Zooxのロボタクシーの一般向けサービス　どんな特徴があるのか？課題は何か？

この記事で分かること

Zooxの自動運転車の一般向けサービス

　アマゾン傘下の自動運転技術開発企業「Zoox（ズークス）」が、ラスベガスで一般向けのロボタクシーサービスを開始しました。

　https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-11/T2ECG2GP9VD000?srnd=cojp-v2

　Zooxは、独自の車両設計と特定の施設間での運行に重点を置くことで、安全性と顧客体験の向上を図っているとされています。今回のラスベガスでの一般向けサービス開始は、今後の本格的な事業拡大に向けた重要な一歩となります。

Zooxのロボタクシーの特徴は何か

　Zooxのロボタクシーは、以下のような従来の自動車とは一線を画す、独自の設計と技術が大きな特徴です。

• 専用設計された完全無人運転車両: ハンドルやペダル、運転席が一切なく、乗客のためだけに設計された車両です。これにより、車内の空間を最大限に活用し、快適な乗車体験を提供しています。
• 双方向走行: 車体の前後に区別がなく、どちらの方向にも走行可能です。これにより、Uターンなどの手間がなく、狭い場所でもスムーズな移動が可能になります。
• 対面式座席: 車内には向かい合わせの座席が設置されており、最大4名まで乗車可能です。乗客同士が向かい合って会話を楽しむことができる、ユニークな空間を提供します。
• 高度な安全性: 独自のセンサーシステムとソフトウェアによって、360度全方位の状況を正確に認識します。暗闇や悪天候時でも熱を感知する赤外線カメラなど、様々なセンサーを搭載し、安全性を高めています。
• 最高速度: 時速約56km（時速約35マイル）で走行可能です。

　Zooxは、単に既存の車を自動運転化するのではなく、自動運転を前提とした車両を一から開発することで、安全性と利便性を両立させ、新しい形のモビリティサービスを創造しようとしています。

ハンドルやペダルがない専用車両で、双方向走行が可能なことです。向かい合わせの座席で最大4名が乗車でき、高度なセンサーシステムで360度の状況を認識し安全性を確保しています。

双方向走行を可能にするための工夫は

　Zooxのロボタクシーが双方向走行を可能にするための主な工夫は、車両の前後対称なデザインと4輪ステアリングシステムにあります。

• 前後対称なデザイン: 車体に「前」と「後」の概念がなく、どちらの方向にも同じように走行できるため、Uターンや方向転換が不要になります。これにより、狭い道路や複雑な場所でも効率的に移動が可能です。
• 4輪ステアリング: 前輪だけでなく、後輪も操舵（そうだ）することができるため、非常に小回りが利き、精密な操縦が可能になります。これにより、駐車や狭い場所での方向転換も容易に行えます。

　これらの設計は、従来の自動車のように人間が運転することを前提としていない、自動運転専用の車両だからこそ実現できたものです。

双方向走行は、前後対称のデザインと、前後両方の車輪が動く4輪ステアリングで実現しています。これにより、Uターンが不要になり、狭い場所でもスムーズに移動できます。

4輪ステアリングが通常の車で一般的でない理由は

　4輪ステアリングが一般的な乗用車に普及しなかった理由は、主にコスト、複雑な構造、そして運転時の違和感にあります。

1. コストと複雑性

　従来の車は前輪を操舵するだけで、後輪は固定されています。4輪ステアリングは後輪を動かすための追加の機構（油圧やモーター、リンク機構など）が必要になるため、部品点数が増え、製造コストが大幅に上昇します。また、それに伴って車両重量も増加し、燃費の悪化にもつながります。

2. 運転時の違和感

　4輪ステアリングは、低速時と高速時で後輪の動く方向を変えることで、それぞれ異なる効果を発揮します。

• 低速時（逆位相）: 前輪と後輪が逆向きに動くことで、最小回転半径を小さくし、小回りが利きます。しかし、これがバック駐車や縦列駐車の際に、ドライバーが予想する車の動きと異なり、後輪が巻き込むような感覚で、かえって難しく感じられることがありました。
• 高速時（同位相）: 前輪と後輪が同じ向きに動くことで、車線変更時の安定性を高めます。しかし、これも従来の車の挙動に慣れているドライバーにとっては、不自然な感覚を与えることがありました。

3. その他の要因

　かつては技術的な制御が不十分で、走行中にアライメントが狂いやすいという問題もありました。また、一般的なドライバーにとって、4輪ステアリングのメリット（小回りの良さや高速での安定性）をコストや違和感というデメリットに見合うほどに感じられなかったことも普及しなかった一因です。

　しかし、近年では電子制御技術の進化により、これらのデメリットが克服されつつあり、高級車や一部のスポーツカーで再び採用されるケースが増えています。

一般的な乗用車に4輪ステアリングが普及しなかった理由は、高い製造コスト、複雑な構造、そして運転時にドライバーが感じる違和感にあります。特に、バック駐車など低速時の後輪の動きが予想と異なり、扱いが難しく感じられることが大きな要因でした。

Zooxの自動運転車の課題は何か

　Zooxの自動運転車が直面している主な課題は、技術的な側面と事業的な側面の両方にあります。

技術的な課題

• ソフトウェアの不具合: 過去にソフトウェアの判断ミスが原因で、不必要な急ブレーキをかけ、後続の車両と衝突する事故が発生しました。これにより、270台の車両が自主リコールされています。
• 複雑な都市環境での運用: 予測不能な状況（歩行者の予期せぬ行動、自転車やスクーターとの遭遇など）に対応するための、より高度なコンピュータビジョンや予測システムの開発が引き続き求められます。
• 地図の維持管理: 高精度な地図を常に最新の状態に維持する必要があります。

事業的な課題

• 規模拡大: 現在は限定された地域で運用されていますが、商用サービスとして本格展開するには、車両の大量生産体制への移行が大きな課題です。
• 公共の受容性: 自動運転車に対する一般の人々の不安や懸念を払拭し、社会的な受容性を高めていく必要があります。
• コスト: 自動運転技術の開発と専用車両の製造には膨大なコストがかかります。事業として収益を上げていくためには、規模の経済を確立することが重要となります。

　Zooxはこれらの課題に対し、ソフトウェアのアップデートや生産工場の設立などで対応を進めており、規制当局からの承認も得て商業化に向けた取り組みを加速させています。

Zooxの自動運転車の課題は、ソフトウェアの不具合による急ブレーキ事故や、高コスト、そして複雑な都市環境に対応するための技術のさらなる向上が挙げられます。また、事業拡大には公共の受容性を高めることも重要です。