SMKの第2四半期の連結最終損益赤字 赤字の要因は何か?コネクタの状況と高付加価値の領域とは?

この記事で分かること

  • 赤字の要因:為替差損の計上と、同社の既存市場(スマホ等のコネクタ)の需要回復の遅れによる利益率の悪化です。コスト高も利益を圧迫しました。
  • スマホ向けコネクタ不調の理由:スマホ市場の成熟や買い替えサイクルの長期化により、全体的な出荷台数が伸び悩みました。これに伴い、部品在庫の調整が行われ、コネクタの発注が低迷しました。
  • コネクタ分野の高付加価値領域とは:自動車(EV/自動運転)と高速通信インフラ(AIサーバー/5G・6G)です。これらは大容量・高速伝送や高信頼性が求められ、高付加価値化が進んでいます。

SMKの第2四半期の連結最終損益赤字

 SMK株式会社の2025年3月期第2四半期(4~9月)の連結最終損益は、1億9300万円の赤字でした。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC287FU0Y5A021C2000000/

 赤字の要因は主力製品であるコネクタなどの需要が、特にスマートフォン市場などで低迷したことや円安が進んだものの、生産拠点や調達コストなどにおける為替差損益が経常利益を押し下げた可能性が挙げられます。

SMKはどんな企業なのか

 SMK株式会社は、コネクタやスイッチなどの電子部品を世界中に提供している、日本の老舗の電子部品メーカーです。

 1925年の創業以来、「良いパーツが良いセットを作る」という理念のもと、情報社会の発展に貢献してきました。


SMK株式会社の概要

項目詳細
業種電子部品メーカー(東証プライム上場)
設立1929年(昭和無線工業株式会社として)
本社東京都品川区
特徴海外進出が早く、売上の約8割、社員の8割以上が海外という、名実ともにグローバルメーカーです。
強みコネクタなどの小型化、高電流化、高速伝送技術。

主要な製品と事業分野

 SMKが手掛ける製品は、身近な製品から産業機器まで、幅広い分野で「つなぐ」「操作する」「感知する」役割を担っています。

1. 主力製品

製品カテゴリ主な用途
コネクタ機器内部の基板間接続、FPC接続、同軸接続など、電子回路の「つなぎ役」。モバイル機器、車載機器などに必須。
スイッチ電源スイッチ、押しボタンスイッチなど、機器の「操作」に関わる部品。
リモコンテレビ、エアコンなどの家電製品に使われるリモートコントロールユニット。
タッチパネル産業機器や車載向けなどの操作パネル。
カメラモジュール車載向け(ADAS/モニタリング)などの高度な機能を持つモジュール製品。

2. 主要な事業分野(セグメント)

同 社の製品が使われる主な分野です。(括弧内は2025年3月期の連結売上構成比の一例)

  • 家電分野 (41%): リモコン、各種スイッチなど
  • 車載分野 (34%): コネクタ、車載カメラモジュール、センサーなど(近年注力)
  • 情報通信分野 (15%): モバイル機器向けコネクタ、通信モジュールなど
  • 産業機器・その他 (11%): センサーユニット、IoT関連部品など

 特に近年は、車載向けセンサー/IoT関連のユニット・モジュールなど、新しい領域に注力し、成長を目指しています。


 SMKは、その小さな電子部品を通じて、世界中のエレクトロニクス製品の進化を支えている企業です。

SMKは、コネクタ、スイッチ、リモコンなどの電子部品を開発・製造する東証プライム上場のグローバルメーカーです。特に車載情報通信分野に強く、世界のエレクトロニクスを支えています。

赤字の原因は何か

 SMK株式会社の2025年3月期第2四半期(4~9月)の最終赤字1億9300万円の主な原因は、以下に示す為替差損の計上と、既存事業における需要の回復遅れによる利益率の悪化です。

1. 為替差損の計上(経常利益の圧迫)

  • 円安の進行により、海外の現法における外貨建て資産(主にドル建て)を円換算する際に、多額の為替差損が発生しました。
  • これが、営業利益(本業の儲け)はわずかながら黒字を維持したにもかかわらず、経常利益(本業と為替損益などを含む)を大幅な赤字(4億3300万円の赤字)に押し下げる主因となりました。

2. 需要回復の遅れと利益率の悪化

  • 主力製品の需要低迷: 特にスマートフォンやPC向けの電子部品市場において、需要の本格的な回復が遅れました。
  • 販売価格の低下: 競争激化により、一部製品で販売価格が低下傾向にありました。
  • コスト高騰の影響: 原材料価格や製造コストの高止まりが続き、売上は微増したものの、営業利益が前年同期比で約99.1%減少する(600万円の黒字)など、利益率を大幅に悪化させました。

主な原因は、為替差損の計上と、既存市場(スマホ等)の需要回復の遅れによる利益率の悪化です。コスト高も利益を圧迫しました。

スマホのコネクタが低迷した理由はなにか

 SMKが扱うスマートフォン向けコネクタの需要が低迷した主な理由は、世界的なスマートフォン市場の停滞・成熟と、それによる部材在庫の調整です。


1. スマートフォン市場の停滞・成熟

 近年、世界のスマートフォン市場は成長のピークを過ぎ、買い替えサイクルの長期化などにより出荷台数の伸びが鈍化、あるいは減少傾向にあります。

  • 買い替えサイクルの長期化: スマートフォンの性能向上が一巡したことで、ユーザーが機種変更を急がなくなり、使用期間が長くなっています。
  • 新興国市場の減速: かつて大きな成長ドライバーだった新興国市場でも、市場の飽和が見られ始めています。

2. 部品在庫の調整(サプライチェーンの影響)

 市場全体の需要が低迷すると、スマートフォンを製造するメーカー側は、過剰在庫を避けるために電子部品の調達を抑制します。

  • 部品メーカーであるSMKとしては、最終製品の需要低迷が、コネクタなどの部品の発注量の減少として直接的に影響しました。

3. 製品の技術進化の鈍化

 コネクタの小型化や高速伝送化といった技術進化は継続していますが、スマートフォン自体の大きな設計変更や新機能の追加が以前ほど頻繁でなくなったことも、コネクタの高付加価値品への置き換え需要を鈍化させています。

 SMKは、このスマートフォン向け市場の低迷を、車載機器や産業機器向けなど、他の成長分野で補おうと事業構造の転換を進めています。

世界的なスマホ市場の成熟買い替えサイクルの長期化により、全体的な出荷台数が伸び悩みました。これに伴い、部品在庫の調整が行われ、コネクタの発注が低迷しました。

コネクタの高成長分野とは何か

 コネクタ市場において現在、そして今後、最も高い成長が見込まれる分野は、主に「自動車」と「高速通信インフラ(データセンター・5G/6G)」の2つです。

 これらの分野は、技術の進化(CASE、AI)が著しく、コネクタに高い性能と信頼性が求められるため、高付加価値化が進んでいます。


1. 自動車分野(車載コネクタ)

 コネクタメーカー各社が最も注力している分野です。自動車が「走る電子機器」へと進化していることが、コネクタの需要を爆発的に押し上げています。

成長ドライバー求められるコネクタ技術
EV(電動化)大電流に対応する高圧電源コネクタ、充電システム用コネクタ。
ADAS/自動運転カメラ、センサー、ECU(電子制御ユニット)間の高速・大容量データ伝送コネクタ。ノイズ対策も重要。
コネクテッド化インフォテイメントシステムやV2X通信向けの高周波コネクタ、アンテナ接続部品。
小型化・軽量化車体内の限られたスペースに搭載するための、小型・耐振動性に優れたコネクタ。

 特に自動車向けコネクタ市場は、2025年から2032年にかけて年平均成長率(CAGR)7.1%で成長すると予測されており、非常に有望です。

2. 次世代インフラ・高速通信分野

 AIの普及とデータ量の増加に伴い、高速なデータ処理を担うインフラ向けコネクタの需要が拡大しています。

成長ドライバー求められるコネクタ技術
データセンター / AIサーバーAIチップ間の膨大なデータを扱うための、超高速伝送(例:800Gbps以上)に対応したコネクタ。
5G/6Gインフラ基地局、ネットワーク機器向けの高周波・ミリ波に対応したコネクタ。
光通信大容量通信を実現するマルチコア光ファイバコネクタなど(CAGR 11.8%の成長予測あり)。

SMKの戦略との関連

 SMKも、低迷するスマホ向け需要を補うため、上記の高成長分野、特に車載向けに積極的に経営資源を投入しています。

  • 車載製品(カメラモジュール、高速伝送コネクタなど)の販売を強化し、事業の柱として育成しています。

この成長分野へのシフトが、SMKの今後の業績回復の鍵となります。

コネクタの高成長分野は、自動車(EV/自動運転)高速通信インフラ(AIサーバー/5G・6G)です。これらは大容量・高速伝送や高信頼性が求められ、高付加価値化が進んでいます。

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