この記事で分かること
- 金貨価格上昇の理由:関税政策による景気失速の懸念や中東や南米での紛争懸念から安全資産として買われ、米利下げによるドル安が金の価値を相対的に押し上げました。さらに、中国などの各国中央銀行が「脱ドル」を目的に金を大量購入していることも要因です。
- 経済減速が懸念される理由:「関税という追加コスト」が物価を押し上げ、「先行き不透明感」が企業のやる気を削ぎ、「各国のぶつかり合い」が世界の貿易を縮小させることで成長の鈍化が懸念されています。
金価格過去最高へ
2025年12月23日の国内店頭価格は、ついに1グラムあたり2万4,800円(小売価格)を突破し、史上最高値を塗り替えました。国際価格も1トロイオンス=4,400ドルを超えるという、かつてない水準に達しています。
様々な要因から高騰が続いており、今後も上昇を続ける可能性も示唆されています。
金が上昇している理由は何か
これほどまでに金が買われている背景には、複数の「歴史的な要因」が重なっています。
1. 「米国の関税・債務問題
2025年、再び誕生したトランプ政権による大規模な関税(世界一律関税や米中貿易摩擦の再燃)が、世界経済の不透明感を一気に高めました。
- スタグフレーション懸念: 関税による物価上昇(インフレ)と経済成長の鈍化が同時に起きる懸念から、実物資産である金が買われています。
- 米債務の膨張: 減税などによる米国の財政赤字拡大が、「ドルの価値低下(通貨への不信感)」を招き、金の魅力を高めています。
2. 米国の利下げサイクルの継続
米連邦準備制度(FRB)が2025年を通じて段階的な利下げを行ったことも大きな要因です。
- 金は持っているだけで利息がつきませんが、預金や債券の金利が下がると、「利息がつかない」という金のデメリットが相対的に小さくなるため、投資資金が流入しやすくなります。
3. 地政学リスクの「常態化」
ウクライナや中東情勢の長期化に加え、南米(ベネズエラ周辺)での緊張や、東アジアでの地政学的リスクが再び意識されています。「有事の金」として、リスク回避のための買いが止まりません。
4. 中央銀行による「脱ドル」の動き
中国、インド、その他の新興国の中央銀行が、ドル依存を減らすために外貨準備として金を大量に買い続けています。この公的機関による安定した需要が、価格の下支えどころか押し上げ要因となっています。
今後の注目点
- 2026年の見通し: 専門家の間では、早ければ2026年中に国際価格が5,000ドルを目指すという強気な予測も出ています。
- 日本国内の価格: 円安がさらに進めば、国内価格はさらに跳ね上がる可能性がありますが、逆に円高に振れると「ドル建て価格は上がっても、円建て価格は下がる」という動きになるため、為替の動向も無視できません。
「今が売り時」という見方もあれば、「まだ上がる」という期待も入り混じっている状況です。

金価格高騰の主な理由は、「地政学リスクの緊迫化」、「米国の利下げ」、「中央銀行の買い」の3点です。中東や南米での紛争懸念から安全資産として買われ、米利下げによるドル安が金の価値を相対的に押し上げました。さらに、中国などの各国中央銀行が「脱ドル」を目的に金を大量購入していることも要因です。
ベネズエラの緊張とは何か
ベネズエラに関連する現在の緊張は、主に「領土紛争」と「米国による制裁再強化」の2軸で、世界経済や金市場に影響を与えています。特に2025年に入り、以下の動きが深刻化しています。
1. 隣国ガイアナとの領土紛争(エセキボ地域)
ベネズエラが隣国ガイアナの国土の約3分の2を占める「エセキボ地域」の領有権を主張し、軍事的な緊張が高まっています。
- なぜ揉めているのか?: この地域(およびその沖合)で膨大な海底油田が見つかったためです。ガイアナはこの石油利権で世界最速レベルの経済成長を遂げていますが、ベネズエラのマドゥロ政権が「歴史的に自国のものだ」として併合を示唆しています。
- 2025年の動向: 5月にベネズエラがこの地域で独自の選挙を強行しようとしたり、海軍の砲艦がガイアナの排他的経済水域(EEZ)に侵入するなど、衝突寸前の事態が繰り返されています。
2. トランプ政権による制裁の再強化
米国で誕生した第2次トランプ政権が、ベネズエラのマドゥロ独裁政権に対して「最大圧力」を再開しています。
- 民主化の停滞: 2024年の大統領選が不公正だったとして、米国は石油・ガス部門への制裁を再び厳格化しました。
- 経済の混乱: 制裁によりベネズエラの原油輸出が制限され、インフレの再燃や経済不安が加速。これが南米全体の不安定化を招いています。
金価格への影響
なぜこれが「金」に関係するのかというと、以下の理由からです。
- エネルギー供給への不安: ベネズエラは世界最大級の原油埋蔵量を持つため、ここでの紛争は原油価格を押し上げ、ひいては世界的なインフレを招きます。
- 地政学的リスク: 南米という「米国の裏庭」で軍事衝突が起きる懸念が、投資家に「安全な資産である金」を買わせる動機になっています。

ベネズエラの緊張は、主に「米国による軍事・経済的な全面封鎖」と「隣国ガイアナとの領土紛争」によるものです。
領土紛争: 石油資源が豊富なガイアナの「エセキボ地域」に対し、ベネズエラが武力背景の併合を示唆し、軍事挑発を繰り返しています。
対米対立の激化: 2025年12月、トランプ政権はベネズエラを「外国テロ組織」に指定し、石油タンカーの全面封鎖を命令。米軍による船舶空爆や拿捕も発生し、事実上の戦争状態に近い緊張が続いています。
経済成長の鈍化が起こるとされる理由は
「経済成長が鈍化する」とされる主な理由は、現在の世界情勢(特にトランプ政権2.0の政策)を背景に、主に以下の3点に集約されます。
1. 「関税」によるコスト高と消費の冷え込み
トランプ政権が掲げる強力な関税政策は、いわば「輸入にかかる大型の税金」です。
- 物価上昇(インフレ): 企業は関税によるコスト増を商品の価格に上乗せします。これにより消費者の生活費が上がり、買い控えが起きることで景気が停滞します。
- スタグフレーションの懸念: 物価が上がるのに景気が悪くなる「最悪の組み合わせ」が警戒されています。
2. 「不確実性」による投資の抑制
「いつ、どの国に、どの程度の関税がかかるか分からない」という不透明な状況が、企業の成長を妨げます。
- 投資の先送り: 企業は将来のコスト予測が立てられないため、新しい工場建設や雇用、設備投資を控えるようになります。
- サプライチェーンの混乱: 貿易ルールが頻繁に変わることで、これまでの効率的な物流網が分断され、生産効率が低下します。
3. 各国の「報復」による貿易の縮小
米国が関税を上げれば、中国や欧州も対抗して米国製品に関税をかける「貿易戦争」に発展します。
- 世界的な貿易量の減少: お互いに高い壁を作ることで、世界全体での物の売り買いが減り、グローバル経済全体のパイが小さくなってしまいます。

「関税という追加コスト」が物価を押し上げ、「先行き不透明感」が企業のやる気を削ぎ、「各国のぶつかり合い」が世界の貿易を縮小させることで成長の鈍化が懸念されています。

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