この記事で分かること
- ノキアの現状:携帯電話事業から撤退し、通信インフラとAI技術に注力しており、特に光ネットワークやクラウドサービスが好調です。
- 投資の内容:ヌビディアはノキアに10億ドルを出資し、約2.9%の株式を取得。これにより、両社はエヌビディアの技術を用いて、共同開発、次世代通信インフラの構築を行います。
- エヌビディアが投資を行う理由:ノキアのインフラ技術と自社のAIチップを融合させ、AI時代の次世代通信ネットワーク(6G等)市場を早期に獲得・主導するためです。
エヌビディアのノキアへの投資
米半導体大手のエヌビディアが、フィンランドの通信機器メーカーであるノキアに10億ドル(約1500億円)の株式投資を行う計画を発表しました。
https://jp.reuters.com/markets/global-markets/DWLW56V4Y5LWDHEVQ4APRGLYVU-2025-10-28/
これは、両社がAI(人工知能)ネットワークの分野で戦略的協業を行うための一環であり、AI時代に向けたネットワークインフラの進化において重要な動きと見られています。
ノキアの現状はどうか
現在のノキアは、かつての携帯電話事業から大きく転換し、通信インフラ技術とAI分野に注力しています。
エヌビディアからの10億ドル投資は、この戦略転換が結実しつつある現状を裏付ける大きな出来事と言えます。
1. 事業構造の転換
- かつての携帯電話事業: 2010年代に携帯電話事業(デバイス&サービス部門)をマイクロソフトに売却し、一般消費者向けの携帯電話メーカーとしての地位を大きく縮小しました。
- 現在の主要事業:
- ネットワークインフラ (Network Infrastructure): 5G、光ネットワーク、IPネットワークなど、通信事業者を支えるインフラ技術。
- モバイルネットワーク (Mobile Networks): 5Gなどの無線アクセスネットワーク(RAN)技術。
- クラウド&ネットワークサービス (Cloud and Network Services): ソフトウェアやサービス提供。
- ノキア・テクノロジーズ (Nokia Technologies): 特許ライセンス事業。
 
2. 最近の業績(2025年第3四半期)
ノキアは堅調な業績を報告しています。
- 売上高: 比較可能な純売上高は前年同期比で9%増加し、市場予想を上回りました。
- 部門別の成長: 特に光ネットワーク事業で19%の大幅な伸びを記録するなど、全事業セグメントで成長が見られます。
- 収益: 1株当たり利益(EPS)も市場予想を大きく上回りました。
3. エヌビディアとの提携が示す方向性
今回のエヌビディアからの投資と戦略的提携は、ノキアの事業の方向性がAI時代に合致していることを示しています。
- AIネットワークへのシフト: ノキアは、既存のインフラ事業の基盤を活かしつつ、AIを活用した次世代の5G/6Gネットワーク技術開発に注力しており、エヌビディアはこれに資金と技術(GPU/アーキテクチャ)を提供します。
- 市場の評価: エヌビディアとの提携発表を受け、ノキアの株価は一時20%近く急騰するなど、市場はノキアの戦略をポジティブに評価しています。
かつての不振を乗り越え、ノキアは通信インフラとAI技術を融合させる企業として再構築を進めており、エヌビディアとの提携はその勢いを加速させるものと言えます。

現在のノキアは、携帯電話事業から撤退し、通信インフラとAI技術に注力し、最近の四半期決算では売上・利益が予想を上回り、特に光ネットワークやクラウドサービスが好調です。エヌビディアとのAIネットワーク協業のための10億ドル投資を受け、AIスーパーサイクルでの成長に期待が高まっています。
投資の内容はなにか
エヌビディアによるノキアへの10億ドル投資は、単なる資金提供ではなく、AIネットワーク分野での大規模な戦略的提携を伴うものです。
投資の具体的な内容は以下の通りです。
株式取得(出資)
- 投資額: 10億ドル(約1,520億円)。
- 取得株数: ノキアが新たに発行する約1億6,600万株を、1株あたり6.01ドルでエヌビディアに割り当てます。
- 保有比率: この出資により、エヌビディアはノキアの約2.9%の株式を保有する株主となります。
戦略的協業(技術提携)
- 目的: AIネイティブな5Gアドバンストおよび6Gネットワークの開発・展開の加速。
- ノキア側: 5G・6G向けのRAN(無線アクセスネットワーク)ソフトウェアを高速化するため、エヌビディアの半導体(GPU/アーキテクチャ)を活用します。
- エヌビディア側: AIインフラにノキアのデータセンター技術を活用する方法を検討します。また、両社は新しいNVIDIA ARC-Pro RANプラットフォームなどの技術を共同開発します。
この投資は、ノキアがモバイル通信機器からAI分野へ軸足を移す戦略を、半導体業界のリーダーであるエヌビディアが強力に後押しする形となっています。

エヌビディアはノキアに10億ドルを出資し、約2.9%の株式を取得。これにより、両社はエヌビディアの技術を用いて、AIネイティブな5Gアドバンスト・6Gネットワークを共同開発し、次世代通信インフラを構築します。
エヌビディアが投資を行う理由は何か
エヌビディアがノキアに大規模な投資を行う最大の理由は、AI時代の次世代通信インフラ(AI-RAN)を自社の技術で支配するという戦略にあります。これは、エヌビディアのGPU技術を、AIの基盤となる通信ネットワークに深く組み込むことを目的としています。
1. AIネットワーク(AI-RAN)市場への進出
- GPUの応用拡大: エヌビディアのGPUは、AI処理のデファクトスタンダード(事実上の標準)となっています。このGPU技術を、5G-Advancedや将来の6Gネットワークの中心であるRAN(無線アクセスネットワーク)に組み込むことで、「AI-RAN」という新しい市場を創造しようとしています。
- 通信の「再発明」: AI-RANは、ネットワークの最適化、基地局の消費電力削減、通信速度と遅延の改善などを、AIとソフトウェアでインテリジェントに行うことを目指しており、エヌビディアはこれを主導したい考えです。
2. ノキアのネットワーク技術の活用
- 通信インフラの専門知識: ノキアは長年にわたり、世界トップクラスの通信インフラ(特にRANや光ネットワーク)技術と顧客基盤を持っています。
- ソフトウェアとハードウェアの統合: ノキアのRANソフトウェアと、エヌビディアの強力なGPU/CPUアーキテクチャ(例:NVIDIA Grace CPUスーパーチップやARC-Pro RANプラットフォーム)を統合することで、高性能でエネルギー効率の高いクラウドRANソリューションを共同開発できます。
3. エッジAIクラウド市場の創造
- データセンターとの連携: ノキアはデータセンター事業にも力を入れており、エヌビディアはノキアのデータセンター技術やネットワークOS(SR Linux)を、自社の高速イーサネットプラットフォーム(Spectrum-X)と連携させたい考えです。
- 新たな収益源: 通信ネットワークの上で、低遅延が求められるエッジAIクラウドという新たなサービス市場を構築し、将来的に数十億ドル規模のAI収益機会を獲得することを目指しています。
エヌビディアはノキアの持つ通信インフラの土台と、自社のAI半導体の力を組み合わせて、次世代のネットワーク時代をリードしようとしているのです。

エヌビディアが投資を行う理由は、ノキアのインフラ技術と自社のAIチップを融合させ、AI時代の次世代通信ネットワーク(6G等)市場を早期に獲得・主導するためです。
 
 

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