この記事で分かること
- ROMとは:電源を切ってもデータが消えない「読み出し専用」のメモリです。主に家電やPCを動かすための基本的なプログラム(ファームウェア)を保存するために使われ、システムを安定して動作させる土台の役割を果たします。
- なぜ書き換えできないのか:製造段階で回路の配線(物理的なつながり)をデータの形に固定してしまうからです。電子を「捕まえる」のではなく「道があるかないか」で記録するため、後から変更することができません。
- ROMの用途:書き換え不能な特性により、システムの破壊を防ぎ、高い信頼性を保ちます。また、安価に大量生産できるため、使い捨ての電子機器などにも多用されています。
ROM(Read Only Memory)
半導体チップは、「産業のコメ」と呼ばれるほど現代社会の基盤となっています。AIの普及やデジタル化の加速などのもあり、AIそのますます重要性が増しています。
ただ、一口に半導体チップといっても、その中には様々な種類が存在します。今回は半導体チップにはどのような種類があるのかの記事となります。
今回は、不揮発性メモリの一種であるROM(Read Only Memory)に関する記事となります。
ROM(Read Only Memory)とは何か
ROM(Read Only Memory:リードオンリーメモリ)とは、その名の通り「読み出し専用」のメモリです。
DRAM(作業用机)やNAND型フラッシュメモリ(倉庫)と異なり、一度書き込んだデータが意図せず書き換わらないように設計されています。
ROMの主な特徴
- 不揮発性(電源を切っても消えない)
- 電源を落としてもデータが保持されるため、機器の起動に必要な最小限のプログラム(BIOSやファームウェア)を保存するのに使われます。
- 高い安定性
- 書き換えが困難、あるいは不可能なため、誤操作やウイルス攻撃によってシステムが壊れるのを防ぎます。
代表的なROMの種類
技術の進歩とともに、「読み出し専用」の定義も少しずつ広がってきました。
| 種類 | 特徴 | 書き換え |
| マスクROM | 製造時にデータが固定される。 | 不可 |
| PROM | ユーザーが1回だけ書き込める。 | 1回のみ可 |
| EPROM | 紫外線を当ててデータを消去できる。 | 複数回可 |
| EEPROM | 電気信号でデータを書き換えられる。 | 複数回可 |
フラッシュメモリとの関係
実は、私たちがこれまで話してきた「NAND型フラッシュメモリ」も、広義にはこのEEPROM(電気的に書き換え可能なROM)の進化系です。本来のROMは「書き換えが非常に不便」でしたが、それを「手軽に書き換え可能」にしたのがフラッシュメモリというわけです。

ROMは、電源を切ってもデータが消えない「読み出し専用」のメモリです。主に家電やPCを動かすための基本的なプログラム(ファームウェア)を保存するために使われ、システムを安定して動作させる土台の役割を果たします。
なぜ書き換えできないのか
本来の「ROM(マスクROM)」が書き換えできない理由は、「回路の配線そのものが、データの形に物理的に固定されているから」です。
分かりやすく言うと、製造工程で「物理的な設計図としてデータを彫り込んでしまう」ためです。
1. 「配線の有無」がデータになる
製造時に「フォトマスク」という型を使い、トランジスタと配線のつながりを作ります。
- データが1の場合: 配線をつなぐ
- データが0の場合: 配線をつながない(または絶縁する)このように、回路そのものが「1」や「0」の形で作られるため、完成後に電気を送っても、物理的な接続は変えられません。
2. 「物理的な彫刻」と同じ
CD-ROMをイメージすると分かりやすいです。CD-ROMには微細な凹凸が彫られており、光で読み取りますが、後からその凹みを埋めたり削ったりすることはできません。マスクROMも同様に、チップ内部に「電気的な凹凸」を焼き付けているような状態です。
3. なぜそんな不便なものを作るのか
「書き換えられない」ことは、デメリットばかりではありません。
- 圧倒的な安さ: 構造が極めてシンプルなので、大量生産すればコストを一番安く抑えられます。
- 絶対に消えない安心感: 電気的なトラブルや静電気でデータが化ける心配がほとんどなく、家電の制御プログラムなど「絶対に書き換わってはいけない」用途には最適です。

本来のROMが書き換えられない理由は、製造段階で回路の配線(物理的なつながり)をデータの形に固定してしまうからです。電子を「捕まえる」のではなく「道があるかないか」で記録するため、後から変更できない代わりに、安価で極めて高い信頼性を発揮します。
ROMにはどのような用途があるのか
ROM(読み出し専用メモリ)は、その「一度決めたら絶対に変わらない」「電源を切ってもデータが消えない」という特性を活かし、システムの心臓部や、信頼性が最優先される場所で使われています。
1. 機器を起動させる「最初のプログラム」
パソコンやスマートフォン、家電製品の電源を入れた直後に動き出す「BIOS(バイオス)」や「ファームウェア」の保存に使われます。
- 理由: ストレージ(SSDなど)からOSを読み込むための「基本ルール」が書かれています。ここが書き換わってしまうと、二度と電源が入らなくなる(文鎮化する)ため、堅牢なROMに保管されます。
2. 家電や産業機器の「制御システム」
炊飯器、洗濯機、車のエンジン制御ユニット(ECU)など、アップデートを前提としない完成されたプログラムの保存に使われます。
- 理由: 誤動作や静電気でプログラムが消えると命に関わることもあるため、物理的にデータが固定されたROMが信頼されます。また、大量生産する家電では、書き換え可能なメモリよりもコストを大幅に抑えられます。
3. ゲーム機のカセット(レトロゲームなど)
かつてのファミコンやゲームボーイなどのカセット内部には、ゲームデータが書き込まれたROMチップが入っていました。
- 理由: ユーザーが誤ってデータを消去する心配がなく、差し込むだけですぐにデータを読み取れる高速性が重宝されました。

ROMは、PCの起動用プログラム(BIOS)や家電の制御システムに不可欠です。書き換え不能な特性により、システムの破壊を防ぎ、高い信頼性を保ちます。また、安価に大量生産できるため、使い捨ての電子機器などにも多用されています。
ROMの配線はどのように作られるのか
ROM(特にマスクROM)の配線は、半導体製造プロセスの非常に初期の段階である「フォトグラフィ(光リソグラフィ)」という工程で作られます。
イメージとしては、写真の現像のように「回路の設計図」をシリコンウェハー上に焼き付けていく作業です。
配線が作られる仕組み
- 設計図(フォトマスク)の作成データが「1」の場所は電流が流れるように、「0」の場所は流れないように設計された、巨大なネガフィルムのような「マスク」をデータごとに作成します。
- 光による焼き付けシリコンウェハーの上に感光剤(レジスト)を塗り、上からマスクを重ねて強い光を当てます。これにより、データに基づいた複雑な回路パターンがウェハー上に転写されます。
- エッチング(彫刻)と金属成膜光が当たった部分の感光剤を溶かし、露出した部分にアルミニウムや銅などの金属を蒸着させたり、逆に不要な部分を削り取ったりします。
物理的な「接続」の状態
この工程を経て、メモリ内部には以下の2つの状態が物理的に出来上がります。
- コンタクト(接点)がある: 回路がつながっており、読み出すと「1」になる。
- コンタクトがない: 回路が物理的に切断(または絶縁)されており、読み出すと「0」になる。
一度金属の配線が固定され、その上から保護層で固められてしまうため、後から電気を流してもこの「道」を繋ぎ変えることは不可能です。

ROMの配線は、製造工程でフォトマスクを用いて回路パターンをウェハーに焼き付けることで作られます。金属配線の「つながり」そのものがデータ(0と1)を表すため、物理的に固定された後は書き換えができず、極めて高い安定性を持ちます。
PROMが一回だけ書き換えができる理由は
PROM(Programmable ROM)が「一度だけ」書き換え可能な理由は、内部に「ヒューズ(断線して機能を止める仕組み)」が組み込まれているからです。
1. 「ヒューズを焼き切る」物理的な変化
製造直後のPROMは、すべての回路がヒューズでつながった状態(例:すべて「1」)になっています。
- 書き込みの仕組み: 専用の装置で高い電圧をかけると、特定の箇所のヒューズが熱で焼き切られます。
- データの固定: 焼き切られた場所は電流が流れなくなるため、データが「0」に変わります。
2. 元に戻せない「不可逆」な構造
一度焼き切ってしまったヒューズを、後からつなぎ直すことは物理的に不可能です。
- 例え: 電球のフィラメントが切れると二度と光らないのと同じです。
- 結果: このため、データの書き込みは「一度きり」となり、その後は読み出し専用(ROM)として機能します。
3. なぜこのようなメモリが必要なのか
「マスクROM」は工場で大量に作るのには向いていますが、少しだけ中身を変えたい場合や、試作品を作る場合には不向きです。
- メリット: PROMなら、標準的なチップを大量に買っておき、出荷直前に必要なデータ(製品シリアル番号や設定値)を一度だけ書き込んで固定できるため、小回りが利きます。

PROMが一回だけ書き換えられる理由は、内部の微細なヒューズを高電圧で焼き切ってデータを記録するからです。物理的に回路を切断するため、一度書き込むと元に戻すことはできませんが、工場出荷後にユーザー側でデータを固定できる利点があります。

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