この記事で分かること
- 気候変動が個体数の影響を与える理由:気温の上昇という直接的な影響と気温上昇に伴う環境の変化の間接的な影響から個数が減少しています。
- チョウの減少幅が大きい理由:「食べ物の依存度が高い」、「気温・環境に敏感」、「体が小さくて農薬に弱い」など周囲の環境の影響を受けやすいため、個体数が特に減少しています。
野鳥や昆虫の個体数減少
日本列島では近年、野鳥や昆虫の個体数が著しく減少しており、生態系への深刻な影響が懸念されています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOSG1748V0X10C25A3000000/
特にスズメやチョウといった身近な生物の減少が顕著で、環境省と日本自然保護協会の調査によれば、里山に生息する鳥類の15%、チョウ類の33%が年3.5%以上のペースで減少していることが明らかになりました。
野鳥や昆虫の個体数減少の要因
主な減少要因として以下のような要因が考えられます。
- 里山の荒廃:農業の機械化や過疎化により、かつての里山の管理が行き届かなくなり、生物の生息環境が失われています。
- 農薬や除草剤の使用:農薬や除草剤の使用が昆虫の減少を招き、それを餌とする鳥類にも影響を及ぼしています。
- 気候変動:気温の上昇や異常気象が生物の生息地や繁殖時期に影響を与えています。
- 外来種の侵入:外来種の増加により、在来種との競争や捕食が生じ、生態系のバランスが崩れています。
気候変動が生息数を減らす理由
気候変動が鳥や虫の数を減らす理由は、主に次のようなものがあります。
1. 気温の上昇
- 生き物には「適した温度範囲」があります。
気温が上がると、暑さに弱い種は生きられなくなったり、繁殖に失敗することが増えます。 - 特に高山や寒冷地に住んでいた種は、逃げ場がなくなって絶滅リスクが高まります。
2. 季節のズレ
- 春の訪れが早まったり、雨季・乾季のタイミングが変わることで、
鳥の繁殖シーズンや虫の発生時期と、エサ(花・果実・昆虫)の時期がズレます。 - 結果、ヒナに十分なエサを与えられなかったり、成虫になった虫が食べ物を見つけられなくなります。
3. 異常気象の増加
- 豪雨・台風・猛暑・干ばつが頻発し、生息地そのものが破壊されます。
- 巣作りに必要な場所(木や草地)が流されたり、土壌が乾いて植物が育たなくなり、
間接的に食物連鎖全体に影響を与えます。
4. 生息地の変化・縮小
- 森林が乾燥したり、湿地が干上がると、それに依存していた鳥や虫が住めなくなります。
- 温暖化で植生(生えている植物の種類)が変わると、それに依存する生き物も影響を受けます。

気温の上昇という直接的な影響と気温上昇に伴う環境の変化の間接的な影響から個数が減少しています。
農薬や除草剤はどのように影響するのか
農薬や除草剤が鳥や虫に与える影響は、以下のようにかなり深刻なものです。
1. 直接的な毒性
- 農薬(特に殺虫剤)は、虫を殺すために作られています。
- 当然、ターゲットにしていないチョウやハチ、トンボなどの益虫(えきちゅう)にも影響します。
- また、農薬が付着した虫を食べた鳥(スズメ、ツバメなど)も、中毒を起こして死ぬことがあります。
2. 食べ物の減少
- 昆虫が減ると、それをエサにしている鳥や小動物も食べ物を失います。
- たとえば、ヒナを育てる時期に虫が少ないと、ヒナの死亡率が高くなります。
3. 繁殖・発育への影響
- 殺虫剤に含まれる成分の中には、微量でもホルモンに影響を与えるものがあり、
虫や鳥の繁殖能力を低下させることがあります。 - 例えば、卵の殻が薄くなったり、孵化率(ふかりつ)が下がったりすることが知られています。
4. 除草剤による生息地の破壊
- 除草剤を撒くと、雑草だけでなく、虫や小動物が住んでいた草むらや花畑も消えます。
- 花が減ると、花粉を運ぶ虫(ハチやチョウ)が減り、それを食べる鳥も減る。
5. 土壌と水質汚染
- 農薬や除草剤は土にしみ込み、川や池に流れ込むこともあります。
- それにより、水生昆虫やカエルなどの両生類も減少します。これも鳥や魚など、上の階層の生き物に波及します。

農薬・除草剤は虫を減らすだけでなく、それに依存している鳥や生態系全体を静かに壊してしまっています。
生き物に優しい農業にはどんなものがあるのか
生き物に優しい農業とは、自然環境をできるだけ壊さずに、農作物を育てる方法であり、「農薬・化学肥料に頼らない」「周りの生き物と共存する」ことを重視しています。
「生き物に優しい農業」は、最近大きく注目されており、以下のようなものがあります。
1. 有機農業(オーガニック農業)
- 化学農薬・化学肥料を使わない。
- 土の健康を大切にして、堆肥(たいひ)や緑肥(りょくひ:植物を土にすき込む)を活用する。
- 天敵(害虫を食べる虫や鳥)を味方につける農法も多くあります。 例:アブラムシ対策にテントウムシを呼び込む。
2. 減農薬農業
- 完全に農薬をやめるのが難しい場合、最低限の農薬だけに抑える。
- 病害虫が出たときだけピンポイントで使うなど、使い方を工夫する。
- 病気に強い品種を選んで、農薬に頼らない栽培を目指すこともあります。
3. 多様な生き物が住める田んぼ・畑づくり
- 畑の周りに花を植えて、虫や鳥が集まれる場所を作る(生態系ネットワークづくり)。
- 「生きもの調査」をして、田んぼにカエルやトンボがいるかチェックして管理する。
- 田んぼでは冬水たんぼ(冬も水を張っておいて、鳥たちのエサ場にする)みたいな取り組みも。
4. 自然農法
- 人間の手をできるだけ加えず、自然に任せて育てる。
- 雑草も完全には取らず、ある程度は生やしたまま共存させる。
- 「耕さない」「無農薬・無施肥(肥料も自然まかせ)」というスタイルもある。
かなりストイックな方法ですが、成功すると豊かなとなります。

「農薬・化学肥料に頼らない」「周りの生き物と共存する」ことを重視する農業が生きものにやさしい農業といえます。
チョウの減少が特に多い理由
チョウが特に減ってる理由は、他の虫に比べて生きる条件がすごく細かく・繊細であるためです。
1. エサになる植物に強く依存している
- チョウは、種類ごとに幼虫が食べる植物(食草)が決まっています。
- 例えば、モンシロチョウならキャベツ・ダイコンなどアブラナ科の植物。
- アゲハチョウならサンショウやミカンなどミカン科。
- だから、その植物が減ると、すぐに生きられなくなってしまいます。
2. 成長や繁殖に気温が大きく影響する
- チョウは変温動物(体温を外気温に頼る生き物)であるため、
気温が上がりすぎたり下がりすぎたりすると、成長や繁殖に支障が出てしまいます。。 - 異常気象(猛暑、寒波)がくると、世代交代が失敗することも多く見られます。
3. 農薬の影響をモロに受ける
- チョウは羽が薄く、体も小さいから、農薬にすごく弱い。
- 幼虫のときに食草に付いた農薬を食べたり、成虫になって花の蜜を吸ったときに汚染されていたりすると、すぐ死んだり、産卵できなくなったりしてしまいます。
4. 生息環境の喪失
- 里山、草地、田んぼのあぜ道など、チョウが生きる場所が全国で激減しています。
- 特に、手入れされた「半自然の環境」(例:里山)が荒れてしまうと、チョウの種類も激減します。
5. 世代数が少ない種は回復が難しい
- 一年に一回しか卵を産まないようなチョウもいます。
- 一度大きく減ってしまうと、回復にすごく時間がかかります。
- さらに「個体数が少ないと交配が難しくなって絶滅に近づく」という「負のスパイラル」も起きやすくなります。

チョウは「食べ物の依存度が高い」、「気温・環境に敏感」、「体が小さくて農薬に弱い」といった特性から周囲の環境の影響を受けやすいため、個体数が特に減少しています。
生き物に優しい農業




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