この記事で分かること
- 3.9%増加の意味:成長率は爆発的な普及期に比べ鈍化していますが、年間3,000万台超の巨大市場ゆえの「成熟」といえます。内実は、激減するガソリン車を新エネルギー車(NEV)が補う構造で、質的な大転換が加速しています。
- 好調な企業:BYDが年間約460万台を販売し首位を独走しました。吉利(Geely)も目標超えの300万台超と好調です。新勢力では小米(Xiaomi)がSUV投入で急伸し、奇瑞(Chery)は輸出で存在感を示しました。
中国の自動車販売台数3.9%増加
中国乗用車協会(CPCA)などが発表した2025年通年の中国自動車販売台数3.9%増になる見込みなっています。
https://jp.reuters.com/markets/japan/DVSKRV6R35NGPOIAWHZFRFO5LE-2026-01-09/
2025年の中国自動車市場は、「ガソリン車からNEVへの構造転換」を伴いながら、緩やかなプラス成長(約3.9%増)を維持しました。しかし、内部では中国系メーカーの躍進と外資系メーカーの苦戦という、極めて激しい勢力図の塗り替えが起きた1年と言えます。
3.9%増は成長が鈍化していることを示しているのか
「3.9%増」という数字が成長の鈍化を示しているのかという問いに対しては、「市場全体としては成熟(安定)期に入ったが、中身は激変している」と捉えるのが正確です。
かつての10%を超えるような爆発的な成長期に比べれば「鈍化」していますが、現在の中国の経済状況や市場規模(年間3,000万台超)を考えると、「堅調な維持」と評価されることが多い数字です。
1. 「量的成長」から「質の転換」へ
かつての中国市場は「初めて車を買う人」が成長を牽引していましたが、現在は「買い替え」が主流です。
- 市場の飽和: すでに世界最大の市場であり、伸び率が数%に落ち着くのは成熟した市場の自然な流れです。
- 政府のコントロール: 2025年の政府目標(3%増前後)は、無理な拡大よりも「安定」を重視したものでした。そのため、3.9%という数字は「目標を達成した合格点」とみなされます。
2. 「ガソリン車」の急減と「NEV」の急増
「3.9%増」という穏やかな数字の裏では、凄まじい「食い合い」が起きています。
- 二極化: ガソリン車(ICE)は前年比でマイナス成長に陥っている一方、新エネルギー車(NEV)は20%以上の高い伸びを示しています。
- シェア50%の壁: 2025年には「売れる車の2台に1台が電気自動車やPHV」という状態になり、成長の「エンジン」が完全に入れ替わりました。
3. 国内消費の弱さを「輸出」がカバー
国内の純粋な需要だけで見ると、不動産不況などの影響で消費心理は必ずしも強くありません。
- 輸出の貢献: 3.9%増という数字には、海外への輸出分も含まれるケースが多いです。国内需要の「鈍化」を、ロシア、東南アジア、中東、欧州などへの「輸出拡大」で補っている側面があります。
比較:過去と他国
| 期間 | 中国の成長率(目安) | 状況の解釈 |
| 2010年代前半 | 10% 〜 20%超 | 爆発的成長期(普及の拡大) |
| 2024年〜2025年 | 3% 〜 5% | 成熟・転換期(NEVへのシフト) |
| 他国(日米欧) | 0% 〜 2% | 停滞・成熟市場 |
「3.9%増」は、市場が「誰でも売れるボーナスステージ」を終え、「生き残りをかけた激しいシェア争いのステージ」に入ったことを意味します。量的には「鈍化」に見えますが、技術革新や淘汰のスピードはむしろ加速しています。

成長率は爆発的な普及期に比べ鈍化していますが、年間3,000万台超の巨大市場ゆえの「成熟」といえます。内実は、激減するガソリン車を新エネルギー車(NEV)が補う構造で、質的な大転換が加速しています。
どのメーカーが好調なのか
2025年の中国市場では、市場全体が3.9%増と緩やかに伸びる中で、「中国系EVメーカー」と「ハイブリッドに強いメーカー」が独走し、外資系ブランドとの明暗がはっきりと分かれました。
1. BYD(比亜迪)
- 圧倒的王者: 2025年の年間販売台数は約460万台に達し、中国市場で不動の1位です。
- 強み: 低価格の「秦(Qin)PLUS」から高級車ブランドまで幅広く展開。電気自動車(BEV)だけでなく、航続距離の長いプラグインハイブリッド(PHV)が爆発的に売れています。
2. 吉利汽車(Geely)
- 急成長: 2025年は前年比で非常に高い伸び(約20〜30%増)を記録し、年間300万台を突破。
- 強み: 「Zeekr(極氪)」などのEVブランドが好調なほか、ガソリン車とEVのバランスが良く、最も勢いのあるメーカーの一つです。
3. 小米(Xiaomi)
- 新勢力の主役: スマホメーカーとして参入し、初のセダン「SU7」に加え、2025年に投入したSUV「YU7」が大ヒット。
- 強み: 既存の車メーカーを凌駕するソフトウェア技術と、圧倒的なブランド力で若年層の支持を独占しています。
4. 奇瑞汽車(Chery)
- 輸出の怪物: 国内販売も堅調ですが、特にロシアや中東、東南アジアへの「輸出」が凄まじく、中国メーカー全体の底上げに大きく貢献しています。
好調な企業は共通して「新エネルギー車(NEV)比率が高い」ことと、「価格競争力がある」ことが特徴です。
| メーカー | 2025年の状況 |
| BYD | 市場シェア約30%を握る圧倒的トップ。 |
| 吉利 (Geely) | NEVへの移行に成功し、販売目標を上回る。 |
| Xiaomi | 異業種からの参入ながら、販売ランキング上位の常連に。 |
| テスラ | 「Model Y」が単一車種として依然トップクラスの人気。 |
一方で、トヨタやホンダなどの日系メーカーや、独フォルクスワーゲンなどは、ガソリン車市場の縮小に伴いシェアを落とす「一人負け」に近い状態が続いています。

2025年は、BYDが年間約460万台を販売し首位を独走しました。吉利(Geely)も目標超えの300万台超と好調です。新勢力では小米(Xiaomi)がSUV投入で急伸し、奇瑞(Chery)は輸出で存在感を示しました。
ハイブリッド車が好調でもトヨタが苦戦している理由は何か
トヨタが強みを持つ「ハイブリッド車(HEV)」が世界的に再評価される一方で、中国市場で苦戦しているのには、中国特有の「新エネルギー車(NEV)」の定義と優遇策が大きく関係しています。
1. 「NEV(新エネルギー車)」に含まれない
中国では、外部から充電できるプラグインハイブリッド(PHV)や電気自動車(EV)は「NEV」として優遇されますが、トヨタが得意とする通常のハイブリッド車(HEV)はガソリン車と同じ扱いを受けます。
- ナンバープレートの制約: 上海などの大都市ではガソリン車のナンバー取得が非常に困難ですが、NEVなら優先的に、あるいは無償で発行されます。トヨタのHEVはこの恩恵を受けられません。
- 補助金の対象外: 政府や地方自治体の買い替え補助金も、主にNEVが対象となるため、実質的な購入価格で不利になります。
2. PHV(プラグインハイブリッド)の進化と価格競争
現在、中国市場を席巻しているのはBYDなどの中国系メーカーが手掛ける「安くて高性能なPHV」です。
- 圧倒的な低価格: BYDのPHVは、トヨタの同クラスのHEVよりも安く販売されるケースが増えています(「電比油低=電気はガソリン車より安い」というスローガン)。
- 走行性能の差: 中国のPHVは、電気だけで100km以上走れるモデルが標準的で、家で充電すればほぼEVとして使える点が、燃費重視のトヨタのHEVよりも魅力的に映っています。
3. スマートカー(知能化)での出遅れ
現在の中国の消費者は、エンジン性能よりも「巨大な画面」「音声操作」「高度な自動運転」といった「スマホのような体験(知能化)」を重視します。
- 中国メーカーが最新のAI技術やエンタメ機能を次々と搭載する中、トヨタの車は「壊れにくいが、技術的に地味」というイメージを持たれ、若年層の選択肢から外れやすくなっています。

トヨタが苦戦する理由は、同社の得意なハイブリッド(HEV)が中国では「新エネルギー車」に分類されず、補助金やナンバー優遇を得られないためです。安価で先進機能が豊富な現地製PHVに、シェアを奪われています。
今後の動向は
今後の中国自動車市場の動向は、2025年のような緩やかな成長から一転し、「国内需要の減少」と「さらなる弱肉強食」のフェーズに入ると予測されています。
1. 国内販売は「減少」に転じる可能性
2025年に行われた政府の買い替え補助金政策や、EV取得税の全額免除が一段落(2026年からは半額免除へ)するため、需要の「先食い」の反動が懸念されています。
- 一部のアナリストは、2026年の国内販売が5〜9%程度減少すると予測しています。
- 「数」を追う時代から、生き残りをかけた「質の競争」へ完全にシフトします。
2. 「安売り」から「価値と知能化」の競争へ
これまでは激しい値下げ合戦(価格競争)が続いてきましたが、今後は以下のような「付加価値」が勝敗を分けます。
- 高度な自動運転: 市街地での自動運転機能が標準化し、ソフトウェアの完成度が選定基準になります。
- スマホとの融合: シャオミ(Xiaomi)やファーウェイ陣営のように、車を「走るスマートフォン」として提供できるメーカーがさらにシェアを伸ばすと見られています。
3. 日本メーカーの正念場(2026年〜)
トヨタをはじめとする日系各社は、2026年に向けて中国専用のEVやPHVを相次いで投入する計画です。
- 巻き返しの鍵: 現地のIT大手と提携し、中国の消費者が好む「知能化技術」をどれだけ素早く取り込めるかが焦点です。
- 撤退か存続か: 販売不振が続くブランドにとっては、合弁事業の解消や生産拠点の集約など、厳しい経営判断を迫られる年になります。

今後は補助金縮小の反動で国内販売が減少に転じる一方、新エネルギー車(NEV)の比率はさらに上昇する見込みです。価格競争から「自動運転やソフト面」の価値競争へ移り、外資勢にはより厳しい淘汰が待ち受けています。

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