この記事で分かること
- 人間であることの証明とは:AIによるなりすましを防ぐため、相手が実在の人間かを検証する技術です。虹彩認証や政府ID連携などが開発中です。
- 光彩認証が使用される理由:虹彩は特徴点が指紋の数倍多く、双子や左右の目でも異なるほど唯一無二です。また一生変化せず、赤外線で「生きている人間か」を判別できるため、AIの偽造を見破り、全人類を重複なく識別するのに最も適しています。
- 落選した理由:「世界標準の不在」と「信頼性の未確立」などの理由から技術的に有望ではあるが、落選となっています。
人間であることの証明
MITテクノロジーレビューによる「世界を変える10大技術(10 Breakthrough Technologies)」の2026年版は、例年のスケジュール通りであれば2026年1月初旬から中旬にかけて正式に発表される予定です。
現在は正式発表の直前(2025年12月末時点)であり、編集部からは最終選考で惜しくも漏れた「候補」の一部が先行して公開されています。
https://www.technologyreview.jp/s/373639/4-technologies-that-didnt-make-our-2026-breakthroughs-list/
あえて落選した技術を公表するのは、「今は未完成だが将来性は極めて高い」と世に知らしめるためであり、10大技術の権威性を保ちつつ、次世代の重要トレンドを先取りして紹介し、読者の関心や議論を喚起する狙いがあります。
今回は人間であることの証明に関する記事となります。
人間であることの証明とは何か
「人間であることの証明(Proof of Personhood)」とは、オンライン上の相手が「AI(ボット)ではなく実在する人間である」ことを、個人情報を明かさずに証明する技術のことです。
AIが人間と見分けのつかない文章や画像、動画(ディープフェイク)を簡単に生成できるようになった今、ネット社会の信頼性を守るための「デジタルの盾」として注目されています。
1. なぜこの技術が必要なのか
従来の本人確認(CAPTCHAなど)は、すでに最新のAIによって簡単に突破されています。このままでは、以下のようなリスクが防げなくなります。
- シビル攻撃: 1人が数千個の偽アカウントを作り、選挙やSNSの世論を操作する。
- AI詐欺: 知人になりすましたAIによる詐欺。
- 富の独占: 将来のベーシックインカムなどの配布を、ボットが横取りする。
2. 具体的な仕組み
現在、主に2つのアプローチで「人間性」を検証しようとしています。
| 手法 | 内容 | 例 |
| 生体認証 | 虹彩(目の模様)や顔、手のひらなど、AIが偽造できない身体的特徴を使う。 | Worldcoin (World ID): 専用端末「Orb」で虹彩をスキャン。 |
| 信頼の連鎖 | 政府発行のID(マイナンバー等)や、既に「人間」と認められた知人からの紹介で証明する。 | 暗号トークン: MITやOpenAIが提唱する、プライバシー保護型のデジタル身分証。 |

AIによるなりすましを防ぐため、相手が実在の人間かを検証する技術です。虹彩認証や政府ID連携などが開発中です。
なぜ虹彩認証が使用されるのか
「人間であることの証明」において虹彩認証が選ばれる最大の理由は、「情報の複雑さ」と「不変性」が他の生体認証よりも圧倒的に高いからです。
1. 圧倒的な識別精度(双子でも違う)
虹彩(瞳の色のついた部分)の模様は非常に複雑で、約240もの特徴点があります(指紋は約40〜60点)。
- 一卵性双生児でも別: 遺伝子が同じ双子でも、虹彩の模様は異なります。
- 左右の目でも別: 同じ人の右目と左目ですら模様が違うため、誤認証の確率が極めて低くなります。
2. 生涯変わらない「不変性」
顔は加齢や整形、体重の変化で変わりますし、指紋は労働や怪我で薄くなることがあります。
- 虹彩は生後2年ほどで模様が完成すると、その後は一生ほとんど変化しません。そのため、一度登録すれば再登録の必要がほぼありません。
3. AIによる偽造(ディープフェイク)に強い
顔認証は写真や高精細な動画、シリコンマスクで突破されるリスクがありますが、虹彩は偽造が極めて困難です。
- 赤外線による生存確認: 多くの虹彩スキャナ(Worldcoinの「Orb」など)は赤外線を使用し、瞳孔の反応や眼球の形状をチェックするため、写真や作り物の目では認証できないようになっています。
4. 差別(バイアス)が少ない
顔認証技術は、肌の色や性別によって精度に差が出る「アルゴリズムの偏り」が問題視されてきました。
- 虹彩認証は肌の色ではなく、瞳の内部にある「微細なシワの構造」を読み取るため、人種や性別による精度のばらつきが少なく、公平性が高いとされています。

虹彩は特徴点が指紋の数倍多く、双子や左右の目でも異なるほど唯一無二です。また一生変化せず、赤外線で「生きている人間か」を判別できるため、AIの偽造を見破り、全人類を重複なく識別するのに最も適しています。
落選した理由は何か
「人間であることの証明」が10大技術から落選した主な理由は、「世界標準の不在」と「信頼性の未確立」にあります。
MITテクノロジーレビューは以下の点を指摘しています。
- 決定的な手法が未確定: 虹彩スキャン、政府ID連携、SNSのつながりを利用する方法など、多くのプロジェクトが乱立しており、誰もが認める「共通の仕組み」がまだ決まっていません。
- プライバシーの懸念: 生体データを民間企業に預けることへの抵抗感が強く、社会的に広く受け入れられる「転換点」に達するにはまだ時間がかかると判断されました。
有望な分野ではあるものの、「2026年中に社会のインフラとして定着する確信が持てない」という点が、最終選考で見送られた決め手となりました。
どのように虹彩認証を行うのか
虹彩認証は、カメラで撮影した瞳の画像を、誰にも復元できない「独自の暗号コード」に変換することで行われます。一般的なプロセスは以下の3ステップです。
1. 高精細な赤外線撮影
可視光ではなく赤外線ライトを瞳に当て、専用カメラで撮影します。
- 理由: 赤外線を使うことで、黒目がちな瞳でも模様(虹彩のシワや凹凸)をくっきりと浮かび上がらせることができます。また、写真や偽物の目ではない「生きている人間」であることも同時に確認します。
2. 特徴点の抽出と数値化
撮影した画像から、虹彩特有の複雑なパターン(約240箇所の特徴点)を抽出します。
- 模様を「アイリスコード(Iris Code)」と呼ばれる、0と1の数字の羅列に変換します。この時点で画像データは破棄され、数字だけが残ります。
3. 暗号照合
生成されたコードを、データベースにある既存のコードと照合します。
- 1対1の照合(本人の確認)だけでなく、1対多(すでに登録されていないか=二重登録防止)の検索を瞬時に行います。

赤外線カメラで瞳の複雑な模様を撮影し、約240箇所の特徴点を抽出して「アイリスコード」という数値に変換します。この暗号化された数値同士を照合することで、個人情報を明かさずに一瞬で本人確認を行います。

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