3分要約
GAFAの現状は
コロナ禍でも収益は増加しており、パンデミックはビックテックに有利に働くと考えられる。市場の独占や異業種への進出も相次いでいる。
パンデミックはどのようにビジネス環境を変えるか
パンデミックは変化を加速させるがそれが良いものとは限らない。リモートワークが可能な職種が比較的高給な人が多いなどコロナ禍の変化による痛みは弱者に向かっている。
ビックテックはビジネスをどう変えたか
・分散化によって多くの業界がダメージを受けた
・ブランドの価値を下げ、プロダクト時代に変化した
・消費者は時間とサービスを交換していたが、自分のデータとサービスを交換するようになった
GAFAははじめとしたビックテックの問題点は
・他の革新的な企業を買収し、イノベーションの種を刈り取ってしまう。
・SNSのように本能に訴え依存させる仕組みがあるが、規制が難しい。
・データと引き換えにサービスを受けているが、その恩恵が消費者側に小さい。
次に変革、崩壊の起こる業界はどこか
付加価値の上昇がなくても価格が上がり、ブランド依存が多く、消費者の不満が蓄積した業界は変革や崩壊が近い。教育、医療などはGAFAの進出が起こり得る。
なぜ規制が難しいのか
・独占禁止法などがの法律が古くなりビックテックの規制に適していない。
・政府の力が弱くなったため
政府は何をすべきでそのためにすべきことは
独占を弱めたり、規制を行うことで巨大テックを抑制し、個人の権利を拡大すべき。政府の力を高めるには若年層の投票が最も有効。
- GAFAの現状は
- パンデミックはどのようにビジネス環境を変えるか
- ビックテックはビジネスをどう変えたか
- GAFAははじめとしたビックテックの問題点は
- 次に変革、崩壊の起こる業界はどこか
- なぜ規制が難しいのか
- 政府は何をすべきでそのためにすべきことは
- パンデミックはGAFAなどのビックテックに有利に働く
- パンデミックはトレンドを加速させている
- コロナ後の資本市場の回復は一部の大企業の業績が伸びたため
- ブランドの価値が下がり、プロダクト時代に変化している
- プロダクト時代のビジネスは商品を売るか、データを売るかの2つ
- ビックテックによる市場の独占が進んでいる
- GAFAはコロナの影響も小さくさらに異業種への進出が続く
- 大変革が起こる業界には特徴がある
- テック企業への投資は危ない面もあるが当面は続くとみられる
- 大変革を起こす企業にも共通する特徴がある
- 教育分野はもっとも変革、崩壊が近い
- 資本主義の問題を解消するための政府の力は弱くなっている
- 若い世代の投票が政府に長期的な目線を持たせる方法
- 政府がなすべきはテック企業の規制と個人の検知の拡大
パンデミックはGAFAなどのビックテックに有利に働く
コロナウイルスの流行によって、世界の変化のスピードは増し、私たちはこれから何が起こるかを想像する力を失ってしまった。本書では未曾有の時代に陥った現在の先を見通し、優れた解決策を見つけ出す試みを行う。パンデミックがビジネス環境をどのように作り変えるかが本書の核心になる。
筆者はパンデミックが大企業、特にGAFAなどのビッグテックに有利に働くと確信している。
パンデミックはトレンドを加速させている
パンデミックはeコマースはがコロナによってこれまでにない成長を見せたように物事を加速させる作用を持っている。どんな危機にもチャンスはあるが、パンデミックが加速させたトレンドは後ろ向きなものが多く、コロナ後の世界の回復、成長を弱めている。
世界の変化の速度は上がっているが、その変化には良いものも悪いものもある。また危機はチャンスをもたらすが、平等とは限らない。コロナ危機での変化による痛みの多くは弱者に向かっている。
コロナ後の資本市場の回復は一部の大企業の業績が伸びたため
コロナ危機の何よりも意外な現象が、資本市場の回復力。株式市場は一時的に急落したものの、その後急速に上昇した。しかし株価の回復は一部の大企業の業績が大きく伸びたためで、弱者の株価急落や倒産も多く見られる。
危機の中ではキャッシュの重要性が増す。コストを削減し、キャッシュを増やすこと、コロナ後を見据えてビジネスモデルを美朝することが生き残るための鍵になる。
アマゾンによって店舗は自宅の玄関先まで、ネットフリックスは映画館をリビングにまで広げた。このよう分散化があらゆる分野で見られるようになる。リモートワークは仕事の分散化、遠隔治療は医療の分散化となる。リモートワークは格差を助長する傾向にある。報酬の多い職種ほどリモートワーク可能で、低い職種は不可能な場合が多い。
ブランドの価値が下がり、プロダクト時代に変化している
第二次大戦後からグーグルの登場までに最も企業に重要だったのはブランド。平凡な商品を作り漠然としたイメージで売り込むことが重要だった。イメージを売り込むにはテレビ広告がもっと有用だった。
インターネット、SNSの発展で口コミなど商品の持つ本当の魅力とブランドの差異を誰でも見れるようになったため、ブランドの価値は下がり、広告の持つ意味も大きく下がった。ブランド時代からプロダクト時代へ変化している。
プロダクト時代のビジネスは商品を売るか、データを売るかの2つ
プロダクト時代のビジネスモデルは2つ。
1つは商品を製造コスト以上の値段で売ることで代表格はApple。もう一つは商品を無料もしくは原価以下で配り、得られたデータを他の企業に利用者のデータを売ること。
これまでは広告を見ること=時間と引き換えに無料で様々なものを手に入れていたが、今ではデータと引き換えに欲しいものを入手している。
多くの企業は二つのビネスモデルのどちらかに別れ、溝が深くなっていく。アンドロイドはデータと引き換えにAppleよりもスマホを安くできる。お金を払って見るNetflixと違い、Youtubeは視聴歴というデータと引き換えにただで動画を見ることができる。
ビックテックによる市場の独占が進んでいる
コロナ危機やそれに伴うロックダウンでもGAFAMをはじめとした主要テック企業の時価総額は大きく増加している。GAFAMの5社でアメリカで公開されている全株式の価値の21%を占めている。ビックテックはイノベーションを基礎として顧客を増やした後、事業を不明瞭化することで、市場の独占に成功している。さらにはアマゾンプライムのような安価でネットワーク効果が効きやすく、それ自体で利益を出すのではなく、自社への囲い込みを可能にするようなサービスを提供することでますます顧客を集め、さらに独占は進むことになる。
これまでテック企業は他者のために技術インフラを作る存在だったが、現在ではテクノロジー企業自身が業界のプレーヤーとなるようになった。
独占企業ではイノヴェーションが減って、シェアを確保するため、他の革新的な新興企業を早い段階で摘み取ろうとする。反トラスト法などの独占を防ぐ法律も古くテック企業に対抗できるものではなくなっている。
GAFAはコロナの影響も小さくさらに異業種への進出が続く
Amazonはコロナ渦で大きく資産を増やし、運送業への進出を進めている。さらには顧客についてのデータ(何を食べているか、運動器具を買っているかなど)を活かしたり、アレクサを通じた遠隔医療などヘルスケアへの進出の可能性も大きい。
Appleは実際に製品を作り得る企業ではあるが、継続的な利益を生むセット商品を持つため、コロナによる影響を受けにくかった。iCloud、アップルミュージック、アップルTVなどサービス部門を充実させることで囲い込みに成功し、今後もこのようなサービスの構築は進むと思われる。
GoogleとFacebookは広告企業でパンデミックの影響を受けやすいが、従来のメディアに比べればダメージが少なく、回復も早いと思われる。広告が回復したとしても多くの企業は従来のメディアへ広告を出すのではなく、GoogleやFacebookに広告を出すことを考えるだろう。
大変革が起こる業界には特徴がある
GAFAのように既存の業界でもいくつもの企業が頭角を現しつつある。ある業界でディスラプション(崩壊、大変革)が迫っているかは様々な指標から見ることができる。
1、付加価値に対しどれだけ価格が上がったか
付加価値が増えていないのに価格が伸びた業界は ディスラプション が近い。教育や医療などが該当する。
2.ブランドへの依存
質に違いの無いものをブランド化すること売っている業界も ディスラプション が近い。
3.消費者の不満の蓄積
消費者と敵対関係にあるような業界も、新規企業が入りやすい。保険や医療が該当する。
4.偽のイノヴェーション
製品の実質的な価値を高めないような特性の追加を既存企業が行うと ディスラプションが近い。設備にお金をかけ中身を変えない教育などが該当する。
テック企業への投資は危ない面もあるが当面は続くとみられる
テック企業の台頭には創業者崇拝も関係がある。ビルゲイツとスティーブジョブズのような創業者はめったにいないが、ベンチャーキャピタルは次に成功しそうな創業者を見つけ、投資を行うようになった。また赤字販売でシェアを広げた後に回収するビジネスが増えたことで、株式の公開を遅くなったことも要因の一つ。
時価総額が10億ドル以上のスタートアップであるユニコーンも増え続けている。カリスマ的な創業者は抽象的でスピリチュアルに聞こえるような言葉を発することも多い。実用的なビジネスモデルがないときは数値を隠し、ビジョンを語るしかない。この状況でベンチャーキャピタルが正気に戻れば株価が急落することを意味するが資金余りの現状では、しばらく投資は続くと見られる。
また、GAFA等の巨大テックによる買収も増加している。スタートアップの買収はFacebookにようインスタグラムなどがあり、創業者や投資家は多きな利益を得るが、経済や雇用増大にとってはいいことではない。
大変革を起こす企業にも共通する特徴がある
ディスラプションはインフレ以上の価格上昇にもかかわらず、それに見合うイノベーションがない業界で起こりやすい。そのような業界で変革を起こすことのできる企業の特徴は8つある。
1.本能に訴える
2.キャリアの箔付けになる
3.高い成長率とマージンを持っている
4.定期的な売り上げを上げやすい
5.垂直統合で消費者体験を最初から最後までコントロールする
6.時間がたつほどコンテンツが増えるなどして、価値が増す
7.魅力的なビジョン、ストーリーを持っている
8.好感度が高く、政府やメディアからにらまれない
この条件に合致する企業が様々な業界でディスラプションを起こしていく。
教育分野はもっとも変革、崩壊が近い
コロナの影響でどの業界よりも崩壊が近いのが大学などの高等教育機関。授業料は大きく増加しているがその質は大きく変わっていない。一部の大学は入学者を絞ることで希少性を持たせることで価格を引き上げている。実際に合格者と不合格者の差はとても小さい。
学費の増大は多くの人が期待する教育による格差解消ではなく、格差を固定化してしまっている。
大学は時間と授業と引き換えに、資格と教育、経験の3つを提供するが、経験を重視する大学はコロナでキャンパスに戻れないことを考慮すると危機に陥る。
リモート授業を活用すれば、教室の大きさに縛られず、大学は規模を拡大できる可能性がある。学生を増やすだけでなく、中高年の学びたいという需要も取り込める可能性も秘めている。教育分野は規模が大きいため、GAFAとの連携を視野に入れる大学も出てくるはず。
資本主義の問題を解消するための政府の力は弱くなっている
パンデミックへの対応で政府の力が大きく低下したことが明らかになった。政府の力を強くすることで資本主義を活力があり、生活向上のために必要なシステムとする必要がある。
資本主義は経済的な生産性の高さで他の追従を許さない。優秀な人材を集め、協力を促し、大きく成功してきたが資本主義そのものには倫理基準はなく、問題点もある。
外部性(環境問題への対応は利益を損なうため行わないなど)、不平等(雇用主、富裕層、独占者は従業員、競争相手と比べ大きな権力を持つ)などが問題になる。これらの問題を防ぐため、政府は規制を作り環境を守らせたり。独占を禁止し競争を促してきた。
しかし、巨大テックの支持する新自由主義では政府による規制は非効率と考える傾向にある。この影響による政府の力の低下はコロナ禍で痛感することとなった。その一方で大企業や投資家を政府が助けることは増えている。
現在のアメリカは資本主義と社会主義の悪いところのハイブリットで、富裕層へなるのは難しく、いったん富裕層になると政府の救済もあり、失敗しにくくなる。富裕層の治める税金は年々減り、格差は大きくなり固定化されてしまっている。
個人の経済的な成功の最大の要因は才能でも、勤勉さでも運でもなく親がどれくらい金持ちかで決ってしまうようになっている。
若い世代の投票が政府に長期的な目線を持たせる方法
テック企業は従業員を低賃金や悪条件で働かせることで搾取し、消費者からは本能を刺激することでサービスへ依存させることで搾取を行っている。
子供たちをこの影響から守るためにもSNSや電子機器の使用を制限する必要がある。そのためにも政府には巨大テックの暴走を防ぐことを期待しているが、国民の関心、信頼が低いと政府の力は弱くなるばかりになってしまう。
国民も長期的な視点を持ち、選挙に行くことがもっとも簡単な解決法。特に投票率の低い若し世代が選挙に行くようになれば政府も長期的な目線を持つようになる。
政府がなすべきはテック企業の規制と個人の検知の拡大
将来的に政府がなすべきことは巨大テックの抑制と個人の権利の拡大。独占を禁止し企業を分割することは部罰ではなく活性化と考えるべき。AT&Tを分割してできた7社の時価総額の合計は元の会社を上回っており、ビックテックの分割でも同じように競争を促し、イノベーションを起こしやすくする。
アメリカでは自由をはき違え、マスクの着用など犠牲的な行為への抵抗やコミュニティの否定が起きている。若い世代が協力を大事にして最高の力を発揮すれば、寛容さ、勇気、イノベーション、犠牲をいとわないことを実証できる。それらを見失えば搾取と危機の世界へ迷い込んでしまう。
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