この記事で分かること
・光電融合とは何か:光電融合とは、光技術(フォトニクス)と電子技術(エレクトロニクス)を組み合わせた技術で、データ処理や通信の効率を飛躍的に向上させる技術ものです。
・光を利用するメリット:光は電気の利用に比べ、伝送損失や発熱が少ない、高効率なスイッチング、多重通信が容易などの理由で電気を利用するよりも消費電力を小さくすることができます。
・光電融合の課題:光信号を電子信号に変換する際にエネルギー損失などの技術的な課題、高コスト、耐久性などの問題があります。
光電融合技術の分野で「メンブレン」技術活用
NTTが、光電融合技術の分野で「メンブレン」技術を活用し、スーパーコンピュータの性能向上を目指していることがニュースになっています。

「メンブレン」技術は、光と電気の融合によりデータ処理の効率を飛躍的に向上させる可能性を持つとされています。NTTは、この技術を活用することで、スーパーコンピュータの性能を大幅に向上させることを目指しています。
光電融合とは何か
光電融合(Photonic-Electronic Convergence)とは、光技術(フォトニクス)と電子技術(エレクトロニクス)を組み合わせることで、データ処理や通信の効率を飛躍的に向上させる技術のことです。
光電融合の目的
- 超高速データ処理: 光は電子よりも高速で伝送できるため、光を活用することで処理速度を向上させる。
- 低消費電力: 電子回路だけでなく光を利用することで、消費電力を抑えられる。
- 熱問題の軽減: 電子回路の発熱を抑えることで、冷却の負担を軽減し、システム全体の効率を上げる。
具体的な技術要素
- 光通信技術の活用
- 既存の電気配線の代わりに光配線を用いることで、高速かつ低遅延のデータ通信が可能になる。
- 光スイッチや光プロセッサ
- 電子回路の代わりに光回路を使用することで、データ処理のボトルネックを解消。
- 光メンブレン技術
- NTTが開発している「メンブレン」は、極めて薄い光集積回路を用いることで、より高性能なデバイスを実現する技術。
期待される応用分野
- 次世代スーパーコンピュータ: より高速・低消費電力な計算システムの構築
- データセンター: 省エネルギーで高効率なデータ処理の実現
- 6G・Beyond 5G: 高速通信インフラの基盤技術
NTTはIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の一環として光電融合技術を推進しており、特に「メンブレン」技術が鍵となると考えられています。

光電融合とは、光技術(フォトニクス)と電子技術(エレクトロニクス)を組み合わせた技術で、データ処理や通信の効率を飛躍的に向上させる技術ものです。
NTTはIOWN構想で光電融合技術を推進しています。
光を利用するとなぜ、消費電力を抑えることができるのか
光を活用することで消費電力を抑えられことができるのは、主に、伝送損失の低減、発熱の抑制、エネルギー変換の効率向上などが関係しています。
1. 伝送損失が少ない(低抵抗)
(1) 電子回路の電力消費の要因
従来の電子回路では、データを伝送するために金属配線を使用します。しかし、金属配線には電気抵抗があるため、電流が流れるとジュール熱(抵抗損失)が発生し、エネルギーが消費されます。
(2) 光通信では抵抗損失がほぼゼロ
一方、光通信ではデータを光ファイバーや光導波路を通じて伝送します。光は、電子のように物質内部で散乱されにくいため、エネルギー損失が極めて小さいのが特徴です。
・ 長距離伝送でも信号減衰が少なく、電力をほとんど消費しない。
・ データセンターやスーパーコンピュータのチップ間通信でも、低消費電力で高速通信が可能。
2. 発熱が少ない
(1) 電子回路はスイッチングで熱を発生
電子回路では、トランジスタがON/OFFを繰り返すことでデータを処理します。このとき、電荷の移動により電流が流れ、熱が発生します(特に高クロック動作時)。
➡ これがCPUやGPUが発熱する主な原因です。
(2) 光回路はほぼ熱を発生しない
光は電磁波の一種であり、電子の移動を伴わずにエネルギーを伝達します。したがって、光信号の伝送では、ほとんど熱が発生しません。
・ データ処理時の発熱が抑えられるため、冷却コストも低減可能。
・ スーパーコンピュータやデータセンターでは、冷却のためのエネルギー削減につながる。
3. 高速で効率的なエネルギー変換
(1) トランジスタの充放電エネルギーの削減
電子回路では、論理演算を行う際にトランジスタを充放電する必要があります。このプロセスで消費される電力はP=CV2fP = CV^2 fP=CV2f(C:キャパシタンス、V:電圧、f:周波数)で表され、
➡ 動作周波数が高くなると消費電力が増大します。
(2) 光スイッチは電力消費が少ない
光を利用する場合、スイッチングには電圧をほとんど必要とせず、フォトンの流れを制御するだけでデータ処理が可能になります。
・ 超高速かつ低消費電力な演算が可能。
・ AI処理や大規模データ演算において、電力効率を向上できる。
4. 多重通信が容易で効率的
(1) 電子回路の並列処理の限界
従来の電子回路では、並列処理を増やすには配線を増やす必要があるため、配線の増加に伴い、消費電力と熱が増加してしまいます。
(2) 光は「波長多重」で多数のデータを同時に送信可能
光は、異なる波長の信号を同じ光ファイバー内で同時に送信できるため、
・ 同じ経路を使って、複数のデータを低消費電力で伝送できる。
・ 回路の複雑化を抑えつつ、データ処理能力を向上できる。
5. 量子効果を活用した低消費電力デバイス
将来的に、光子を用いた量子コンピューティング技術が発展すれば、 現在の半導体ベースの計算方式よりも劇的に低消費電力な計算が可能になります。

光の利用は、伝送損失や発熱が少ない、高効率なスイッチング、多重通信が容易などの理由で電気を利用するよりも消費電力を小さくすることができます。
光電融合の問題点は何か
光電融合技術は次世代の高速・低消費電力なデータ処理を可能にする有望な技術ですが、いくつかの課題や問題点もあります。
1. 技術的な課題
(1) 光と電子の相互変換の効率
- 現在の技術では、光信号を電子信号に変換する際にエネルギー損失が発生。
- 高効率な光電変換デバイスの開発が求められる。
(2) 光集積回路の小型化と量産
- 光デバイスは電子デバイスに比べて大きくなりがちで、シリコンチップ上に高密度集積するのが難しい。
- 製造プロセスの最適化が必要。
(3) 光配線の伝送損失と集積技術
- 光配線(光ファイバーや導波路)でデータを伝送する際、損失を最小限に抑える必要がある。
- シリコンフォトニクス技術の改良が求められる。
2. コストと経済性
(1) 製造コストの高さ
- 光集積回路(PIC:Photonic Integrated Circuit)や高性能な光変換デバイスの製造コストが高い。
- 電子回路と同等のコストで製造できる技術革新が必要。
(2) 既存システムとの互換性
- 既存の電子回路やインフラとの統合が課題。
- すぐに完全移行するのは困難で、ハイブリッドなアプローチが必要。
3. 運用と実装の課題
(1) 熱管理の問題
- 光デバイスは熱の影響を受けやすく、温度変化による性能劣化が懸念される。
- 効果的な熱管理技術の開発が必要。
(2) デバイスの標準化と互換性
- 企業ごとに異なる設計を採用すると、相互運用性が低下。
- 業界全体での標準化が求められる。
4. 実用化までの時間
- 基礎研究段階の技術が多く、商用化にはまだ時間がかかる。
- NTTなどの企業が進める「IOWN構想」は2030年頃の本格展開を目指しているが、それまでに技術課題を解決する必要がある。

光電融合技術は、通信やコンピューティングの効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めていますが、「技術的な課題」「コスト」「実装・運用の難しさ」「商用化までの時間」という点で課題が残っています。
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