車載半導体の売上ランキング 車載半導体の特徴、スマホなどの半導体との違いは何か?

この記事で分かること

  • 車載半導体とは:自動車の電子制御に使われる半導体で、エンジン制御や安全機能、インフォテインメントなどを支えます。電動化や自動運転の進化に不可欠な「頭脳」や「神経」のような役割を果たします。
  • スマートフォンやパソコンの半導体との違い:車載半導体は、性能だけでなく、高温・振動に耐える高い耐久性と信頼性、そして人命に関わる故障を防ぐ安全性が最優先されます。
  • ルネサスの強みと課題:車載マイコンで高いシェアを誇り、高い信頼性とトータルソリューションの提供力が強みです。一方、電動化に不可欠なパワー半導体や、自動運転向けの高性能プロセッサー分野での競争力強化が今後の課題となります。

車載半導体の売上ランキング

 調査会社のデータによると、車載半導体の2024年の売上高ランキングで、ドイツのインフィニオンが首位を維持し、日本のルネサスエレクトロニクスは5位となっています。

https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2508/18/news054_2.html

 課題もあるものの、ルネサスは、日本の自動車産業を支える半導体メーカーとして重要な位置を占めています。

車載半導体メーカー トップ5

1位: インフィニオン・テクノロジーズ (Infineon Technologies) 🇩🇪

  • 圧倒的なシェアを誇り、特にパワー半導体とマイクロコントローラー(MCU)に強みがあります。電気自動車(EV)市場の成長とともに、その地位をさらに強固にしています。

2位: NXPセミコンダクターズ (NXP Semiconductors) 🇳🇱

  • オランダのNXPは、車載ネットワークインフォテインメントセキュリティ分野に強く、幅広い自動車向け製品を提供しています。

3位: STマイクロエレクトロニクス (STMicroelectronics) 🇨🇭

  • スイスに本社を置くSTマイクロエレクトロニクスは、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体をはじめ、車載用半導体の幅広いポートフォリオを持ち、急速にシェアを伸ばしています。

4位: テキサス・インスツルメンツ (Texas Instruments) 🇺🇸

  • アメリカのTIは、アナログ半導体組み込みプロセッサーに強みがあり、自動車のさまざまな電子制御システムでその技術が活用されています。

5位: ルネサスエレクトロニクス (Renesas Electronics) 🇯🇵

 日本のルネサスは、車載用MCU(マイクロコントローラーユニット)市場で高いシェアを誇り、日本の自動車産業に欠かせない存在です。

車載半導体とは何か

 車載半導体とは、自動車に搭載される電子機器やシステムを制御するために使われる半導体の総称です。

 かつて自動車は機械的な部品が中心でしたが、安全性、環境性能、快適性などを向上させるため、電子制御化が進み、それに伴い半導体の重要性が飛躍的に高まりました。

車載半導体の主な用途と種類

 車載半導体は、自動車のあらゆる部分で使われており、主に以下の3つのカテゴリーに分けられます。

1. 制御系 (マイコン、プロセッサーなど)

  • 用途: エンジン制御、ブレーキ制御、ステアリング制御など、自動車の「走る・曲がる・止まる」といった基本的な動きを司る重要な部分です。また、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転の「判断」を担う演算処理にも使われます。
  • 種類:
    • マイクロコントローラー(MCU): エンジンやブレーキなど、特定の機能を制御するECU(電子制御ユニット)の中核をなします。
    • プロセッサー: 自動運転やインフォテインメントシステム(ナビゲーション、オーディオなど)のように、複雑な処理を高速で行うために使われます。

2. パワー半導体

  • 用途: 自動車の電力供給や制御を担う、非常に重要な半導体です。特に電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)では、バッテリーからモーターへの電力変換や、バッテリーの充電制御に不可欠です。
  • 種類:
    • IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor): 大電流を扱うことができ、主にモーターの駆動制御に使われます。
    • SiC(炭化ケイ素)半導体: 次世代のパワー半導体として注目されており、電力損失が少なく、高効率な電力変換が可能です。EVの航続距離向上に貢献します。

3. センサー系

  • 用途: 車内外のさまざまな情報を検知し、電気信号に変換します。この情報をもとに、制御系が判断・制御を行います。
  • 種類:
    • 画像センサー: 車載カメラとして、車線や歩行者、標識などを認識します。
    • レーダー・LiDAR: 前方の車両との距離を測ったり、周囲の障害物を検知したりします。
    • 圧力センサー、加速度センサー: タイヤの空気圧やエアバッグの作動など、車両の状態を監視します。

 このように、車載半導体は自動車の進化を支える「頭脳」や「神経」のような存在であり、電動化や自動運転の普及に伴い、今後ますます重要性が高まっています。

車載半導体は、自動車の電子制御に使われる半導体で、エンジン制御や安全機能、インフォテインメントなどを支えます。高温や振動に耐える高い耐久性と信頼性が求められ、電動化や自動運転の進化に不可欠な「頭脳」や「神経」のような役割を果たします。

スマートフォンやパソコンに使われる半導体との違いは何か

 スマートフォンやパソコンに使われる半導体と、車載半導体との最大の違いは、求められる要件の厳しさです。

 スマートフォンやパソコンの半導体は、主に高性能化や小型化、低消費電力化が重視されます。一方、車載半導体は、それらに加えて以下の特別な要件を満たす必要があります。

1. 信頼性と耐久性

  • スマートフォン・パソコン向け: 比較的安定した室温環境での使用が想定されており、数年ごとの買い替えサイクルを前提としています。
  • 車載向け: 真夏の炎天下や極寒の真冬、エンジンルームの高温、長時間の振動など、過酷な環境下でも長期間にわたって正常に動作し続けることが求められます。そのため、民生品とは比べ物にならないほど厳しい信頼性試験をクリアしなければなりません。

2. 安全性

  • スマートフォン・パソコン向け: 故障しても、データの消失や機器の停止といった影響にとどまることがほとんどです。
  • 車載向け: 走行中の故障が人命に関わる重大な事故につながる可能性があります。そのため、誤作動を絶対に起こさない「機能安全」という概念が非常に重要視され、厳格な国際規格(ISO 26262など)に準拠する必要があります。

3. 長期供給

  • スマートフォン・パソコン向け: 技術の進歩が速く、数年で新製品に置き換わることが一般的です。
  • 車載向け: 自動車の開発・生産サイクルは長く、一度採用された部品は10年から20年近くにわたって供給される必要があります。そのため、安定した供給体制が不可欠です。

 車載半導体は、単に高性能であればよいというわけではなく、「絶対に壊れない」「安全に機能する」「長期間供給される」という、民生品とは一線を画した厳しい品質基準が求められます。この点が、車載半導体メーカーが限られる大きな理由の一つです。

スマートフォンやパソコンの半導体は高性能化が中心ですが、車載半導体は、高温・振動に耐える高い耐久性と信頼性、そして人命に関わる故障を防ぐ安全性が最優先されます。また、長期的な供給も重要です。

ルネサスの車載半導体における強みと課題は何か

 ルネサスエレクトロニクスは、車載半導体市場において、長い歴史と実績に裏打ちされた独自の強みを持つ一方で、市場の大きな変化に対応するための課題にも直面しています。

強み

  1. 車載用マイクロコントローラー(MCU)の圧倒的な強さ:ルネサスの最大の強みは、自動車の様々な制御を担うMCU分野で、長年にわたり高い市場シェアを維持していることです。日本の自動車メーカーとの強固な関係を築いており、高い信頼性と品質が評価されています。
  2. トータルソリューションの提供力:ルネサスは、MCUだけでなく、SoC(システムLSI)、アナログ半導体、パワー半導体など、自動車に必要な多岐にわたる半導体製品を揃えています。これを「ウィニング・コンビネーション」と呼び、顧客に対して単一の製品ではなく、システム全体を最適化したソリューションとして提供できる点が大きな強みです。これにより、顧客の開発工数削減や市場投入時間の短縮に貢献しています。
  3. 機能安全への知見と実績:自動車の安全に関わる半導体には、厳格な国際規格(ISO 26262)への準拠が求められます。ルネサスは長年の実績から、この「機能安全」に関する高い技術力とノウハウを持っており、顧客からの信頼を得ています。

課題

  1. パワー半導体分野での競争:電気自動車(EV)の普及に伴い、モーターの駆動や充電制御に不可欠なパワー半導体の重要性が増しています。この分野では、インフィニオンやSTマイクロエレクトロニクスといった欧州勢がSiC(炭化ケイ素)半導体を強みに先行しており、ルネサスは今後、この分野での競争力強化が求められます。
  2. グローバルな事業拡大と新興市場への対応:伝統的に日本市場に強みを持つ一方で、世界的な車載半導体の需要は海外、特に新興市場で急速に拡大しています。グローバルな競争を勝ち抜くためには、欧米や中国の自動車メーカーとの関係をさらに強化し、事業を拡大していく必要があります。
  3. 自動運転技術の進化への対応:自動運転レベルが上がるにつれて、より高速で複雑なデータ処理を行う高性能なプロセッサーやAIチップが求められます。この分野では、NVIDIAやQualcommといった異業種からの参入企業が台頭しており、ルネサスはこれらの企業とどう差別化を図り、競争していくかが今後の重要な課題となります。

 これらの強みと課題を踏まえ、ルネサスは積極的にM&A(企業の買収・合併)を通じて、アナログ半導体やパワー半導体のラインナップを強化し、ソリューション提供力を高める戦略を進めています。

ルネサスは、車載マイコンで高いシェアを誇り、高い信頼性とトータルソリューションの提供力が強みです。一方、電動化に不可欠なパワー半導体や、自動運転向けの高性能プロセッサー分野での競争力強化が今後の課題となります。

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