日本板硝子のペロブスカイト太陽電池向けガラス ペロブスカイト太陽電池向けガラスに必要な性能は何か?日本板硝子の強みは何か?

この記事で分かること

  • ペロブスカイト太陽電池とは:特殊な結晶構造を持つ材料を「塗布」して作る次世代太陽電池です。薄く、軽く、曲げられるため、窓や壁面など、従来困難だった場所で発電可能。日本発の技術で、低コスト化も期待されています。
  • ペロブスカイト太陽電池向けのガラスに必要な性能:ガラスは単なる保護材ではなく、発電層を塗布するための「電極付きの土台(基板)」として機能します。光を通しながら電気を流す役割と、湿気に弱い材料を密閉して守る役割を担います。
  • 日本板硝子の強み:独自の「オンラインCVD法」による低コスト・高耐久な導電性ガラスの量産技術と、世界シェア首位級の既存実績にあります。

日本板硝子のペロブスカイト太陽電池向けガラス

 ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコン型と異なり「塗布(印刷)」で製造できるのが特徴です。その際、土台となるガラスには、光を通しながら電気も流す「透明導電膜(TCO)」が不可欠です。

 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC160MV0W5A011C2000000/

 日本板硝子は、このTCOガラス(製品名:NSG TEC™)において世界トップクラスのシェアを持っており、その既存技術をペロブスカイト向けに最適化して展開しています。

ペロブスカイト太陽電池とは何か

 ペロブスカイト太陽電池(PSC)とは、「ペロブスカイト」と呼ばれる特定の結晶構造を持つ材料を発電層(光を吸収して電気に変える層)に利用した、次世代型の太陽電池です。

 2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授らのグループによって発明された、日本発の画期的な技術です。


1. 構造と発電の仕組み

 ペロブスカイト太陽電池は、5つの層をサンドイッチのように重ねた構造をしています。

  • 発電のプロセス:
    1. 光の吸収: 「ペロブスカイト層」に太陽光が当たると、マイナスの性質を持つ「電子」と、プラスの性質を持つ「正孔(ホール)」が発生します。
    2. 電荷の分離: 電子は「電子輸送層」へ、正孔は「正孔輸送層」へと、それぞれ逆方向の電極に向かって移動します。
    3. 電流の発生: 移動した電子が外部の回路を流れることで、電気が取り出されます。

2. 従来のシリコン太陽電池との違い

 現在普及しているシリコン型と比較すると、以下のような劇的な違いがあります。

比較項目シリコン太陽電池(従来)ペロブスカイト太陽電池
形状・質感重くて硬い「板」薄くて軽く、曲げられる
製造方法高温・高真空での複雑な工程塗布や印刷(インクのように塗る)
設置場所屋根や平地(強度が重要)ビルの壁、窓、電気自動車の屋根
弱光時の発電効率が落ちる曇りや室内光でも発電しやすい
主原料シリコン(中国産が多い)ヨウ素(日本が世界シェア第2位)

3. なぜ「次世代の主役」と言われるのか

① 「どこでも発電所」にできる

 フィルム状に作れるため、これまで重さに耐えられなかった工場の屋根や、曲面のあるビルの壁面、さらには窓ガラスに透明な電池を貼るといった、「これまでの太陽光パネルでは不可能だった場所」での発電が可能になります。

② 大幅なコストダウンの可能性

 シリコン型は1,000℃以上の高温処理が必要ですが、ペロブスカイト型は100℃程度の低温で、「印刷」するように安く大量に作ることができます。

③ 日本の資源を活かせる

 主原料の「ヨウ素」は、日本が世界第2位の産出量を誇る数少ない資源です。エネルギー自給率の向上に直結する「国産太陽電池」として期待されています。


4. 実用化に向けた課題

 非常に有望な技術ですが、まだ解決すべき点もあります。

  • 耐久性: 水分や酸素に弱く、シリコン型(寿命約20年)に比べて劣化が早いため、封止技術(パッケージング)の向上が急がれています。
  • 大型化: 小さな面積では高い効率(25%以上)が出ますが、大きな面積でムラなく塗る技術が開発の焦点となっています。

ペロブスカイト太陽電池とは、特殊な結晶構造を持つ材料を「塗布」して作る次世代太陽電池です。薄く、軽く、曲げられるため、窓や壁面など、従来困難だった場所で発電可能。日本発の技術で、低コスト化も期待されています。

ペロブスカイト太陽電池でのガラスの用途は

 ペロブスカイト太陽電池(PSC)において、ガラスは単なる保護材ではなく、「発電を支える土台(基板)」「電気を取り出す電極」という極めて重要な役割を担っています。

1. 透明導電基板(発電層の土台)

 最も重要な用途です。ガラスの表面に「透明導電膜(TCO)」を焼き付けたものが使われます。

  • 役割: ペロブスカイト層を塗布するための「土台」になると同時に、光を透過させつつ、発生した電気を外部へ流す「プラス極またはマイナス極」として機能します。
  • 特徴: 日本板硝子などのガラスメーカーが供給する「FTOガラス」などが一般的です。

2. カバーガラス(保護・封止)

 太陽電池の表面や裏面を覆い、内部を保護するために使われます。

  • 役割: ペロブスカイト材料は水分や酸素に非常に弱いため、ガラスでサンドイッチ状に挟み込み、周囲を接着剤で固める(封止する)ことで、劣化を防ぎ寿命を延ばします。

3. 建材一体型太陽光発電(BIPV)への応用

 将来的に期待されているのが、ビルの窓ガラスそのものを太陽電池にする用途です。

  • 役割: 窓としての透明度や強度を保ちながら、ガラス面全体で発電を行います。これにより、これまでの「屋根に載せるパネル」から「発電するガラス建材」へと用途が広がります。

 ペロブスカイト太陽電池におけるガラスは、「光を通し、電気を通し、内部の繊細な材料を守る」という、デバイスの性能と耐久性を左右する中心的な部材です。

ペロブスカイト太陽電池において、ガラスは単なる保護材ではなく、発電層を塗布するための「電極付きの土台(基板)」として機能します。光を通しながら電気を流す役割と、湿気に弱い材料を密閉して守る役割を担います。

日本板硝子の参入理由と強みは何か

 日本板硝子(NSG)がペロブスカイト太陽電池(PSC)分野に参入する理由と、その独自の強みは以下の通りです。

1. 参入理由

  • 新市場の創出(建材一体型): 従来の重いパネルが置けなかった都市部のビルの窓や壁を「発電所」に変えるBIPV(建材一体型太陽光発電)の需要が、脱炭素の流れで急増しているためです。
  • 収益構造の転換: 従来の建築用・自動車用ガラスだけでなく、エネルギー分野という高付加価値な成長領域に注力し、収益の柱を増やす狙いがあります。

2. 日本板硝子の強み

  • オンラインCVD法(独自技術): ガラス製造工程の中で、熱いガラスに連続して導電膜を焼き付ける技術です。他社の「後付け(オフライン)」方式より、低コスト・大量生産・高い膜の耐久性を実現できます。
  • 世界トップ級の導電性ガラスシェア: 薄膜太陽電池用ガラスですでに世界シェア約5割を誇る「NSG TEC™」という実績があり、これをペロブスカイト向けに最適化して展開できる先行優位性があります。
  • 優れた耐熱性と密着性: 同社のFTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜は熱に強く、ペロブスカイト層の製造に必要な高温処理に耐えられるため、高い変換効率を引き出す土台として最適です。

日本板硝子の参入理由は、建材一体型太陽光発電の急成長を見据えた収益基盤の強化です。強みは独自の「オンラインCVD法」による低コスト・高耐久な導電性ガラスの量産技術と、世界シェア首位級の既存実績にあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました