この記事で分かること
- 行われる分析:半導体材料の組成や不純物を高度に分析し、粘度や光学特性などの物性を評価します。
- 組成や不純物の分析方法:誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて金属不純物を、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などで有機不純物の分析を行います。
- 日産化学が韓国で生産している半導体材料:主にリソグラフィー用反射防止コーティング材を生産しています。これは、半導体製造工程で、露光時の光の反射を防ぎ、回路の不良を減らす重要な材料です。
日産化学の先端半導体評価向けの品質分析棟
日産化学は、韓国に先端半導体評価向けの品質分析棟を設立しました。この施設は、韓国の主要な半導体メーカーからの要望に応え、半導体材料の品質評価を強化することが目的です。
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設立された品質分析棟は、韓国の京畿道(キョンギド)に位置しており、最新の分析機器が導入されています。これにより、半導体材料の組成や不純物、物性などを高度に分析することが可能となります。
この施設は、日産化学がすでに韓国に持つ半導体材料の生産拠点と連携し、研究開発から生産、品質管理までの一貫した体制を構築する上でも重要な役割を担います。
どのような評価を行うのか
日産化学が韓国に設立した品質分析棟では、半導体材料の高度な評価を行い、この施設は、主に以下のような評価を通じて、半導体メーカーからの要求に応えます。
1. 組成・不純物分析
半導体材料の化学組成を精密に分析し、微量な不純物の有無や濃度を測定します。半導体製造プロセスでは、極めてわずかな不純物が製品の性能に大きな影響を与えるため、この分析は非常に重要です。
2. 物性評価
材料の物理的特性(例:粘度、表面張力、光学的特性など)を評価します。これらの物性は、フォトレジストの塗布プロセスや露光プロセスに直接関係し、半導体の微細な回路形成に影響します。
3. 品質管理・品質改善
既存製品の品質を継続的に監視し、ロット間のばらつきがないかを評価します。また、顧客からのフィードバックやトラブル報告に対し、迅速な原因究明と改善策の提案を行うための分析も実施します。
これらの評価を通じて、日産化学は顧客である半導体メーカーに対し、高品質な材料を安定して供給し、技術的なサポートを強化することを目指しています。

日産化学の韓国の品質分析棟では、半導体材料の組成や不純物を高度に分析し、粘度や光学特性などの物性を評価します。これにより、顧客である半導体メーカーの開発サイクル短縮や品質改善を支援します。
組成・不純物分析の方法は
半導体材料の組成・不純物分析では、主に以下のような方法が用いられます。
1. 誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)
溶液化したサンプルを高温のプラズマに導入し、元素をイオン化してその質量を測定する手法です。金属不純物の超微量分析に特に優れており、ppb(10億分の1)からppt(1兆分の1)レベルの極めてわずかな汚染物質も高感度に検出できます。
2. ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)
揮発性のある有機化合物を分析する際に用いられます。ガスクロマトグラフ(GC)で混合物を個々の成分に分離し、その後、質量分析計(MS)で各成分の分子量を測定・同定します。フォトレジストなどに含まれる有機溶媒や添加剤の組成、残留有機不純物の評価に利用されます。
3. イオンクロマトグラフィー質量分析法(IC-MS)
水溶液中のイオン性物質(例:酸や塩基、金属イオンなど)の分析に特化しています。イオンクロマトグラフ(IC)でイオン成分を分離し、MSで質量情報を得ることで、より詳細な定性・定量分析が可能です。
これらの手法は、単独で用いられるだけでなく、複数の装置を組み合わせて、より複雑な材料の分析や微量不純物の特定に活用されます。

半導体材料の組成・不純物分析では、主に誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて金属不純物を極微量レベルで高感度に測定します。また、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)などで有機不純物の分析も行います。
物性評価の方法は
半導体材料の物性評価は、主に以下のような方法で行われます。
1. 粘度測定
フォトレジストは基板に薄く均一に塗布する必要があるため、粘度が非常に重要です。主に回転粘度計や細管粘度計が用いられます。回転粘度計は、試料を一定の速度で回転させ、その抵抗から粘度を測定する汎用性の高い方法です。
2. 光学特性評価
フォトレジストは、特定の波長の光に反応して化学変化を起こします。この特性を評価するため、紫外可視近赤外分光光度計(UV-Vis-NIR)が使用されます。これにより、材料がどの波長の光を吸収・透過するかを測定し、露光プロセスでの性能を予測します。
3. 熱特性評価
半導体製造プロセスには加熱工程が多いため、材料の熱安定性が重要です。熱重量測定(TG)や示差走査熱量測定(DSC)などの装置を用いて、加熱による重量変化や融解・ガラス転移などの熱挙動を評価します。
これらの評価を通じて、日産化学は材料が実際の製造プロセスで問題なく機能するかを確認し、顧客の要求を満たす製品を提供します。

半導体材料の物性評価では、主に回転粘度計で粘度を測定し、紫外可視近赤外分光光度計で光学特性を評価します。また、熱重量測定などで熱安定性を調べ、製造プロセスでの性能を検証します。
日産化学の半導体材料とはどんなものか
日産化学が韓国で生産・供給している主要な半導体材料は、リソグラフィー用反射防止コーティング材(ARC®)です。
詳細
- 反射防止コーティング材(ARC®): 半導体製造において、微細な回路を形成するリソグラフィーという工程で使われる材料です。フォトレジストの下に塗布することで、露光時に基板から反射される光を吸収し、回路の不良を防ぐ役割を果たします。日産化学は、この分野で世界的に高いシェアを持っています。
- その他の材料: 反射防止コーティング材以外にも、多層プロセス用材料や感光性アクリル樹脂など、半導体製造プロセスの多様なニーズに応えるための製品を扱っています。
韓国の製造拠点であるNCK Co., Ltd.(NCK)は、これらの材料の生産・供給の中心的な役割を担っており、今回の品質分析棟は、その供給体制をさらに強化する目的で設立されました。

日産化学は韓国で、主にリソグラフィー用反射防止コーティング材(ARC®)を生産しています。これは、半導体製造工程で、露光時の光の反射を防ぎ、回路の不良を減らす重要な材料です。
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