この記事で分かること
- 中央演算処理装置(CPU)とは:コンピューターの頭脳として機能する半導体チップです。プログラムの命令を解釈し、演算・論理判断・装置全体の制御を行う、最も重要な中心部品です。
- MPUとの違い:MPU(マイクロプロセッサ)は、CPUの機能をワンチップ化したものです。高性能でOSを動かすのに対し、MCU(マイクロコントローラ)はメモリなどを統合し組み込み制御に使われます。現代ではMPUとCPUは同義です。
- 制御装置の仕組み:メモリから命令を読み込み(フェッチ)、内容を解読(デコード)します。その結果に基づき、演算装置や他の部品へ適切な制御信号を出し、命令の実行を管理しています。
中央演算処理装置(CPU)
半導体チップは、「産業のコメ」と呼ばれるほど現代社会の基盤となっています。AIの普及やデジタル化の加速などのもあり、AIそのますます重要性が増しています。
ただ、一口に半導体チップといっても、その中には様々な種類が存在します。今回はロジック半導体、特にCPU、MPUに関する記事となります。
ロジック半導体とは何か
ロジック半導体は、電子機器の演算、制御、判断を行う「頭脳」の役割を担うICです。デジタル信号(0と1)で論理演算を実行し、CPU、GPU、MCUなどがこれにあたります。
CPUとは何か
CPUはコンピューターの動作における最も重要な中心的な部品です。CPUは「Central Processing Unit」の略で、日本語では「中央演算処理装置(ちゅうおうえんざんしょりそうち)」と訳されます。
これは、パソコンやスマートフォン、サーバーなど、あらゆるコンピューティングデバイスに搭載される半導体チップであり、装置全体の頭脳として機能します。
役割の概要
- ソフトウェアの命令を解釈し、実行する。
- データの演算(計算)や論理判断を行う。
- メモリや入出力装置などの他のハードウェアを総合的に制御する。
CPUの性能が高いほど、デバイス全体の処理速度が速くなり、動作が快適になります。
CPUの主要な構成要素
CPUは主に以下の3つの要素で構成され、それぞれが連携してプログラムを実行します。
1. 制御装置(Control Unit)
- 役割: メモリから命令を取り出し、それを解読し、命令の内容に従ってCPU内の他の装置や外部の周辺装置へ指示(制御信号)を出します。
- CPUの動作全体の司令塔です。
2. 演算装置(ALU: Arithmetic Logic Unit)
- 役割: 制御装置からの指示に基づき、すべての算術演算(足し算、引き算など)と論理演算(比較、AND、ORなど)を実行します。
- CPUの実行役です。
3. レジスタ(Register)
- 役割: 制御装置や演算装置が処理を行うために、命令やデータを一時的に保持する非常に高速な小容量の記憶領域です。
- CPUが直接アクセスできるため、高速なデータ処理に不可欠です。

CPU(中央演算処理装置)は、コンピューターの頭脳として機能する半導体チップです。プログラムの命令を解釈し、演算・論理判断・装置全体の制御を行う、最も重要な中心部品です。
MPUとは何か、CPUとの違いは
MPU(エムピーユー)は「Micro-Processing Unit(マイクロプロセッシングユニット)」の略で、一般的にはCPU(中央演算処理装置)とほぼ同じ意味で使われています。
しかし、厳密な用語の定義や歴史的経緯、あるいは組み込み分野においては、以下のようなニュアンスの違いがあります。
1. MPUとは?
- 定義: MPUは「マイクロプロセッサ」のことで、中央演算処理装置(CPU)の機能を、たった一つの半導体チップ(IC)に集積したものを指します。
- 汎用性: MPUは、OSの起動やアプリケーションの実行など、複雑な汎用処理を順番にこなすのが得意です。
- 構成要素: MPU(マイクロプロセッサ)チップ自体は、通常、メモリや入出力回路(I/O)を内蔵しておらず、それらは外部に接続してシステムを構成する必要があります。
2. CPUとMPUの違い
現代のパソコンやスマートフォンにおいては、CPUは必ず1つのチップに集積されているため、CPU=MPU(マイクロプロセッサ)と捉えて問題ありません。
| 項目 | CPU (Central Processing Unit) | MPU (Micro-Processing Unit / Microprocessor) |
| 用語の意味 | 中央処理装置。コンピューターの頭脳としての機能や役割を指す。 | マイクロプロセッサ。CPUの機能を一つの集積回路(IC)にまとめたものを指す。 |
| 内蔵機能 | 機能や役割の名称であり、物理的な内蔵機能の有無は問わない。 | 通常、メモリやI/Oを内蔵しない(外部に接続する必要がある)。 |
| 一般的な用法 | PCやサーバーの高性能なプロセッサを指す場合が多い。 | 昔はワンチップ化されたプロセッサを指したが、現在では高性能なCPUと同義。 |
| 組み込み分野 | MPUをさらにメモリ等と統合したMCU(後述)の核として搭載されている。 | 汎用OSが動くような、高性能かつ多機能なプロセッサを指す。 |
3. MCUとの区別(補足)
MPUと似た用語にMCU(Microcontroller Unit、マイクロコントローラ)があります。MPUとMCUは、その内蔵機能と用途によって明確に区別されます。
- MPU: CPUコアのみを搭載し、メモリやI/Oは外付け。高性能で複雑なOS(Windows, Linuxなど)を動かすのに適しています。
- MCU: CPUコアに加え、メモリ(RAM/ROM)やI/O、タイマーなどの周辺回路を一つのチップに統合したもの。低消費電力、低コストで、家電や自動車など特定の組み込み制御に特化しています。

MPU(マイクロプロセッサ)は、CPUの機能をワンチップ化したものです。高性能でOSを動かすのに対し、MCU(マイクロコントローラ)はメモリなどを統合し組み込み制御に使われます。現代ではMPUとCPUは同義です。
制御装置の仕組みは
CPU(中央演算処理装置)内の制御装置(Control Unit, CU)は、CPU全体の動作を管理し、プログラムの命令を解釈・実行するための司令塔の役割を果たします。
その仕組みは、主に命令を読み込む (フェッチ)、解釈する (デコード)、そして実行を制御するという一連のステップで成り立っています。
1. 命令サイクルの実行
制御装置の核となる役割は、以下の「命令サイクル(Instruction Cycle)」をクロック信号に合わせて高速で繰り返すことです。
- ① フェッチ (Fetch):
- 役割: 次に実行すべき命令が格納されているメモリのアドレスを特定し、その命令をメモリからCPU内部へ読み出します。
- 制御: プログラムカウンタ (PC) が次の命令のアドレスを示します。
- ② デコード (Decode):
- 役割: 読み込まれた命令(機械語)を解析し、それがどのような処理(演算、データ転送など)を要求しているのかを特定します。
- 制御: 命令レジスタの内容に基づき、マイクロプログラムや制御回路が必要な制御信号を生成し始めます。
- ③ 実行 (Execute) の制御:
- 役割: デコードの結果に基づき、演算装置(ALU)やレジスタ、メモリなど、関係する各ユニットへ適切なタイミングで制御信号を出力し、命令の実行を完了させます。
2. 制御信号の生成
制御装置の中核は、デコードされた命令を具体的な電気信号に変換する制御信号生成機構です。
- マイクロプログラム方式:
- 各命令を、さらに単純なマイクロ命令のシーケンスとしてROM(制御メモリ)に格納しておき、命令が入力されるとそのシーケンスを順次実行することで制御信号を生成します。
- 複雑な命令の実装が容易で、設計変更にも柔軟に対応できます。
- ハードワイヤード(有線論理)方式:
- 命令を直接、論理回路(AND、OR、NOTゲートなど)で実装し、制御信号を生成します。
- 高速ですが、回路が複雑になりやすく、命令の変更や追加が困難です。
現代の高性能CPUは、通常、この両方の方式を組み合わせたハイブリッド型を採用し、速度と柔軟性を両立させています。
3. 主要な構成要素
制御装置に関連する主要なレジスタ(一時記憶領域)も、その動作に不可欠です。
- プログラムカウンタ (PC): 次にフェッチすべき命令が格納されているアドレスを保持します。
- 命令レジスタ (IR): 現在デコード・実行中の命令コードを一時的に保持します。
- アドレスレジスタ/データレジスタ: メモリとの間でデータをやり取りする際に、アドレスやデータを一時的に保持します。

制御装置は、メモリから命令を読み込み(フェッチ)、内容を解読(デコード)します。その結果に基づき、演算装置や他の部品へ適切な制御信号を出し、命令の実行を管理するCPUの司令塔です。

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