この記事で分かること
- トリム&フォームとは:リードフレームから完成した半導体デバイスを切り離し(トリム)、外部の端子を指定された形状に曲げ、最終的な製品として使用できる形に整える(フォーム)工程です。
- 切断の方法:プレス金型を使用します。金型のパンチとダイによって、複数のパッケージを繋いでいるリードフレームの不要部分(タイバーなど)を物理的に打ち抜きます。
- 折り曲げる方法:専用のプレス金型を使用し、リードを物理的に曲げます。金型上部のパンチが下降し、リードの根元を固定した状態で、指定された形状に精密に成形します。
トリム&フォーム
チップの微細化による性能向上の限界が見え始めていることから、半導体製造において前工程から後工程へと性能向上開発の主戦場が移り始めています。
複数のチップを効率的に組み合わせて性能を引き出す「後工程」の重要性が増しています。
前回はモールドに関する記事でしたが、今回はトリム&フォームに関する記事となります。
トリム&フォームとは何か
半導体後工程におけるトリム&フォームは、パッケージ化された半導体デバイスをリードフレームから切り離し、外部のリード(端子)を最終的な製品として使用できる形に整える工程です。
トリムとフォームの役割
トリムとフォームは通常、一体となった装置(トリム&フォーム装置)で行われることが多いです。このプロセスは、半導体パッケージ製造の最終段階に位置し、以下の2つの主要な役割を果たします。
1. トリム(Trim)
トリムは、リードフレームに並んで一体化された複数のパッケージを、個々のデバイスに分離する工程です。
具体的には、リード(端子)を繋いでいる「タイバー」や、リードフレームを保持している「ダムバー」と呼ばれる部分を切断します。これにより、各デバイスが独立した製品となります。
2. フォーム(Form)
フォームは、トリムによって分離された各デバイスのリードを指定された形状に曲げる工程です。リードは、デバイスが最終的にプリント基板(PCB)などに実装される際に、はんだ付けが容易になるように特定の形(例:ガルウィング、J字型など)に成形されます。この工程により、デバイスは次の段階であるテストや出荷に適した状態になります。
このプロセスは、デバイスを物理的に加工するたため、パッケージや内部のチップに過度なストレスを与えないよう、精密な制御が求められます。

半導体後工程におけるトリム&フォームは、リードフレームから完成した半導体デバイスを切り離し(トリム)、外部のリード(端子)を最終的な製品として使用できる形に整える(フォーム)工程です。
どのように切断を行うのか
トリム&フォーム工程における切断(トリム)は、主にプレス金型を使用して行われます。
このプロセスでは、リードフレームに固定された複数の半導体パッケージが、専用の金型を通ることで、リード(端子)を繋いでいる「タイバー」や「ダムバー」が物理的に打ち抜かれ、個々のデバイスに分離されます。
主な切断方法
- パンチング(打ち抜き): 金型のパンチ(雄型)とダイ(雌型)によって、リードフレームの不要な部分を物理的に打ち抜きます。これは、リードの切断と、リードの最終的な形状を整えるフォーム工程と同時に行われることが多いです。
- レーザー切断: 一部の特殊なパッケージや高精度が要求される場合、レーザーを使用してリードフレームを切断することもあります。
プレス金型による切断は、高速で大量生産に適しており、半導体パッケージ製造の主要な方法として広く用いられています。

トリム工程での切断は、主にプレス金型を使用します。金型のパンチとダイによって、複数のパッケージを繋いでいるリードフレームの不要部分(タイバーなど)を物理的に打ち抜き、個々のデバイスに分離します。
プレス金型はどのように作られるのか
トリム工程で使用されるプレス金型は、非常に精密な工程を経て作られます。この金型は、金型の設計、材料の選定、そして精密加工という3つの主要なステップで作られます。
1. 金型の設計
まず、CAD/CAMソフトウェアを用いて、半導体パッケージのリード形状やトリムラインに合わせた金型の3Dモデルを設計します。
この段階で、切断時の応力を最小限に抑え、パッケージに損傷を与えないように、パンチ(雄型)とダイ(雌型)のクリアランス(隙間)や刃先の形状などが厳密に計算されます。設計データは、後の加工工程で使用されるNC(数値制御)データに変換されます。
2. 材料の選定
金型は、高い硬度と耐摩耗性が求められるため、特殊な鋼材が使用されます。パンチやダイなどの切刃部分には、SKD11(高炭素クロム鋼)やSKH51(高速度工具鋼)、さらには超硬合金などがよく使われます。これらの材料は、長期間の使用に耐え、安定した切断品質を維持するために不可欠です。
3. 精密加工
設計されたデータに基づき、以下の精密加工が行われます。
- NC加工 (マシニング): マシニングセンターなどを用いて、金型の主要な形状を削り出します。
- 熱処理: 加工された金型部品は、硬度を高めるために熱処理(焼き入れなど)が施されます。
- ワイヤー放電加工: リードを切断するパンチとダイの精密な形状は、ワイヤー放電加工によって作られます。これは、ワイヤー電極と材料の間に電気を流し、放電によって材料を溶かしながら精密に切断する技術です。
- 研削加工: 熱処理後に生じる歪みを修正し、最終的な寸法精度と表面仕上げを出すために、高精度な研削加工が行われます。
- 組み立てと調整: 各部品が完成した後、金型として組み立てられ、実際に使用するプレス機での微調整やテストが繰り返されます。この最終調整によって、最適な切断品質と生産性が確保されます。

トリム用プレス金型は、まずCADで精密に設計され、高硬度の特殊鋼材が選定されます。その後、ワイヤー放電加工や研削などの精密加工を経て、高い精度でパンチとダイが作製・組み立てられます。
フォームではどのようにリードを曲げるのか
フォーム工程では、専用のプレス金型を使用し、リード(端子)を物理的に曲げます。この工程は、「成形」とも呼ばれ、半導体デバイスをプリント基板(PCB)に実装できる最終的な形状に整える重要な役割を担います。
リード成形の仕組み
- 金型へのセット: トリム工程で個々に分離されたデバイスが、自動搬送装置によってフォーム用のプレス金型に正確にセットされます。
- リードのクランプ: 成形時にリードがずれたり、パッケージ本体に過度な応力がかからないように、クランプ部でリードの根本をしっかりと保持します。
- パンチによる成形: 金型上部のパンチ(雄型)が下降し、リードの各部分を順に押し曲げます。このパンチの形状が、最終的なリードの形(例:ガルウィング、J字型)を決定します。
- 成形完了: パンチがリードを指定された角度と長さに正確に曲げた後、上昇してデバイスを解放します。
このプロセスは、リードの根元にダメージを与えないよう、精密な制御が不可欠です。わずかなミスがリードの破損やパッケージ内部のワイヤ断線につながるため、金型の精度とプレス機の制御が非常に重要になります。

フォーム工程では、専用のプレス金型を使用し、リードを物理的に曲げます。金型上部のパンチが下降し、リードの根元を固定した状態で、指定された形状(例:ガルウィング)に精密に成形します。
トリム&フォーム装置の有力メーカーは
半導体後工程のトリム&フォーム装置の有力メーカーは、以下の企業が挙げられます。
日本のメーカー
- アピックヤマダ(ヤマハ発動機グループ):この分野で世界的なシェアを誇る日本の大手メーカーです。特に、量産体制に適した自動化された半導体リード加工装置に強みを持っており、国内外で高いシェアを占めているとされています。
海外のメーカー
- BE Semiconductor Industries N.V. (Besi):オランダに本社を置く半導体後工程装置メーカーです。ダイボンディングやフリップチップ実装装置に加えて、トリム&フォーム装置も主要な製品ラインナップの一つであり、世界的に高い評価を得ています。
- TOWA(東和薬品):日本の企業ですが、主にモールド(樹脂封止)装置で世界的なシェアを持っています。関連する後工程として、トリム&フォーム装置も手掛けています。
その他の関連企業
- 岩谷産業:商社として、トリム&フォーム装置や関連する金型などの販売・ソリューションを提供しています。複数のメーカーの製品を取り扱っている可能性があります。
これらのメーカーは、高速・高精度なトリムとフォームを可能にする装置を開発しており、特にワイヤーボンディング方式の半導体パッケージ製造において重要な役割を担っています。
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