この記事で分かること
- 行われている実証実験:AIによる曝気風量制御で電力消費を削減し、IoTセンサーでの設備監視により予兆保全、下水汚泥からのバイオガス発電やリン回収も実証し、エネルギーと資源の有効活用を目指しています。
- 超高効率固液分離の方法:高性能な遠心脱水機を使い、汚泥の脱水性を高める凝集剤を最適なタイミングと量で注入することで、高効率に水分を除去しています。
- スマート発電システムとは:下水汚泥などから得られるバイオガスや熱を利用して発電し、施設内のエネルギーを賄う仕組みです。
メタウォーターの下水処理の効率化実証
メタウォーターは、下水処理場の電力使用量を削減し、効率を向上させるための実証実験を進めています。
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00757851
この実証は、IoTやAIといった最新技術を活用して、下水処理プロセスの最適化を目指すものですあり、日本のインフラを支える下水処理施設の持続可能性を高める重要な一歩となります。
どのような実証を行うのか
メタウォーターが実施している下水処理の効率化実証は、主に国土交通省の「B-DASHプロジェクト」(下水道革新的技術実証事業)や、それに類する共同研究の一環として行われています。
これらの実証は、単一の技術に留まらず、さまざまな側面から下水処理の効率化や持続可能性の向上を目指しています。
1. エネルギー自給型下水処理場の構築
下水処理場の電力消費削減とエネルギー創出を同時に進める実証です。
- 超高効率固液分離: 下水汚泥から水分を徹底的に除去し、その後の焼却や発電の効率を高めます。
- 高効率高温消化: 汚泥を高温で消化処理することで、メタンガス(バイオガス)の発生量を最大化し、発電に利用します。
- スマート発電システム: 発生したバイオガスや焼却時の排熱を効率的に利用し、下水処理場内で電力を自給します。
これらの技術を組み合わせることで、温室効果ガスの排出量や維持管理費の大幅な削減を目指します。
2. ICT/AIを活用した運転管理の最適化
下水処理場の運転をよりスマートにし、効率を高める実証です。
- 曝気風量制御: 下水流入量や水質データをリアルタイムで分析し、AIが最適な曝気風量を予測・制御します。これにより、微生物が有機物を分解するために必要な酸素量を過不足なく供給し、電力消費を抑えます。
- 予兆保全: センサーや監視システムを活用して、ポンプや送風機などの設備の異常を早期に検知し、故障を未然に防ぎます。これにより、計画外の設備停止を防ぎ、維持管理のコストを削減します。
- 広域監視制御システム: 複数施設を一括で管理するシステムを実証し、省人化や運転管理の効率化を図ります。
3. 下水資源の有効活用
下水を単なる処理対象としてではなく、資源として捉える実証です。
- リン回収システム: 下水汚泥からリンを効率的に回収し、肥料などの資源として再利用する技術を実証します。リンは農業に不可欠な資源であり、その循環利用は持続可能な社会に貢献します。
- 下水汚泥の燃料化: 下水汚泥をバイオマス燃料として利用する技術を実証し、発電所や鉄鋼所などでエネルギー資源として活用します。
これらの実証は、国土交通省の「B-DASHプロジェクト」をはじめとする国の事業と連携して行われることが多く、日本の下水道事業が抱えるコスト削減、環境負荷低減、資源循環といった課題解決に貢献することを目指しています。

メタウォーターは、下水処理の効率化実証を複数行っています。AIによる曝気風量制御で電力消費を削減し、IoTセンサーでの設備監視により予兆保全を進めます。さらに、下水汚泥からのバイオガス発電やリン回収も実証し、エネルギーと資源の有効活用を目指しています。
超高効率固液分離の方法は
メタウォーターの「超高効率固液分離」は、主に下水処理過程で発生する汚泥の脱水効率を極限まで高める技術です。
この技術は、汚泥の脱水・燃焼・発電という一連のプロセス全体を最適化するシステムの一部です。具体的には、脱水過程で汚泥の含水率を大幅に下げることで、その後の焼却に必要なエネルギー(補助燃料)を削減し、燃焼効率を向上させます。
これにより、焼却時に発生する熱を効率よくエネルギー(電力)に変換し、下水処理場内でエネルギーを自給することを目指しています。
脱水プロセスの特徴
この技術の中心にあるのは、以下の点です。
- 低動力型高効率遠心脱水機: 一般的な汚泥脱水機は、遠心分離機やベルトプレス脱水機などがありますが、メタウォーターはこれらを独自に改良しています。特に、遠心力や薬品注入率を細かく制御することで、脱水汚泥の含水率を目標値に正確に合わせることができます。
- 薬剤注入技術の最適化: 汚泥の脱水性を向上させるために、凝集剤(ポリ鉄など)を添加します。メタウォーターは、この薬剤を最適なタイミングと量で注入する独自の技術を開発し、無駄な薬品使用を抑えながら、より高い脱水効率を実現しています。
- システム全体の連携: 単に脱水効率を高めるだけでなく、その後の焼却・発電プロセスと連携させています。含水率をコントロールすることで、焼却炉での補助燃料を不要にし、システム全体のエネルギー効率を最大化します。
これらの技術を組み合わせることで、従来の脱水機では難しかった、含水率が低い(=水分が少ない)脱水汚泥を安定して製造し、次の工程でのエネルギー創出を効率的に行えるようにしています。

高性能な遠心脱水機を使い、汚泥の脱水性を高める凝集剤を最適なタイミングと量で注入することで、高効率に水分を除去します。これにより、その後の焼却に必要な補助燃料を削減し、エネルギー効率を向上させます。
スマート発電システムとは何か
スマート発電システムとは、下水処理施設において、汚泥などのバイオマス資源から電力や熱を効率的に生み出し、施設内のエネルギー需要を最適に管理するシステムです。
単に発電するだけでなく、IoTやAIといった最新技術を活用して、発電量と消費電力をリアルタイムで監視・制御し、エネルギーの自給率向上とコスト削減を目指します。
主要な要素
スマート発電システムは、主に以下の要素で構成されます。
- 高効率なエネルギー転換
- メタンガス(バイオガス)発電: 下水汚泥を発酵させて得られるメタンガスを利用して発電します。この際、高効率なガスコージェネレーションシステム(熱電併給システム)を導入することで、発電時に発生する排熱も暖房や汚泥乾燥などに有効活用します。
- 汚泥焼却発電: 脱水した汚泥を焼却し、その熱で蒸気タービンを回して発電します。
- エネルギーマネジメントシステム(EMS)
- 施設全体の電力消費データをリアルタイムで収集・分析します。
- AIが将来の電力需要や発電量を予測し、最適な運転計画を策定します。
- 余剰電力を売電したり、必要な電力を外部から購入したりするタイミングを最適化し、経済性を高めます。
- 再生可能エネルギーの統合
- 太陽光発電など、他の再生可能エネルギー源と組み合わせて利用することで、エネルギー供給の安定性を高めます。
メタウォーターの取り組み
メタウォーターは、このスマート発電システムを「エネルギー自給型下水処理場」構想の中核技術として実証しています。汚泥から最大限のエネルギーを回収し、AIを活用したシステムで施設全体のエネルギーを管理することで、処理場のランニングコストを大幅に削減し、環境負荷の低減にも貢献します。

スマート発電システムは、下水汚泥などから得られるバイオガスや熱を利用して発電し、施設内のエネルギーを賄う仕組みです。IoTやAIで発電量や消費電力を最適に管理することで、下水処理場の電力自給率を高め、コスト削減と環境負荷低減を実現します。
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