中外テクノスの活性炭中のPFAS含有量分析 活性炭でPFASが除去できる理由は何か?どのように吸着量を分析するのか?

この記事で分かること

  • PFASが活性炭に吸着する理由:活性炭は多孔質の大きな表面積を利用し、水になじみにくいPFAS分子をその表面に物理的に付着させて吸着します
  • 吸着量の分析方法:吸着試験では溶液に評価材を加え除去率を定量し、破過試験ではカラムに通水し吸着能力の限界(破過点)を推定します。

中外テクノスの活性炭中のPFAS含有量分析

 中外テクノスは、活性炭中のPFAS(有機フッ素化合物)含有量を高精度で定量化する分析サービスを提供しています。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP697652_W5A001C2000000/

 このサービスは、PFAS汚染対策として広く用いられている活性炭の吸着能力評価や、使用済み活性炭の適切な管理・処分の判断に必要なデータを提供することを目的としています。

中外テクノスはどんな企業か

 中外テクノス株式会社は、広島県広島市に本社を置く、独立系の総合検査会社です。

 創業は1953年(昭和28年)で、長年にわたり、社会のインフラの維持、品質管理、環境保全に貢献する多岐にわたる技術サービスを提供しています。

主な事業内容

 事業は大きく分けて、検査・分析・計測技術開発・システム構築の分野に及びます。

  1. 環境・化学分析
    • 水質、大気、土壌などの環境調査・分析(PFAS分析サービスもこれに含まれます)。
    • 環境コンサルティング、脱炭素社会構築サポート。
    • 資源・廃棄物コンサルタント。
  2. 社会インフラ・産業プラントの検査・評価
    • 非破壊検査(構造物、プラントなどの安全性・健全性評価)。
    • 構造物調査、材料強度調査。
    • CAE(コンピューター支援による工学解析)ソリューション。
  3. 研究・開発・装置製作
    • 各種研究開発の受託、研究開発支援。
    • 品質検査用のX線検査装置や、プラント点検・廃炉作業用の特殊システム・ロボットの設計・製造。
  4. 医療・計測機器の販売・メンテナンス
    • 医療機器・設備の導入、メンテナンスサービス。
    • 情報機器、産業機器の販売・システム構築。

 中外テクノスは、環境プラント社会インフラものづくりといった多様な分野に対して、専門的な調査、計測、解析、コンサルティング、エンジニアリングサービスを一貫して提供することで、「安全・安心」を守ることに貢献している企業です。

中外テクノスは、環境分析非破壊検査構造物調査などを行う独立系の総合検査会社です。多様な分野で専門的な技術サービスを提供し、社会のインフラ維持と環境保全に貢献しています。

活性炭はどのようにPFASを吸着するのか

 活性炭がPFAS(ピーファス、有機フッ素化合物)を吸着する基本的なメカニズムは、「物理吸着」と「疎水性相互作用」です。

1. 物理吸着(多孔質構造による表面積の利用)

 活性炭は、内部に微細な孔が無数に存在する多孔質構造をしており、これにより非常に大きな表面積を持っています。

  • 多孔質構造: 活性炭の表面積はテニスコート数枚分に相当することもあり、これがPFASなどの汚染物質を吸着するための「結合サイト(場所)」を大量に提供します。
  • 分子の捕捉: 水が活性炭の層を通過する際、PFAS分子は活性炭の微細な孔の中に入り込み、表面に物理的に付着・凝縮します。これは、物質を液相(水)と固相(活性炭)の界面に蓄積させる現象です。

2. 疎水性相互作用

 PFAS分子は、水になじみにくい疎水性のフッ素炭素鎖を持っています。

  • 水からの回避: PFASは水(極性溶媒)から逃れようとする性質があり、水よりも固体の表面(活性炭)のほうが安定な状態になります。
  • 表面への付着: この性質により、水中に溶けているPFAS分子は、非極性である活性炭の表面に引き寄せられ、吸着します。

補足:吸着効率に影響する要因

PFASの吸着効率は、以下の要因によって左右されます。

  • PFASの鎖長: 一般的に、PFASの分子を構成する炭素鎖が長いほど(例:PFOS、PFOAなど)、疎水性が増し、活性炭への吸着能力が高くなります。
  • 活性炭の種類: 使用される活性炭の原料や製造方法(孔のサイズ分布)によって、吸着能力は異なります。
  • 競合物質: 水中にPFAS以外の有機物が多い場合、それらの物質も活性炭に吸着するため、PFASの吸着能力が低下することがあります。

活性炭は多孔質の大きな表面積を利用し、水になじみにくいPFAS分子をその表面に物理的に付着させて吸着します(疎水性相互作用)。

活性炭の種類にはどのようなものがあるのか

 活性炭は、主にその形状原料によって分類されます。これらの違いにより、活性炭の細孔構造や吸着特性が変わり、用途が使い分けられます。

1. 形状による分類

種類粒子径の目安特徴主な用途
粉末活性炭 (PAC)150 µm以下粒子表面積が大きく、吸着速度が速い。再生が困難。浄水場の水処理(緊急時)、食品・医薬品の脱色・精製
粒状活性炭 (GAC)150 µm以上破砕炭や成形された造粒炭がある。装置に充填し、連続処理に使われる。再生が可能なものが多い。上下水道処理、工場排水処理、空気浄化、溶剤回収。
繊維状活性炭 (ACF)フェルトや布状表面にミクロ孔が集中しているため、吸着速度に優れる高性能フィルター(空気清浄機、たばこフィルター)、防護服。
成形炭/その他ペレット状、ハニカム状など特定の用途に合わせて成形されており、主に気相(ガス)処理に利用される。脱臭装置、排ガス処理。

2. 原料による分類

 活性炭の原料は、その後の細孔構造(ミクロ孔、メソ孔、マクロ孔のバランス)に影響を与え、吸着する分子の大きさに適性が生まれます。

原料主な特徴細孔構造の傾向主な用途
ヤシ殻系活性炭非常に硬く、耐久性が高い。ミクロ孔(微細な孔)が最も発達。小さい分子の吸着に強い。浄水(脱臭)、家庭用浄水器、有機溶媒・ガス状物質の吸着。
石炭系活性炭供給が安定しており、汎用性が高い。ミクロ孔とメソ孔のバランスが良い。幅広い分子サイズに対応。排水処理、一般的な水処理、排ガス処理。
木質系活性炭主におがくずや木材が原料。薬品賦活法で製造されることが多い。マクロ孔やメソ孔が発達。比較的大きな分子の吸着に適する。食品・医薬品の脱色・精製(着色成分の除去)。

 活性炭は用途(液体処理か気体処理か、吸着させたい分子の大きさなど)に応じて、適切な形状原料のものが選定されます。

活性炭は主に、粒子の大きさで粉末状(PAC)と粒状(GAC)、原料でヤシ殻系石炭系木質系に分類されます。用途により、吸着速度細孔構造が異なる種類が使い分けられます。

PFASの吸着に優れた活性炭は何か

 PFASの吸着に優れているとされる活性炭は、主に石炭系またはヤシ殻系の粒状活性炭 (GAC) のうち、PFAS除去のために特性を最適化されたものです。

1. 粒状活性炭(GAC)の利用

 水道水源などの継続的な水処理では、粒状活性炭(GAC)が主流です。

  • GACは吸着塔に充填して長期間の通水処理が可能で、吸着飽和後も熱再生して再利用できるため、コストや廃棄物処理の面で優れています。
  • 粉末活性炭(PAC)も高い除去能力を示すことがありますが、主に短時間の応急的な使用や前処理に用いられます。

2. 細孔構造の最適化(メソ孔の発達)

 PFASの吸着には、活性炭の細孔のうち、メソ孔(2~50nm)が寄与すると言われています。

  • PFAS除去用活性炭: 従来の浄水用活性炭(多くはミクロ孔が発達したヤシ殻系や石炭系)と比べ、メソ孔を意図的に発達させた石炭系粒状活性炭が、PFAS(特に長鎖PFAS)の除去性能を高めるために開発・評価されています。

補足:PFASの種類による適性の違い

 PFASはその分子の長さによって特性が異なります。

  • 長鎖PFAS(PFOS、PFOAなど): 疎水性が高く、活性炭への吸着能力は高い傾向にあります。
  • 短鎖PFAS: 水溶性が高く、活性炭への吸着が難しくなります。短鎖PFASの除去には、活性炭よりもイオン交換樹脂の方が優位であると評価されることもあります。

PFAS除去には、主に粒状活性炭(GAC)が用いられます。特に、長鎖PFASにはミクロ孔とメソ孔が発達した石炭系活性炭、短鎖PFASにはイオン交換樹脂も効果的です。

中外テクノスの吸着能力評価の方法は

 中外テクノスが提供する活性炭などの評価材のPFAS吸着能力評価には、主に以下の2つの方法があります。


1. PFAS吸着性能の定量的評価(吸着試験)

 これは、短時間で評価材の基本的な吸着能力を定量的に把握するための試験です。

  1. 評価材の添加: PFASを既知の濃度で溶かしたPFAS溶液の中に、評価対象の活性炭などの評価材を添加します。
  2. 振とう・撹拌: 溶液と評価材を一定時間、振とう・撹拌し、PFASを評価材に吸着させます。
  3. 濃度測定: 吸着後の溶液中に残っているPFASの濃度を測定します。
  4. 性能評価: 測定されたPFAS濃度の低下量から、評価材がどれだけのPFASを吸着・除去できたかを定量的に評価します。

2. 各種条件下での破過特性の把握(破過試験)

 これは、実際の浄水処理などで活性炭をカラム(塔)に充填して連続使用した場合の性能をシミュレートする試験です。

  1. カラム充填: 活性炭をカラムに充填し、PFAS溶液を通水します。
  2. 連続測定: 一定時間ごとに、カラムを通過した後の処理水(流出液)中のPFAS濃度を測定します。
  3. 破過点の推定: 処理水中のPFAS濃度が、処理目標値や原水濃度に近い値に達した時点を破過点(吸着能力の限界)と推定します。
  4. 性能評価: 破過点までの処理水量を把握することで、活性炭の持続的な吸着性能寿命を評価します。

 中外テクノスは、これらの試験を通じて、新規吸着材の開発や、水処理施設での適切な運用管理に必要な信頼性の高いデータを提供しています。

中外テクノスのPFAS吸着能力評価は、主に吸着試験破過試験で行われます。吸着試験では溶液に評価材を加え除去率を定量し、破過試験ではカラムに通水し吸着能力の限界(破過点)を推定します。

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