータ「富岳」は、その卓越した性能を活かし、多岐にわたる分野で重要な成果を上げています。

1. 気象・防災分野

  • 線状降水帯やゲリラ豪雨の予測: 「富岳」の高精度シミュレーションにより、これまで困難とされていた線状降水帯やゲリラ豪雨の予測精度が大幅に向上しました。
  • 津波浸水予測: 宮崎市中心部の広域3次元津波シミュレーションを実施し、津波が河川や建物を回り込む様子や道路の浸水状況を詳細に再現しました。

2. 医療・創薬分野

  • COVID-19治療薬の探索: 「富岳」を用いて、既存薬の中からCOVID-19に効果が期待できる治療薬候補を計算によって特定しました。
  • 創薬DXプラットフォームの構築: 「富岳」を基盤としたデジタルトランスフォーメーションにより、創薬プロセスの効率化と新薬開発の加速が実現しました。

3. 産業応用分野

  • 航空機設計の革新: 高忠実度の流体シミュレーションを活用し、航空機の設計プロセスに革新をもたらしました。
  • 大型船舶の設計最適化: 「富岳」を用いて、大型輸送船の航行時に船体周りに発生する微小な流れを詳細に再現し、船舶設計の効率化に貢献しました。

4. 基礎科学分野

  • 宇宙進化シミュレーション: 高精度な宇宙進化シミュレーションを通じて、ニュートリノの質量の大きさを探る研究が進められています。
  • プラズマ揺らぎの解明: 「富岳」を活用したシミュレーションにより、連動して発生するプラズマ揺らぎのメカニズムが解明されました。

多くの事例によって、「富岳」が多様な分野で革新的な研究と実用化に寄与していることを示しています。

具体的な開発はどのように進むのか

 スーパーコンピュータ「富岳NEXT」の開発は、理化学研究所(理研)を中心に進められています。具体的な開発プロセスは以下のとおりです。

1. フィージビリティスタディの実施

 2025年1月から、理研は「富岳NEXT」の開発に向けたフィージビリティスタディ(実行可能性調査)を開始しました。この調査では、システムの基本設計や技術的課題の洗い出し、性能目標の設定などが行われています。

2. 産学官連携による共同開発

 「富岳NEXT」の開発には、理研だけでなく、富士通やAMD、インテルなどの企業も参加しています。これらの企業と連携し、最新の技術や知見を取り入れたシステム設計が進められています。

3. 高性能・高効率なシステム設計

 「富岳NEXT」は、AIの学習や推論において世界最高水準の実効性能50エクサフロップス(EFLOPS)以上を目指しています。このため、CPUに加えてGPUなどの加速器を導入し、高帯域かつヘテロジニアスなノードアーキテクチャを採用する予定です。また、電力効率の大幅な向上や、システムの適時・柔軟な入れ替えや拡張が可能な設計が検討されています。

4. 設置場所の検討

 現時点では「富岳NEXT」の設置場所は未定とされています。理研や関係機関が最適な設置場所を検討中であり、今後の発表が期待されます。

最新の技術と産学官の連携により、「富岳NEXT」は2030年頃の稼働を目指して開発が進められています。

ヘテロジニアスなノードアーキテクチャとは何のことか

 ヘテロジニアスなノードアーキテクチャとは、異なる種類のプロセッサ(CPU、GPU、FPGAなど)を組み合わせて構成された計算ノード(コンピュータユニット)のことを指します。

  1. 異種プロセッサの組み合わせとはどんなものか
    • CPU(汎用計算向け)
    • GPU(並列計算やAI処理向け)
    • FPGA(特定用途に最適化)
    • その他のアクセラレータ(TPUなど)
  2. 利点:高効率な計算が可能
    • CPUは制御やシリアル処理を担当
    • GPUは大量の並列計算(AIやシミュレーション)を高速に処理
    • FPGAは特定の計算をカスタマイズして最適化
  3. 利点:電力効率の向上
    • 目的に応じたプロセッサを使い分けることで、無駄な電力消費を削減
  4. 利点:柔軟なシステム拡張
    • 特定の用途に応じて最適なプロセッサを追加・更新しやすい

ヘテロジニアスなノードアーキテクチャを採用することで、AI・シミュレーション・データ解析などの幅広い用途に対応しつつ、性能と電力効率を両立することを目指しています。

富岳からどれくらいレベルアップするのか

 富岳NEXTの実効性能については、現時点では詳細な数値は公開されていませんが、目標としては50エクサフロップス(EFLOPS)以上を実現することが予定されています。

 実効性能(Effective Performance)とは、コンピュータやスーパーコンピュータが実際のアプリケーションを動作させたときに発揮できる実際の計算能力のことを指します。

  • 富岳の実効性能は約442ペタフロップス(PFLOPS)(HPCGベンチマーク)です。
  • 1エクサフロップスは1,000ペタフロップスに相当するため、富岳NEXTの目標実効性能50エクサフロップスは、50,000ペタフロップスに相当します。

 富岳NEXTは富岳の約113倍の実効性能を目指して開発されています。

 富岳NEXTは、計算能力の大幅な向上による、AIや大規模シミュレーションの性能向上を目指しています。

富岳NEXTは富岳の約113倍の実効性能を目指して開発されています。

ライバルはいるのか

 スーパーコンピュータ「富岳NEXT」の開発において、主な競合相手は米国や中国の次世代スーパーコンピュータが挙げられます。特に、米国の「エルキャピタン(El Capitan)」や中国の新型スーパーコンピュータが、富岳NEXTのライバルとなる可能性があります。

 これらの国々は、エクサスケール(毎秒1エクサフロップス=10の18乗回の計算能力)を超える性能を持つスーパーコンピュータの開発を進めており、富岳NEXTも同様の性能を目指しています。具体的には、AIの学習や推論において世界最高水準の実効性能50エクサフロップス(EFLOPS)以上を実現する計画です。

 また、富岳NEXTの開発に向けたフィージビリティスタディ(実行可能性調査)では、理化学研究所や富士通、AMD、インテルなどが参加しており、国際的な競争力を高めるための取り組みが進められています。

富岳NEXTは米国や中国の次世代スーパーコンピュータと競い合いながら、世界最高水準の性能を目指して開発が進められています。

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