この記事で分かること
- 使用される金属:導線には主に銅とアルミニウムが使われます。銅は電気伝導率が高く加工しやすいため、多くの電子機器や電線に利用されます。アルミニウムは軽くて安価なため、主に送電線などの長距離の電力ケーブルに使用されます。
- 積層タイプの金属生成方法:シート状の磁性体に、導体ペーストを印刷技術(スクリーン印刷など)を使ってコイルのパターンを描きます。
- 薄膜タイプの金属生成方法:半導体技術を用いて、フォトリソグラフィとエッチングで基板上に金属の微細なパターンを形成します。
コイルの金属素材
日本の電子部品メーカーは、半導体製造分野では後れを取っているものの、コンデンサやセンサーなどの部品分野では、長年にわたり世界市場で強い競争力を保ち続けており、台湾企業による買収も報じられています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7c65f370b3f25f662f603f1b6f59d590fba4cd46
日本の電子部品メーカーは、長年にわたって培ってきた高い技術力、品質へのこだわり、そして特定のニッチ分野での圧倒的な強みにより、世界市場でその地位を確固たるものにしています。
今回は受動部品であるコイルに使用される金属素材についての記事となります。
コイルとは何か
コイルは、電線、導線をらせん状に巻いた電子部品で、電流が流れると磁力が発生します。この磁力を利用して、電流の変化を抑える役割を持つ部品をインダクタと呼びます。インダクタは、高周波ノイズの除去や、DC-DCコンバータなどの電源回路に不可欠な部品です。
導線にはどんな金属が使用されるのか
導線に使用される主な金属は、銅とアルミニウムです。これらの金属は、電気をよく通す(電気伝導率が高い)性質と、コストのバランスが優れているため広く使われています。
銅
導線に最も一般的に使われる金属は銅です。その理由は以下の通りです。
- 高い電気伝導率:銀に次いで2番目に高い電気伝導率を持っています。これにより、電気を効率よく流し、エネルギー損失を抑えることができます。
- 加工のしやすさ:柔らかく、伸ばしたり曲げたりする加工が容易なため、様々な形状の導線やケーブルの製造に適しています。
- 適度なコスト:電気伝導率が最も高い銀に比べ、はるかに安価です。これにより、大量生産される電線や電子部品に広く採用されています。
- 耐食性:表面に酸化被膜を形成するため、腐食しにくい性質を持っています。
アルミニウム
アルミニウムは、主に送電線などの長距離の電力ケーブルに使用されます。
- 軽さ:銅に比べて比重が約3分の1と非常に軽いため、電柱間の長距離送電線に使うことで、電線のたるみを防ぎ、鉄塔や支柱にかかる負担を軽減できます。
- コストの低さ:銅よりも安価なため、大規模な送電網の構築に適しています。
- 耐食性:アルミニウムも表面に強固な酸化被膜を形成し、腐食に強いという利点があります。
その他の金属
特定の用途では、他の金属も使用されます。
- 銀:金属の中で最も高い電気伝導率を持ちますが、非常に高価なため、オーディオケーブルや特定の高性能な電子部品など、最高の伝導性が求められる特殊な用途に限られます。
- 金:高い耐食性と安定性を持つため、コネクタや半導体内部の配線など、信頼性が重要視される部分で使われます。電気抵抗の大きい酸化膜を形成しないため、長期間にわたって安定した接続を維持できます。

導線には主に銅とアルミニウムが使われます。銅は電気伝導率が高く加工しやすいため、多くの電子機器や電線に利用されます。アルミニウムは軽くて安価なため、主に送電線などの長距離の電力ケーブルに使用されます。
積層タイプや薄膜タイプでは金属はどのように形成されるのか
積層タイプと薄膜タイプのコイルでは、従来の導線を使うのではなく、特殊な製造プロセスによって金属のパターンが形成されます。
積層タイプの導体形成
積層タイプのコイルは、薄いシート状の磁性体(フェライトなど)と、導体(銀や銅など)のペーストを何層も重ねて作られます。
- ペースト印刷:まず、シート状の磁性体に、導体ペーストを印刷技術(スクリーン印刷など)を使ってコイルのパターンを描きます。このパターンは、コイルの巻き数や形状を決定するものです。
- 積層:このパターンが印刷されたシートを何枚も重ねていきます。各層のパターンは、互いに接続できるように設計されており、積み重ねることで立体的ならせん構造のコイルを形成します。
- 焼成:最後に、積層したシートを高温で焼成します。この工程で、磁性体と導体ペーストが一体化し、コイルとして完成します。
このプロセスにより、従来の巻線タイプよりもはるかに小型で、大量生産に適したコイルが製造されます。
薄膜タイプの導体形成
薄膜タイプのコイルは、半導体製造技術を応用して作られます。これは、非常に微細なコイルを形成するのに適しています。
- フォトリソグラフィ:まず、基板上に薄い金属膜を形成し、その上に感光性のある樹脂(フォトレジスト)を塗布します。
- 露光と現像:コイルのパターンが描かれたマスクを通して紫外線を照射し、特定の領域のフォトレジストを硬化させます。その後、現像液で不要な部分のフォトレジストを除去します。
- エッチング:フォトレジストで保護されていない部分の金属膜を化学薬品で溶かして除去し、コイルのパターンを基板上に残します。
- めっき:エッチングで形成された溝に、さらに金属をめっきで成長させ、導体層を厚くすることもあります。
この製造方法により、HDDの読み書きヘッドや高周波回路など、極めて高い精度が要求される分野で利用される超小型のコイルが作られます。

積層タイプは、金属ペーストを磁性体シートに印刷し、何層も重ねて焼き固めます。薄膜タイプは、半導体技術を用いて、フォトリソグラフィとエッチングで基板上に金属の微細なパターンを形成します。
薄膜タイプの基板上の薄い金属膜はどのように形成されるのか
薄膜タイプの基板上に薄い金属膜を形成する方法は、主に物理気相成長(PVD)法と化学気相成長(CVD)法の2つに大別されます。
物理気相成長(PVD)法
PVD法は、真空中で固体材料を物理的に気化させて基板上に堆積させる方法です。代表的な手法は以下の通りです。
- 真空蒸着:真空容器内で金属材料を加熱・蒸発させ、その蒸気を基板に付着させて薄膜を形成します。
- スパッタリング:アルゴンなどの不活性ガスをプラズマ化させ、そのイオンを金属のターゲットに高速で衝突させます。これにより弾き飛ばされた金属原子が基板に付着し、薄膜となります。
化学気相成長(CVD)法
CVD法は、基板上で気体状の原料ガスを化学反応させて薄膜を形成する方法です。
- プラズマCVD:プラズマのエネルギーを利用して原料ガスを分解し、低温で薄膜を形成します。これにより、熱に弱い基板にも適用できます。
- 熱CVD:基板を高温に加熱し、その表面で原料ガスを熱分解させて薄膜を堆積させます。

薄膜は主に、真空中で金属を気化させて基板に付着させる物理気相成長(PVD)法や、原料ガスを化学反応させて堆積させる化学気相成長(CVD)法といった技術を用いて形成されます。
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