SKハイニックスの次世代AIメモリHBM4 HBM4の特徴は何か?性能改善の方法は?

この記事で分かること

  • HBM4とは:AI用GPU向けの第6世代・超高速メモリ規格です。データの通り道(バス幅)を従来の2倍に増やし、16層の積層により大容量化を実現し、生成AIの膨大なデータ処理を劇的に高速化させる次世代の基幹技術です。
  • データの通り道を増やした理由:配線数を増やすと製造コストや難易度が跳ね上がるため、配線数(幅)を固定したまま「通信速度」を上げて対応していました。しかし、速度向上による発熱が限界に達したため、HBM4では「道幅」を2倍にする構造転換に踏み切りました。
  • TSV密度限界への対応方法:ハイブリッドボンディングを採用し、接続部を微細化しています。また、最下層をTSMCのロジック工程で作ることで配線密度を高め、16層もの高密度積層と薄型化を両立しました。

SKハイニックスの次世代AIメモリHBM4

 SKハイニックス(SK hynix)が、ラスベガスで開催中のCES 2026にて、次世代AIメモリの真打ちとなる16層「HBM4」を初公開しました。

 https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-01-06/T8FFBPKK3NYE00?srnd=jp-technology

 これまでのHBM3E(第5世代)からさらに進化し、業界で初めて16層の積層を実現したこの製品は、AIコンピューティングの性能を劇的に引き上げるものとして大きな注目を集めています。

HBM4とは何か

 HBM4(High Bandwidth Memory 4)とは、AIの学習や推論に使用される高性能GPU向けに設計された、第6世代の超高速・大容量メモリ規格です。

 従来のDDR5などのメモリがマザーボードに挿して使われるのに対し、HBM4はGPU(演算プロセッサ)のすぐ横に配置され、シリコン貫通電極(TSV)という垂直の配線で何層にも積み上げられた構造をしています。

 これにより、バケツリレーのようにデータを送るのではなく、巨大な土管で一気にデータを流すような圧倒的な通信速度を実現します。

主な特徴と、前世代(HBM3E)からの進化点は以下の通りです。


HBM4の4つの革新ポイント

特徴HBM4の内容前世代(HBM3E)との違い
データ転送速度1.5TB/s 〜 2TB/s 以上約1.5倍〜2倍に高速化
バス幅(土管の太さ)2,048ビット1,024ビットから2倍に拡大
積層数と容量12層・16層 (最大64GB)積層密度が上がり、より大容量に
省電力性消費電力を約40%削減1.1Vから1.05V以下へ低電圧化

1. 「バス幅」が2倍に拡大

 HBM4の最大の変更点は、データをやり取りする「道幅(インターフェース幅)」が従来の1,024ビットから2,048ビットへと倍増したことです。これにより、1つひとつの通信スピードを無理に上げなくても、全体として流せるデータ量が劇的に増え、発熱を抑えつつ高速化が可能になりました。

2. ロジックダイの進化(TSMC等との連携)

 これまでHBMは「メモリ単体」の技術でしたが、HBM4からは一番下の土台部分(ベースダイ)に、演算チップに近いロジックプロセスが採用されます。これにより、GPUとの親和性が高まり、より複雑な制御や低消費電力化が実現します。

3. AI「 Rubin(ルビン)」世代の必須パーツ

 NVIDIAの次世代AIチップ「Rubin」など、2026年以降に登場する最先端のAIアクセラレータは、このHBM4を搭載することを前提に設計されています。巨大な言語モデル(LLM)を動かすには、このメモリの「広帯域」と「大容量」が不可欠です。


HBM4とは、AI用GPU向けの第6世代・超高速メモリ規格です。データの通り道(バス幅)を従来の2倍に広げ、16層の積層により大容量化を実現し、生成AIの膨大なデータ処理を劇的に高速化させる次世代の基幹技術です。

これまでインターフェース幅を広げなかった理由は何か

 これまでインターフェース幅(バス幅)を1,024ビットから動かさなかったのには、「製造の難易度」「コスト」という2つの大きな壁があったからです。

 HBM4でついに2,048ビットへ踏み切った背景を含め、その理由を3つのポイントで解説します。


1. TSV(シリコン貫通電極)の密度限界

 HBMは、チップに数千個の小さな穴をあけて垂直に配線をつなぐTSV技術を使っています。

  • 物理的な制約: 1,024ビットのインターフェースを維持するだけでも、膨大な数の電極を非常に狭い範囲に配置する必要があります。
  • これまでの判断: 「道幅を広げる(ビット数を増やす)」よりも、「1本あたりのスピード(ピン速度)を上げる」ほうが、既存の製造設備や技術の延長線上で対応でき、効率が良かったのです。

2. インターポーザーと基板の配線コスト

 HBMは「インターポーザー」という特殊な土台の上に載せてGPUと接続します。

  • 配線の複雑化: インターフェース幅を2倍にするということは、この土台を通る配線の数も2倍(数千本単位)になることを意味します。
  • コスト増: 配線が密集しすぎると、製造の歩留まり(成功率)が下がり、チップ全体の価格が跳ね上がってしまいます。これまでは1,024ビットが「性能とコストのバランス」の限界点でした。

3. HBM4で「倍増」に踏み切った理由

 今、2,048ビットにしたは「スピードアップの限界」が来たためです。

  • 熱の問題: 1本あたりの通信速度を上げ続けると、発熱が激しくなり、積層されたメモリが熱暴走を起こすリスクが高まります。
  • 戦略の転換: 「1本の速度を上げる」のが限界なら、「道幅を2倍にして、1本あたりの速度は抑えつつ全体量を稼ぐ」という方針に切り替えたのが、HBM4の最大の決断です。

技術のまとめ

世代インターフェース幅主な高速化手法
HBM1〜HBM3E1,024 bitピンごとの転送レート向上(速度重視)
HBM42,048 bit配線数を倍増(効率と総量重視)

 この「道幅2倍」を実現するために、SKハイニックスはTSMCなどのファウンドリ(受託製造会社)と協力し、これまで以上に高度なパッケージング技術を導入しています。

これまでは、配線数を増やすと製造コストや難易度が跳ね上がるため、配線数(幅)を固定したまま「通信速度」を上げて対応していました。しかし、速度向上による発熱が限界に達したため、HBM4では「道幅」を2倍にする構造転換に踏み切りました。

 TSVの密度限界をどうやって解決したのか

 TSV(シリコン貫通電極)の密度限界を突破し、16層という高積層を実現した背景には、主に「接続技術の進化」「構造の簡素化」という2つのアプローチがあります。


1. 「ハイブリッドボンディング」の導入

 これまではチップ同士を「バンプ」と呼ばれる小さなハンダの突起でつないでいましたが、これには物理的な大きさの限界がありました。

  • 課題: バンプがあると、その分だけ隙間が必要になり、16層も重ねると全体の厚みが規格(775μm)を超えてしまいます。また、配線間隔(ピッチ)をこれ以上狭めるのも困難でした。
  • 解決策:ハイブリッドボンディングという、バンプを使わずに銅(Cu)と銅を直接接着する技術を採用しました。
    • メリット: 隙間がゼロになるため、パッケージ全体を劇的に薄くできます。また、配線間隔を従来の10μm以下まで微細化でき、2,048ビットという膨大な配線密度を可能にしました。

ハイブリッド接合に関する記事はこちら

2. 「Advanced MR-MUF」技術の高度化

 SKハイニックスの強みであるMR-MUF(チップ間に液状の保護材を流し込み、一括で固める技術)も進化させています。

  • 課題: 16層にもなると、熱でチップが反りやすくなり、TSVの接続が切れるリスクが高まります。
  • 解決策: 新しい保護材料(EMC)を開発し、放熱性能を維持しながら、薄いチップでも反らないように固定する力を強めました。これにより、従来のバンプ方式を維持したままでも16層の積層を安定して製造できるようになりました。

3. ロジックチップ(ベースダイ)の外部委託

 HBM4では、一番下の土台となる「ベースダイ」の製造を、自社ではなくTSMCなどのファウンドリに委託する体制へ転換しました。

  • 理由: TSVを制御する土台部分を、メモリ技術ではなく最先端のロジック技術(5nm〜クラス)で作ることで、配線の微細化限界を突破し、より効率的に2,048個の接点を管理できるようにしました。

まとめ:何が変わったのか

項目これまでHBM4での解決策
接続方法ハンダ(バンプ)接続銅の直接接合(ハイブリッドボンディング)
配線間隔比較的広い(限界)超微細化(ロジックプロセスの応用)
全体の厚み層が増えると厚すぎるバンプ撤去により16層でも従来と同等の厚み

 この「ハイブリッドボンディング」という技術は、今後の半導体競争で勝ち残るの重要な技術とされています。

バンプ(ハンダ)を使わず銅同士を直接接合する「ハイブリッドボンディング」を採用し、接続部を微細化。また、最下層をTSMCのロジック工程で作ることで配線密度を高め、16層もの高密度積層と薄型化を両立しました。

配線密度増加によるコストアップにどう対応したのか

 線密度の増加と16層化によるコスト増大に対し、SKハイニックスは単なる「製造」だけでなく、「構造の効率化」と「分業体制」という2つの戦略で対応しています。


1. TSMCとの「エコシステム分業」による最適化

 これまで自社で一貫製造していた「ベースダイ(最下層の土台)」の製造を、世界最大のファウンドリであるTSMCに委託しました。

  • コスト削減の理由: 自社で最先端ロジック用の巨額な設備投資をするよりも、TSMCの既存の高度なライン(5nm〜クラス)を活用する方が、結果的に歩留まり(良品率)が上がり、開発・製造コストを抑えられます。

2. 「Advanced MR-MUF」技術の継承と改良

 HBM4の初期段階では、あえてコストの高い「ハイブリッドボンディング」へ一気に移行せず、既存の「Advanced MR-MUF」を高度化して対応する戦略を並行しています。

  • コスト削減の理由: 既に使い慣れた量産技術を16層まで引き延ばすことで、新しい高価な製造装置への依存度を段階的に調整し、量産初期のコスト急騰を防いでいます。

3. 基板レス構造(直接接合)による部品削減

 将来的な「ハイブリッドボンディング」の導入は、長期的にはコスト削減に寄与します。

  • コスト削減の理由: チップを繋ぐための「バンプ(ハンダの突起)」や、隙間を埋めるアンダーフィル材が不要になるため、材料費の削減と工程の簡略化が可能になります。

最下層のベースダイ製造をTSMCへ委託し、既存の高度なロジック工程を活用することで歩留まりを改善。また、独自の「MR-MUF」技術の改良や将来的な接合技術の簡素化により、材料費と工程コストの抑制を図っています。

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