この記事で分かること
・不織布とは:維を織ったり編んだりせずに、接着・圧縮・熱処理などで繊維同士を結合してシート状にした布状の素材です。
・バイオ素材とは:植物などの再生可能資源を原料にした樹脂や繊維が多く、CO₂排出量の削減や石油資源の使用抑制を目的に活用されています。
・バイオ素材の課題:性能面の課題、コスト高、原料が農作物であることで起きる課題(供給不安)などが懸念とされています。
バイオベース樹脂繊維の不織布化
ユウホウが、麻系の天然繊維とバイオマスを原料とするバイオベース樹脂繊維を不織布化した「GRECOM(グリコン)」の提案を始めたことがニュースになっています。
天然素材やバイオマス由来の材料を活用した製品の普及によって、環境負荷低減に貢献できるものと考えています。
ユウホウとはどんな会社なのか
株式会社ユウホウは、1892年(明治25年)に紡績会社として創業し、現在は東洋紡グループの一員として、不織布を中心とした機能性製品を多様な生活・産業分野に提供しています。
会社概要
- 設立: 1978年(昭和53年)1月
- 資本金: 4億1千万円
- 代表者: 代表取締役 井上 壮一
- 所在地: 大阪市北区堂島二丁目1番16号 フジタ東洋紡ビル
- 従業員数: 265名(男性162名、女性103名)
事業内容
「不織布」、「フィルター」、「樹脂成形」の3つの主要事業を展開し、環境、自動車、半導体、エネルギー、メディカルなどの先端産業分野に貢献しています。
技術的な強み
同社の強みは、フィルター材料となる不織布の製造から最終製品であるフィルターの組立までを自社で一貫して行える点にあります。
特に、静電フィルターのトップメーカーである東洋紡との連携により、静電フィルター(エリトロン®)を適用したビル空調設備用フィルターなど、特徴的な製品を開発・提供しています。
ユウホウは、1世紀を超える歴史と伝統を持ちながらも、時代の変化に適応し続ける企業として、機能性不織布製品のニッチトップメーカーを目指しています。

株式会社ユウホウは不織布を中心とした機能性製品を多様な生活・産業分野に提供する企業です。
不織布とは何か
不織布(ふしょくふ)とは、繊維を織ったり編んだりせずに、接着・圧縮・熱処理などで繊維同士を結合してシート状にした布状の素材です。
特徴
- 軽量で通気性が良い
- 織物や編物よりも製造コストが低い
- 大量生産に向いている
- 使い捨て製品にも適している
主な製法
- スパンボンド法(熱で繊維を接着)
- メルトブロー法(微細な繊維を噴射して固める)
- ニードルパンチ法(針で絡めて繊維を結合)
- ケミカルボンド法(接着剤を使って固める)
用途例
- マスク、医療用ガウン、オムツなどの衛生用品
- フィルター(空調、車のエアフィルターなど)
- 農業用シート、防草シート
- 自動車内装材や建材
- エコバッグや包装材

不織布は繊維を織ったり編んだりせずに、接着・圧縮・熱処理などで繊維同士を結合してシート状にした布状の素材です。
不織布は車向けではどのようなところで利用されるのか
不織布は自動車のさまざまな部位に使われていて、「軽量化」「静音化」「快適性向上」「コストダウン」といった目的に大きく貢献しています。
【1. 内装材】
- 天井材(ヘッドライナー)
- 不織布を使うことで軽量で加工しやすく、吸音性もアップ。
- フロアカーペットの裏材
- 遮音・防振を目的とした層に使われる。
- ドア内張り(ドアトリム)
- 見た目・質感の調整、音の遮断。
- シート裏地・シート中材
- クッション性の向上や通気性の確保。
【2. フィルター関連】
- エアコンフィルター(キャビンフィルター)
- 花粉・粉塵・PM2.5の除去。ユウホウの静電不織布などが使われることも。
- エンジンエアフィルター
- エンジンに入る空気を浄化。
- オイル・燃料フィルター
- 微細な汚れを除去。
【3. 吸音・断熱材】
- エンジンルームの遮音カバー
- エンジン音や振動を低減。
- フードライナー(ボンネット裏)
- 防音・断熱の両方の役割。
- ピラーやダッシュボード周辺
- 車内静音化を狙う場所に多く使われる。
【4. その他】
トランク内装
- 軽くて加工しやすいためトランクの内側に使用。
ワイヤーハーネスの包材
- 配線の保護と絶縁のため。

不織布は「軽量化」「静音化」「快適性向上」「コストダウン」といった車に要求される様々な部品に利用されています。バイオ素材やリサイクル素材を使った不織布の開発の実現は、自動車業界のカーボンニュートラル化にも貢献可能です。
バイオ素材にはどんなものか使われているのか
自動車に使われているバイオ素材(バイオマス素材)には、植物などの再生可能資源を原料にした樹脂や繊維が多く、CO₂排出量の削減や石油資源の使用抑制を目的に活用されています。
■ 主なバイオ素材の種類と特徴
1. ポリ乳酸(PLA)
- 原料:トウモロコシ、サトウキビなどの糖分
- 特徴:生分解性あり(使用条件次第)、軽量・透明性あり
- 用途:内装材、シート表皮、コンソール周りの部品
2. バイオポリエチレン(Bio-PE)
- 原料:サトウキビ由来のバイオエタノール
- 特徴:石油由来のPEと同等の性能。リサイクル可能
- 用途:内装パネル、トリム、フロアマットの裏材
3. バイオポリエステル(例:バイオPET)
- 原料:部分的に植物由来(主にエチレングリコール成分)
- 特徴:従来PETと近い物性で汎用性高い
- 用途:シートカバー、フィルター、天井材
4. 天然繊維(麻、ケナフ、ジュート、綿など)
- 特徴:軽量・吸音性が高い・CO₂固定力が高い
- 用途:ドアトリムの中材、インパネ基材、トランク部品
- 実例:トヨタは「ケナフ(アオイ科の植物)」を使ったドアトリムを採用
5. セルロース系繊維(木材由来)
- 特徴:再生可能で強度があり、バイオ由来率が高い
- 用途:不織布ベースのフィルター材、内装基材など
■ バイオ素材の利点
- 石油資源の節約
- 焼却時にCO₂排出が相対的に少ない(カーボンニュートラル)
- 再生可能な資源を利用可能
- 軽量化による燃費向上にも貢献
ユウホウなどの不織布メーカーは、こうしたバイオ素材をベースにした不織布を開発し、自動車の中間材(クッション層や基材)として提案しています。たとえば、「セルロースとPLAをブレンドした多層不織布」などが実際に製品化され始めています。

自動車では植物などの再生可能資源を原料にした樹脂や繊維が多く、使われています。
バイオ素材の課題は何か
バイオ素材は環境にやさしいという大きなメリットがある一方で、いくつかの課題や制約もあります。
■ 1. 物性(性能)の課題
- 耐熱性や耐久性が低い素材がある
→ 例:ポリ乳酸(PLA)は90℃前後で変形しやすく、自動車内の高温環境には不向きなことも。 - 吸湿性が高いものも多く、寸法安定性に難あり
→ 天然繊維やセルロース系素材などは特に水分を吸いやすい。
■ 2. コストが高い
- 石油由来素材よりも高価なことが多い
→ 原料コスト、製造プロセスが確立されていないこと、スケールメリットが小さいことが原因。 - 自動車業界のコスト要求(特に量産車)に対応しにくい。
■ 3. リサイクルとの相性
- 従来のリサイクル工程に混入すると品質が劣化する場合がある
→ 石油由来プラスチックと混ざると分別困難、リサイクル効率が落ちる。 - 生分解性素材(PLAなど)は、既存のプラスチックリサイクル系とは分けて扱う必要がある。
■ 4. 安定供給の難しさ
- 原料が農作物由来のため、天候や市場価格に左右されやすい
→ 価格変動・収量不安定。 - 食料と競合するリスク(フード・マテリアルコンフリクト)も指摘される。
■ 5. 加工性・大量生産性
- 素材によっては加工性が悪く、既存設備での成形が難しい
→ 設備更新や工程の見直しが必要になる場合も。 - 不織布として加工する際にも、従来の合成繊維とは違った工程管理が必要なことがある。
■ 6. バイオ=エコ とは限らない
- バイオ素材でも、生分解しない・燃やせばCO₂が出るものもある。
- 「バイオ由来」≠「完全に環境負荷が小さい」という誤解を招きやすい。

バイオ素材には性能面の課題、コスト高、原料が農作物であることで起きる課題(供給不安)などが懸念とされています。
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