日産新型リーフの生産計画を下方修正 下方修正の理由は何か?バッテリー不足の理由は?

この記事で分かること

  • 下方修正の理由:基幹部品であるAESCグループのバッテリーの調達が遅れていることが主な原因とされています。
  • バッテリー不足の理由:生産能力が需要に追いついていないことが主な原因です。EV市場の急拡大に加え、新型リーフは従来のモデルより大容量のバッテリーを搭載しており、製造に必要な部材の増加や他社への供給拡大も一因です。

日産新型リーフの生産計画を下方修正

 日産自動車は、今年中に日本と米国で発売を予定している新型の電気自動車(EV)「リーフ」について、生産計画を下方修正したことが明らかになりました。 

 https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=2&ng=DGKKZO91352690W5A910C2TB1000&scode=7201

 下方修正は新型リーフの基幹部品であるバッテリーの調達が遅れていることが主な原因で、2025年9月から11月にかけての3か月間で、従来の計画から生産台数を半分程度に削減する見通しです。新型リーフは日産の経営再建において重要な車種と位置付けられており、今回の生産計画の修正は今後の業績にも影響を与える可能性があります。

リーフの特徴は

 日産「リーフ」は、世界初の量産型電気自動車(EV)として2010年に登場して以来、EV市場を牽引してきた車種です。特に、2025年に発表された新型リーフ(第3世代)は、従来のモデルから大きく進化し、様々な特徴を備えています。

1. クロスオーバーSUVへのモデルチェンジ

 これまでのハッチバック型から、より広い空間とデザイン性を備えたクロスオーバーSUVへと生まれ変わりました。これにより、EVユーザーだけでなく、内燃機関車からの乗り換えを検討している層にもアピールできるモデルとなっています。

2. 航続距離とバッテリー

  • 航続距離: 75kWhのバッテリーを搭載したモデルでは、日本・欧州のWLTC基準で600km以上の航続距離を実現。これにより、長距離移動への不安が大幅に軽減されています。
  • バッテリー容量: ユーザーのニーズに合わせて、52kWhと75kWhの2つのバッテリータイプが用意されています。
  • 急速充電: 最大150kWの急速充電に対応しており、最短35分でバッテリー容量の10%から80%まで充電が可能です。

3. 先進技術

  • e-Pedal: アクセルペダルの操作だけで発進、加速、減速、停止までをコントロールできる「e-Pedal」が搭載されています。これにより、特に渋滞時や坂道での運転負担を軽減します。
  • 運転支援システム: 日本向けの車両には、高速道路での同一車線内ハンズオフ走行を可能にする「プロパイロット2.0」が搭載されます。
  • V2H(Vehicle to Home): 車に蓄えた電力を家庭に供給するV2H機能に対応しています。停電時の非常用電源として活用できるほか、夜間の安い電力を充電して昼間に家庭で利用するなど、家計の節約にも貢献します。

4. 走行性能と静粛性

 EVならではのスムーズかつレスポンスに優れた走行性能に加え、高剛性モーターマウントや高遮音カーペットの採用により、高い静粛性を実現しています。これにより、快適な乗り心地と静かな車内空間を提供します。

新型リーフは、これまでのハッチバックからクロスオーバーSUVへと進化。600km以上の航続距離と最大150kWの急速充電に対応。また、「e-Pedal」や高速道路でのハンズオフ走行が可能な「プロパイロット2.0」など、先進技術も多数搭載しています。

どのメーカーのバッテリーを使用しているのか

 日産リーフに搭載されているバッテリーは、主にAESCグループ(旧オートモーティブエナジーサプライ)が製造しています。

 AESCは、元々日産とNECの合弁会社として設立された電池メーカーで、初代リーフの発売当初からバッテリーを供給してきました。現在は中国の遠景能源(エンビジョンエナジー)がAESCグループの株式を取得していますが、日産とのパートナーシップは継続されており、リーフ向けのバッテリー供給も行われています。

 また、新型リーフではバッテリーのさらなる大容量化や性能向上が図られており、その開発には、日産が長年培ってきたバッテリー技術が活かされています。

AESCグループのバッテリーの特徴

 AESCグループのバッテリーは、特に「安全性」と「信頼性」に大きな特徴があります。

  • 高い安全性: これまで100万台以上を市場に投入しながら、重大な発火事故を一度も起こしていないことを強みとしています。これは、厳格な品質管理と、熱暴走のリスクが低いとされるリン酸鉄リチウム(LFP)などの安全性の高いバッテリー化学特性に由来しています。
  • パウチ型セル: 主力製品は、電極をラミネートフィルムで包んだ「パウチ型」と呼ばれるタイプです。これは、軽量でスペース効率に優れており、放熱性も高いという特徴があります。
  • 技術革新: 絶えず技術開発を進めており、よりエネルギー密度を高め、充電時間を短縮する次世代バッテリーの開発に力を入れています。
  • サステナビリティ: 生産工程における環境負荷低減にも積極的に取り組んでおり、再生可能エネルギーの活用や、バッテリーのLCA(ライフサイクルアセスメント)算定の実施などを進めています。

 AESCは、日産リーフのバッテリー供給を長年担ってきた実績に加え、近年ではBMWやルノーなど、グローバルな自動車メーカーへの供給も拡大しています。

AESCグループのバッテリーは、高い安全性が最大の特徴です。これまで100万台以上の搭載実績で発火事故はゼロ。軽量で放熱性に優れるパウチ型セルを採用し、日産をはじめ、BMWなど世界的な自動車メーカーにも供給しています。

なぜバッテリー不足なのか

 日産の新型EV「リーフ」がバッテリー不足に陥っている背景には、いくつかの要因が考えられます。

1. バッテリーサプライヤーの生産能力と需要のミスマッチ

  • サプライヤーの生産体制: リーフのバッテリーを供給するAESCグループは、世界的に生産能力を拡大していますが、急増するEV需要全体に追いつくことが難しい状況にあります。
  • 新規顧客の増加: AESCは日産だけでなく、ルノーやBMWなど他社への供給も拡大しており、日産向けだけに生産能力を集中させるわけにはいかない状況です。

2. 世界的な資源の需要増加と地政学的リスク

  • 原材料の供給不足: EVバッテリーの主要な原材料であるリチウムやコバルト、ニッケルなどの天然資源は、世界的なEVシフトによって需要が急増しています。特に中国がレアアースの輸出を制限する動きを見せているなど、地政学的なリスクも供給不足の一因となっています。
  • 製造プロセスの課題: バッテリーの製造は非常に精密なプロセスであり、不純物の混入や部品の公差(許容範囲)などの品質管理も重要です。これにより、歩留まり(良品率)が低下し、生産遅延につながる可能性もあります。

3. バッテリーの高性能化

  • 新型リーフのバッテリー: 新型リーフは、従来のモデルよりも大容量のバッテリーを搭載しています。バッテリーの容量が大きくなれば、その分、製造に必要な部材や時間も増加します。

 これらの複合的な要因が、新型リーフの生産計画に影響を与えていると考えられます。EV市場の急拡大に伴い、バッテリーの供給体制の構築は、自動車メーカー各社にとって喫緊の課題となっています。

バッテリー供給元の生産能力が需要に追いついていないことが主な原因です。EV市場の急拡大に加え、新型リーフは従来のモデルより大容量のバッテリーを搭載しており、製造に必要な部材も増えました。他社への供給拡大も一因です。

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